実は誰でも医学翻訳者になれる!資格認定制度を阻む3つの要因

プロの医薬翻訳者になるのに必要な資格は?

医薬翻訳に興味を持つ方から「医者や看護師、薬剤師など医療従事者の資格がないと医学翻訳者になれないですか?」、「プロの医学翻訳者は、何か試験に合格しないとなれないですか?」などと質問を受けることがあります。

また、医薬翻訳を外注する機会のある企業や医師などからは「質の高い翻訳がなかなか手に入らず、翻訳者の語学力や専門知識に疑問を感じることが多いが、医学翻訳は資格制ではないのか?」などと尋ねられることがあります。

国内の通訳・翻訳業務で、資格なしに請け負うことが法律で禁止されているのは、いわゆる「通訳ガイド」だけです。(追記:2017年5月26日に改正通訳案内士法が国会で成立し、無資格でも有償で通訳ガイドを行えるようになりました。)

翻訳に関しては、どの分野でも認定試験や資格制度は存在せず、公的な免許や資格は一切必要ありません技量や経験を問わず誰でも「プロの翻訳者」を名乗って翻訳業務を請け負うことが出来ます

医薬翻訳者の翻訳レベルは実際どの程度

翻訳業界への参入は敷居が低いため、この20年間に医薬翻訳者のすそ野は急速に広がり、医学・製薬業界で「なくてはならない存在」になりました。

その反面、大多数の医薬翻訳者が経験年数に関わらず初心者レベルで、訳文の質が低いことが多いです。そのため、以下のような悪循環が長年続いています。訳文の質が低い⇒依頼者側の不満が根強い⇒医薬翻訳が「専門職」として十分に認識されない⇒翻訳の報酬が低い⇒有望な人材が集まりにくい⇒初心者レベルの翻訳者ばかり増える⇒訳文の質が低い。

科学技術文書の最大の役割は「情報を正確に伝えることであり、特に医薬翻訳では訳文の内容が人の命に関わる場合が多いため、誤訳は1つも許されません重大な誤訳や思い違いを防ぐには、高い語学力読解力だけでなく幅広く深い専門知識が必要です。また、正確でわかりやすい訳文を作るには高度な翻訳技術も必要です。

しかし、これらの能力を兼ね備えた医薬翻訳者は、依然としてほんの一握りしかいません。「専門職」として優秀な人材を育て、医薬翻訳全体のレベルアップを図るためには、通訳ガイドのように認定試験を実施し、「医学翻訳士」のような公的資格を設ける必要があるのではないでしょうか。

医薬翻訳で資格認定制度が難しい理由

業界内で統一した認定試験を実施して、合格者に資格を付与するとなると、下記のような3つの問題が生じて来ます。
1. どの団体が実施するのか
2. 誰が出題・評価するのか
3. 多様な医薬翻訳を1つの資格でカバーできるのか

問題1:どの団体が実施するのか
試験を実施するには専門の組織が必要ですが、残念ながら医薬翻訳の業界団体は存在しません。そもそも翻訳業界全体でも「日本翻訳連盟」(JTF)、「日本翻訳協会」(JTA)、「日本翻訳者協会」(JAT)など複数の団体が存在し、統一団体がありません。そのため、JTFやJTA、翻訳学校などが各々独自に検定試験(実技試験)を実施しており、業界統一試験はありません。

このような状況の中、翻訳サービス提供に関する国際規格「ISO 17100」(2015年発行)に基づき、日本規格協会に「翻訳者評価登録センター」(RCCT)が創設され、2017年4月1日から「翻訳者登録制度」がスタートしました。

RCCTは医薬分野を含む4分野の検定試験を実施するとのことですが、JTFの「ほんやく検定」を新規翻訳検定として登録したことが発表されたので、新たに試験を創設するのではなく既存の検定試験を利用するようです。今後、JTFの「ほんやく検定」が業界統一試験のような役割を果たすようになるのでしょうか。登録制度の有用性なども未知数であり、大阪と東京で開催される説明会の内容に注目が集まるところです。

問題2:誰が出題・評価するのか
真に「プロ」と呼べる優秀な医薬翻訳者が一握りしかいないため(特に英訳)、適切な試験問題を作成して、唯一絶対の「正解」が存在しない訳文の良し悪しを文脈に応じて見極め、受験者の翻訳レベルを正確に判定できる医薬翻訳者は極めて少ないと思われます。そのため、どのような団体が資格認定試験や検定試験を実施するにしても、医薬分野の試験の品質担保が難しいことは容易に想像できます。

問題3:多様な医薬翻訳を1つの資格でカバーできるのか
一口に「医薬翻訳」と言っても、扱う内容や文書の種類は多岐に渡っています。大きく分けても「論文翻訳」、「製薬に関する翻訳」、「医療機器に関する翻訳」、「その他」(診断書、特許など)という4つの異なるジャンルがあり、いずれも様々な領域に細分化されます。さらに、どのジャンルも「和訳」と「英訳」の2種類があり、「医薬翻訳」がカバーする範囲は意外と広いです。

したがって、1人の医薬翻訳者がすべてのジャンルに精通し、オールマイティにこなすことは現実的に不可能です。実際、理系出身で優秀な医薬翻訳者ほど、自分の専門に応じて得意なジャンルに特化している傾向が見られます。このような状況下で、「医薬翻訳」と一括りにして実技試験を実施したり、資格を与えたりすることに意味があるのか疑問が生じて来ます。かと言って、試験や資格を細分化するのは煩雑です。

これらを踏まえると、「医薬翻訳」と一括りにして統一試験を実施する場合には、いずれの翻訳方向についても、医薬翻訳の全ジャンルに共通する基本的な翻訳スキルしかテストできないかもしれません。

こんな統一試験なら実現可能?

基本的な翻訳スキルしか評価できなくても、業界統一の認定試験を実施する意義や価値はあると思います。例えば英訳では、基本的な英文法や医薬英文の書き方のルール(例:punctuation、略語の使い方)さえ身に付いていない医薬翻訳者が多いので、どの医薬分野の英訳にも最低限必要な知識をテストして担保するだけでも、翻訳スキルの客観的指標が欲しい翻訳依頼者にとって、そして医薬翻訳者のプロ意識・信頼性の向上や「専門職化」にとって有益かもしれません。

欧米でも、例えば米国メディカルライター協会(AMWA)のメディカルライティング認定試験(MWC)や、生命科学論文のエディティング認定試験(BELS exam)は、いずれも各分野共通の基礎知識中心に出題されており、マークシート方式で実施されています。ライティングやエディティングのスキルを調べる実技試験ではありません。

医薬分野の全ジャンルに共通する基本的な翻訳知識をテストするだけであれば、出題者や審査員を務められる翻訳者の範囲が広がり、統一試験の実施可能性や持続性が向上するという利点もあります。

したがって、医薬翻訳の統一試験としては、手始めに医薬分野の基本的な翻訳知識に関するマークシート方式の筆記試験を実施するのが良いかもしれません。その後、必要に応じてレベル別の実技試験を順次追加していけば良いのではないでしょうか。

新たに統一試験制度を創設するのが難しいようであれば、医薬分野の既存の英語検定試験(例:日本医学英語教育学会の医学英語検定試験、日本CRO協会の治験実務英語検定)を、医薬翻訳レベルの指標の1つとして活用する方法もあると思います。

まとめ

医薬翻訳者のすそ野が大幅に広がり、「医薬翻訳」という翻訳ジャンルが十分確立した現在、次の段階として、翻訳の質を担保する業界統一認定試験制度を導入・確立して、医薬翻訳の「専門職化」に進む必要があるのではないかと思います。

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多数のご参加ありがとうございました)

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AMWA総会参加ガイド2:自費参加者必見!航空券・ホテル代ゼロで参加する方法

前回、米国メディカルライター協会(AMWA)年次総会の参加ガイドを本ブログに掲載したところ、予想以上に好評で大変嬉しく思っています。過去の参加者の方々からは「こういう情報が欲しかった」「もっと早く知っていれば・・・」などの感想を頂きました。また、今年の総会に最近申し込んだ方によるとconference hotelがすでに満室で、「クリノスのブログどおり、まずホテルを予約すべきだった」とおっしゃっていました。総会参加申込のキャンセル期限が近づくとconference hotelの予約キャンセルが出ることもあるので、諦めずにconference hotelの予約サイトを時々チェックしてみて下さい。

前置きが長くなりましたが、ご好評にお応えしてAMWA年次総会参加ガイドの続編を掲載します。第2弾は、自費で参加する方のための「参加費用削減法」です。ここ数年、フリーランスの医薬翻訳者・メディカルライターで総会に参加される方が毎年1~数人いますし、企業に属していても自費で参加される方もいますので、出来るだけお金を掛けずに参加する方法を私自身の経験に基づいてご紹介します。

AMWA年次総会の参加に必要な費用の主な内訳は総会参加費渡航費宿泊費の3つです。これらをいかに減らすかが鍵になるので、この3つを中心に説明します。

1. 総会参加費
総会参加費(conference registration fee)をゼロにする方法は1つだけあります。それはワークショップの講師になることです。講師はボランティアなので、AMWAから講演料などは支払われませんが、総会参加費が免除になるそうです。しかし、この方法は私達日本人にはハードルが高いので、利用できる人は極めてまれでしょう。

その一方で、総会参加費を削減する方法が今年初めて出来ました。それは「早期割引料金」です。6月末までに申し込むと100ドル割引になりました。来年以降も早期割引料金が設定されるかわかりませんが、早期割引を利用すれば総会参加費を若干削減できます。さらに、円高のタイミングを狙えば一層の削減が可能なので、申込受付開始後は為替レートを毎日チェックすると良いでしょう。

総会参加費は全日程参加以外に1日のみの参加費も通例設定されますが、ワークショップは1回の総会当たり4つまで申し込めるので、certificateの取得を目指すなら全日程参加するほうがお得だと思います。

なお、ワークショップに参加するには、総会参加費以外にワークショップ参加費(workshop registration fee)が必要になります。ワークショップ1つ当たりの参加費(2016年は200ドル)が総会参加費に加算されるので、申し込むワークショップの数が多ければ、それだけ費用が増えます。残念ながら今のところワークショップ参加費を減らす方法はありません

2. 渡航費

航空会社のマイレージ・プログラムの会員になってマイルを貯め、無料往復航空券を取得すれば渡航費をゼロにできます。飛行機に乗らずに効率良くマイルを貯めるには、航空会社の提携クレジットカードを日常の支払いに多用するのがお薦めです。

 

航空会社とカードの選び方、カード申込のタイミング、カード年会費削減の裏技、効果的なカード利用法などについては、ネット上にたくさん情報があるので、いろいろ調べて、自分の好みやライフスタイルなどに合う方法でマイルを貯めると良いでしょう。

3. 宿泊費

(1)ホテルのポイント利用
渡航費の削減方法同様に、外資系大手ホテルチェーンの会員になってポイントを貯めて、無料宿泊特典を利用すれば宿泊費をゼロにできます。ポイントが足りなくて全日程を無料にできなくても、1泊からポイント利用が可能なので、宿泊費を削減することはできます。宿泊時に提携航空会社のマイルも、ポイントと一緒にもらえるホテルチェーンもあり、航空会社のマイルも貯めたい方にとっては「一石二鳥」です。

ちなみにAMWAのconference hotelはシェラトン、ハイアット、ヒルトンのどれか1つ、または2つが指定されることが多いので、スターウッド、ハイアット、ヒルトンのいずれかまたは複数の会員になると良いと思います。

たとえこれら3系列からconference hotelが指定されなくても、年次総会が開催されるような比較的大きな都市では会場近くにいずれかの系列のホテルがあることが多いので、自分がポイントを貯めている系列のホテルにポイント利用で泊まって宿泊費を削減・無料化できます。例えば2015年のconference hotelはハイアットでしたが、私は主にヒルトンのポイントを貯めているので、1ブロック隣のヒルトンに泊まってポイントを利用しました。

AMWAのサイトでは、今後数年間の年次総会の開催日・開催地・conference hotelが発表されているので、予定を確認しながら戦略を立てると良いでしょう。<http://www.amwa.org/future_meetings>

ホテルに泊まらずにポイントを貯めるには、航空会社のマイルの貯め方と同様に、ホテルの提携クレジットカードを利用するのがお薦めです。ホテルチェーンとカードの選び方や、効果的なカード利用法など詳しいことはネットでお調べ下さい。

(2)ルームシェア
他の参加者と一緒に泊まるのも宿泊費削減法の1つです。アメリカのホテルの料金設定は「1人当たり」ではなく「1室当たり」なので、2人で同じ部屋に泊まれば宿泊費が半額になります。

私はフリーランス時代に、友人のフリーランス医薬通訳・翻訳者と毎回一緒に泊まっていましたが、どこのconference hotelでもチェックアウト時に宿泊費を割り勘にしてもらい、各々のクレジットカードで半額ずつ支払い、1人ずつ領収書を発行してもらうことは可能でした。気が合いそうな自費参加者がいたら、思い切って誘って一緒に泊まってみましょう。寝起きを共にすることで、有益な業界情報や深い友情など、嬉しい「おまけ」も得られるかもしれません。

4. その他
フリーランス・個人事業主の場合は節税のために、上記3つの費用以外の出費についても「領収書」を必ずもらっておくことをお薦めします。

例えば現地の空港・ホテル間の移動費用(例:シャトルバスやタクシーの乗車代)は「交通費」として経費に計上できるので、料金の支払い時に領収書をもらっておきましょう。

また、現地では1人での食事は出来るだけ避け、(たとえファストフードでも)他の参加者らと一緒に食べて領収書をもらっておきましょう。仕事の関係者(同業者やクライアントなど)との会食代は「接待交際費」か「会議費」として経費に計上できます。

現金で支払ったドル建ての領収書は、支払日の為替レートで日本円に換算すれば経費処理が可能です。カード払いの場合は必ずカード伝票をもらい、後日届くカード利用明細書で日本円に換算されている金額で処理し、カード利用明細書も証拠として保存しておきます。

このような工夫をすれば、多少なりとも節税が可能です。経費計上の可否や処理方法など詳しいことは税理士にご確認下さい。

 

ここまでしてAMWA年次総会に参加したいという方はまれかもしれませんが、経済的な理由で参加を諦めている方の背中を少しでも押したくて、私のAMWA経費削減法を公開しました。

特に、有望な若手メディカルライター・医薬翻訳者の方に1人でも多くAMWAで学んで頂き、今後のメディカルライティング業界や医薬翻訳業界を牽引して頂きたいと願っています。日本からのAMWA参加者は年齢が高めですが、「先行投資」は早いほうが、投資したお金と時間と労力を回収しやすいですから、「いつかAMWAに行ってみたい!」と考えている若手の方には、本ブログを参考に1日も早くAMWA年次総会参加を実現して頂ければ幸いです。

「内山先生は元お医者さんでお金持ちだから、頻繁にAMWAに行ける」とよく誤解されますが、大学病院の月給は手取り8万円弱でしたし、医薬翻訳は儲かる仕事ではないので、全然お金持ちではありません。上記の経費削減法を今も実行しながら、どうにかAMWAでの勉強を続けています。「Where there is a will, there is a way.」(為せば成る)です。本気でやりたいことは諦めず、「強い意志」と「賢い知恵」を持って実現・継続させましょう!

 

【まとめ】

  • 総会参加費は、現時点では早期割引を利用する以外に削減法なし。
  • 渡航費と宿泊費は、航空会社のマイルやホテルのポイントを利用すれば無料化や削減が可能。両方ゼロにすれば、総会参加費のみでの年次総会参加が可能
  • フリーランスの場合、現地での支払い時に領収書をもらい、経費に計上すれば節税可能。

参考ページ
AMWA年次総会参加ガイド1:申込~出発後の注意点10個 【初参加でも安心】

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AMWA総会参加ガイド1:申込~出発後の注意点10個 【初参加でも安心】

今年も米国メディカルライター協会(AMWA)年次総会に参加するか否かが話題に上る時期になり、知り合いのメディカルライター数人がすでに「申し込んだ」とおっしゃっていました。私も申し込みましたが、毎年、初参加の方から申込・参加の注意点やコツを聞かれるので、AMWA年次総会の参加に関するアドバイスを、3段階(参加申込、出発前の準備、出発後)に分けて以下にまとめました。年次総会の基本情報はAMWAホームページの「Annual Conference」サイトをご覧下さい。

【参加申込】

1. まず宿の確保

年次総会の参加申込の前に、まずホテルを予約することをお薦めします。毎年、年次総会の会場として利用されるホテル、もしくは会場となるコンベンションセンターに隣接するホテルが「conference hotel」として指定され、AMWA参加者は割引料金で泊まれます。このホテルに泊まるのが便利ですし、日本人参加者の多くが泊まっていて安心です。

しかし、AMWAが確保している部屋数は限られているので、予約が一杯になってしまうことがしばしばあります。その場合、会場周辺の別のホテルも「conference hotel」として追加指定されることがありますが、会場から徒歩数分~10分ほど離れていることもあります。

また、追加の「conference hotel」が用意されない年もあり、その場合は自分でホテルを探すことになります。しかし、ビジネスシティの秋は大きなイベントや学会などの開催が多いので、AMWA年次総会開催間近にホテルを予約しようとしても、会場周辺は軒並み満室だったり、宿泊料が高騰していたりすることが多いです。

ホテルの予約変更・キャンセルはチェックインの1~7日前まで無料で可能な場合が多いので、AMWA年次総会に参加する可能性が出て来たら、とりあえず「conference hotel」の部屋を予約しておくと安心でしょう。予約の時点で宿泊日数が決まっていない場合は、念のため長めに予約しておき、必要に応じて後日調整するのが得策です。

2. ワークショップの申込は早めに
長年定番のワークショップや有名講師のワークショップは人気が高く、早々に申し込みが定員に達して、受付が締め切られることも珍しくありません。お目当てのワークショップがある場合は早めに申し込むと良いでしょう。受付状況はAMWAサイトの年次総会申込ページで確認できます。

3. Golden Apple賞を受賞した講師がお薦め

どのワークショップを選べば良いか迷ったら、教え方が上手な講師のワークショップを選ぶのも1つの手です。その際に参考になるのが、「Golden Apple賞」(Golden Apple Award)の受賞の有無です。「Golden Apple賞」とは、各ワークショップの受講者全員を対象に毎年行われるアンケート調査の結果、高い評価を長年得ている講師に与えられる賞で、授与される講師は毎年1人だけです。日本でも有名なTom Lang氏らが過去に受賞しています。

年次総会の申込プログラム(registration brochure)やワークショップのリストを見て、講師名に金色のリンゴのマークが付いていたら、その講師は「Golden Apple賞」を受賞しています。プログラムやリストにマークが表示されていない年もあるので、その場合はAMWAホームページのこちらで過去の受賞者をご確認下さい。

【出発前の準備】

1. ワークショップ事前課題提出後の確認

ワークショップには必ず事前課題(assignment/homework)があります。certificate取得に必要な単位を取得するには、事前課題の解答を締切までに提出しなければなりません。メールで講師に提出するのが通例ですが、先方のサーバーにブロックされてメールが戻って来たり、迷惑メールのフォルダに振り分けられて講師が気付かなかったりすることがあります。念のため、事前課題の解答提出時に講師に受領確認の返信を要請すると良いでしょう。

通例、数日以内に講師から返信が来ますが、返信がない場合は講師に再度メールを送ってみましょう。それでも返信がない場合は、AMWA事務局にメールで問い合わせることをお薦めします。AMWA事務局は、アメリカでは珍しく対応が速くて親切なので、わからないことやトラブルなどがあった場合は事務局に問い合わせてみて下さい。いずれにしても、ワークショップの単位を取得できないと勿体ないですから、メールなどのトラブルに備えて早めに事前課題の解答を提出するのが無難でしょう。

2. ワークショップ配布資料の受領
AMWAの経費削減のためか、ワークショップの配布資料(handout)が会場で提供されないことが多くなりました。通例、年次総会の数日前に、指定のサイトからダウンロードするよう指示が書かれたメールが届くので、メールを見逃して配布資料の準備を忘れないよう気を付けましょう。日本を発つ前に印刷して持って行けば、宿泊先や会場で慌てなくて済みます。なお、ワークショップにラップトップやタブレットなどを持ち込む場合は、配布資料を印刷せずに電子媒体で持参・参照することも可能です。

3. 英語の自己紹介
ワークショップやmeal event、ホテルなどで外国人参加者らに自己紹介しなければならない機会が結構あるので、予め英語で自己紹介を考えて、スラスラ言えるように練習しておくと安心です。名前と職種を2~3文で簡潔に説明できると良いでしょう。例えば「I’m Taro Suzuki from Japan. I do regulatory writing at a pharmaceutical company in Tokyo.」や、「I’m Hanako Sato from Japan. I’m a freelance medical translator.」のような感じです。名刺をたくさん持って行くこともお忘れなく!

4. 服装

年次総会のドレスコードは「ビジネスカジュアル(スマートカジュアル)」なので、服装がラフになり過ぎないように気を付けましょう。

また、開催地・開催時期を問わず、会場は寒いことが多いので暖かい服装を持って行くことをお薦めします。ちなみに私はスカートでは足が冷えるので、いつもパンツスーツで出席しています。それでも会場は寒くて、ボトムの下にタイツを履いたり、ストールを膝掛けにしたり、ジャケットの下にカーディガンやセーターを着たりします。他の日本人参加者も薄手のダウンジャケットやカイロを持参するなど、会場の防寒対策をしている方が多いです(特に女性)。せっかく年次総会に参加しても寒くて講義に集中できないと勿体ないですから、温度調節しやすい服装をご準備下さい。

【出発後】

1. アメリカ国内の時差に注意

アメリカ本土には4つの時間帯がある上に、時期や州によっては「夏時間」が採用されているので、日本からAMWA開催地に直行しない場合は経由地の時間帯や、経由地と開催地との時差、「夏時間」の有無に注意が必要です。「夏時間」は11月上旬に終わるので、年次総会が11月上旬に開催される場合は「夏時間」の終了日にも要注意です。時間を間違えて、飛行機の経由地で乗継便に乗り遅れたり、開催地で初日の基調講演やワークショップなどに遅れたりする日本人参加者が時々いらっしゃいます。ワークショップは遅刻すると入室できず単位を貰えないので、開催地に着いたら現地時刻を必ず確認しましょう

2. オリエンテーション
例年、会期初日か2日目に、初参加者を対象にオリエンテーション(無料)が開催されるので、事前にプログラムで日時を確認して参加することをお薦めします。

3. Meal event

会期中にレセプションやSablack luncheon/dinnerなどの「meal event」が開催され、追加料金なしで参加できるeventが年々増えています。日本人参加者で集まって同じテーブルを囲むことが多いので、英会話に自信のない方も怖がらずに参加して、各イベント会場で日本人参加者を探してみて下さい。

また、AMWAのmeal eventとは別に、日本人参加者のみで独自に「食事会」が開催されて親睦を図っています。通例、常連の参加者が幹事となり、金曜または土曜の夜に開催されています。AMWA開催地に到着してから幹事が日時とお店を決めて、メールで他の参加者に知らせることが多いので、事前に常連参加者にAMWA参加の旨とメールアドレスを伝えておくか、AMWA会場で日本人参加者を見つけて尋ねると良いでしょう。

日本人参加者については、AMWA開催数日前に事務局から送られてくるメールのリンク先にある「Attendee list」(参加者名簿)で確認できます。日本からの参加人数は毎年十数名です。会期中はワークショップの休憩時間(beverage break)などに、無料の飲み物が用意されている部屋(hospitality roomやresource hallなど)に行くと、日本人参加者に会える確率が高いです。多くの日本人が1人参加のため、「食事会」以外でも数人で昼食や夕食に出掛けたりすることが多いので、AMWA初参加で心細い方は早めに日本人参加者を見つけて、積極的に声を掛けると良いでしょう。

【その他】

海外出張・旅行に慣れていない方や初めて渡米される方は、アメリカ旅行時の基本的な注意事項を旅行ガイドブックなどでご確認下さい。また、同僚やお知り合いに過去のAMWA参加者がいらっしゃる場合は、移動時の注意点やAMWAの様子などをお聞きになってみて下さい。

以上、初めてのAMWA参加でも実り多い経験ができるよう、少しでもお役に立てば幸いです。ご質問や追加事項などありましたら、コメント欄にお書き頂くか、お問い合わせフォームからご連絡下さい。

AMWA年次総会参加ガイド第2弾では、自費で参加する方のために、出来るだけお金を掛けずに参加する方法を紹介します。

次回
AMWA年次総会参加ガイド2:自費参加者必見!航空券・ホテル代ゼロで参加する方法

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速くて楽な語彙力強化法:医薬用語の接頭語と接尾語を知ろう!

6月10日に弊社主催で「がん臨床試験のための腫瘍学入門セミナー:知っておくべき、がんの常識と日英専門用語」を都内で開催しました。当日は多くの方にご参加頂き、お陰様で盛況のうちに終了することができました。ご来場下さった方々には改めて御礼申し上げます。

セミナー終了後にアンケート調査を実施した結果、「本セミナーで最も有益だった内容は?」という設問に対して一番多かった回答は、意外にも「分子標的薬の一般名の命名法」でした。

抗がん剤の接尾語

皆様の中にも命名法をご存知ない方がいるかもしれませんので、少しだけご紹介しましょう。例えば分子標的薬が何らかの阻害剤(例:チロシンキナーゼ阻害剤)の場合は、「△△ニブ(-nib)」と名付けます(例:ゲフィチニブ)。「-nib」は「inhibitor」の略です。一方、「抗体医薬」の場合は「△△マブ(-mab)」と名付けます(例:リツキシマブ)。「-mab」は「monoclonal antibody」(モノクローナル抗体)の略です。したがって、一般名の語尾を見れば、分子標的薬の種類がわかります。

他に、薬剤が標的とする物質や、由来する動物種にも基づいて一般名を命名しますので、分子標的薬の命名法を知っていると、一般名を見るだけで薬剤の基本情報がある程度わかります。詳しい命名法は、WHOの抗体医薬命名法の指針(英文)などをご覧下さい。

分子標的薬以外の抗がん剤の一般名も、白金製剤は「プラチナ」にちなんで「△△プラチン」(-platin)と命名することや(例:シスプラチン)、抗がん性抗生物質は「△△マイシン」(-mycin)が多いこと(例:ブレオマイシン)などを知っていれば、一般名を見るだけで薬剤クラスがわかります。抗がん剤以外でも、一般名に「法則性」が見られる薬剤が多数あります。

心電図の接頭語と接尾語

医学用語も、よく使われる「接頭語」(prefix)と「接尾語」(suffix)を知っていれば、初めて見る難しい専門用語でも、辞書を引かずに意味を推測できることが多々あります。

例えば「electrocardiography」という単語を見てみましょう。接頭語「electro-」は「電気の」という意味で、「cardio-」は「心臓の」という意味、そして接尾語「-graphy」は「検査(法)」という意味なので、これらを組み合わせて「心電図検査」という意味だとわかります。

 

この単語の接尾語が「-gram」に変わると、どのような意味になるでしょうか。「-gram」は「検査した結果、検査の記録」を表しますので、「electrocardiogram」は、波形が書いてある「心電図記録」という意味になります。また、接尾語「-graph」は「検査の装置」を指すので、「electrocardiograph」は「心電(図)計」の意味になります。臨床研究や治験で心電図が使われることが多いですが、略語「ECG」をフルスペルで書く際は、意図する意味に応じて語尾を変えて、誤訳を防ぎましょう

「心電図」の接頭語と接尾語の知識は「脳波」(EEG)にも応用できます。接頭語「encephalo-」は「脳」を表すので、「electroencephalography」は「脳波検査」、「electroencephalogram」は「脳波(記録)」、「electroencephalograph」は「脳波計」だとわかります。逆に「脳波検査」を英語で書きたい場合は、「electro-」と「encephalo-」と「-graphy」を組み合わせて書けばOKです。

接頭語と接尾語を知るメリット

このように医薬用語の接頭語と接尾語を知ると、難しい専門用語を1つずつ丸暗記しなくてもボキャブラリーを強化できますまた、医薬分野の英文を読む際も書く際も、辞書を引く手間を省けてスピードアップできます。拙著『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』シリーズI改訂版には、医薬分野の代表的な接頭語と接尾語のリストを載せていますので、ご活用頂ければ幸いです。

何事も「ルール」や「法則性」を知ると、理解や記憶・習得の省力化が図れて、楽に速く上達できます。メディカルライティングや医薬翻訳では、薬剤の命名法や医薬用語の接頭語・接尾語などの「法則性」を知って、効率良くスキルと作業スピードを向上させましょう!

追記:ピコ太郎のヒット曲「PPAP」は、医薬用語の接頭語と接尾語を覚えるのに使えます。例えば「♪I have “erythro-“ (=赤い).  I have “-cyte” (=細胞).  Ahhh, erythrocyte! (=赤血球)」のような感じで、様々な組み合わせで替え歌を作って医薬用語を楽しく覚えましょう!

推薦図書:
『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』シリーズI改訂版
146~153頁「医薬用語の接頭語と接尾語」一覧表

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「hip」はお尻じゃない!(裏取りの重要性)

ご存知の方も多いと思いますが、世界的に有名なロック・ミュージシャンのプリンスさんが4月21日に57歳の若さで他界しました。死因については依然として警察が調査中ですが、鎮痛剤の過剰摂取が疑われています。

海外の報道によると、プリンスさんは「hip surgery」の既往があり、「hip pain」に長年悩まされていたため鎮痛剤を使用していたと、関係者が語っているそうです。日本では、この「hip surgery」と「hip pain」が、各々「腰の手術」「腰痛」と訳されている新聞記事やウェブサイトが散見されますが、いずれも誤訳だということに皆さんはお気づきでしょうか?これは医薬翻訳でよくある誤訳の1つなので(例:骨粗鬆症治療薬に関する治験文書中の「hip」)、本ブログで取り上げたいと思います。

 

「hip」はどこを指す?

まず、お手持ちの英和辞典や英英辞典、医学辞典で「hip」を引いてみて下さい。試しに、日本で一番大きな英和辞典『ランダムハウス英和大辞典』第2版(小学館)で「hip」を引くと、最初に「1. 臀部、ヒップ(日本語の「尻」と違って大腿上部から胴のくびれにかけての側面の隆起の一方)、腰;腰回り(の寸法)」と書かれています。若干わかりにくい説明文ですが、日本語の「お尻」や「ヒップ」と同じ意味ではなさそうだということはわかると思います。続いて2番目の意味を見ると「2.(=hip joint)」と書かれています。そこで「hip joint」を引くと「股関節」と書かれています。そうです!「hip」は「お尻」ではなく「股関節」なのです。

したがって、プリンスさんが長年傷めていたのは「腰」ではなく「股関節」だったのです。「hip surgery」を「hip replacement」(=人工股関節置換術)と具体的に記載している海外の報道もありますので、「hip」は「股関節」で間違いないでしょう。「腰」と「股関節」では、部位がだいぶ違いますね。このような誤訳はプリンスさんの記事では大きな影響はないかもしれませんが、医学論文や製薬関連文書などで身体の部位を訳し間違えると、最悪の場合は患者や被験者の命に関わりますから、翻訳時には細心の注意が必要です

意外に多い?!英語の「勘違い」と「思い込み」

今回取り上げた「hip」のように日本語で使われているのとは違う意味の英単語や、言葉の意味や使い方に関して間違った「思い込み」や「勘違い」をしていることが意外に多くあります。

例えば、拙著『薬事・申請における英文メディカル・ライティング入門』第4巻でご紹介しているように、形容詞「different」「similar」や動詞「compare」に、「between X and Y」というパターンを併用する日本人が非常に多いですが、これらの形容詞や動詞に「between X and Y」を使うのは間違いです。正しい構文と前置詞は「X is different from Y」、「X is similar to Y」、「X is compared with Y」です。お手持ちの英和辞典や英英辞典で文例を確認してみて下さい。「お尻」を指す英語の解剖学的名称も、この機会に調べてみて下さい。

ライティング・翻訳では「裏取り」の手間を惜しまない

メディカルライターも医薬翻訳者も、情報を正しく伝えること」が最大の使命ですから、言語の種類を問わず、ライティングでも翻訳でも校閲でも、自分のボキャブラリーや知識を過信せず、確認の手間を惜しまずに丹念に下調べや「裏取り」(=裏付けを取ること)をすることが欠かせません。そのことを、プリンスさんの死亡記事を読みながら改めて痛感しました。

皆さんの中には「何も見ずにスラスラ書ける・訳せるのが理想的」、「ベテランの翻訳者は何も見なくても訳せる」などと思っていたり、「いつまで経っても、英文を書く時や翻訳する時に調べ物に時間を取られてしまう」などと悩んでいたりする方がいらっしゃるかもしれません。しかし、私が知る限り、ライティングや翻訳が上手な人ほど、綿密にリサーチ(下調べや裏取り)していて、初心者ほど「怖いもの知らず」で何も調べずに書いたり訳したりする傾向が見られます。裏を返せば、綿密なリサーチを繰り返しているからこそ、正確なライティングや翻訳が可能になり、上手なライターや翻訳者になれるのかもしれません。

このことを裏付ける興味深いデータがあります。季刊誌『通訳・翻訳ジャーナル』(イカロス出版)2016年春号で、翻訳歴が平均約10年の日本人翻訳者68名(分野は問わない)を対象に実施したアンケート調査の結果、翻訳の作業時間のうちリサーチに費やす時間が「半分以上」という回答者が約6割を占めていました。調査のサンプルサイズが小さいですが、やはりベテラン翻訳者の多くは丹念なリサーチを行っている傾向が窺えます。

また、ベストセラー小説『ダ・ヴィンチ・コード』を日本語に訳した文芸翻訳家・越前俊弥氏は、翻訳者の3条件の1つに「調べ物が好き」を挙げています。これは翻訳者だけでなく、「書くこと」を生業とする人々全員に共通の必須条件だと思います。

昨今はネットで手軽にリサーチができますし、その分、調べ物の要求レベルが上がっています。メディカルライターや医薬翻訳者の方は、たとえ医学書などの参考書を持っていなくても、少なくとも辞書とネットで単語の意味や用法をこまめに確認する習慣を身に着けましょう。調べ物は面白いですし、探していた情報や表現を見つけて疑問点を解決できた時のスッキリ感や達成感は格別です!

「裏取り」の時間を確保しよう!

ライティングや翻訳の「スピード」だけでなく「品質」も重要な場合に、締切までの期間が短すぎてリサーチの時間が十分取れないと予想されたら、ライターや翻訳者の方は勇気を出して上司やクライアントに締切の延長を相談してみて下さい。また、日頃から参考書を集めたり、ネットの検索方法を工夫したり、有用なサイトをブラウザに登録しておいたりして、リサーチのスキルを磨いておきましょう。

一方、上司やクライアントの方は、リサーチも考慮して、十分な作業時間を部下や外注先に提供するよう心掛けてみて下さい。一般に、作業期間が短いほどライティングや翻訳の品質は下がります。「速かろう悪かろう」です。文書の品質向上にはリサーチの時間も必要だということを認識しましょう。

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がんの基礎知識を学ぶ3つのメリット

がん領域の研究・開発が盛んな昨今、製薬企業・CROから英文メディカルライティングの研修や講演をお引き受けすると、「抗がん剤の治験総括報告書やプロトコルを取り上げてほしい」「がんに関する英語表現を教えてほしい」など、がん領域の英語学習のご要望を頂くことが増えています。

しかし、英語表現を学ぶ前に、そもそもがんの基本的な事柄さえ十分知らない・理解していない受講者が多いことに驚きます。例えば和文英訳の演習で「進行がん」を「progressive cancer」と誤訳する受講者が意外に多いのですが、「進行がん」の意味を正しく理解していれば、「進行性の」という意味の形容詞「progressive」を使うことはおかしいと気付くはずです(ネットでも簡単に調べられる専門用語の定訳を確認していないことも問題ですが・・・)。残念ながら、「腫瘍学」(オンコロジー)の基礎を体系的に習った経験があるメディカルライター・翻訳者は少ないようです。

ライティングでも翻訳でも、言語の種類を問わず、文書の内容を正確かつ十分に理解できなければ、内容を他者に正しく伝えることは難しく、重大な記述ミスや誤訳を犯すリスクが高くなります。だからこそ、メディカルライターや医薬翻訳者には医薬分野の専門知識が求められるのです。

また、にわか仕込みの断片的な知識のままでは、がんに関する最新の知見も十分に理解できず、がん関連文書の内容に今後ますます付いていけなくなります。キャリアアップを目指すなら、がんの専門知識を増やすことも考えると良いかもしれません。

そこで、がんの基本的な事柄をよく知らない方は、腫瘍学の基礎を学んでみてはいかがでしょうか。中級レベルで知識が断片的あるいは中途半端な方は、一度基本に戻って体系的に学び直すと、知識が整理されて利用・応用しやすくなると思います。

基礎を学ぶ3つのメリット

様々な疾患の中でも、がんの場合は基礎を学ぶメリットが3つもあります。

【メリット1】
がんには胃がんや乳がん、白血病など様々な種類がありますが、がんの基本的な概念・用語・診断・治療などは多くのがんに共通するので、腫瘍学の基礎を学ぶと様々ながんが一気に理解しやすくなります。他の疾患(例:高血圧、骨粗鬆症)について勉強した場合、その知識はその疾患の理解にしか役立たないことが多いので、他の疾患に比べてがんの基礎知識は「汎用性」が高いと言えます。

【メリット2】
がん領域の研究・開発は、がん患者の増加に伴って今後も活発な状況が続くと予想されるので、腫瘍学の基礎知識は長期に渡り頻繁に業務上役立つ可能性が高いと考えられます。実際、筆者が医学部で学んだ基礎知識は、数十年経った今でも大変役立っています。これら2つの特徴は他の疾患の学習にはないメリットだと思います。

【メリット3】
今や日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなると言われるほど、がんは身近な病気ですから、がんの基礎知識はプライベートでも役に立ちます。がんの病態を正しく理解すれば、がんを闇雲に恐れることなく、適切な予防や早期発見に努めて発症・進行に備えることができます。また、どのように対処すべきか少しでも知っておけば、万が一発症してもパニックや落ち込みを軽減できるでしょうし、適切な治療を選びやすくなります。自分自身のためだけでなく、大切な家族や友人のためにも、健康の「常識」として腫瘍学の基礎を学んでおいて損はありません!

このように、腫瘍学の基礎学習には公私ともに大きなメリットがあります。

文系出身者にもお薦め!

文系出身の医薬翻訳者やメディカルライターで、「少しでも医学知識を身に着けたいけど、医学分野は広すぎて、何から勉強すればいいかわからない・・・」とお悩みの方にも、腫瘍学の基礎学習はお薦めです。その理由は主に3つあります。

1. がんは身近な病気なので、腫瘍学は取っ付きやすい
2. がん領域は一般向けのわかりやすい本やセミナーなどが多く、勉強しやすい
3. 前述の3つのメリットから考えて学習の費用対効果も時間対効果も高い

これらの理由より、医学分野の中では腫瘍学から学び始めるのが得策だと考えられるので、筆者は医薬翻訳者やメディカルライターの方々から医学分野の学習方法について相談を受けると、いつも「腫瘍学」を真っ先にお薦めしています。医学知識のない方は、医学への入り口として腫瘍学から勉強を始めてみてはいかがでしょう?

腫瘍学の基礎(総論)を理解できたら、肺がんや大腸がんなど特定のがん(各論)の勉強に進んだり、腫瘍学を構成する分野(例:遺伝学、薬理学、臨床検査、外科)の勉強を深めたりすれば、がんの理解に必要な医学知識をさらに増やせるでしょう。

まとめ
腫瘍学の基礎知識は・・・

  • 他の疾患に比べて汎用性が高い
  • 長期間、頻繁にメディカルライティング・医薬翻訳に役立つ可能性が高い
  • 健康の「常識」としてプライベートでも役立つ

腫瘍学は・・・

  • 身近で取っつきやすい
  • 一般向けの本なども多くて勉強しやすい
  • 学習効果が高い

<「がんの基礎知識を学びたい!」と思った方へ>
「がん臨床試験のための腫瘍学入門」セミナー
~知っておくべき、がんの常識と日英専門用語~
2016年6月10日(金) TKP市ヶ谷カンファレンスセンター(東京都新宿区)
詳細・お申込はこちら⇒http://www.clinos.com/seminar/580/
(追記:本セミナーは盛況のうちに終了いたしました。多数のご参加ありがとうございました)

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英文ピリオド後のスペースは何個にすべき?

英語の文章を書く際、各文章の最後にピリオドを打ちますが、その後のスペース(sentence spacing)は何個入れていますか?1個ですか?それとも2個ですか?文書内でスペースの数を統一する必要があるので、長い文書を複数の人で分担してライティング・英訳や校閲などを行う際は、文末ピリオド後のスペースの数を予め決めておかなければなりません。さあ、何個にしましょう?

 

論文ではスペース1個

論文では、誌面の広さや印刷費用などの都合上、掲載の分量が限られているので、文末ピリオド後のスペースは1個のみの場合が多いですが、必ず投稿規定で確認しましょう。

ちなみに、世界的医学誌『JAMA』の論文投稿規定である『AMA Manual of Style』に、文末ピリオド後のスペースの数に関する規定はありません。このように投稿規定に記載されていない場合は、投稿先の学術誌に実際に掲載されている論文を見て確認します。投稿先が未定または不明の論文では、とりあえずスペース1個にしておくのが無難でしょう。

その他の英語文書では、指定のスタイルガイド(例:社内スタイルガイド)に従います。スタイルガイドに規定がない場合は、担当者などに確認しましょう。

これから決めるなら2個がおススメ!

これからスタイルガイドなどで決めるという場合、筆者はスペースを2個入れることをお薦めします。なぜなら、1個より2個のほうが「文章の区切り」がわかりやすいからです。特に、何か特定の情報を探したい場合や速読する場合に、スペースが2個入っていると「文章の区切り」が一目でわかり、情報を探しやすくなったり、速く読みやすくなったりします。このようなお薦めは拙著『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I巻改訂版にも書いています。

スペース2個に対する反対意見

「英語のネイティブスピーカーから『文末ピリオドの後にスペースを2個入れるのは、タイプライターで英文を書いていた時代の習慣。単語と単語の間隔を自動的に調整してくれるコンピュータで英文を書く現代は、スペース1個でよい』と言われた。2個入れるスタイルは古いのではないか」、「一般英語のスタイルガイド『Chicago Manual of Style』ではスペース1個に規定されている」などのご指摘を時々頂きます。

おっしゃるとおり、「スペースは1個」と規定している英文スタイルガイドも数多く存在しますし、英語ネイティブのメディカルライターや医薬翻訳者に尋ねると、大抵「スペースは1個で十分」と言われます。数年前に米国メディカルライター協会(AMWA)の会員専用メーリングリストでも、スペースの数が話題に上ったことがあり、英語ネイティブの会員からは「スペース2個は時代遅れ」や「2個入れるべき理由はない」など、スペース2個に対する反対意見が続出しました。

しかし、スペースを1個にするか2個にするかは、英語ネイティブの間でも依然として意見が分かれていて、よく議論の的になっています。試しに「sentence spacing」のキーワードでネット検索すると、数十万件もヒットします。ウィキペディアもありますので、ご興味のある方はご参照下さい(https://en.wikipedia.org/wiki/Sentence_spacing)。

スペース2個のメリット

スペースを2個入れるスタイルを批判する英語ネイティブが多いにも関わらず、筆者はなぜスペース2個を推奨し続けているかと言いますと、今や英語文書の読者は英語のネイティブスピーカーだけではないからです。私達日本人のように、母国語がアルファベット表記でない人たちにとっては、スペースが2個入っているほうが「文章の区切り」が断然わかりやすく、英文が読みやすくなります。したがって、非英語ネイティブにもわかりやすい「global English」の観点から考えると、文字による英語の意思疎通を速くスムーズに進めるためには、文末のスペースは1個より2個にするほうがよいと言えます。

このような私見を、前述のAMWA会員専用メーリングリストに投稿したところ、スペース2個に対する批判がぴたりと止まりました。また、「アジア言語の人たちの視点で考えたことがなかった。有益なコメントをありがとう」と感謝の言葉を寄せてくれたネイティブ会員もいました。

スペースを2個入れるメリットは、アルファベットを使っている欧米人には気付きにくいので、批判や反対をする英語ネイティブがいたら理由を説明して、global English」の観点から英文を書くことを薦めてあげて下さい。その上で、業務上関係するネイティブらともよく相談して、文末のスペースの数を決めるとよいでしょう

【まとめ】
英文の最後に打つピリオドの後のスペースの数
・論文では通例1個
・その他では2個がおススメ!非英語ネイティブには文章の区切りがわかりやすい。

 

 

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著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、フリーランス医学翻訳者に転向。
米国のモントレー国際大学院翻訳修士課程に留学。
1996年より米国メディカルライター協会(AMWA)会員。
有限会社クリノスのメディカルライティング本部長と代表取締役社長を経て、
2017年にクリノス開業。
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』シリーズI~IV巻(2019年完売・絶版)

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英文を速く読む方法

英文メディカルライティングや医薬英訳・英文校閲の上達法の1つとして、「質の高い医学英文の多読」を長年薦めています。(多読の効果的な方法は、拙著『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』第1巻改訂版の114~119頁をご覧下さい。)しかし、多読を始めた方からは「英文を読むのが遅くてたくさん読めない。どうしたらいいか」、「英語表現に集中すると内容の理解が疎かになり、内容に集中すると英語表現に目が行かない。同時に両方できる読み方はないか」などの相談を受けることがあります。また、業務上、海外の文献などを読む機会が多い方からは、「英文を速く読めるようになって仕事の効率を上げたい」という声を時々耳にします。

文章内容の理解と表現の意識を同時に行うのは母国語でも難しいので、外国語では一層難しくなります。まずそのことを理解して、英語で両方を同時に行うことは潔く諦めましょう。私は医薬翻訳を始めて20数年、毎日のように英文の読み書きを行っていますが、英文を読むスピードは依然としてネイティブより遅いです。日本語を読むより遅いですし、日本語より集中力を要します。また、私も英文内容の理解と表現の意識を同時にはできないので、別々に行っています。

例えば、英語文書の概要の把握を目的として速く読む場合は、すべての単語・文章を100%理解しようとするのではなく、英文全体の5~8割程度の意味を理解することを目指しています。具体的な方法としては、まず一語ずつ細かく区切って読むのではなく、「意味のまとまり」(文節)ごとに大きく区切って読みます。例えば「The」、「drug」、「was」、「administered」ではなく、「The drug was administered」と続けて一気に読みます。「at a dose of 100 mg」のようなフレーズも同様にまとめて一気に読みます。

また、英文の重要な構成要素である各段落の「topic sentence」や、各文章の「名詞」(特に主語)と「動詞」に注目して読みます。そして、段落の中央部分(supporting sentence)や文章内の冠詞・前置詞などは読まないか、さらっと読み流す程度にします。つまり、すべての単語や文章を同じスピード・重要度で読むのではなく、英語の文章・段落の構成要素の重要度に応じて強弱をつけて読むことでスピードアップを図っています。一方、英語表現に注目して読む場合は、一語一句しっかり捉える「精読」を行っています。

ここで少し専門的な話しになりますが、前者の読み方を「skimming」と言います。学校の英語教育では習わなかった方が多いかもしれませんが、英文の速読には「skimming」と「scanning」という2つのテクニックがあります。簡単に説明しますと、「skimming」は文書全体をざっと読んで要旨をskimする(=すくい取る)方法で、「scanning」は文書の中からお目当てのキーワードや情報をscanする(=探し出す)方法です。

ネイティブは目的に応じて、これら2つのテクニックを使い分けています。私達日本人も日本語を速く読む際に無意識に読み方を変えていますので、英文を読む際も目的に合わせて「skimming」と「scanning」を使い分けると良いでしょう。この2つのテクニックについては、英語が母国語でない人(ESL: English as a second language)向けの説明や練習方法などがインターネットで多数紹介されているので、詳しく知りたい方は検索してみて下さい。

他にスピードアップの方法としては、頭の中で音読するのをやめたり、返り読み(読み直すこと)をせずに文章の頭から内容を理解したりすることが、昔からよく薦められています。皆さんも「脳内音読」や「返り読み」をしていたら、これらをやめることを心掛けてみて下さい。また、学生時代の「リーディング」の授業のクセで一語ずつ日本語に訳しながら読むと、英文を読む速度が落ちます。訳読をしている方は、英文を英語のまま捉えることも意識すると良いでしょう。

それから、私が医学部に入る前に卒業した短大の英語科では「英文速読」の授業があり、速読専用のテキストを使って、その中の指定された段落や頁を、決められた時間内に読む訓練を繰り返し受けました。皆さんも、精読以外の場合は、予め制限時間を決めてタイマーを設定し(例:論文の抄録は3分)、その時間内でたくさん読むことを繰り返すと、速く読めるようになると思います。これは、仕事などで締め切りがあると「速く仕上げよう」という意識が自然に働いて、集中力やスピードが向上する「締め切り効果」の応用です。タイムリミットを設定すると、前述の「音読」や「返り読み」、「訳読」をする余裕がなくなるので、これらのクセを直しやすいという利点もあります。

しかし、どんな方法で英文速読の訓練を行っても、短期間で劇的にスピードアップするわけではありません。母国語である日本語でも、現在のスピードで読めるようになったのは何歳頃だったか思い出してみて下さい。「斜め読み」や「拾い読み」ができるようになったのは、さらに遅かったのではないでしょうか。毎日1日中使っている日本語でも、速く読めるようになるまでにはかなりの年月を要したはずです。

したがって、日本語と同じ速さで英語を読めるようになるためには長い年月を要すると覚悟して、焦らずに努力を重ねていきましょう。諦めずに多読を続ければ、少しずつでも必ずスピードアップします。語学をマスターするには「習うより慣れよ」です。医薬分野の英文をたくさん読んで慣れながら、速度を上げて行きましょう。

【まとめ】 医薬英文を速く読む5つの方法

  1. 医薬分野の英文を多読して、医薬英語に慣れる
  2. 脳内音読や返り読み、訳読をやめる
  3. 重要度の低い文章や単語は読み流すか読まない
  4. 制限時間を設定する
  5. skimmingとscanningを使い分ける

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英文ライティング用語の日本語訳リスト

『AMA Manual of Style』などの英文スタイルガイドや、米国メディカルライター協会(American Medical Writers Association)の自学教材(self-study module)を利用するメディカルライターや医薬翻訳者が増えています。しかし、英語で書かれたスタイルガイドやメディカルライティング教材などは、当然のことながら文法用語やライティング用語もすべて英語です。そのため、取っ付きにくい上に、これらの用語の意味を英和辞典で1つ1つ調べるのは手間が掛かるので、内容を理解するのに苦労する方が多いようです。

そこで、品詞や時制などの文法用語を中心に、英文ライティングの説明でよく使われる用語を、下記のとおりアルファベット順にリストアップし、その日本語訳を併記しました。品詞を表す英単語の後に記載した「略語」は、辞書などで品詞の略語としてよく使われているものです。英文スタイルガイドなどをお読みになる際に、このリストをぜひご利用下さい。

abbreviation:略語
active voice:能動態
adjective (略語:adj):形容詞
adverb (略語:adv):副詞
article:冠詞
bracket:角括弧
capitalization:(単語の)頭文字を大文字で書くこと
citation:引用、引用文・句・語
clause:節
collective noun:集合名詞
column:(表の縦の)列
complement:補語
compound:複合語
coordinate/coordinating conjunction:等位接続詞
conjunction:接続詞
countable noun:可算名詞
definite article:定冠詞(the)
decimal:小数
decimal point:小数点
digit:(数字の)桁、アラビア数字
enumeration:列挙
figure:図
footnote:脚注
future tense:未来形
gerund:動名詞(-ing形)
heading:見出し
hyphenation:ハイフンで結ぶこと
indefinite article:不定冠詞(a/an)
independent clause:独立節
intransitive verb (略語:vi):自動詞
jargon:(一般人にはわからない)専門用語、業界用語
letter:文字
lowercase (letter):小文字
modifier:修飾語
noun (略語:n):名詞
numeral:数字
object/objective:目的語
ordinal:序数
parallel construction/structure:並列構造
parallelism:並列構造
parenthesis (複数形:parentheses):丸括弧
participle:分詞
passive voice:受動態
past participle:過去分詞
past tense:過去形
perfect tense:完了形
personal pronoun:人称代名詞
phrase:句
plural:複数形(の)
possessive case:所有格
prefix:接頭語、接頭辞
preposition:前置詞
present participle:現在分詞(-ing形)
present tense:現在形
pronoun:代名詞
proper noun:固有名詞
punctuation:句読点
relative pronoun:関係代名詞
row:(表の横並びの)行
singular:単数形(の)
solidus:スラッシュ
subheading:小見出し
subject:主語
subordinate/subordinating clause:従属節
subordinate/subordinating conjunction:従属接続詞
subscript:下付き文字
suffix:接尾語、接尾辞
superscript:上付き文字
symbol:記号
table:表
tense:時制
text:本文
transitive verb (略語:vt):他動詞
uncountable noun:不可算名詞
uppercase (letter):大文字
verb (略語:v):動詞
virgule:スラッシュ
voice:態

以上、少しでもお役に立てば幸いです。

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AMWAの英文メディカルライティング自学教材

本ブログの記念すべき第1回「英文メディカルライティング通信講座」で、米国メディカルライター協会(American Medical Writers Association:AMWA)の自習教材シリーズ「Self-Study Modules」をご紹介しましたが、この教材を利用なさるメディカルライターや医薬翻訳者が国内で増えています。まだ利用なさっていない方は、今年限定の割引キャンペーンでお得に入手して、AMWAの修了証(certificate)を取得してみてはいかがでしょう?
(追記:その後も割引キャンペーンが時々実施されているので、購入を検討している方はAMWAのサイトを時々チェックしてみて下さい)

「Self-Study Modules」をご存知ない方のために簡単にご説明しますと、AMWAの各専門領域の修了証を取得する上で必修となっている基礎コース「Essential Skills Workshops」の中でも、長年好評で定番となっている7つのワークショップを厳選して、個人学習用に書籍化したものが「Self-Study Modules」です。AMWAではすべてのワークショップで受講者のアンケート調査(evaluation)を実施しており、一定の質を満たすワークショップしか生き残れないシステムになっているので、長年続いているワークショップは質が高いという特徴があります。

「Self-Study Modules」ができるまで、「Essential Skills」の修了証を取得するには、AMWA年次総会開催時などに渡米してワークショップに出席し、規定の単位を取得する必要があり、年単位の時間と数十万円の費用が掛かりました。しかし、現在は自宅や会社で「Self-Study Modules」を購入して学び、各モジュールに付属のテストに合格すれば、ワークショップに出席しなくても「Essential Skills」の修了証取得が可能です。そのため、国内の製薬企業やフリーランスなどで利用する方が増えています。

「Self-Study Modules」の値段は、1つのモジュール当たり$250(非会員)または$155~199(会員)で、モジュールごとに購入できますが、7つのモジュールをまとめた「Essential Skills Package」なら、$1,250(非会員)または$950(会員)で購入できるのでお得です。しかも、今年はAMWA創立75周年を記念して、「Essential Skills Package」の会員価格が$750という割引キャンペーンが実施されており、さらにお得に購入できます。
(追記1:その後も割引キャンペーンが時々実施されているので、購入を検討している方はAMWAのサイトを時々チェックしてみて下さい)
(追記2:「Essential Skills Package」のオンライン版ができました!価格が書籍版より安い上に、送料不要なのでお得です)

それでも「$750は高い」と感じる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、国内で医薬翻訳・治験翻訳の英訳コースなどを受講するより、内容も学習法も確かな「Self-Study Modules」で英文メディカルライティングの基礎を学ぶほうが速く確実にスキルアップできるので、経済的にも時間的にも効率が良いと思います。

なぜなら、国内の医薬英訳コースなどは質が高いものが少ないからです。優秀な医薬英訳者や日本人英文メディカルライターは一握りしかいませんから、医薬英訳や英文メディカルライティングの優秀な講師は極めて少ないのが現状です。高い授業料を払っても、英文メディカルライティングや医薬英訳のスキルが低い日本人講師から間違った事柄を習い、悪いクセが付いてしまったら本末転倒です。しかも、一旦悪いクセが付くと、それを直すには多大な時間と労力が必要になり苦労します。

したがって、教育経験も豊富な一流のアメリカ人メディカルライターたちが作り、ネイティブのメディカルライターからも高い評価を受けている教材を使って、最初から質の高い教育を受けるほうが得策だと思います。各モジュールのテキストはよく出来ているので、学習後の実務でも参考書として繰り返し利用できます。

「Self-Study Modules」のメリットはこれだけではありません。例えばAMWAの修了証を取得すれば、就職・転職や翻訳会社への登録などで有利になるでしょう。前述のとおり、国内では優秀な医薬英訳者や英文メディカルライターが非常に少ないので、多くの翻訳会社や製薬企業・CROなどが優秀な人材を探しています。しかし、国内に数多く存在する翻訳学校や医薬翻訳検定を知っている求人担当者は少ないので、メディカルライターや医薬翻訳者が履歴書に医薬翻訳講座の受講歴や医薬翻訳検定を書いても、「ふ~ん」程度の反応しか得られない可能性が高いです。

一方、AMWAは今や国内でもメディカルライティング業界や医薬翻訳業界で広く知られているので、履歴書にAMWAの修了証取得を書くほうが、英文ライティングのスキルを求人担当者にアピールできると思います。

【まとめ】
AMWAの「Self-Study Modules」には、医薬翻訳・治験翻訳の英訳コースなどにはないメリットが複数ありますので、世界に通用する正確かつ適切な英文メディカルライティング・英訳の習得やキャリアアップへの近道として、「Essential Skills Package」の利用を検討なさってみてはいかがでしょうか?詳しいことはAMWAのホームページ(http://www.amwa.org)をご覧下さい。

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