英文チェックは英文ライティングより簡単?!

少し前の話ですが、2014年10月に「医薬分野における英文校閲:効果的な方法とコツ」というセミナーを開催したところ、ほぼ満員という盛況ぶりで、英文校閲のニーズの高さを実感いたしました。

このセミナーを開催しようと思った理由は、「英文チェックは英文ライティング未経験者・初心者にもできる」という世間の誤解を正したかったからです。

医薬分野の英文チェックの現状

製薬企業から社内英文メディカルライティング研修をお引き受けする際に、受講者の方々の英文ライティング業務の頻度・種類などをお聞きすると、「英文を書くなんてとんでもない!ライティングはまだできないので、外注した英訳や英語文書をチェックしているだけです」など、あたかも英文チェックが英文ライティングより簡単なことのようにおっしゃる方が多くて驚きます。

また、翻訳会社では、翻訳家志望者や翻訳初心者に訳文チェックを担当させていることが多く、ひどい場合は、翻訳とは全く関係のない事務員がチェックしていることさえあります。いわゆる「ネイティブチェック」も、医薬知識やメディカルライティングのスキルを持たないネイティブスピーカーに任せている翻訳会社もあります。

しかし、正確かつ適切な英文メディカルライティングができない方が、果たして他人の医薬英文の良し悪しを正しく判断できるでしょうか?英文の間違いや不適切な英語表現を見つけられたとしても、正しく直すことができるでしょうか?

日本語に置き換えて考えてみて下さい。日本語でも他人の文章を直すのは、自分で書くより難しくありませんか?日本語の医学論文や医薬品承認申請資料のチェックを、片言の日本語しか書けない外国人に任せられますか?

そもそも「チェック」とは?

英文の「チェック」には、「校閲」(editing)「校正」(proofreading)の2種類がありますが、いずれもライターや翻訳者と同等かそれ以上の「語学力」と「専門知識」と「メディカルライティング能力」が必要です。それだけでなく、校閲・校正の「適性」、「知識」、「技術」、「訓練・経験」も必要です。つまり、チェックはライティングや翻訳と同じくらい、あるいはそれ以上に難しいのです。

誰がチェックすべき?

欧米で校閲者(editor)や校正者(proofreader)はライター・翻訳者とは別の「スペシャリスト」とみなされており、ネイティブのメディカルライターや医薬翻訳者でも校閲・校正は引き受けないという方が大勢います。

英文チェックは英文ライティングと同じくらいかそれ以上に難しく、校閲・校正のスキルも必要ですから、英文メディカルライティングや和文英訳の未経験者・初心者ではなく、上級者に任せるべきだと思います。もし未経験者・初心者にチェックを任せるなら、その後に必ず上級者が確認するほうが良いでしょう。そうでないと、英文を修正できる確率より「改悪」するリスクのほうが高くなってしまいます。改悪してしまっては元も子もありませんので、「改悪」は校閲・校正で一番やってはいけないことです。

何回チェックすべき?

チェックの回数を増やせば英文の質が上がると考えて、翻訳会社に数回の訳文チェックを要請する製薬会社もあるようですが、チェックの回数よりチェック能力のほうが結果を大きく左右します。

チェッカーの英文メディカルライティング能力が低いと、何度チェックを繰り返しても、数字の入力ミスや初歩的な文法ミス程度しか確認できず、英文の質は大して上がりません。それどころか、チェックを重ねる度に「改悪」のリスクが増します。一方、英文メディカルライティング能力の高いチェッカーなら、たった1回のチェックでも高い効果を期待できます。

まずは、直せるレベルの英文を作ろう!

言うまでもなく、直せるレベル」の英文に仕上がっていることが、チェックの大前提です。悪文は、いくら手を加えても良い文章になりませんから、全面的な「リライト」や「再翻訳」が必要になります。実際、このようなケースは珍しくありません。英文校閲を外注する場合は、直せるレベルの英文になっているか否かを、まず確認すると良いでしょう。

これらのことを多くの方々にお伝えしたくて、英文校閲に関するセミナーを開催した次第です。セミナー参加者の方々からリクエストの多かった、より具体的な校閲テクニックに関するセミナーは、今後の開催を検討したいと思います。

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メディカルライティング・医薬翻訳と著作権

昨年のブログで、表現の「剽窃」「盗用」に注意する必要性を書きましたが、これらの不正行為は「著作権の侵害」に直結していることが多々あります。しかし、残念ながら日本のアカデミアや製薬業界、翻訳業界は欧米に比べて、著作権に関する意識も含めて「倫理意識」が低いと言われています。

著作権侵害はまれではない

弊社作成の研修資材や拙著『薬事・申請における英文メディカル・ライティング入門』シリーズから説明文や英語の例文などを、製薬企業が社内のスタイルガイドや用語集、教育資材などに無断で引用し、出典を明示していない事例が次々に発覚しています。

つい先日は、某CROが部内の研修で拙著シリーズを教材として利用するために、「全4巻をコピーして部員全員に配布したい」と言って、複製の許諾を求めて来たので驚きました。このCROは許諾を求めて来ただけまだマシですが(もちろん断りました)、弊社が製薬企業の社内研修で使用したスライドを、その企業の研修担当者らが社外の研修・講演に無断で流用して講演料を何度も得ていた悪質なケースも複数報告されています。

また、弊社の著作物からの引用の許諾に先立ち、製薬企業に引用先の文書などを確認させてもらうと、引用箇所と企業オリジナルの箇所が区別されていなくて、引用箇所がまるでオリジナルのように提示されていたり、出典が全く示されていなかったりするなど、正しい引用方法をご存知ないと思われるケースに度々遭遇します。

アカデミアも例外ではありません。医師から論文の英訳を依頼される際に提供される日本語原稿や、論文の英文校閲を依頼される際の英語原稿で、他人の論文からアイディアや文章を盗用して著作権を侵害している箇所を発見することが時々あります。

また、ある医師が翻訳会社に英訳してもらった論文を海外の学術誌に投稿したところ、出版社が剽窃チェッカーを使ったのか、「剽窃が散見される」という理由で門前払いされてしまい、弊社に助けを求めて来られたことがありました。翻訳者が海外の英語文献から無断で多数「英借文」して、出典を明示していなかったことが剽窃の原因ですが、これも著作権侵害に相当します。

著作権侵害の原因は?

上記の事例はいずれも、著作権侵害や契約違反などで法的に訴えられてもおかしくない不正行為・犯罪です。このような行為は、著作権を侵害した本人とその所属先がダメージを受けるだけでなく、医薬業界・翻訳業界全体にもダメージを与えて信頼を損なう恐れがあります。

このような著作権侵害の多くは「悪意」による意図的な行為ではなく、日本語でも英語でも「引用の定義」や「引用方法」などを習ったことがないために、「引用」と「剽窃」との違いや正しい引用方法などを知らないことが原因と思われます。剽窃や盗用を防ぎ、著作権侵害などで訴えられないために、論文執筆者やメディカルライター、医薬翻訳者の方には、昨年ブログでご紹介した書籍『英文ライティングと引用の作法:盗用と言われないための英文指導』(著:吉村富美子、発行:研究社、定価:2,200円)をお読みになることをお勧めします。

翻訳者も著作権侵害に要注意

翻訳者の方々は「ライティングをするわけではないから、著作権なんて関係ない」と思っていらっしゃるかもしれませんが、業務上、翻訳依頼者の「著作物」を扱っていますし、フリーランス医薬翻訳者の間でも著作権侵害は起こっていて、決して他人事ではありません。

例えば翻訳会社から提供されたMedDRA(医薬品副作用用語集)のファイルや製薬企業の日英・英日用語集などを、翻訳会社や翻訳依頼者に無断で翻訳仲間に転送して助け合っている話を時々耳にしますが、このような行為はMedDRAや製薬企業の著作権を侵害していますし、翻訳会社・翻訳依頼者との機密保持契約に抵触している可能性もあります。実際の翻訳案件を自身の翻訳サンブルに無断転用するのも、著作権侵害や機密保持契約違反に相当する恐れがあります。(翻訳依頼者は、外注先による著作侵害や機密漏えいが生じていないか監視するとともに、防止策を講じるほうが良いと思います

また、拙著シリーズや他の参考書、翻訳原稿などの文章を翻訳勉強会の配布資料やスライドなどに無断で引用して、出典を明示しないのも著作権侵害になりますし、SNSなどへの引用も、出典を明示しないと著作権侵害になります。したがって、フリーランス翻訳者の方々も著作権について基礎知識を身に付け、安易なファイル転送や著作物の転用・引用などは控えることをお勧めします。

著作権教育が必要

最後に、前述のとおり、著作権侵害の主な原因は、著作権や引用に関する「知識不足」と考えられますから、著作権を保護するために、そして引用・転用する側が剽窃を疑われないようにするために、「教育」が必要ではないかと思います。

欧米では、著作権などに関する「倫理教育」も日本より進んでいます。例えば米国メディカルライター協会(AMWA)の年次総会や地方部会では、数十年前から倫理に関するワークショップが開催されていますし、AMWAの現行のプログラムでは、倫理に関するワークショップを最低1つは受講しないと修了証を取得できない仕組みになっています。また、AMWA会員専用の掲示板では、図表や文章の引用方法や転用許諾の取得方法などに関する質問が頻繁に見られ、著作権や倫理に対する会員の意識の高さが窺われます。

欧米と日本ではライティング・翻訳などの文化的背景が異なりますが、グローバル化が進む昨今、メディカルライティングや医薬翻訳でも欧米並みの高い「倫理意識」が求められています。

実際、国内で科学論文のデータねつ造・改ざんなどが相次いで発覚しているため、研究者に倫理教育を義務付けようという動きがようやく出てきました。製薬業界でも、弊社の研修資材の著作権を侵害していたことが判明したのを契機に、毎年1回メディカルライターなどを対象に、著作権に関する社内研修を始めた企業が幾つかあります。このような教育は、組織のコンプライアンスや危機管理の観点からも必要ではないかと思います。

メディカルライティングや医薬翻訳の教育でも性善説を過信せず、著作権に関する意識も含めて基本的な倫理観を育てる努力を恒常的に行っていく必要があると感じます。また、「引用の定義」や「正しい引用方法」に関しても、メディカルライティングや翻訳の関連団体・学校などが率先して「教育」を行う必要があると思います。一方、メディカルライティングや医薬翻訳に携わる方は、ご自分のリスク管理のためにも、倫理教育の機会を待つのではなく、高い倫理意識をもって自ら積極的に学んでいく姿勢が必要ではないかと思います。

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英借文では英語表現の盗用に要注意!

前回、今年4月25日に日本メディカルライター協会(JMCA)主催のセミナー「国際的な医学雑誌への論文アクセプトのための戦略」に参加したことを書きましたが、今回はその続きです。

スタットコム株式会社の戸梶亜弥氏がパブリケーション・マネジメントについて概要を説明して下さった後、Karen Woolley教授が同僚のJason Khoh氏と「国際的な医学雑誌への論文発表:成功への5つの鍵」というテーマでお話し下さいました。その後のQ&Aセッションでは、講師全員が様々な質問に答えて下さいました。その中で、英文MWや論文執筆・英訳に携わる方々にぜひお伝えしたい内容を2つ選び、今回はその1つ目をご報告します。

他人の論文からの英語盗用に要注意!

他人の文章や表現を無断で借りて、出典を明示しないことを「剽窃(ひょうせつ)」や「言葉・文章の盗用(とうよう)」と言い、英語ではいずれも「plagiarism」と言います

最近、欧米では多くの医学雑誌が剽窃・盗用の検出ソフト(例:CrossCheck)を使い、投稿論文の剽窃の有無をチェックしています。剽窃は不正行為であり、「著作権侵害」になることも多いため、著者がインターネット上の情報や他人の論文の英語表現を盗用していないかを編集者が確認する目的で、剽窃検出ソフトが使われるようになりました。日本でも、剽窃検出ソフトを導入する医学雑誌が増えていますし、大学・大学院では学生のレポート評価などに利用され始めています。

そこで、剽窃検出ソフトの利用の実態をJMCAセミナーで尋ねたところ、Woolley教授がCEOを務めるメディカルライティング会社(ProScribe Medical Communications)では、投稿前の論文に専用ソフトを使って剽窃の有無を確認しているとのことでした。このことより、投稿論文を受け取る医学雑誌側のみならず、論文の作成に携わるメディカルライティング会社やパブマネも剽窃検出ソフトを使って、論文の剽窃防止に努めていることがわかりました。

このように海外では剽窃に対するチェックが厳しくなっていますので、「英借文」をすることの多い日本人著者・翻訳者は注意が必要です。医薬分野でよく使われる定型表現(例:at a dose of X mg)や定型文(例:The drug was administered orally to the patients.)を使うことは剽窃にはなりません。しかし、それ以外の文章や表現を借りる場合は、引用のルールに従って適切に引用するか(例:引用符で括り、出典を明示する)、十分な言い換え(paraphrasing)を行わなければ「剽窃」や「盗用」と見なされてしまいますので、細心の注意が必要です。

剽窃の防止策は?

JMCAセミナーでは剽窃の効果的な防止策についても尋ねたところ、Woolley教授は著者らを教育することが重要とおっしゃり、Khoh氏は具体的に類義語のボキャブラリーを増やし、paraphrasingの練習を積むことを提案なさっていました。お二人のご意見に全く同感です。

私からのお勧めは、今年6月に発売された書籍『英文ライティングと引用の作法:盗用と言われないための英文指導』(著:吉村富美子、発行:研究社、定価:2,200円)をお読みになり、「引用」と「剽窃」の違いや引用の正しい方法を知ることです。

この本は大学・大学院で論文などの英文ライティングを指導する教員向けに書かれたものですが、指導者以外にも役立つ内容が盛り沢山で、引用と剽窃の文化的背景から剽窃の防止策まで体系的に学べます。また、剽窃を疑われないようにするための英文ライティング能力を学生に身に付けさせる指導法は、そのまま英文メディカルライティングの学習法に応用でき、効果的な学習法を知ることができます。英語のみならず日本語のライティングにも共通する概念や対策も含まれていますので、論文執筆者やメディカルライター、医薬翻訳者らには必読の本だと思います。ぜひご一読下さい。(次回に続く)

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AMA Manual of Styleの勉強法

※第11版に合わせて記事をアップデートし、第11版の該当するセクションを赤字で示しました(更新日:2023年7月3日)

医薬分野の英文ライター、英文校閲者、英訳者にとって必携の医薬英文スタイルガイド『AMA Manual of Style』は百科事典のように厚く、内容が盛り沢山なので、「どこから読んで勉強すればいいのかわからない」といったお悩みをよく聞きます。そこで、下記の3ヵ所を下記の順序で勉強することをお勧めします。

1. 第11版 セクション7.0「Grammar」~セクション16.0「Greek Letters」
(第10版:セクション2「Style」)

文法やpunctuation(カンマ、セミコロン、コロン等)、略語の使い方など、いわゆる「医薬英文の書き方のルール」が書かれているのがこれらのセクションです。したがって、まずセクション7.0から読み始めて基本的なルールを身に付けるとともに、『AMA Manual of Style』がどのような英文スタイルを採用しているのかを知ると良いと思います。

また、セクション11.0「Correct and Preferred Usage」には、英語ネイティブのメディカルライターでも間違いの多い類義語の使い分けや、冗長な表現(redundant words)などが載っているので、正確かつ簡潔明瞭な医薬英文を書く基礎知識・テクニックを身に付けるのに役立ちます。

2. 第11版 セクション17.0「Units of Measure」~セクション20.0「Mathematical Composition」
(第10版:セクション4「Measurement and Quantitation」)

これらのセクションには数字、単位、%などの書き方や統計用語集(セクション19.5「Glossary of Statistical Terms」)が載っているので、研究・試験の結果・データ統計記述を英語で書く際に必要な基礎知識が得られます。

3. 第11版 セクション4.0「Tables, Figures, and Multimedia」
(第10版:セクション1「Preparing an Article for Publication」中の4「Visual Presentation of Data」)

ここには図表の書き方が、多くの実例とともに載っています。アカデミアや製薬企業などでは、図表は統計担当者が作成することが多いので、「メディカルライターや医薬翻訳者、英文校閲者に図表の書き方は関係ない」と思うかもしれません。

しかし、英語の図表には様々なルールがあり(例:脚注の書き方)、日本語の図表と異なる点もあるので(例:表に縦線は引かない)、統計担当者が英語の図表のルールを知らない場合は、英語文書作成時にメディカルライターや医薬翻訳者、英文校閲者が図表をチェック・修正したり、統計担当者に助言したりする必要があります。

また、英訳の外注時には図表の英訳も含まれていることが多々あるので、翻訳者は図表のタイトルや項目名などを英語に置き換えるだけでなく、日本語の図表全体を英語の図表の形式に適宜直せなければなりません。

ところが、英語の図表は日本語の図表と異なる点があることを知らない翻訳者が多いせいか、英語の図表の形式に直していないケースが多く見られます。

したがって、メディカルライターや医薬翻訳者、英文校閲者も英語の図表の基本的な書き方日本語の図表との違いを知っておくと良いでしょう。

まとめ
分量の多い『AMA Manual of Style』で、メディカルライターや医薬翻訳者、英文校閲者が最低限読むべき箇所は上記の3つだけです。それでも、頁数にすると結構多くて大変だと思うかもしれませんが、例文が非常に多く載っているので、実際に読むべき説明文はそれほど多くありません。恐れずに、まずセクション7.0から読み始めてみて下さい。「千里の道も一歩から」です。

英語の文法用語やライティング用語などがわからなくて読みにくいという方は、「英文ライティング用語の日本語訳リスト」をご活用下さい。

また、『AMA Manual of Style』のホームページに練習問題「Style Quizzesがあるので、上記の各セクションを読みながら練習問題に挑戦して習熟度をチェックすると、達成感が得られて勉強を続けやすいと思います。

追記1:『AMA Manual of Style』第11版が2019年に発行されることが、2018年秋の米国メディカルライター協会年次総会で発表されました。

追記2:『AMA Manual of Style』第11版の発行時期が2020年1月末に延期されたことが、2019年秋の米国メディカルライター協会年次総会で発表されました。

追記3:『AMA Manual of Style』第11版が2020年2月に発刊されました。

【補足情報】
『AMA Manual of Style』は米国医師会(AMA)の学術誌『JAMA』の論文投稿規定であり、日本人が間違いやすい点などは考慮・記載されていませんので、拙著『薬事・申請における英文メディカル・ライティング入門』シリーズI巻改訂版(絶版)を併用して、日本人が気をつけるべき点を知って頂くと学習効果が上がると思います。拙著には『AMA Manual of Style』第10版の参照頁も記載されていますので、ぜひご活用下さい。書籍情報はこちら
(追記:『薬事・申請における英文メディカル・ライティング入門』I巻改訂版は好評につき完売し、2019年1月に販売終了・絶版となりました。あしからずご了承下さい)

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著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

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AMA Manual of Styleオンライン版の国内利用

※2024年3月28日更新

ご存知の方も多いかと思いますが、欧米でしか使えなかった『AMA Manual of Style』オンライン版が、第10版から、日本を含む全世界で利用可能になりました(現在の最新版は第11版です)。個人でも、企業でも、アカデミアでも利用可能です。料金や購入方法は『AMA Manual of Style』ホームページ「Purchase」セクションをご覧下さい。

国内の問い合わせ先:オックスフォード大学出版局株式会社
〒108-8386 東京都港区芝4-17-5 相鉄田町ビル3F
TEL:03-5444-5454
日本語ウェブサイトはこちら

オンライン版の特長は主に3つあります。

  1. 誤字・脱字の修正や、改訂後の変更箇所(マイナーチェンジ)などが反映された最新バージョン
  2. 検索が早くて楽
  3. ネット環境があれば、どこでも利用可能(リモートワーク時に便利)

『AMA Manual of Style』のホームページには、改訂後のマイナーチェンジ一覧「Updates」や、スタイルに関する練習問題「Style Quizzes」など、有用なコーナーもありますので、ぜひ一度ご覧になってみて下さい。練習問題は、オンライン版利用者だけでなく誰でも利用可能ですので、自習だけでなく勉強会などにも幅広くご利用になれると思います。

国内の製薬業界では、メディカルライターや社内翻訳者の間でスタイルガイドの利用や『AMA Manual of Style』が普及し、社内で英語文書を作成する際だけでなく、英語文書作成を外注する際にもスタイルガイドを指定することが増えています。

しかし、CRO・翻訳会社やフリーランスのメディカルライター・医薬翻訳者の間では、スタイルの統一などの必要性があまり認識されておらず、スタイルガイドの利用や『AMA Manual of Style』の普及が十分進んでいないようです。そのため、製薬企業からは以下のようなご不満の声を時々耳にいたします。

  • 英語文書作成の外注時に社内の英文スタイルガイドを外注先に提供しても従わず、スタイルも統一されていない納品物が多い。
  • 翻訳会社に英訳を外注した際に英文スタイルの統一などを要請したら、多額の追加料金を請求された。
  • 契約しているネイティブ翻訳者が「自分のスタイルのほうが良い」と言って、指定のスタイルガイドに従ってくれなかった。

英語論文でも、投稿規定に従ってスタイルを統一することが欠かせませんから、文書の種類を問わず、スタイルの統一は英文ライティング・英訳作業の極めて重要な要素です。

今後は製薬企業やアカデミアだけでなく、CRO・翻訳会社やフリーランスのライター・翻訳者の間でもスタイル統一の必要性がもっと認識されること、そして医薬分野の英文スタイルガイドの「グローバル・スタンダード」と呼ばれ、多くの論文投稿規定や企業内スタイルガイドの基礎となっている『AMA Manual of Style』に精通する方が増えることを願っています。

追記1:『AMA Manual of Style』第11版が2019年に発行される予定です。

追記2:『AMA Manual of Style』第11版の発行時期が2020年1月末に延期されました。

追記3『AMA Manual of Style』第11版が2020年2月に発刊されました。「ハードカバー版」、「オンライン版」、「ハードカバー版+オンライン版」セットの3種類があります。購入方法など詳細はホームページをご覧下さい。

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著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

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英文メディカルライティング通信講座

皆様、こんにちは。弊社ホームページのリニューアルを機にブログを始めることにいたしました。本ブログでは、英文メディカルライティングや医薬翻訳に役立つヒントや情報を随時お伝えするとともに、皆様の疑問やお悩みにお答えしていきたいと思います。英文メディカルライティングや医薬翻訳に関してご質問やご相談のある方は、本サイトのお問い合わせフォームからお気軽にご連絡下さい。

記念すべき第1回ブログでお伝えするのは、英文メディカルライティング通信講座のご紹介です。英文メディカルライティングを学べる機会は、残念ながら国内では依然として極めて少なく、米国メディカルライター協会(AMWA)や欧州メディカルライター協会(EMWA)の年次総会に参加して、ワークショップを受講するのが代表的な学習法となっています。しかし、海外まで行くにはそれなりのお金や時間が必要なため、AMWAやEMWAに参加できる幸運な日本人は毎年10~20名程度です。

また、弊社は製薬企業や医療機関での英文メディカルライティングの研修や講演をお引き受けしていますが、このような教育を実施する企業・医療機関も依然として少なく、研修や講演を受講する機会のない方々からご不満の声をよく耳にいたします。

そこで、国内で英文メディカルライティングを学びたいメディカルライターや医薬翻訳者、英語論文執筆者にとって便利なのが欧米のオンライン講座です。

例えば米国シカゴ大学のメディカルライティング講座のうち、一部が今年10月からオンラインで受講可能になります。

・University of Chicago Graham School
Medical Writing and Editing Program

下記の大学にもオンライン講座があり、AMWAの会報『AMWA Journal』などに広告がしばしば掲載されています。

・University of the Sciences in Philadelphia
Biomedical Writing Program

・Northeastern University College of Professional Studies
Master of Science in Technical Communication

最近はオンライン講座を提供する業界団体や民間企業も増えています。
(例:米国Regulatory Affairs Professional Society (RAPS)のオンライン講座

また、AMWAは自習用教材シリーズ「Self-Study Modules」を提供しています。会員でない方もAMWAのサイトから購入可能です。(追記:オンライン版ができました!)

私はシカゴ大学のon-site講座しか受講したことがありませんので、他の講座が良いかどうかわかりませんが、ご興味のある方はネットで検索して、いろいろ比較して、ご自分に合うオンライン講座を選んでみて下さい。

何事もやる気さえあれば、必ず道は開けます。「日本では英文メディカルライティングを勉強できない」などとあきらめずに頑張りましょう!

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