速くて楽な語彙力強化法:医薬用語の接頭語と接尾語を知ろう!

6月10日に弊社主催で「がん臨床試験のための腫瘍学入門セミナー:知っておくべき、がんの常識と日英専門用語」を都内で開催しました。当日は多くの方にご参加頂き、お陰様で盛況のうちに終了することができました。ご来場下さった方々には改めて御礼申し上げます。

セミナー終了後にアンケート調査を実施した結果、「本セミナーで最も有益だった内容は?」という設問に対して一番多かった回答は、意外にも「分子標的薬の一般名の命名法」でした。

抗がん剤の接尾語

皆様の中にも命名法をご存知ない方がいるかもしれませんので、少しだけご紹介しましょう。例えば分子標的薬が何らかの阻害剤(例:チロシンキナーゼ阻害剤)の場合は、「△△ニブ(-nib)」と名付けます(例:ゲフィチニブ)。「-nib」は「inhibitor」の略です。一方、「抗体医薬」の場合は「△△マブ(-mab)」と名付けます(例:リツキシマブ)。「-mab」は「monoclonal antibody」(モノクローナル抗体)の略です。したがって、一般名の語尾を見れば、分子標的薬の種類がわかります。

他に、薬剤が標的とする物質や、由来する動物種にも基づいて一般名を命名しますので、分子標的薬の命名法を知っていると、一般名を見るだけで薬剤の基本情報がある程度わかります。詳しい命名法は、WHOの抗体医薬命名法の指針(英文)などをご覧下さい。

分子標的薬以外の抗がん剤の一般名も、白金製剤は「プラチナ」にちなんで「△△プラチン」(-platin)と命名することや(例:シスプラチン)、抗がん性抗生物質は「△△マイシン」(-mycin)が多いこと(例:ブレオマイシン)などを知っていれば、一般名を見るだけで薬剤クラスがわかります。抗がん剤以外でも、一般名に「法則性」が見られる薬剤が多数あります。

心電図の接頭語と接尾語

医学用語も、よく使われる「接頭語」(prefix)と「接尾語」(suffix)を知っていれば、初めて見る難しい専門用語でも、辞書を引かずに意味を推測できることが多々あります。

例えば「electrocardiography」という単語を見てみましょう。接頭語「electro-」は「電気の」という意味で、「cardio-」は「心臓の」という意味、そして接尾語「-graphy」は「検査(法)」という意味なので、これらを組み合わせて「心電図検査」という意味だとわかります。

 

この単語の接尾語が「-gram」に変わると、どのような意味になるでしょうか。「-gram」は「検査した結果、検査の記録」を表しますので、「electrocardiogram」は、波形が書いてある「心電図記録」という意味になります。また、接尾語「-graph」は「検査の装置」を指すので、「electrocardiograph」は「心電(図)計」の意味になります。臨床研究や治験で心電図が使われることが多いですが、略語「ECG」をフルスペルで書く際は、意図する意味に応じて語尾を変えて、誤訳を防ぎましょう

「心電図」の接頭語と接尾語の知識は「脳波」(EEG)にも応用できます。接頭語「encephalo-」は「脳」を表すので、「electroencephalography」は「脳波検査」、「electroencephalogram」は「脳波(記録)」、「electroencephalograph」は「脳波計」だとわかります。逆に「脳波検査」を英語で書きたい場合は、「electro-」と「encephalo-」と「-graphy」を組み合わせて書けばOKです。

接頭語と接尾語を知るメリット

このように医薬用語の接頭語と接尾語を知ると、難しい専門用語を1つずつ丸暗記しなくてもボキャブラリーを強化できますまた、医薬分野の英文を読む際も書く際も、辞書を引く手間を省けてスピードアップできます。拙著『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』シリーズI改訂版には、医薬分野の代表的な接頭語と接尾語のリストを載せていますので、ご活用頂ければ幸いです。

何事も「ルール」や「法則性」を知ると、理解や記憶・習得の省力化が図れて、楽に速く上達できます。メディカルライティングや医薬翻訳では、薬剤の命名法や医薬用語の接頭語・接尾語などの「法則性」を知って、効率良くスキルと作業スピードを向上させましょう!

追記:ピコ太郎のヒット曲「PPAP」は、医薬用語の接頭語と接尾語を覚えるのに使えます。例えば「♪I have “erythro-“ (=赤い).  I have “-cyte” (=細胞).  Ahhh, erythrocyte! (=赤血球)」のような感じで、様々な組み合わせで替え歌を作って医薬用語を楽しく覚えましょう!

推薦図書:
『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』シリーズI改訂版
146~153頁「医薬用語の接頭語と接尾語」一覧表
※本シリーズは完売・絶版になりました。あしからずご了承下さい。

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著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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