【CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。
※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。
【略語リスト】(アルファベット順)
- CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
- CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
- CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
- CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
- CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
- EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
- EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
- FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
- HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
- ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
- MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
- RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
- RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)
1. CORE Reference Teamからのお知らせ
1.1 CORE Referenceウェビナーを開催する運びとなりましたのでご案内いたします。
- 日時:2024年12月4日(水)12:30~13:45(中央ヨーロッパ夏時間)
- テーマ:EMA Policy 0070事例紹介 – Voydeya
(訳注:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン]。発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬) - 演者:CORE Reference TeamのRaquel Billiones氏とAlison McIntosh氏
- 申込方法:欧州メディカルライター協会(EMWA)本部(membership@emwa.org)までメールでお申し込み下さい。
<ウェビナー概要>
2024年春に申請を完了し、2024年6月26日に臨床データが公開されたVoydeyaの例を用いて、EMA Policy 0070 Anonymisation Report(AnR:匿名化報告書)の作成について概説し、適切な匿名化手法の選択などについて議論します。主なトピックは以下の通りです。
- EMA Policy 0070 AnRおよび関連する匿名化手法の概要
- Voydeyaの申請で浮き彫りになった希少疾患特有の問題点
- 臨床データの有用性を維持する上での課題
- EMAとのコミュニケーションの振り返り(申請前相談を含む)
- Voydeyaの匿名化プロセスから得られた学び
1.2 2023年にCORE Reference Teamが実施した「CORE Reference Utility Survey」の結果を、「The 2023 CORE Reference Utility Survey: Perceptions on a best practice tool for globally applicable clinical study reporting and provision of continuing professional development resources for the regulatory medical writing community」(CORE Reference利用状況調査2023:グローバルに適用可能な臨床試験報告のためのベストプラクティス・ツールの認識と、メディカルライターのための継続的専門能力開発リソースの提供)と題して、EMWAの『Medical Writing』誌2024年9月号特集「Clinical Trial Transparency and Disclosure」(臨床試験の透明性と情報開示)に掲載しました(Medical Writing. 2024;33(3):38-45)。アンケート調査にご協力下さった方々に改めて御礼申し上げます。
2. ICH
2.1 ICHは、規制当局がICHガイドラインを十分実施・遵守しているかを2024年初頭に調査した結果を、「2024 Project Report: Monitoring the adequacy of implementation and adherence to ICH Guidelines」として発表しました。この調査は2019年と2021年にも実施されています。2024年の調査結果は、研修ニーズやICH会員関連活動のサポートに利用されます。
2.2 ICH E8(R1)ガイドライン「General Considerations for Clinical Studies」(臨床試験の一般指針)の入門研修ビデオが公開されました。
3. EU CTRとCTIS
3.1 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年10月8日号には、非営利スポンサー向けヘルプデスク、臨床試験の有効期限、システムの改善(最新のシステムリリース参照)などに関して最新情報が掲載されています。
3.2 次回のCTISショート説明会は2024年11月20日16:00~17:00(中央ヨーロッパ時間)に開催される予定で、対象は製薬企業、CRO、中小企業(SME)、アカデミアなど、すべての治験依頼者です。事前の参加申込は不要で、EMAの公式サイトからライブ配信をご覧になれます。
4. 英国とMHRAのニュース
英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、MHRAと共同で、臨床研究のインクルージョンと多様性に関するガイダンス案「Guidance for Developing and Submitting an Inclusion and Diversity Plan」(インクルージョン・多様性プランの作成と提出に関するガイダンス)について、非公式にパブリックコメントの募集を始めました。
本ガイダンスの目的は、(1)研究結果の影響を受ける可能性のある人々を組み入れる研究が設計されるようにすること、(2)研究の恩恵を受けていない人々が見過ごされないようにすることの2つです。ガイダンス案には、研究者が臨床試験を設計する際に考慮すべき質問と、その答えを導くための情報も提示されています。パブリックコメントは2024年12月9日まで受け付けています。
5. 米国FDAのガイダンスとニュース
5.1 2024年10月、FDAは最終ガイダンス「Core Patient-Reported Outcomes in Cancer Clinical Trials」(がん臨床試験における患者報告アウトカム [PRO])を発出しました。治験依頼者向けの本ガイダンスは、がん臨床試験におけるPROコアセットの収集に関する推奨事項と、PRO評価ツールの選択や試験デザインなどに関する検討事項を提示しています。
5.2 FDAと米国国立衛生研究所(NIH)は共同で、「FDA-NIH Terminology for clinical research」(FDA-NIH臨床研究用語集)を草案しました。この用語集は、科学界で一貫性なく使用されている専門用語を明確にするのに役立ちます。用語集(案)には、科学的、臨床上、規制上の意思決定をサポートする、リアルワールドデータを使用してリアルワールドエビデンスを生成する研究など、革新的な臨床研究デザインに関連する37の臨床研究用語が収載されています。
5.3 FDAは無料の公開ウェビナー「Informed Consent — More than Just Another Document to Sign?」(インフォームド・コンセント:署名するだけの文書ではない?)を、2024年11月8日14:00~15:00(米国東部時間)に開催します。参加申込をウェビナー開催時刻まで受け付けています。
5.4 2024年7月にFDAはバイオシミラー製品開発の新たなガイダンスを作成する案について、パブリックコメントを募集しましたが、Hayes氏のウェブ記事「Industry rejects FDA’s proposal for biosimilar product-specific guidance」(業界はFDAのバイオシミラー製品別ガイダンスの提案を拒否)は、「バイオシミラー開発者らは、製品別またはクラス別のガイダンスを作成するというFDAの提案を強く拒否し、代わりにこの分野の基本的なガイダンスの更新に注力するようFDAに求めている」と報告しています。
6. 欧州EMAのガイダンスとニュース
6.1 EMAは、がん治療薬に関心のあるすべての人を対象に、月刊ニュースレター「European Regulatory Oncology Newsletter」を創刊しました。毎月、EU内のがん治療薬について最新の科学的見解を紹介し、がん領域におけるEU規制当局のイベントや取り組み、活動に関するニュースを提供します。ニュースレター創刊号(2024年10月号)はこちらでご覧頂けます。購読はこちらからお申し込み下さい。
6.2 2024年10月22日に開催されたACT EUマルチステークホルダー・プラットフォーム(MSP)年次総会のスライドとビデオ録画がこちらで公開されています。MSPは、臨床試験関係者と規制当局が一堂に会して意見を述べ合い、欧州の患者・一般市民のために臨床試験環境の改善に協力する場になっています。(訳注:後述の記事10.3もご参照下さい)
訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。
7. 透明性・情報開示のリソースとニュース
7.1 欧州メディカルライター協会(EMWA)の『Medical Writing』誌2024年9月号(Volume 33, Issue 3, 2024)は、臨床試験の透明性と開示について特集しています。同誌はオープンアクセスジャーナルで、特集記事はこちらからダウンロード可能です。
7.2 DocShifter社は、無料の公開ウェビナー「Translation & Redaction — AI applied in Regulatory Content Preparation」(翻訳と編集:規制コンテンツ作成へのAI適用)を、2024年11月14日17:00~17:30(グリニッジ標準時)に開催します。このウェビナーでは、規制当局に提出するコンテンツの作成、特に文書翻訳と情報編集に対してAIが与える影響を探ります。
7.3 PHUSEは、データの透明性に関する冬季イベント「PHUSE Data Transparency Winter event」を2025年2月4~6日に開催します。プレゼンテーションは3日間とも15:00~17:30(グリニッジ標準時)に行われる予定で、現在、演題を募集中です。
訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。
7.4 Real Life Sciences社は、無料の公開ウェビナー「Best Practices for Clinical Data Anonymization Using the Quantitative Methodology」(定量的手法を用いた臨床データ匿名化のベストプラクティス)を、2024年11月21日10:00(米国東部時間)に開催します。
7.5 欧州委員会は、EUデジタルサービス法(DSA)の下、審査に合格した研究者によるオンラインプラットフォーム・データへのアクセスに関する委任規則法案について、パブリックコメントの募集を開始しました。超大規模オンラインプラットフォームや超大規模検索エンジンのデータへのアクセスに関する新たな枠組みは、これらのプラットフォームの透明性と説明責任を高めるためのDSAの重要な措置です。パブリックコメントは2024年11月26日まで受け付けています。
8. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070)
EMAは、臨床試験データ公開(Policy 0070)の再開に向けた次のステップに関するウェビナー「Clinical Data Publication (Policy 0070) webinar — Step 2」(臨床試験データ公開 [Policy 0070]ウェビナー–ステップ2)を、2024年11月14日14:00~15:00(グリニッジ標準時)に開催します。
このウェビナーでは、2025年4月からのPolicy 0070関連活動の拡大案(ステップ2)に関するEMAの計画と、従来の手続きの取り扱いを紹介するとともに、申請者や業界関係者にガイダンスを提供します。質疑応答の時間も設ける予定になっています。詳しいアジェンダはこちらをご覧下さい。なお、参加には事前の申込が必要です。
9. ヘルシンキ宣言
「WMA Declaration of Helsinki – Ethical Principles for Medical Research Involving Human Participants」(世界医師会 [WMA] ヘルシンキ宣言:ヒト参加者を対象とする医学研究の倫理原則)の改訂版が、2024年10月21日に発表されました。WMAによると、実質的な変更は次の2つの分野に分類されます。
- 参加者中心のインクルージョン、尊重、保護
- 研究の受益性と価値(「個人と公衆の健康」の追求、科学的厳密性と完全性の維持、利益・リスク・負担の慎重な分配など)
また、WMAは「ヘルシンキ宣言の2024年改訂版では、個人の権利や主体性、重要性を尊重するため、『subject』(被験者)という用語を全面的に『participant』(参加者)に言い換えた」と説明しています。
10. 開発戦略ニュース
10.1 Hughes氏とRodriguez-Chavez氏によるDIAウェブ記事「The Evolution of Decentralised Clinical Trials: Blending Innovation and Regulation in the Digital Age」(分散型臨床試験の進化:デジタル時代におけるイノベーションと規制の融合)では、分散型臨床試験(DCT)を用いた患者中心の新たな臨床研究アプローチについて見識が得られます。著者らはDCTの利点や、DCT実施に現在利用可能な新しいテクノロジー(AI・機械学習など)、DCTの今後の展望などについて論じています。
10.2 米国ハーバード大学/ブリガム&ウィメンズ病院のMRCTセンターは、「2024 Annual Symposium」を2024年11月14~15日に開催します。ボストンの会場またはオンラインで無料で参加できます。シンポジウムのハイライトは、FDAの医療政策部長Khair ElZarrad氏による、臨床研究と規制の現在の動向と今後の展望に関する基調講演や、EMAの主席医務官(CMO)Steffen Thirstrup氏による、データ共有と欧州医療データスペース(EHDS)の今後に関する基調講演などです。
訳注)MRCTセンター:Multi-Regional Clinical Trials Center of Brigham and Women’s Hospital and Harvard(ハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院の国際共同治験センター)。ブリガム&ウィメンズ病院は、米国ハーバード大学医学部の附属病院としての役割を担う医療・研究・教育機関の1つ。MRCTはハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院に属しており、国際共同治験の改善を目的とする研究・政策センター。
10.3 ACT EUイニシアチブは、EUにおける臨床試験の環境改善を目的としたマルチステークホルダー・プラットフォーム(MSP)を設立しており、EMAはMSPの年次総会を2024年10月22日にアムステルダムで開催しました。総会の主な内容は以下の通りです。
- ACT EUイニシアチブの主な成果と臨床研究への影響の確認
- 臨床試験の現状に関する議論
- 将来を見据え、多様なステークホルダー・グループにとって期待される成功の可視化
総会のスライドとビデオ録画がこちらで公開されています。(訳注:前述の記事6.2もご参照下さい)
訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。
10.4 CIOMSのICH用語集「Glossary of ICH terms and definitions」第7版が、無料でダウンロード可能です。今回の改訂では、下記の3つのICHガイドラインから定義が追加されています。
- E11A「小児用医薬品開発における外挿」(ステップ4 [最終版]、2024年8月21日)
- M13A「即放性固形経口剤形の生物学的同等性試験」(ステップ4 [最終版]、2024年7月23日)
- Q4B(R1)「薬局方テキストをICH地域において相互利用するための評価及び勧告」(最終版、2024年6月5日)
10.5 2024年11月に予定されている臨床試験関連または薬事関連のイベントや文書が、Pierre Mermet-Bouvier氏のLinkedIn記事「Planned for November 2024」にリストアップされています。
11. 人工知能・機械学習
11.1 FDAは論文「FDA Perspective on the Regulation of Artificial Intelligence in Health Care and Biomedicine」(医療とバイオにおけるAI規制に関するFDAの展望)を、『JAMA』の「Special communication」に発表しました。著者らはFDAのAI規制の歴史を振り返るとともに、医療製品開発や臨床研究、臨床ケアにおけるAIの潜在的用途を紹介し、規制システムがAI特有の問題に適応する際に検討する価値のある概念を提示しています。
11.2 Heta Mehta氏の記事「The evolving role of contact-free AI devices in clinical trials」(臨床試験における非接触型AIデバイスの役割の進化)が『RF Quarterly』誌(2024;4(3):34-41)に掲載されていますが、こちらから無料でダウンロード可能です。
11.3 EMAとHMAは、オンライン・ワークショップ「HMA/EMA multi-stakeholder workshop on artificial intelligence (AI) — enabling the safe and responsible use of AI」(AIに関するHMA/EMAマルチステークホルダー・ワークショップ:安全で責任あるAI活用の実現)を、2024年11月5日9:00~17:40(中央ヨーロッパ時間)に開催します。ワークショップの主な内容は以下の通りです。
- AI開発の最先端に関する基調講演
- 政策・立法環境、AIリフレクションペーパーの改訂、これらによる影響に関する議論
- 複数年にわたるAI作業計画の下で実施されるHMA/EMAの活動
11.4 Simon氏とAliferis氏によるオープンアクセス書籍「Artificial Intelligence and Machine Learning in Health Care and Medical Sciences」(ヘルスケアと医学におけるAIと機械学習)は、PDFファイルまたはEPUB形式として無料でダウンロード可能です。本書は、ヘルスケアにおけるAIの透明で倫理的かつ公平な使用に焦点を当てています。著者らは「AIはヘルスケアに真の革命をもたらす可能性があるが、責任ある実装が不可欠である」と述べています。
翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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