『AMA Manual of Style』の勉強法

『AMA Manual of Style』第10版は百科事典のように厚く、内容が盛り沢山なので、「どこから読んで勉強すればいいのかわからない」といったお悩みをよく聞きます。そこで、下記の3つのセクションを下記の順序で勉強することをお勧めします。

1. セクション2「Style」(315~437頁)

文法やpunctuationなど、いわゆる「英文の書き方のルール」が書かれているのがこのセクションです。したがって、まずここから読み始めて基本的なルールを身に付けるとともに、『AMA Manual of Style』はどのようなスタイルを採用しているのかを知ると良いと思います。

また、「Correct and Preferred Usage」(381~419頁)には、ネイティブでも間違いの多い類義語の使い分けや、冗長な表現(redundant words)などが載っているので、正確かつ簡潔明瞭な英文を書く知識・テクニックを身に付けるのに役立ちます。

2. セクション4「Measurement and Quantitation」(787~913頁)

ここには数字、%、単位などの書き方や統計用語集(852~900頁)が載っているので、試験結果・データ統計記述を英語で書く際に必要な知識が得られます。

3. セクション1「Preparing an Article for Publication」中の4「Visual Presentation of Data」(81~124頁)

ここには図表の書き方が、多くの実例とともに載っています。製薬企業などでは、図表は統計担当者が作成することが多いので、「メディカルライターや社内翻訳者には図表の書き方は関係ない」と思うかもしれません。

しかし、英語の図表には様々なルールがあり(例:脚注の書き方)、日本語の図表と異なる点も多いので(例:表に縦線は引かない)、統計担当者が英語の図表のルールを知らない場合は、英語文書作成時にメディカルライターや翻訳者が図表をチェック・修正したり、統計担当者に助言・指導したりする必要があります。

また、英訳の外注時には図表の英訳も含まれていることが多々あるので、フリーランス翻訳者は、単に図表のタイトルや項目名を英語に訳すだけでなく、日本語の図表全体を英語の図表の形式に直せなければなりません。

ところが、英語の図表は日本語の図表と異なる点があることを知らないフリーランス翻訳者が多いせいか、英語の図表の形式に直していないケースがほとんどです。

したがって、メディカルライターや翻訳者も英語の図表の基本的な書き方日本語の図表との違いを知っておくと良いでしょう。

 

まとめ

分量の多い『AMA Manual of Style』第10版で、メディカルライターや翻訳者が最低限読むべきセクションは上記の3つだけです。それでも、頁数にすると結構多くて大変だと思うかもしれませんが、例文が非常に多く載っているので、実際に読むべき説明文はそれほど多くありません。恐れずに、まずセクション2から読み始めてみて下さい。「千里の道も一歩から」です。

追記1:『AMA Manual of Style』第11版が2019年に発行されることが、2018年秋の米国メディカルライター協会年次総会で発表されました。

追記2:『AMA Manual of Style』第11版の発行時期が2020年1月末に延期されたことが、2019年秋の米国メディカルライター協会年次総会で発表されました。

追記3『AMA Manual of Style』第11版が2020年2月に発刊されました。

 

【補足情報】

『AMA Manual of Style』のホームページに練習問題(Style Quizzes)があるので、上記の各セクションを読みながら、ホームページの練習問題に挑戦して習熟度をチェックすると、達成感が得られて勉強を続けやすいと思います。

なお、『AMA Manual of Style』は米国医師会の医学雑誌『JAMA』の投稿規定であり、日本人が間違いやすい点などは考慮・記載されていませんので、拙著『薬事・申請における英文メディカル・ライティング入門』シリーズI巻改訂版を併用して、日本人が気をつけるべき点を知って頂くと学習効果が上がると思います。拙著には『AMA Manual of Style』第10版の参照頁も記載されていますので、ぜひご活用下さい。書籍情報はこちら。(追記:『薬事・申請における英文メディカル・ライティング入門』I巻改訂版は好評につき完売し、2019年1月に販売終了・絶版となりました。あしからずご了承下さい)

『薬事・申請における英文メディカル・ライティング入門』 I 改訂版 (著者:内山雪枝、出版:サイエンス&テクノロジー株式会社)

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『AMA Manual of Style』オンライン版の国内利用

ご存知の方も多いかと思いますが、これまで欧米でしか使えなかった『AMA Manual of Style』第10版のオンライン版が、ようやく、日本を含む全世界で利用できるようになりました。ご参考までに申込サイト等を下記のとおりお知らせいたします。

・個人での利用申込
https://global.oup.com/academic/product/ama-manual-of-style-9780195382846?cc=jp&lang=en&

・企業・団体・アカデミア向けの30日間無料トライアル(個人向けなし)
http://www.oup.com/uk/academic/online/freetrials/

・企業・団体・アカデミアでの利用について
http://www.amamanualofstyle.com/page/subscribe/how-to-subscribe

・企業・団体・アカデミアでの利用に関する国内問い合わせ先

オックスフォード大学出版局株式会社
〒108-8386 東京都港区芝4-17-5 相鉄田町ビル3F
TEL:03-5444-5858
E-mail: custserve.jp@oup.com
日本語ウェブサイトはこちら

オンライン版では、誤字・脱字などの修正や、改訂後の変更箇所などが反映された最新版が利用可能であり、検索が早くて楽などの利点があります。また、利用方法をカスタマイズすることもできます。詳しいことは『AMA Manual of Style』のホームページをご覧下さい。

ホームページには、改訂後の変更一覧(Updates)や、スタイルに関する練習問題(Style Quizzes)など、有用なコーナーもありますので、ぜひ一度ご覧になってみて下さい。練習問題は、オンライン版利用者だけでなく誰でも利用可能になったようですので、自習だけでなく勉強会などにも幅広くご利用になれると思います。

国内の製薬業界では、メディカルライターや社内翻訳者の間でスタイルガイドの利用や『AMA Manual of Style』が普及し、社内で英語文書を作成する際だけでなく、英語文書作成を外注する際にもスタイルガイドを指定することが増えています。

しかし、CRO・翻訳会社やフリーランスのメディカルライター・医薬翻訳者の間では、スタイルの統一などの必要性があまり認識されておらず、スタイルガイドの利用や『AMA Manual of Style』の普及がまだ進んでいないようです。そのため、製薬企業からは以下のようなご不満の声をしばしば耳にいたします。

  • 英語文書作成の外注時に社内の英文スタイルガイドを外注先に提供しても従わず、スタイルも統一されていない納品物が多い。
  • 翻訳会社に英訳を外注した際に英文スタイルの統一などを要請したら、多額の追加料金を請求された。
  • 契約しているネイティブ翻訳者が「自分のスタイルのほうが良い」と言って、指定のスタイルガイドに従ってくれなかった。

英語論文でも、投稿規定に従ってスタイルを統一することが欠かせませんから、文書の種類を問わず、スタイルの統一は英文ライティング・英訳作業の極めて重要な要素です。

今後は製薬企業やアカデミアだけでなく、CRO・翻訳会社やフリーランスのライター・翻訳者の間でもスタイル統一の必要性がもっと認識されること、そして医薬分野のスタイルガイドの「グローバル・スタンダード」と呼ばれ、多くの論文投稿規定や企業内スタイルガイドの基礎となっている『AMA Manual of Style』に精通する方が増えることを願っています。

追記1:『AMA Manual of Style』第11版が2019年に発行される予定です。

追記2:『AMA Manual of Style』第11版の発行時期が2020年1月末に延期されました。

追記3『AMA Manual of Style』第11版が2020年2月に発刊されました。

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