CORE Reference News 2024年11月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

 

1. ICH

ICH E6(R3)ガイドライン「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」のAnnex 2案が2024年11月6日にICH総会で承認され、現在パブリックコメントを募集しています。Annex 2は、多様な試験デザインやデータソースの利用増加に伴って生じるGCPの考慮事項を取り上げています。分散型臨床試験やプラグマティック臨床試験、リアルワールドデータ(RWD)を活用する臨床試験の各例に焦点を当て、追加的なGCP考慮事項を示します。

Annex 2の作業は、ICH E6(R3)原則とAnnex 1の作業と並行して進められ、Annex 1がICHステップ2に到達すると、Annex 2の作業が開始されます。ICH加盟国・地域のステークホルダーは、各々の規制当局にパブリックコメントを提出することが推奨されます。ICH E6(R3)ガイドラインとそのAnnexの詳細についてはこちらをご覧下さい。研修資料はこちらからダウンロード可能です。

2. EU CTRCTIS

2.1 ベルギー連邦医薬品・医療製品庁(FAMHP)は、治験依頼者に対して、臨床試験をCTR(EU)536/2014に早急に移行するよう求める声明「Important call to clinical trial sponsors: transfer clinical trials to the CTR as soon as possible」を発表しました。

2.2 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年11月19日号には、CTISの重要な最新情報や、有用な参考資料のリンク、冬季クロック停止の詳細などが記載されています。臨床試験開始申請(CTA)評価内のすべてのタイマーが2024年12月22日23:59:59(中央ヨーロッパ時間)に一時停止し、2025年1月8日00:00:01(中央ヨーロッパ時間)に再開されます。

3. 英国とMHRAのニュース

3.1 英国の治験・臨床研究登録機関ISRCTNレジストリは、「Transparency Tracker」の改良や、ISRCTN研究登録フォームの「Protocol/serial no.」欄の変更など、複数のアップデートを最近実施しました。詳しい更新内容は「What’s new on the ISRCTN registry?」をご覧下さい。

「Protocol/serial no.」欄は「Secondary identifying number(s)」欄に変更され、研究者や資金提供者、治験依頼者などが組織内で研究に割り振った参照番号を記入する欄になっています。臨床試験がEudraCT/CTISとClinicalTrials.gov以外のレジストリに登録されている場合は、同欄に治験IDを記入できます。英国国立健康研究所(NIHR)や、医療研究機構(HRA)、Wellcome Trustの助成金番号も同欄に記入します。

3.2 MHRAは、2024年10月15日に開催したウェビナー「Implementing the New UK Clinical Trials Regulations」(英国の新たな臨床試験規制の施行)のビデオ録画を、2024年11月13日に公開しました。このウェビナーでは、(1)新たな臨床試験規制の施行に向けて予想されるスケジュールの概要、(2)ガイダンス案をステークホルダーと共有してフィードバックを得る計画が示されました。
(訳注:翻訳時点で、ウェビナーの録画は「再生できません。アップロードしたユーザーにより削除されました」と表示されています)

ウェビナーに関するブログ記事「MHRA expects new UK clinical trial regulation implementation by January 2026」(MHRAは英国の新たな臨床試験規制が2026年1月までに施行されることを期待)も併せてご参照下さい。

3.3 英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、臨床試験のインフォームド・コンセントに関する規制の修正案「Simplifying the process of seeking and recording consent in low risk clinical trials」(低リスクの臨床試験におけるインフォームド・コンセントの取得・記録プロセスの簡素化)を発表し、パブリックコメントを募集しています。コメントは、2025年に英国で施行される臨床試験規制の策定に役立てられます。

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

ClinicalTrials.govのPRS(Protocol Registration and Results System:プロトコル登録・結果システム)のResultsセクション初の最新化モジュール(被験者の流れ、制限と注意事項、詳細情報)が、現在PRS Test版で利用可能であり、間もなく最新化PRS(新版)でも利用可能になります。ユーザーはPRS Test版で利用可能なResultsセクション・モジュールを試して、ClinicalTrials.gov PRSに感想を伝えることをお勧めします。詳細は最新の「Release Notes」(2024年11月26日)をご覧下さい。

5. 欧州EMAのガイダンスとニュース

EMAは、「Improving efficiency of approval process for new medicines in the EU」(EUにおける新薬承認プロセスの効率化)に関するQ&Aセッションを、2024年12月5日に開催します。本セッションでは、EUにおけるMAA(販売承認申請)や、申請期限を守るために企業が直面する課題を取り上げるとともに、審査・承認プロセスの効率化に向けたEMAの取り組みや、企業が申請計画を立てる際に役立つツールや推奨事項を紹介します。

6. リアルワールドデータ

6.1 中国におけるリアルワールドエビデンス(RWE)活用方針の策定とユースケースについては、Du氏と Han氏による記事「Evolving Policies and Use of RWE in Regulatory Decisions in China」(中国規制当局の意思決定におけるRWEの活用方針と活用の進化)をお読み下さい。

6.2 英国は、国内の健康データの現状を概観した「Uniting the UK’s Health Data: A Huge Opportunity for Society」(英国の健康データの統合:社会にとって大きなチャンス)を発表しました。この報告書は、英国全土の多数の健康関連データソースについて、広範な概要を示しています。

7. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

2024年11月14日、EMAは臨床試験データ公開(Policy 0070)の再開に向けた次のステップに関するウェビナー「Clinical Data Publication (Policy 0070) webinar — Step 2」(臨床試験データ公開 [Policy 0070]ウェビナー — ステップ2)を開催しました。プレゼン資料とビデオ録画がこちらで公開されています。提案されているステップ2の概要は以下の通りです。

  • 2025年第2四半期以降(正確な日付は未定。2025年4月以降の予定)、否定的意見や取り下げられた申請、ライン延長、主要な臨床タイプIIバリエーション(適応拡大)を含むすべての新たなMAA(販売承認申請)
  • バイオシミラー、ハイブリッド、ジェネリック医薬品をすべて除外
  • 新型コロナ対策と、今後発生する可能性のある新たな公衆衛生上の緊急事態の継続
  • 外部ガイダンス:2025年初頭発出に向けて検討中
  • 質疑応答(Q&A)文書:2023年7月公開。2025年更新予定
  • カナダ保健省との協働によるプロセス提携:ワークシェア。redaction proposal packageの単一レビューの試行
  • レガシー臨床データの公開に関するEMAの提案:要請(access-to-documents request)に応じて公開

8. 開発戦略ニュース

8.1 Higginsらは論文「Considerations for open-label randomized clinical trials: Design, conduct, and analysis」(オープンラベル・ランダム化比較試験に関する検討事項:デザイン、実施、解析)を発表しました。著者らは、最高レベルの試験のインテグリティと試験結論の信頼性を担保するために、オープンラベル試験をどのようにデザイン、実施、解析するのが最善か論じています。

8.2 TransCelerate社とCDISCは、ウェビナー「Digital Data Flow (DDF) Solution Showcase」を2024年12月5日に共催します。これは、治験プロトコルのデジタル化ソリューションに関するシリーズのウェビナー第2弾です。

訳注)CDISC:Clinical Data Interchange Standards Consortium。臨床試験データなどの電子的収集・交換・申請に関して業界標準を策定している国際的な非営利組織。1997年に米国で設立され、国内外のアカデミアや製薬企業、CRO、IT企業などが参加。CDISCが規定する標準規格は「CDISC standard」(CDISC標準)と呼ばれている。

9. 人工知能・機械学習

英国科学技術イノベーション省(DSIT)は、「AI Management Essentials (AIME) Tool」に関してパブリックコメントの募集を開始しました。AIMEは、組織が開発または使用するAIシステムの管理に関してグッドプラクティスのベースラインを確立するための実践的な手順について、組織に明確な情報を提供するリソースです。

10. アジア規制当局のニュース

平川らは論文「Planning and Implementing Master Protocol Trials in Japan: Key Considerations of the Japanese Guideline」(日本におけるマスタープロトコル試験の計画と実施:日本のガイドラインの主な留意事項)を発表しました(注:有料記事です)。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年10月31日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからのお知らせ

1.1 CORE Referenceウェビナーを開催する運びとなりましたのでご案内いたします。

  • 日時:2024年12月4日(水)12:30~13:45(中央ヨーロッパ夏時間)
  • テーマ:EMA Policy 0070事例紹介 – Voydeya
    (訳注:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン]。発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬)
  • 演者:CORE Reference TeamのRaquel Billiones氏とAlison McIntosh氏
  • 申込方法:欧州メディカルライター協会(EMWA)本部(membership@emwa.org)までメールでお申し込み下さい。

<ウェビナー概要>
2024年春に申請を完了し、2024年6月26日に臨床データが公開されたVoydeyaの例を用いて、EMA Policy 0070 Anonymisation Report(AnR:匿名化報告書)の作成について概説し、適切な匿名化手法の選択などについて議論します。主なトピックは以下の通りです。

  • EMA Policy 0070 AnRおよび関連する匿名化手法の概要
  • Voydeyaの申請で浮き彫りになった希少疾患特有の問題点
  • 臨床データの有用性を維持する上での課題
  • EMAとのコミュニケーションの振り返り(申請前相談を含む)
  • Voydeyaの匿名化プロセスから得られた学び

1.2 2023年にCORE Reference Teamが実施した「CORE Reference Utility Survey」の結果を、「The 2023 CORE Reference Utility Survey: Perceptions on a best practice tool for globally applicable clinical study reporting and provision of continuing professional development resources for the regulatory medical writing community」(CORE Reference利用状況調査2023:グローバルに適用可能な臨床試験報告のためのベストプラクティス・ツールの認識と、メディカルライターのための継続的専門能力開発リソースの提供)と題して、EMWAの『Medical Writing』誌2024年9月号特集「Clinical Trial Transparency and Disclosure」(臨床試験の透明性と情報開示)に掲載しました(Medical Writing. 2024;33(3):38-45)。アンケート調査にご協力下さった方々に改めて御礼申し上げます。

2. ICH

2.1 ICHは、規制当局がICHガイドラインを十分実施・遵守しているかを2024年初頭に調査した結果を、「2024 Project Report: Monitoring the adequacy of implementation and adherence to ICH Guidelines」として発表しました。この調査は2019年と2021年にも実施されています。2024年の調査結果は、研修ニーズやICH会員関連活動のサポートに利用されます。

2.2 ICH E8(R1)ガイドライン「General Considerations for Clinical Studies」(臨床試験の一般指針)の入門研修ビデオが公開されました。

3. EU CTRCTIS

3.1 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年10月8日号には、非営利スポンサー向けヘルプデスク、臨床試験の有効期限、システムの改善(最新のシステムリリース参照)などに関して最新情報が掲載されています。

3.2 次回のCTISショート説明会は2024年11月20日16:00~17:00(中央ヨーロッパ時間)に開催される予定で、対象は製薬企業、CRO、中小企業(SME)、アカデミアなど、すべての治験依頼者です。事前の参加申込は不要で、EMAの公式サイトからライブ配信をご覧になれます。

4. 英国とMHRAのニュース

英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、MHRAと共同で、臨床研究のインクルージョンと多様性に関するガイダンス案「Guidance for Developing and Submitting an Inclusion and Diversity Plan」(インクルージョン・多様性プランの作成と提出に関するガイダンス)について、非公式にパブリックコメントの募集を始めました。

本ガイダンスの目的は、(1)研究結果の影響を受ける可能性のある人々を組み入れる研究が設計されるようにすること、(2)研究の恩恵を受けていない人々が見過ごされないようにすることの2つです。ガイダンス案には、研究者が臨床試験を設計する際に考慮すべき質問と、その答えを導くための情報も提示されています。パブリックコメントは2024年12月9日まで受け付けています。

5. 米国FDAのガイダンスとニュース

5.1 2024年10月、FDAは最終ガイダンス「Core Patient-Reported Outcomes in Cancer Clinical Trials」(がん臨床試験における患者報告アウトカム [PRO])を発出しました。治験依頼者向けの本ガイダンスは、がん臨床試験におけるPROコアセットの収集に関する推奨事項と、PRO評価ツールの選択や試験デザインなどに関する検討事項を提示しています。

5.2 FDAと米国国立衛生研究所(NIH)は共同で、「FDA-NIH Terminology for clinical research」(FDA-NIH臨床研究用語集)を草案しました。この用語集は、科学界で一貫性なく使用されている専門用語を明確にするのに役立ちます。用語集(案)には、科学的、臨床上、規制上の意思決定をサポートする、リアルワールドデータを使用してリアルワールドエビデンスを生成する研究など、革新的な臨床研究デザインに関連する37の臨床研究用語が収載されています。

5.3 FDAは無料の公開ウェビナー「Informed Consent — More than Just Another Document to Sign?」(インフォームド・コンセント:署名するだけの文書ではない?)を、2024年11月8日14:00~15:00(米国東部時間)に開催します。参加申込をウェビナー開催時刻まで受け付けています。

5.4 2024年7月にFDAはバイオシミラー製品開発の新たなガイダンスを作成する案について、パブリックコメントを募集しましたが、Hayes氏のウェブ記事「Industry rejects FDA’s proposal for biosimilar product-specific guidance」(業界はFDAのバイオシミラー製品別ガイダンスの提案を拒否)は、「バイオシミラー開発者らは、製品別またはクラス別のガイダンスを作成するというFDAの提案を強く拒否し、代わりにこの分野の基本的なガイダンスの更新に注力するようFDAに求めている」と報告しています。

6. 欧州EMAのガイダンスとニュース

6.1 EMAは、がん治療薬に関心のあるすべての人を対象に、月刊ニュースレター「European Regulatory Oncology Newsletter」を創刊しました。毎月、EU内のがん治療薬について最新の科学的見解を紹介し、がん領域におけるEU規制当局のイベントや取り組み、活動に関するニュースを提供します。ニュースレター創刊号(2024年10月号)はこちらでご覧頂けます。購読はこちらからお申し込み下さい。

6.2 2024年10月22日に開催されたACT EUマルチステークホルダー・プラットフォーム(MSP)年次総会のスライドとビデオ録画がこちらで公開されています。MSPは、臨床試験関係者と規制当局が一堂に会して意見を述べ合い、欧州の患者・一般市民のために臨床試験環境の改善に協力する場になっています。(訳注:後述の記事10.3もご参照下さい)

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

7. 透明性・情報開示のリソースとニュース

7.1 欧州メディカルライター協会(EMWA)の『Medical Writing』誌2024年9月号(Volume 33, Issue 3, 2024)は、臨床試験の透明性と開示について特集しています。同誌はオープンアクセスジャーナルで、特集記事はこちらからダウンロード可能です。

7.2 DocShifter社は、無料の公開ウェビナー「Translation & Redaction — AI applied in Regulatory Content Preparation」(翻訳と編集:規制コンテンツ作成へのAI適用)を、2024年11月14日17:00~17:30(グリニッジ標準時)に開催します。このウェビナーでは、規制当局に提出するコンテンツの作成、特に文書翻訳と情報編集に対してAIが与える影響を探ります。

7.3 PHUSEは、データの透明性に関する冬季イベント「PHUSE Data Transparency Winter event」を2025年2月4~6日に開催します。プレゼンテーションは3日間とも15:00~17:30(グリニッジ標準時)に行われる予定で、現在、演題を募集中です。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

7.4 Real Life Sciences社は、無料の公開ウェビナー「Best Practices for Clinical Data Anonymization Using the Quantitative Methodology」(定量的手法を用いた臨床データ匿名化のベストプラクティス)を、2024年11月21日10:00(米国東部時間)に開催します。

7.5 欧州委員会は、EUデジタルサービス法(DSA)の下、審査に合格した研究者によるオンラインプラットフォーム・データへのアクセスに関する委任規則法案について、パブリックコメントの募集を開始しました。超大規模オンラインプラットフォームや超大規模検索エンジンのデータへのアクセスに関する新たな枠組みは、これらのプラットフォームの透明性と説明責任を高めるためのDSAの重要な措置です。パブリックコメントは2024年11月26日まで受け付けています。

8. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

EMAは、臨床試験データ公開(Policy 0070)の再開に向けた次のステップに関するウェビナー「Clinical Data Publication (Policy 0070) webinar — Step 2」(臨床試験データ公開 [Policy 0070]ウェビナー–ステップ2)を、2024年11月14日14:00~15:00(グリニッジ標準時)に開催します。

このウェビナーでは、2025年4月からのPolicy 0070関連活動の拡大案(ステップ2)に関するEMAの計画と、従来の手続きの取り扱いを紹介するとともに、申請者や業界関係者にガイダンスを提供します。質疑応答の時間も設ける予定になっています。詳しいアジェンダはこちらをご覧下さい。なお、参加には事前の申込が必要です。

9. ヘルシンキ宣言

WMA Declaration of Helsinki – Ethical Principles for Medical Research Involving Human Participants」(世界医師会 [WMA] ヘルシンキ宣言:ヒト参加者を対象とする医学研究の倫理原則)の改訂版が、2024年10月21日に発表されました。WMAによると、実質的な変更は次の2つの分野に分類されます。

  • 参加者中心のインクルージョン、尊重、保護
  • 研究の受益性と価値(「個人と公衆の健康」の追求、科学的厳密性と完全性の維持、利益・リスク・負担の慎重な分配など)

また、WMAは「ヘルシンキ宣言の2024年改訂版では、個人の権利や主体性、重要性を尊重するため、『subject』(被験者)という用語を全面的に『participant』(参加者)に言い換えた」と説明しています。

10. 開発戦略ニュース

10.1 Hughes氏とRodriguez-Chavez氏によるDIAウェブ記事「The Evolution of Decentralised Clinical Trials: Blending Innovation and Regulation in the Digital Age」(分散型臨床試験の進化:デジタル時代におけるイノベーションと規制の融合)では、分散型臨床試験(DCT)を用いた患者中心の新たな臨床研究アプローチについて見識が得られます。著者らはDCTの利点や、DCT実施に現在利用可能な新しいテクノロジー(AI・機械学習など)、DCTの今後の展望などについて論じています。

10.2 米国ハーバード大学/ブリガム&ウィメンズ病院のMRCTセンターは、「2024 Annual Symposium」を2024年11月14~15日に開催します。ボストンの会場またはオンラインで無料で参加できます。シンポジウムのハイライトは、FDAの医療政策部長Khair ElZarrad氏による、臨床研究と規制の現在の動向と今後の展望に関する基調講演や、EMAの主席医務官(CMO)Steffen Thirstrup氏による、データ共有と欧州医療データスペース(EHDS)の今後に関する基調講演などです。

訳注)MRCTセンター:Multi-Regional Clinical Trials Center of Brigham and Women’s Hospital and Harvard(ハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院の国際共同治験センター)。ブリガム&ウィメンズ病院は、米国ハーバード大学医学部の附属病院としての役割を担う医療・研究・教育機関の1つ。MRCTはハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院に属しており、国際共同治験の改善を目的とする研究・政策センター。

10.3 ACT EUイニシアチブは、EUにおける臨床試験の環境改善を目的としたマルチステークホルダー・プラットフォーム(MSP)を設立しており、EMAはMSPの年次総会を2024年10月22日にアムステルダムで開催しました。総会の主な内容は以下の通りです。

  • ACT EUイニシアチブの主な成果と臨床研究への影響の確認
  • 臨床試験の現状に関する議論
  • 将来を見据え、多様なステークホルダー・グループにとって期待される成功の可視化

総会のスライドとビデオ録画がこちらで公開されています。(訳注:前述の記事6.2もご参照下さい)

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

10.4 CIOMSのICH用語集「Glossary of ICH terms and definitions」第7版が、無料でダウンロード可能です。今回の改訂では、下記の3つのICHガイドラインから定義が追加されています。

  • E11A「小児用医薬品開発における外挿」(ステップ4 [最終版]、2024年8月21日)
  • M13A「即放性固形経口剤形の生物学的同等性試験」(ステップ4 [最終版]、2024年7月23日)
  • Q4B(R1)「薬局方テキストをICH地域において相互利用するための評価及び勧告」(最終版、2024年6月5日)

10.5 2024年11月に予定されている臨床試験関連または薬事関連のイベントや文書が、Pierre Mermet-Bouvier氏のLinkedIn記事「Planned for November 2024」にリストアップされています。

11. 人工知能・機械学習

11.1 FDAは論文「FDA Perspective on the Regulation of Artificial Intelligence in Health Care and Biomedicine」(医療とバイオにおけるAI規制に関するFDAの展望)を、『JAMA』の「Special communication」に発表しました。著者らはFDAのAI規制の歴史を振り返るとともに、医療製品開発や臨床研究、臨床ケアにおけるAIの潜在的用途を紹介し、規制システムがAI特有の問題に適応する際に検討する価値のある概念を提示しています。

11.2 Heta Mehta氏の記事「The evolving role of contact-free AI devices in clinical trials」(臨床試験における非接触型AIデバイスの役割の進化)が『RF Quarterly』誌(2024;4(3):34-41)に掲載されていますが、こちらから無料でダウンロード可能です。

11.3 EMAとHMAは、オンライン・ワークショップ「HMA/EMA multi-stakeholder workshop on artificial intelligence (AI) — enabling the safe and responsible use of AI」(AIに関するHMA/EMAマルチステークホルダー・ワークショップ:安全で責任あるAI活用の実現)を、2024年11月5日9:00~17:40(中央ヨーロッパ時間)に開催します。ワークショップの主な内容は以下の通りです。

  • AI開発の最先端に関する基調講演
  • 政策・立法環境、AIリフレクションペーパーの改訂、これらによる影響に関する議論
  • 複数年にわたるAI作業計画の下で実施されるHMA/EMAの活動

11.4 Simon氏とAliferis氏によるオープンアクセス書籍「Artificial Intelligence and Machine Learning in Health Care and Medical Sciences」(ヘルスケアと医学におけるAIと機械学習)は、PDFファイルまたはEPUB形式として無料でダウンロード可能です。本書は、ヘルスケアにおけるAIの透明で倫理的かつ公平な使用に焦点を当てています。著者らは「AIはヘルスケアに真の革命をもたらす可能性があるが、責任ある実装が不可欠である」と述べています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年10月15日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

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【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからウェビナーのお知らせ

この度CORE Referenceウェビナーを開催する運びとなりましたのでご案内いたします。

  • 日時:2024年12月4日(水)12:30~13:45(中央ヨーロッパ夏時間)
  • テーマ:EMA Policy 0070事例紹介 – Voydeya
    (訳注:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン]。発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬)
  • 演者:CORE Reference TeamのRaquel Billiones氏とAlison McIntosh氏
  • 申込方法:欧州メディカルライター協会(EMWA)本部(membership@emwa.org)までメールでお申し込み下さい。

<ウェビナー概要>
2024年春に申請を完了し、2024年6月26日に臨床データが公開されたVoydeyaの例を用いて、EMA Policy 0070 Anonymisation Report(AnR:匿名化報告書)の作成について概説し、適切な匿名化手法の選択などについて議論します。主なトピックは以下の通りです。

  • EMA Policy 0070 AnRおよび関連する匿名化手法の概要
  • Voydeyaの申請で浮き彫りになった希少疾患特有の問題点
  • 臨床データの有用性を維持する上での課題
  • EMAとのコミュニケーションの振り返り(申請前相談を含む)
  • Voydeyaの匿名化プロセスから得られた学び

※過去の関連ウェビナー:2024年6月7日に開催したCORE Referenceウェビナーでは、EMA Policy 0070 AnRテンプレートをご紹介しました。詳細は、こちらでスライドNo. 21~37とビデオ録画の30~58分をご覧下さい。

2. 英国とMHRAのニュース

2024年10月15日、MHRAは、英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)と共同で、ウェビナー「Implementing the new UK Clinical Trials regulations」(英国の新たな臨床試験規制の施行)を開催しました。このウェビナーでは、ガイダンス案をステークホルダーと共有する共同計画が紹介されるとともに、新たな規制の施行に向けて予想されるスケジュールが明らかにされました。ウェビナーのビデオ録画が後日公開される予定です。

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govのProtocol Registration and Results System(PRS:治験プロトコル登録・結果システム)新版に関して、最新の「Release Notes」が2024年10月2日に発行され、Outcome Measures Moduleにおけるナンバリングの追加や、record access listの機能強化とリモデリングなどが説明されています。また、PRSの利用方法について解説したショートビデオ・シリーズ「Fast Forward from ClinicalTrials.gov」に、新たなデモンストレーション動画が2本追加されました。

3.2 FDAは最終ガイダンス「Electronic Systems, Electronic Records, and Electronic Signatures in Clinical Investigations: Questions and Answers」(臨床試験における電子システム、電子記録、電子署名:Q&A)を発表しました。本ガイダンスは、食品や医薬品、タバコ製品、新たな動物用医薬品の臨床試験における電子システム、電子記録、電子署名の使用に関する情報を、すべてのステークホルダーに提供するものです。

4. 欧州EMAのガイダンスとニュース

2024年9月24日、EMAは欧州委員会(EC)とHMAと共同で、「Joint EC/HMA/EMA multi-stakeholder workshop on pharmacogenomics」(ファーマコゲノミクスに関するマルチステークホルダー・ワークショップ)を開催しました。このワークショップのプレゼン資料とビデオ録画がこちらで公開されています。

5. 透明性・情報開示のリソースとニュース

PHUSEはデータの透明性に関するイベント「PHUSE Data Transparency Autumn event」を2024年9月17~19日に開催しました。このイベントのプレゼン資料とビデオ録画がこちらで公開されています。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

6. 開発戦略ニュース

6.1 EUのHTA CG(Member State Coordination Group on Health Technology Assessment:医療技術評価に関するEU加盟国調整グループ)は、2024年7月4日付の「Guidance on the validity of clinical studies, Version 1.0」(for joint clinical assessments)(臨床試験の妥当性に関するガイダンス、バージョン1.0:共同臨床評価用)を、欧州委員会(EC)の公式サイトに掲載しています。本ガイダンスは、医療技術評価(HTA)の範囲内で、マスタープロトコルやリアルワールドデータ、リアルワールドエビデンス、レジストリなどを含む臨床試験デザインのハイレベルな概要を説明しています。

6.2 FDAは最終ガイダンス「Electronic Systems, Electronic Records, and Electronic Signatures in Clinical Investigations: Questions and Answers」(臨床試験における電子システム、電子記録、電子署名:Q&A)を発表しました。(訳注:前述の記事No.3.2参照)

6.3 FDAは無料の公開ウェビナー「Informed Consent — More than Just Another Document to Sign?」(インフォームド・コンセント:署名するだけの文書ではない?)を、2024年11月8日14~15時(米国東部時間)に開催します。主な内容は以下の3点です。

  • インフォームド・コンセント資料を、臨床試験の被験者候補にとってよりわかりやすく改善することを支援するFDAの取り組みの最新情報
  • インフォームド・コンセントを明確で理解しやすく提示する方法の提案
  • 被験者候補の治験参加・不参加の判断の支援において、インフォームド・コンセントの改善で得られる効果の検討

ウェビナー参加者は、参加申込ページから、またウェビナー開催中に、質問を提出することができます。

7. 人工知能・機械学習

7.1 DIA(Drug Information Association)は、無料の公開セッション「Leveraging AI to Transform Regulatory Medical Writing」(AIを活用したレギュラトリーライティングの変革)を、2024年10月23日午前8時(米国東部時間)に開催します。演者はYseop社のAxel Byrd Le Sage氏です。
(訳注:Yseopは、フランスを拠点とするAIソフトウェア企業。生成AIによる治験文書作成の自動化などが専門。)

このセッションでは、特に臨床試験において、AIがメディカルライティングにどのような変革をもたらしているかを探ります。また、AIツールによって、主な治験文書(治験総括報告書 [CSR] や有害事象の叙述 [narrative] など)の作成作業を自動化し、ワークフローを合理化し、規制要件の準拠を強化する方法を紹介します。さらに、AIを既存のメディカルライティングのプロセスに組み入れて効率と正確性を向上させる実践的な戦略と実例も紹介します。詳細はpooja.phogat@krystelis.comまでお問い合わせ下さい。
(訳注:参加申込はこちらで受け付けています)

7.2 2024年7月、Neyarapally GAらは論文「Description and Validation of a Novel AI Tool, LabelComp, for the Identification of Adverse Event Changes in FDA Labeling」(FDAのラベリングにおける有害事象変更を検出するための新たなAIツール「LabelComp」の説明と検証)を発表しました。この論文は、市販後の医薬品安全性調査をサポートするAIについて説明するとともに、医薬品ラベリングの安全性関連情報の変更を研究者が効率的に特定・分析できるようにFDAが作成・検証した新たなAIツールについて論じています。

7.3 2024年9月9日、EMAは最終ガイダンス「Reflection paper on the use of artificial intelligence in the medicinal product lifecycle」(医薬品ライフサイクルにおけるAI活用に関するリフレクションペーパー)を発出しました。本リフレクションペーパーは、創薬から承認後まで、医薬品開発の様々な段階におけるAIと機械学習(ML)の適用に関する原則を示しています。

7.4 Reisらの論文「Influence of believed AI involvement on the perception of digital medical advice」(AIの関与がデジタル医療アドバイスの認識に与える影響)では、AIツールに対する一般市民の認識について考察しています。著者らの研究結果は、医師がAIを監督しているとされる場合でも、デジタル医療アドバイスを受ける際に「反AIバイアス」が生じることを示しています。

7.5 Brightwellらの論文「Trust and Inclusion in Digital Health: The Need to Transform Consent」(デジタルヘルスにおける信頼とインクルージョン:同意の変革の必要性)は、データ保護の規制と、デジタル変革の取り組み(健康アプリや、遠隔医療、患者の同意の重要性など)との相互作用について考察しています。著者らは、「健康アプリでユーザーの同意を求めるインターフェースは、プライバシーに敏感な人々のデジタルヘルスにおける信頼とインクルージョンに影響を与える可能性がある」と述べています。

8. アジア規制当局のニュース

8.1 PMDAはYouTubeに公式チャンネル「PMDA Channel」を開設しており、日本の医薬品・医療機器の規制に関して様々なコンテンツを配信しています。英語のコンテンツもあり、最近公開された英語動画「Regulatory Approach to Software as a Medical Device (SaMD) in Japan」(日本における医療機器プログラム [SaMD] の規制アプローチ)では、日本でのSaMDの定義、分類、一般的な審査ポイントが紹介されています。

8.2 香港のMDACS(Medical Device Administrative Control System:医療機器管理規制システム)は、Department of Health(香港衛生署)のMedical Device Division(医療機器課)が運営しており、医療機器のリスティング・システムと有害事象報告制度を監督しています。MDACSに関する最新のガイダンスノート「Overview of the Medical Device Administrative Control System, Edition 7」(MDACSの概要:第7版)(2024年9月30日付)では、セクション5.14「Validity of Listing Approval」(リスティング承認の効力)と、セクション5.15「Application Renewal」(申請更新)が改訂されています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

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国内外の業界情報や、英文ライティングのワンポイントレッスンなど
医薬翻訳・メディカルライティングに役立つ情報をお届けしています。
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CORE Reference News 2024年9月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからウェビナーのお知らせ

この度CORE Referenceウェビナーを開催する運びとなりましたのでご案内いたします。

  • 日時:2024年12月4日(水)12:30~13:45(中央ヨーロッパ夏時間)
  • テーマ:EMA Policy 0070事例紹介 – Voydeya
    (訳注:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン]。発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬)
  • 演者:CORE Reference TeamのRaquel Billiones氏とAlison McIntosh氏
  • 申込方法:欧州メディカルライター協会(EMWA)本部(membership@emwa.org)までメールでお申し込み下さい。

<ウェビナー概要>
2024年春に申請を完了し、2024年6月26日に臨床データが公開されたVoydeyaの例を用いて、EMA Policy 0070 Anonymisation Report(AnR:匿名化報告書)の作成について概説し、適切な匿名化手法の選択などについて議論します。主なトピックは以下の通りです。

  • EMA Policy 0070 AnRおよび関連する匿名化手法の概要
  • Voydeyaの申請で浮き彫りになった希少疾患特有の問題点
  • 臨床データの有用性を維持する上での課題
  • EMAとのコミュニケーションの振り返り(申請前相談を含む)
  • Voydeyaの匿名化プロセスから得られた学び

※過去の関連ウェビナー:2024年6月7日に開催したCORE Referenceウェビナーでは、EMA Policy 0070 AnRテンプレートをご紹介しました。詳細は、こちらでスライドNo. 21~37とビデオ録画の30~58分をご覧下さい。

2. ICH

E11Aガイドライン「Paediatric Extrapolation」(小児用医薬品開発における外挿)の採択に伴い、E11A expert working group(E11A専門家作業部会)が作成した同ガイドラインの入門研修プレゼン資料「ICH E11A Introductory Training Presentation on Pediatric Extrapolation」が公開されました。

3. EU CTRCTIS

3.1 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年9月24日号が発行されました。主な最新情報は以下の通りです。

  • タスクと情報提供依頼(RFI)を見逃さないためのアドバイス
  • 目安程度と見なすべきCTISタイムテーブルに関するアドバイス
  • CTISパブリックポータルの新機能(後述参照)
  • 今後開催予定のイベントとウェビナー
  • 年次安全性報告書(ASR)の提出に関する問題
  • システム改善・修正リスト最新版
  • 2024年7月と8月の臨床試験開始申請(CTA)提出数
  • 追加情報・ガイダンスの入手先

CTISパブリックポータルがすでに稼働していますが、「Advanced Criteria Search」(高度な条件検索)に、「Serious breach」(重大な違反)や、「Unexpected event」(予期せぬ事象)、「Urgent safety measure」(緊急安全対策)などの項目が新たに追加され、これにより、CTISに提出された状況イベントを検索できるようになりました。これらのイベントを検索して、プロセスの改善と品質管理の向上にお役立て下さい。

3.2 次回のCTISショート説明会は、2024年11月20日16:00~17:00(中央ヨーロッパ時間)に開催される予定です。CTISの機能に関する本説明会で、治験依頼者はCTISの専門家にリアルタイムで質問することにより、CTISについて実践的な情報を得られます。

3.3 2024年10月17日にオンラインイベント「CTIS Information Day」が開催されます。このイベントは、治験依頼者が臨床試験のCTIS移行を2025年1月31日の移行期限までに完了できるよう支援することを目的としています。

3.4 「CTIS Evaluation Timelines Version 2.1」(CTIS評価タイムラインVersion 2.1)(2024年9月)が発表されました。(訳注:本書は、臨床試験開始申請 [CTA] の審査の流れとスケジュールを提示しています)

3.5 2024年9月23~24日に開催されたDIA(Drug Information Association)の会議「Global Clinical Trial Disclosure and Data Transparency Conference」(臨床試験の開示とデータの透明性に関する国際会議)で、治験依頼者らは、CTISでの治験総括報告書(CSR)公開に関して期待感を示しました。この会議の演者の1人Julie Holtzople氏は、会議で得られた情報を要約して、次のようにLinkedInに投稿しています。

  • CTISでのCSRの公開範囲が明確になりました。EMA Policy 0070(臨床試験データ公開)と同様に、CSRの1~15章および付録16.1.1、16.1.2、16.1.9です。モジュール2はCTISでの公開の対象外です。
  • CSRは、規制当局のタイムラインに基づき、EMA Policy 0070より先にCTISにアップロードされることになっています。これは治験依頼者にとって厄介な問題です。
  • CSRがCTIS上でレビューされる予定はありません。
  • CTISで公開対象となるCSRは、EMA Policy 0070より多いです。なぜなら、EMA Policy 0070は中央審査方式の申請のみを対象としているのに対し、CTISには、EU加盟国ごとに別々に提出される申請がすべて含まれるからです。
  • 技術的結果のCTIS提出に関しても少し議論され、現時点ではEudraCTの書式を用いてアップロードすることが提案されました。
  • substantial modification(大幅な変更)の一環として臨床試験を新たな治験依頼者に移行する場合、組織のID番号の更新が、CTISの臨床データ公開のきっかけになります。
  • EMA Policy 0070に関する情報:EMAは、保留中のPart 2再開計画に関する最新情報を2025年に発表する予定です。Phase 2の実施の詳細については、現在EMA内で検討されていません。

4. EUの医薬品規制

4.1 EMAは、単群試験に関する最終ガイダンス「Reflection paper on establishing efficacy based on single-arm trials submitted as pivotal evidence in a marketing authorisation」(製造販売承認において重要なエビデンスとして提出される単群試験に基づく有効性の確立に関するリフレクションペーパー)を発出しました。

4.2 EU委員会は、「Updated rolling plan — Implementation of the Regulation on Health Technology Assessment (Sep 2024)」(医療技術評価規則の実施に関するローリングプラン、2024年9月更新)を発表しました。医療技術評価規則(HTAR)(Regulation (EU) 2021/2282)は2022年1月11日に発効しており、2025年1月12日より適用されます。

5. 英国とMHRAのニュース

5.1 2024年9月5日、英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、「Tell us about your older studies」(古い研究について教えて下さい)を発表しました。2018年以前の研究が完了しているか確認するため、今後6週間にわたってスポンサーと連絡を取るとしています。

5.2 2024年9月19日、HRAは「Clinical Trials Update」最新版を発行し、研究倫理委員会(REC)の委員の条件や、研究の透明性の要件などについて最新情報を提供しています。

6. 米国FDAのガイダンスとニュース

6.1 2024年9月、FDAはガイダンス案「Considerations for Generating Clinical Evidence from Oncology Multiregional Clinical Development Programs」(オンコロジーの国際共同臨床開発プログラムでの臨床エビデンス生成に関する考慮事項)を発出しました。本ガイダンス案は、癌治療薬の承認申請を裏付ける国際共同治験(MRCT)の実施に関して、推奨事項を治験依頼者に提示しています。本ガイダンス案ではMRCTを「単一の治験プロトコルの下、複数の地域で実施される臨床試験」と定義しており、「地域」は「地理的な地域や国、規制上の地域」と定義されています。本ガイダンス案に対するパブリックコメントを2024年11月18日まで受け付けています。

6.2 2024年9月、FDAは最終ガイダンス「Conducting Clinical Trials With Decentralized Elements」(分散型臨床試験の実施)を発出し、分散型臨床試験(DCT)の実施に関する推奨事項を提示しています。分散型臨床試験は、被験者にとって都合の良い場所からリモートでの治験参加を可能にする手法であり、治験スタッフによるオンライン診療や、遠隔地の治験スタッフによる訪問診療、近隣のサテライト医療機関への来院などにより、被験者のリモート参加が可能になります。

6.3 2024年9月、FDAはガイダンス案「Integrating Randomized Controlled Trials for Drug and Biological Products into Routine Clinical Practice」(医薬品および生物学的製剤のランダム化比較試験を日常診療に統合)を発出しました。本ガイダンス案は、必要なデータ収集に重点を置いて合理化された治験プロトコルと手順によるランダム化比較試験(RCT)の実施を支援し、試験を日常の診療に組み込めるようにすることを目指しています。本ガイダンス案に対するパブリックコメントを2024年12月17日まで受け付けています。

6.4 FDAは最終ガイダンス「Study Data Technical Conformance Guide — Technical Specifications Document」(試験データ技術適合ガイド:技術仕様書)を発出しました。本ガイダンスは、FDAがサポートするデータ標準を使用して標準化された試験データを提出する方法について、仕様や推奨事項、一般的な考慮事項を示しています。これは、業界向けガイダンス「Providing Regulatory Submissions in Electronic Format — Standardized Study Data」(電子フォーマットによる薬事申請:標準試験データ [eStudyデータ])を補足するものです。

7. リアルワールドデータ

CIOMSワーキンググループXIIIの報告書「Real-world data and real-world evidence in regulatory decision making」(規制当局の意思決定におけるリアルワールドデータとリアルワールドエビデンス)が、PDFファイルで無料ダウンロードできます。

8. 透明性・情報開示のリソースとニュース

8.1 米国ハーバード大学/ブリガム&ウィメンズ病院のMRCTセンターは、2024年10月に下記の3つのウェビナーを開催し、臨床試験の被験者への情報提供に、ヘルスリテラシーとアクセシビリティのベストプラクティスを取り入れるための実用的なツールについて議論・提示します。参加は無料で、申込者が当日リアルタイムで参加できない場合は、ウェビナーの録音・録画のリンクと資料が後日提供されます。

訳注)MRCTセンター:Multi-Regional Clinical Trials Center of Brigham and Women’s Hospital and Harvard(ハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院の国際共同治験センター)。ブリガム&ウィメンズ病院は、米国ハーバード大学医学部の附属病院としての役割を担う医療・研究・教育機関の1つ。MRCTはハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院に属しており、国際共同治験の改善を目的とする研究・政策センター。

8.2 Paula Boyles氏のウェブ記事「Individual participant data return solutions and strategies」(個別被験者データ返却 [iPDR] の課題解決法と戦略)は、臨床試験で個別被験者データ(IPD)を被験者に返却することについて検討しています。この記事ではiPDRを「各被験者の個々のデータの返却」と定義し、臨床試験で集計した結果のレイサマリー(layperson summary)の提供とは別であるとしています。

8.3 英国オックスフォード大学の医学生Daya Deb氏のブログ記事「Engaging Gen Z in future healthcare: the role of pharma, Open Science and the Third Sector」(今後の医療へのZ世代参画:製薬会社、オープンサイエンス、第三セクターの役割)は、「デジタルネイティブで、社会的意識が高く、透明性と信頼性を求めることが特徴的」で、「透明性を重視し、情報へのオープンなアクセスを期待する世代」であるZ世代を、医療に参画させることの重要性について説明しています。

8.4 欧州製薬団体連合会(EFPIA)は、ブログ記事「Data anonymisation: balancing privacy and progress」(データの匿名化:プライバシーと進歩のバランス)で、データ共有のコンテキスト化の重要性を強調しています。また、EFPIAは、臨床試験の情報開示とは無関係な人々が、データの有用性の維持と患者のプライバシー保護のバランスを理解するのに役立つ、「Anonymisation Gradient」(匿名化の度合い)という図解ガイドを作成しました。

9. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

Real Life Sciences社は無料のウェビナー「Qualitative Anonymization Best Practices for Policy 0070 and PRCI Disclosure Submissions」(EMAのPolicy 0070およびカナダ保健省のPRCI [Public Release of Clinical Information] に準拠した臨床試験データ提出のための定性的匿名化のベストプラクティス)を、2024年10月16日15時(英国時間)に開催します。このウェビナーでは、匿名化の定性的手法と定量的手法の違いや、プロジェクトが予定の期限内に完了して規制当局に承認されるためのベストプラクティスについて検討します。参加申込の詳細はこちらをご覧下さい。

10. 開発戦略ニュース

10.1 TransCelerate社は、2024年7月のウェビナーに続き、ウェビナー「Vulcan UDP (Utilizing the Digital Protocol): Spotlight on Connectathon Results and Plans」(Vulcan UDP [デジタルプロトコルの活用]:コネクタソンの結果と計画)を、2024年10月15日午前9時~10時30分(米国東部時間)に開催します。

Vulcan UDPは、ICH M11ガイドライン「電子的に構造化・調和された臨床試験実施計画書」とエンドユーザーの価値を向上させる包括的なプロジェクトです。ウェビナーでは、(1)UDPプロジェクトの背景、(2)UDPコネクタソン(ビジネスプロセス内で開発作業をテストする技術イベント)の知見(特にタイトルページや、適格性基準、目標・エンドポイント・estimandの研究レベルの要素)、(3)実装準備のための実践的な手順の3点について説明します。

10.2 2024年9月25日、WHO(世界保健機関)は、先進国・途上国を問わず、すべての国の臨床試験のデザイン、実施、監督の改善を目的とした最終ガイダンス「Guidance for best practices for clinical trials」(臨床試験のベストプラクティスに関するガイダンス)を発出しました。これに伴い、ニュースリリース「New global guidance puts forward recommendations for more effective and equitable clinical trials」(新たな国際的ガイドラインが、より効果的で公平な臨床試験のための推奨事項を提示)と、ウェビナー「Launch of guidance for best practices for clinical trials」(臨床試験のベストプラクティスに関するガイダンスの運用開始)のビデオ録画もリリースされました。2年をかけて作成されたガイダンスは、臨床研究のインテグリティ(完全性)と有効性を世界的に高めることを目指しています。

11. 人工知能・機械学習

11.1 RAPS(Regulatory Affairs Professionals Society:薬事専門家協会)のウェブ記事「Regulatory strategist toolbox: Free AI tools to augment deliverables」(規制ストラテジストのツールボックス:成果物を補強する無料のAIツール)は、無料のAIツールを幾つか紹介し、それらを活用して質の高い規制成果物の作成をサポートする方法について説明しています。著者らは、ライティングを含む規制業務をサポートするAIツールを厳選してレビューしました。記事発表の時点で著者らにとって既知の無料AIツールが中心です。

訳注)RAPS:医薬品や生物製剤、医療機器、デジタルヘルスなどの規制に携わる専門家の世界最大の組織。1976年に米国で設立され、国内外の規制当局やアカデミア、製薬・医療機器業界などの専門家により、レギュラトリーサイエンスの情報交換や教育を実施。

11.2 2024年9月29日、FDAは「Digital Health and Artificial Intelligence Glossary — Educational Resource」(デジタルヘルス・AI用語集:教育リソース)を発表しました。この用語集は、デジタルヘルスAI・機械学習の分野でよく使われる用語とその定義をまとめたものです。

11.3 ドイツのドレスデン工科大学は、ハイブリッド式シンポジウム「Large Language Models in Medicine」(医療におけるLLM)を2024年10月10日に開催します。このイベントでは、癌診療におけるLLMの有用性を中心に、医療におけるLLMの機能について概説します。また、ヘルスケアをサポートするLLMの役割や、リアルワールドデータの活用を取り巻く法律、研究および企業の視点から医療におけるLLMの実用的な応用を紹介する様々な実装プロジェクトも取り上げます。

11.4 2024年9月9日、EMAは、最終ガイダンス「Reflection paper on the use of artificial intelligence in the medicinal product lifecycle」(医薬品ライフサイクルにおけるAI活用に関するリフレクションペーパー)を発出しました。その目的は、医薬品規制の意思決定と患者の安全性に対する信頼が損なわれないようにすることです。本リフレクションペーパーは、創薬から承認後まで、医薬品開発の様々な段階において、AIと機械学習を安全かつ効果的に適用するための原則を示しています。最終版では、ドラフトに対するパブリックコメントにより、適用範囲の明確化や、専門用語の統一と説明、リスクに関する用語の言い換え、EUのAI規制法と急速に変化する状況についてのさらなる検討、AIに関する正式なEMA科学的ガイドラインの今後の起草のサポートなどが実現しました。

12. アジア規制当局のニュース

シンガポール保健科学庁(HSA)は、2024年9月25日に発効する「eCTD Specification package version 1.0」(eCTD仕様パッケージ:バージョン1.0)をリリースしました。パッケージは以下の文書で構成されています。

  • SG-HSA eCTD仕様・バリデーション基準
  • 技術ファイル(定義済みリスト、バリデーションマトリクス、スタイルシート、スキーマ)
  • eCTD提出サンプル

eCTDポータルの運用開始は2025年3月の予定です。詳細はこちらをご覧下さい。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年9月16日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年9月10日号が発行されました。主な最新情報は以下の通りです。

  • タスクと情報提供依頼(RFI)を見逃さないためのアドバイス
  • 目安程度と見なすべきCTISタイムテーブルに関するアドバイス
  • CTISパブリックポータルに近日追加予定の新機能
  • 今後開催予定のイベントとウェビナー
  • 年次安全性報告書(ASR)の提出に関する問題
  • システム改善・修正リスト最新版
  • 2024年7月と8月の臨床試験開始申請(CTA)提出数
  • 追加情報・ガイダンスの入手先

1.2 2024年9月20日にCTISパブリックポータルに追加される新機能により、ユーザーは高度な検索や、検索結果・臨床試験情報のダウンロード、RSSフィードの購読が可能になります。

2. EUの医薬品規制

イタリア医薬品庁(AIFA)は、医薬品に関する観察研究の分類と実施のためのガイドライン(イタリア語)を発出しました。

3. 英国とMHRAのニュース

2024年8月、臨床試験登録サイトISRCTN registryは、「Transparency Tracker」(透明性の追跡)の改良版の稼働を開始しました。改良版のレジストリ記録では、試験の事前登録やプロトコル、統計解析計画書(SAP)、結果などの各項目の横にラジオボタンが配置され、このボタンのon/off表示により、各々の登録の有無がひと目でわかるようになりました。(訳注:実例としてBEEP試験の記録を参照するよう、同サイトで推奨されています)

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

4.1 FDAはガイダンス案「Incorporating Voluntary Patient Preference Information over the Total Product Life Cycle」(製品のライフサイクル全体にわたる、患者の自発的な選好情報の取り込み)を発表しました。本ガイダンス案は、製品のライフサイクル全段階を通じて患者の選好情報(PPI)を収集してFDAに提出するために、いつ、どのような方法を用いることができるかについて、FDAの推奨を示すものです。これは、治験依頼者や患者選好調査開発者が、ベネフィット・リスクに関するFDAの意思決定に情報を提供するための患者選好調査を適切に設計する際に、最新の方法や留意事項を取り入れるのに役立ちます。本ガイダンス案に対するパブリックコメントを、こちらで2024年12月5日まで受け付けています。

また、FDAは本ガイダンス案に関するウェビナーを2024年10月15日に開催します。このウェビナーは事前の申込なしで参加できます。

4.2 FDAは、臨床試験の最新化と医薬品開発の加速に役立つトピックに関するFDAガイダンス文書の透明性あるコミュニケーションと普及を促すため、「Guidance Snapshot Pilot Program」(ガイダンス・スナップショットのパイロットプログラム)を開始しました。本プログラムは、ガイダンス文書の要点をビジュアル表現と平易な言葉でまとめたスナップショットを通じて、ガイダンス文書に対する一般の人々の認識と関与を高めることを目指しています。ガイダンス・スナップショットの一覧表や、スナップショットの見方と限界に関する説明をご確認下さい。

5. 欧州EMAのガイダンスとニュース

5.1 2024年8月29日、EMAは「Guiding principles on the use of large language models in regulatory science and for medicines regulatory activities」(レギュラトリーサイエンスおよび薬事規制活動における大規模言語モデルの使用に関する基本原則)を発表しました。この文書は、レギュラトリーサイエンスおよび薬事規制活動における汎用大規模言語モデル(LLM)の使用に関して基本原則を示し、LLMの安全かつ効果的で責任ある使用を促進するために、規制当局にハイレベルな推奨事項を提供するものです。「Conclusion」セクションでは、「この急速に発展する分野において、公衆衛生を守り、医薬品規制当局の信頼を維持するために、高度なAIツールを規制プロセスに統合するための構造化されたアプローチを提供することは、かつてないほど重要である」と述べています。

5.2 EMAは「Scientific Symposium on Advanced Therapy Medicinal Products – Contribution, evolution, revolution」(先端医療医薬品 [ATMP] に関する科学シンポジウム:貢献、進化、革命)を、2024年10月10日にハイブリッド式(アムステルダムのEMA本部とオンライン)で開催します。本シンポジウムでは、ATMPがどのように患者のケアに革命をもたらしているかに焦点を当て、規制の進歩や、アンメット・メディカル・ニーズに応える画期的な治療法について議論します。また、EMAの先端医療委員会(CAT)の進化と、新規クラスのATMPがもたらす課題へのCATの取り組みについて概説します。参加申込期限は、対面参加が2024年9月24日、オンライン参加が2024年10月1日です。

5.3 EMAは欧州委員会(EC)とHMAと共同で、「Joint EC/HMA/EMA multi-stakeholder workshop on pharmacogenomics」(ファーマコゲノミクスに関するマルチステークホルダー・ワークショップ)を、2024年9月24日にアムステルダムのEMA本部で開催し、ライブ配信します。

6. 開発戦略ニュース

医療システムへの患者参画を促す国際的な非営利組織Patient-Focused Medicines Development(PFMD)は、「Patient Engagement (PE) & Patient Experience Data (PED) project」(患者参画 [PE] &患者体験調査データ [PED] プロジェクト)について、パブリックコメントを募集しています。PFMDは、ステークホルダーが研究で有意義なPEを実施するための手引きとして、「PE & PED Integrated Navigator」(PE&PED統合ナビゲーター)を作成することを目指しています。

7. 人工知能・機械学習

7.1 2024年8月29日、EMAは「Guiding principles on the use of large language models in regulatory science and for medicines regulatory activities」(レギュラトリーサイエンスおよび薬事規制活動における大規模言語モデルの使用に関する基本原則)を発表しました。詳細については、前述の「欧州EMAのガイダンスとニュース」セクション5.1をご覧下さい。

7.2 国際的な非営利組織Pistoia Allianceが研究データの管理・責任に関して提唱しているFAIR原則(Findable、Accessible、Interoperable、Re-usable:検索可能、アクセス可能、相互運用可能、再利用可能)は、価値ある情報の検索に要する時間を短縮し、データの相互運用性と再利用性を促進し、AIイニシアチブを可能にすることで、組織に付加価値をもたらします。ウェビナー「Maturity Frameworks Supporting the Implementation of FAIR Data Principles」(FAIRデータ原則の実装をサポートする成熟度フレームワーク)が2024年9月4日に開催され、ビデオ録画がこちらで公開されています。

訳注)Pistoia Alliance:ライフサイエンスと医療における研究開発のイノベーションの障壁を下げることに取り組む国際的な会員制非営利組織。2007年にイタリアのPistoiaで開催された会議を契機に設立され、ライフサイエンス分野の企業や学術団体、出版社など100社以上が加盟。

7.3 英国の独立諮問機関UK Research Integrity Office(UKRIO)は、2024年10月9日にウェビナー「AI in Research: Supporting Research Integrity through Governance and Ethics」(研究におけるAI:ガバナンスと倫理を通じた研究インテグリティのサポート)を開催します。

7.4 欧州委員会は、EUデータ法(規則(EU)2023/2854)の施行を支援するため、「Frequently Asked Questions (FAQs) on the Data Act」(データ法に関するFAQ)を発表しました。

7.5 米国、EU、英国などは、AIの使用に関する初の国際条約「Framework Convention on artificial intelligence and human rights, democracy, and the rule of law」(AIと人権、民主主義、法の支配に関する枠組み条約)に署名しました。本条約は、AIシステムの有害で差別的な結果に対して、署名国が責任を負うことを求めています。また、AIシステムのアウトプットが平等とプライバシーの権利を尊重することも求めています。(訳注:日本は条約策定にオブザーバー参加しましたが、署名は見合わせました)

7.6 El Fassiらのコメント論文「Not all AI health tools with regulatory authorization are clinically validated」(規制当局が承認した医療用AIツールがすべて臨床的に検証されているとは限らない)で、著者らは、医療用AIの臨床的有効性の指標としての「FDA認可」を評価するために、新たな検証基準が必要であると述べています。

7.7 QuerとTopolは論文「The potential for large language models to transform cardiovascular medicine」(大規模言語モデル [LLM] が循環器医療を変革する可能性)を発表しました。これは、『The Lancet Digital Health』誌に掲載されている4部構成の論文シリーズ「Artificial intelligence and digital innovations in cardiovascular care」(循環器医療におけるAIとデジタルイノベーション)のうち、4番目の論文です。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年8月31日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. ICH

2024年8月21日、ICHはE11Aガイドライン「Paediatric Extrapolation」(小児用医薬品開発における外挿)の採択を発表しました。本ガイドラインは、成人の臨床試験データを小児集団へ外挿するために、統一された枠組みを確立するものです。この程、ICHガイドライン作成プロセスのステップ4に到達し、規制当局が各々の国・地域で本ガイドラインを実装する準備が整いました。

ICH E11Aガイドラインは、ICH E11(R1)「小児集団における医薬品開発の臨床試験に関するガイダンスの補遺」(2017年)を補完・発展させ、小児用医薬品開発の最適化において小児集団へ外挿するための、より包括的な枠組みを提供することを目的としています。ICH E11「小児集団における医薬品開発の臨床試験に関するガイダンス」(2000年)とICH E11(R1)は、両者合わせて1組のガイドラインとみなすのが望ましいです。

2. EU CTRCTIS

2.1 EMAは、EU臨床試験指令(CTD)から臨床試験規則(CTR)への試験移行について、ユーザーの質問に答えるCTISショート説明会を2024年9月18日に開催します。参加者は質問を2024年9月11日まで提出できます。

2.2 EMAは「EU CTIS Sponsor Handbook, Version 4.0」(EU CTIS治験依頼者用ハンドブック、バージョン4.0)を発表しました。また、研修モジュールとFAQも一部更新されましたので、「Guide to CTIS Training Catalogue, Version 1.3」(CTIS研修カタログの手引き、バージョン1.3)をご確認下さい。

3. 英国とMHRAのニュース

3.1 英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、医薬品承認申請前の助言について概説した「Guidance on Pre-submission Advice & Support」(申請前助言・支援に関するガイダンス)を発出しました。申請前助言は、ステークホルダーに対して、申請書やその裏付けとなるエビデンスの作成・提出のプロセスが自社製品にどのように適用されるかを理解する方法を提供するものです。これは、MHRAが提供している科学的助言(Scientific Advice)とは別の助言制度です。

3.2 英国政府は、臨床試験を促進し、NHSの患者が新たな治療法に迅速にアクセスできるようにするため、最大4億ポンドの官民投資プログラム「Voluntary Scheme for Branded Medicine Pricing, Access and Growth (VPAG) Investment Programme」(先発医薬品の価格設定、アクセス、進歩に関する自主的制度 [VPAG] 投資プログラム)を立ち上げました。これにより、新たに18の臨床試験ハブも設立されます。

3.3 MHRAは、医薬品承認申請前の助言・支援へのアクセスに関するガイダンスを提供していますが、この程、将来の承認申請に関する情報提供について、ガイダンス「Medicines Pipeline data」(医薬品開発パイプラインのデータ)を発出しました。現在の医薬品販売承認保持者(MAH)や今後予定されるMAHは、情報提供用スプレッドシートのテンプレートを本ガイダンスのウェブサイトからダウンロードし、現在計画中または将来の承認申請に関する情報を可能な限り詳細に記入して、MHRAに提出する必要があります。MHRAへの承認申請と新規適応症の予定について、MHRAは申請の5年前までにすべて把握することを目指しています。

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

4.1 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govのProtocol Registration and Results System(PRS:治験プロトコル登録・結果システム)は、2024年8月28日から新版(ベータ版)がメインのサイトになりました。PRSベータ版の詳細については、米国国立医学図書館(NLM)のニュースレター「NLM Technical Bulletin」(NLM技術速報)2024年8月7日号と、「Release Notes」2024年8月28日号をご覧下さい。また、リニューアルしたClinicalTrials.govとPRSの利用方法について解説したショートビデオ・シリーズが、「Fast Forward from ClinicalTrials.gov」で公開されていますので、併せてご覧下さい。

4.2 FDAは初回小児試験計画(iPSP)の提出およびiPSPの改訂に関して、治験依頼者向けに推奨事項を記載したガイダンス「Pediatric Study Plans: Content of and Process for Submitting Initial Pediatric Study Plans and Amended Initial Pediatric Study Plans」(小児試験計画:iPSPおよびその改訂版の内容と提出プロセス)を発出しました。本ガイダンスにはiPSPのテンプレートも含まれています。

4.3 FDAのCDER Center for Clinical Trial Innovation (C3TI)(CDER臨床試験イノベーションセンター)は、医薬品開発の効率向上のために臨床試験への革新的アプローチを支援する中枢です。C3TIに関する最新のFAQをご覧下さい。

4.4 FDAは、最終ガイダンス「Product-Specific Guidance Meetings Between FDA and ANDA Applicants Under GDUFA」(ジェネリック医薬品ユーザーフィー改正法 [GDUFA] に基づくFDAと簡略新薬承認申請 [ANDA] 申請者との製品別ガイダンス会議)を発出しました。

5. リアルワールドデータ

FDAのポッドキャスト「Q&A with FDA」シリーズに、FDAのChief Medical Officer(CMO:最高医学責任者)Hilary Marston氏が出演し、RWD・RWEの生成について一般から寄せられた質問に答えました。Marston氏は、FDA長官Robert Califf氏に対して主席臨床アドバイザーの役割を担っています。Q&AではRWDとRWEについて論じるとともに、FDAが臨床試験をどのように継続的に進化させ、医薬品を含む医療製品の安全性と有効性を裏付ける信頼できるエビデンスをどのように推進し続けているか説明しています。詳細は「Real-World Data and Evidence Generation with Dr Hilary Marston」をお聞き下さい。

6. 透明性・情報開示のリソースとニュース

6.1 PHUSEが主催する、データ透明性に関するオンラインイベント「PHUSE Data Transparency Autumn event」は、こちらで参加申込を受付中です。開催日は2024年9月17~19日で、参加費は無料です。イベントで取り上げるトピックは、自律的なセキュリティや透明性の高いデータ共有における最先端のアプローチから、AIを活用したデータ保護や臨床文書作成における最新の進歩まで多岐に渡ります。アジェンダはこちらをご覧下さい。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

6.2 欧州データ保護監督機関(EDPS)とスペインデータ保護局(AEPD)は、2021年に共同文書「10 misunderstandings related to anonymisation」(匿名化に関する10の誤解)を発表しています。この文書は、個人データの匿名化に関して代表的な誤解を10個取り上げ、それらに対して正しい事実を説明するとともに、理解を深めるための参考文献を紹介しています。本書の目的は、(1)匿名化にまつわる誤解について一般の人々の認識を高めること、(2)匿名化技術に関する主張を鵜呑みにせず確認するよう促すことの2つです。

7. 開発戦略ニュース

7.1 (訳注:FDAは、ある抗癌剤の公式サイトに掲載されている有効性情報に、虚偽や誤解を招く主張・表現が認められるとして、同剤を製造販売している製薬企業に書簡を送り、公開しました。)この書簡について、Rose氏は次のようなコメントをLinkedInに投稿しています。「FDAの書簡は、有効性の主張の裏付けとなる質の高い適切なデータの重要性を強調しており、同社の特定のデータがその基準に達していなかった理由を説明しています。免責事項や開示事項、制限事項は言うまでもなく有用であり、状況によっては必須ですが、これらの事項は信頼できる適切なデータの要件を緩和するものではなく、さもなければ主張全体が誤解を招く恐れがあることを書簡は明確にしています。特にプールデータや単群試験、事後解析などの潜在的な限界といった問題が、書簡で取り上げられています。さらに、この書簡は、販促資料の表現や提案を裏付けられないデザインの研究に基づく表現や提案を、販促資料に含めることは誤解を招くと規制が明示していることを再確認させてくれます。この書簡は、臨床試験をデザインする人々のみならず、販促資料・プログラムの作成やレビューに携わるすべての専門分野の人々も読むべきです。」

7.2 HuangとParikhの論文「Towards Generalizing Inferences from Trials to Target Populations」(臨床試験から対象集団へ推測の一般化に向けて)は、臨床研究から得られるデータや推測について、実臨床へのgeneralizability(一般化可能性)とtransportability(移転可能性)を検討しています。

7.3 Daher氏とVilimelis-Piulats氏は、レビュー記事「The EU Paediatric Regulation: Current status, future outlook」(EU小児用医薬品規制:現状と今後の展望)を発表しました。著者らは、小児用医薬品の開発に関して、EUの法改正で計画されている変更と、開発の制限が緩和される可能性について概説しています。

8. 人工知能・機械学習

8.1 Fazaeli氏のLinkedIn記事「The Double-Edged Sword of AI in Healthcare: Why We Need More Than Just LLMs」(医療におけるAIの両刃の剣:大規模言語モデル [LLM] だけでは不十分な理由)は、特に臨床データの要約に焦点を当て、AIモデルのハルシネーションに関する知見を提供しています。

8.2 英国国立医療技術評価機構(NICE)は、ポジションペーパー「Use of AI in evidence generation: NICE position statement」(エビデンス生成におけるAIの利用:NICEの立場表明)を発表しました。この声明は、NICEが検討するエビデンスのあらゆる側面に、AIの手法をどのように適用できるかを検討して作成されており、医療技術評価関連の目的で適用または研究されているとNICEが認識しているAIの手法も取り上げています。

8.3 Katherらは論文「Large Language Models could make Natural Language again the Universal Interface of Healthcare」(LLMにより自然言語が再び医療のユニバーサルインターフェイスになる可能性)を発表し、医療分野の文書作成とコミュニケーションの簡素化におけるLLMの活用について論じています。

8.4 Lenharo氏の記事「The Testing of AI in Medicine is a Mess. Here’s How it Should be Done」(医療におけるAIテストの混乱:AIをどうテストすべきか)は、医療におけるAIアプリケーションの現状を確認し、アルゴリズムの開発と臨床的検証との間にギャップが存在することや、標準化された厳格なテスト方法が早急に必要であることを指摘しています。

8.5 Freyerらは論文「A Future Role for Health Applications of Large Language Models Depends on Regulators Enforcing Safety Standards」(LLMの医療用アプリケーションの将来の役割は、安全基準を施行する規制当局次第)を発表しました。この論文は、医療目的で使用される(したがって医療機器として規制されるべき)医療用アプリケーションについて、規制の曖昧さとリスクを浮き彫りにしています。

8.6 欧州委員会は、調査報告書「Cyber security in the health and medicine sector: a study on available evidence of patient health consequences resulting from cyber incidents in healthcare settings」(医療分野のサイバーセキュリティ:医療現場で患者の健康に影響を及ぼすサイバーインシデントの事例の調査)を発表しました。この調査では、EU域内で、治療の延期や手術の遅れなど、健康に悪影響を与えた疑いのあるサイバーインシデントの事例を検証した結果、サイバーセキュリティ上の脆弱性が複数判明しました。

8.7 欧州データ保護監督機関(EDPS)とスウェーデンのKarlstad大学は、2024年9月3日にInternet Privacy Engineering Network(IPEN)のイベント「Human supervision of automated decisions」(自動意思決定に対する人間による監督)を開催します。

9. アジア規制当局のニュース

シンガポール保健科学庁(HSA)は、「Regulatory Updates for Therapeutic Product Registration (effective 01 Aug 2024)」(治療製品の登録規制の最新情報:2024年8月1日発効)を発表しました。以下の情報などが含まれています。

  • 新薬承認申請(NDA)や他の標準申請・簡略申請に関して、主な評価に要する日数を推測するための新たなウェブツール
  • 承認申請書類提出用の新たなクラウドベースのプラットフォーム
  • 承認後の変更に関するガイドライン
  • eCTD実装の最新状況
  • バイオシミラーのリスク管理計画(RMP)の要件緩和

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年8月15日号

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治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

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【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年7月26日号が発行され、CTIS利用者に対して以下の2つの注意事項が記載されています。

  • 通知&アラート:未完のタスクと必要なアクションの概要については、通知とアラートのみに頼らず、「Task」タブや「Requests for Information (RFI)」タブも定期的に確認することをお勧めします。
  • タイムテーブル:臨床試験申請の評価中、タイムテーブルには、「Task」ページや「RFI」ページに表示される実際の期限・ステータスとは異なる期限やステータス、情報が表示される場合があります。しかし、この表示の不一致がワークフローや、タスクとRFIの実際の期限に影響を及ぼすことはありません。

2. 英国とMHRAのニュース

2.1 英国国民保健サービス(NHS)医療研究機構(HRA)の最近の主な活動は、以下の通りです。

  • HRA Now — UK wide alignment with important changes to our processes」(HRA最新情報:英国全土における重要なプロセス変更の統一化)が発表されました。この変更により、2024年8月1日以降、英国の4つの構成国のいずれかで研究倫理委員会(REC)の承認を受けた研究は、年次進捗報告書の提出が不要になりました。また、研究者が安全性報告書を提出した場合の対応についても変更がありましたので、「HRA Now」でご確認下さい。
  • Annual report and accounts for 2023-24」(2023~2024年度の年次報告書と決算書)が発表されました。また、この報告書の中の「Performance report 2023-24」(2023~2024年度業績報告書)では、毎年恒例の「Make it Public week」(研究開示啓発週間)やそれに伴う無料ワークショップなど、HRAの活動の主な成果が紹介されています。
  • 研究倫理委員会(REC)、機密諮問グループ(CAG)、一般参加ネットワークのメンバーで構成されるHRA Communityの多様性などに関する調査結果が、「HRA Community demographic report」(HRAコミュニティの人口統計レポート)として発表されました。CAGの詳細については、ブログ記事「Demystifying the Confidentiality Advisory Group and building relationships with Integrated Care Systems」(CAGの役割と統合ケアシステムとの関係構築)をご覧下さい。
  • 英国の「Shared Commitment to Public Involvement」(市民参画への共同コミットメント)においてHRAが研究の多様性向上のために行っている取り組みが、国際的イベント「Patient Engagement Open Forum 2024」(患者参画オープンフォーラム2024)で発表されました。

2.2 HRAは、臨床研究を被験者のために改善する方法について一連の提言をまとめた報告書「Addressing the barriers to People-Centred Clinical Research: Recommendations for system-wide action」(患者中心の臨床研究の障壁に対する取り組み)を発表しました。この報告書はHRAの「People-Centred Clinical Research」プロジェクトの成果であり、患者中心の臨床研究の促進を目的として、変革のための推奨事項を19項目提示しています(報告書の20頁参照)。

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 FDAと米国国立衛生研究所(NIH)は、FDAの規制に初めて触れる新興企業などを対象に、ウェビナー「Regulatory Do’s and Don’ts – Tips from FDA」(規制上の注意事項:FDAからのヒント)を2024年9月4日に開催します。アカデミアのライフサイエンス系アクセラレータや、起業して間もない癌関連企業などが新たな抗癌剤、医療機器、診断薬を開発するのを支援するため、FDAのCBER、CDER、CDRH(医療機器・放射線保健センター)は共同でリソースとプログラムを開発しています。ウェビナーでは、このリソースとプログラムについて概説します。

3.2 FDAはICH M12ガイドライン「薬物相互作用試験」を採用し、最終ガイダンス「M12 Drug Interaction Studies」(M12薬物相互作用試験)と、その補足文書「M12 Drug Interaction Studies: Questions and Answers」(M12薬物相互作用試験:Q&A)を発表しました。このガイダンスには、被験薬の代謝酵素またはトランスポーターを介した薬物動態学的薬物相互作用の可能性を検討するための一般的な推奨事項が示されています。補足のQ&A文書では、同ガイダンスに取り上げられている概念がさらに明確に説明されています。同ガイダンスは、被験薬の開発過程でin vitroおよび臨床における薬物相互作用評価を設計、実施、解釈するための推奨事項を、地域間で一致させることを目的としています。

3.3 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govのProtocol Registration and Results System(PRS:治験プロトコル登録・結果システム)は、2024年8月28日から新版(ベータ版)がメインのサイトになります。PRSベータ版の新機能や、ベータ版と旧版の連携方法などの詳細については、米国国立医学図書館(NLM)のニュースレター「NLM Technical Bulletin」(NLM技術速報)2024年8月7日号をご覧下さい。

4. 欧州EMAのガイダンスとニュース

4.1 EMAはYouTubeで、「EMA/HMA Pilot Educational Program Oncology」(EMA/HMAのオンコロジー教育パイロットプログラム)の提供を開始しました。このプログラムは10本の動画で構成されており、内容は規制上の手続きや科学的助言、コンパニオン診断薬、ケーススタディなど、様々なトピックをカバーしています。

4.2 EMAは「Guideline on good pharmacovigilance practices (GVP)」(GVPガイドライン)を改訂しました。「Module XVI – Risk minimisation measures (Revision 3)」には、リスク最小化策の新たな情報が記載されています。「Annex I – Definitions (Revision 5)」では専門用語の定義が更新され、臨床試験における「有害事象」とリアルワールドにおける「有害事象」について、若干異なる定義が示されています。また、疾患レジストリ、予防接種ストレス関連反応(ISRR)、一次データ収集などの用語の定義が今回追加されました。「Introductory cover note」には、本ガイドラインの改訂について詳説されています。

4.3 EMAはEU域内の規制活動を支援するため、「Product Management Service (PMS)」(製品管理サービス)と「Substance Management Service (SMS)」(物質管理サービス)を提供しています。これらは、医薬品の規制プロセスにおける「substance, product, organisation and referentials (SPOR)」(物質、製品、組織、参照)マスターデータの4つのドメインのうち2つを管理します。SPORデータ管理サービスは、信頼性の高い医薬品情報の交換を、堅牢で一貫性のある方法で促進します。PMSに関してよくある質問は、「Product Management Service (PMS) – Frequently Asked Questions (FAQs)」をご覧下さい。

4.4 欧州臨床試験データベースEudraCTのログインで多要素認証(MFA)が有効になりました。ユーザーはEMAのユーザー名に続いて「@id.ema.europa.eu」とパスワードを使用してEudraCTにログインし、多要素認証の設定に進んで下さい。設定の手順は「EMA account creation」(EMAアカウントの作成)をご覧下さい。多要素認証の稼働開始により、ユーザーは臨床試験の結果をアップロードするために「results user role」を要請する必要がなくなり、試験の「primary user」の割り当てを直接要請できるようになりました。「EudraCT results: primary user assignment」(EudraCT臨床試験結果: primary userの割り当て)をご参照下さい。

5. リアルワールドデータ

5.1 医薬品規制を支援するためにリアルワールドエビデンス(RWE)を活用する研究に関する第2回EMAレポート「Real-world evidence framework to support EU regulatory decision-making」(EU規制当局の意思決定を支援するRWEの枠組み)が発表されました。この報告書によると、2023年2月~2024年2月の1年間に計40件のRWE研究が実施されました。

5.2 DARWIN EUは、2023年以降データパートナーが10社から20社に増え、EUデータ保護法に完全に準拠しながら、欧州13ヵ国の約1億3,000万人の患者のデータにアクセスできるようになりました。概要については、EMA長官Emer Cooke氏のLinkedIn記事「Enabling use of real-world evidence – how we make health data count」(RWEの活用の実現:健康データの価値の高め方)をご覧下さい。

訳注)DARWIN EU(Data Analysis and Real-World Interrogation Network):EU全域のリアルワールド医療データベースから、ヒト用医薬品・ワクチンの使用、安全性、有効性に関して信頼性が高くタイムリーなエビデンスを、EMAとEU加盟国の規制当局に提供するために、EMAと欧州医薬品規制ネットワークが2021年に設立した組織。

5.3 EMAは「ICH reflection paper on pursuing opportunities for harmonisation in using real-world data to generate real-world evidence, with a focus on effectiveness of medicines」(医薬品の有効性に焦点を当て、RWE創出にRWDを利用する際の調和の機会を追求することに関するICHリフレクションペーパー)(2024年7月25日付)を発表しました。本書は2024年6月にEMAのヒト用医薬品委員会(CHMP)によって採択されました。

5.4 Alipour-Harisらの論文「Real-world evidence to support regulatory submissions: A landscape review and assessment of use cases」(規制当局への医薬品承認申請をサポートするRWE:RWE活用の現状とユースケースの検討)では、RWEを活用した申請(ユースケース)85件を包括的に分析しており、特に癌領域において、新たな治療法の承認でRWE活用の意義が高まっていることに関して重要な知見を報告しています。

6. 透明性・情報開示のリソースとニュース

6.1 スイス当局は、EU臨床試験規則(CTR:Reg. (EU) No.536/2014)に適合させるため、Human Research Act(HRA:ヒト研究法)と4つの法令を改正し、2024年6月7日に採択しました。改正には、臨床試験の透明性に関する要件を国際的な規制に合わせることなどが含まれています。今後、試験結果の要約の公開が義務化されますが、公開する情報はすべて、臨床試験に関連する国々の各言語で公開する必要があります。試験終了後1年以内に結果の要約を公開する義務は、2025年3月1日以降に終了するすべての試験に対して、2025年3月1日から適用されます。2025年3月1日以前に終了する試験には適用されません。新たな規制要件や経過措置に関する詳細な情報は、Swissmedic(スイス医薬品局)とswissethics(Swiss Association of Research Ethics Committees)の各ウェブサイトで順次発表される予定です。

6.2 PHUSEが主催する、データ透明性に関するオンラインイベント「PHUSE Data Transparency Autumn event」の申込受付が始まりました。このイベントは2024年9月17~19日に開催予定で、参加は無料です。イベントで取り上げるトピックは、自律的なセキュリティや透明性の高いデータ共有における最先端のアプローチから、AIを活用したデータ保護や臨床文書作成における最新の進歩まで多岐に渡ります。各日のプレゼンテーションと演者についてはこちらをご覧下さい。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

7. 人工知能・機械学習

7.1 米国国立標準技術研究所(NIST)は、SP 800-218A「Secure Software Development Practices for Generative AI and Dual-Use Foundation Models」(生成AIおよびデュアルユース基盤モデルのための安全なソフトウェア開発プラクティス)を発表しました。本書は、Secure Software Development Framework(SSDF:安全なソフトウェア開発フレームワーク)で定義されている安全なソフトウェア開発のプラクティスとタスクを補強するものです。

7.2 欧州委員会のAI Office(AI事務局)は、EUのAI規制法に基づく信頼できる汎用AIモデルに関して、多様なステークホルダーから意見の募集を始めました。2024年9月18日までこちらで受け付けています。

また、AI Officeは、包括的かつ透明性のある「General-Purpose AI Code of Practice」(汎用AI実践規範)の起草の参加者も募集しています。起草作業は2024年9月から2025年4月まで行われる予定です。参加を希望する方は、2024年8月25日までにこちらからお申し込み下さい。

8. アジア規制当局のニュース

8.1 2024年6月、日本のPMDAは事務連絡「医薬品開発等におけるマスタープロトコル試験の活用に関する留意事項」を発出しました。この通知にはマスタープロトコルの適用範囲や、マスタープロトコル試験の設定、薬事関連資料の作成、PMDAとのコミュニケーションなどに関する情報が記載されています。

8.2 2024年7月15日、中国臨床試験レジストリ(ChiCTR)は、伝統医学(中医学、鍼灸、マッサージ、漢方薬、アーユルヴェーダ、ホメオパシー、ユナニ、補完医療、補助医療など)に関する臨床試験の登録受付を停止しました(Global Compliance Portalの「July 2024: China Registry Update」参照)。今後は国際伝統医学臨床試験レジストリ(ITMCTR)にご登録下さい。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年7月31日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 EMAは、2024年7月2日に開催されたPCWP(Patients and Consumers Working Party)とHCPWP(Healthcare Professionals Working Party)の合同会議で発表した「Revised CTIS transparency rules and new version of the public portal」(CTIS改正透明性規則と、CTISパブリックポータルの新バージョン)のスライドを公開しました。

訳注)PCWPは患者・消費者団体による作業部会、HCPWPは医療従事者による作業部会。いずれもEMAとの意見交換を通じて各ステークホルダーの声をEMAの活動に活かすために、EMAが設立した組織。

1.2 EMAは、臨床データポータル(CDP)について、ユーザーからフィードバックを得るためのアンケート調査を開始しました。このアンケートは、臨床試験データが公開されているEMAの臨床データポータルのユーザー満足度や使いやすさについて、意見を収集することを目的としています。EMAはユーザーからのフィードバックを重視しており、アンケートの回答は、臨床データポータルの潜在的な問題の発見・解決や、臨床データの利便性向上に役立ちます。回答に要する時間は5分程度で、回答はすべて保護され、集計されたデータのみが報告されます。アンケートにはこちらから回答可能です。

1.3 HMAのCTAG(Clinical Trials Coordination and Advisory Group:臨床試験調整諮問グループ)は、EU CTR No. 536/2014のQ&A改訂版「Clinical Trials Regulation (EU) No. 536/2014 Questions & Answers Version 6.9」(2024年7月9日付)を、EudraLex Volume 10で発表しました。旧版からの変更は、中間分析に関する新たな質問6.6の追加や、付録II、III、IV、Vのアップデートなどで、主な変更内容は以下のとおりです。

  • CTIS改正透明性規則とQ&A回答との整合性
  • 不測の緊急事態による例外的な場合に、既存の治験実施施設で治験責任医師を変更する承認戦略に関するガイダンス
  • Paediatric Regulation(EU No. 1901/2006)第46条(1)に該当しない小児臨床試験で、科学的理由により、試験結果の概要を試験終了後6ヶ月以内に提出できない場合は、遅くとも12ヶ月以内に提出。
  • CTRに照らして中間解析とみなされるものや、中間解析結果の要約の提出方法・手順とその例外に関するガイダンス。例外は下記の3つのケース。
    ①独立データモニタリング委員会(IDMC)による中間解析の結果、治験依頼者や治験責任医師の盲検を維持すべき場合
    ②臨床試験の継続方法(例:早期臨床試験における投与方法)の決定に関して、明確な判断基準が治験プロトコルに規定されている場合
    ③治験プロトコルで規定された正当な理由により、中間解析結果の要約を1年以内に提出できない場合

訳注)EudraLex:European Union Drug Regulatory Authorities Legislation。EUの医薬品規制の法規集で、全10巻から成る。Volume 10(第10巻)は「Guidelines for clinical trial」(臨床試験に関するガイドライン)。

1.4 CTISの概要が、Singh氏とShaik氏によるオンライン記事「Understanding The Basics Of EU Clinical Trials With CTIS」(CTISを利用するEU臨床試験の基礎知識)で紹介されています。

1.5 EMAは「Revised CTIS transparency rules and historical trials: quick guide for users, Version 1.7」(CTIS改正透明性規則とhistorical trial:ユーザー向けクイックガイド バージョン1.7)(2024年7月19日付)を発表しました。今回の改訂では、治験依頼者の変更によるsubstantial modification(大幅な変更)に関するガイダンス(スライド17)が追加されました。

1.6 「CTIS Release Notes – Release version 1.0.42.0」(CTISリリースノート:リリース・バージョン1.0.42.0)(2024年7月8日付)には、CTISの最新情報が概説されています。

1.7 HMAのCTCG(Clinical Trials Coordination Group:臨床試験調整グループ)は、下記の4つの文書について新たなテンプレートを発表しました。

カバーレターは、申請の背景情報や、CTISに提出した内容の明確な概要を提供する重要な文書であり、質の高いカバーレターは申請の検証と評価を促進します。これは、情報提供依頼(RFI)への回答として提出される「変更リスト」にも当てはまります。

2. 英国とMHRAのニュース

英国国民保健サービス(NHS)医療研究機構(HRA)は、臨床試験の登録に関する障壁とその解決策を探るため、「Make it Public workshop — all clinical trials registered」(研究開示ワークショップ:全臨床試験の登録を!)を2024年3月に開催しました。その要約「Make it Public workshop summary」が公開されています。このワークショップでは、試験登録に関して、以下の4つの重要な問題が浮き彫りになりました。(1)登録に必要なリソース、(2)登録のコスト、(3)あらゆる試験タイプに適した登録プラットフォームを見つけることの難しさ、(4)登録プラットフォームの制限や複雑さ。

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govの最新のアップデート情報が発表されました。

  • 詳細は、最新の「Release Notes」をご覧下さい。
  • Modernization Transition Top Questions」(サイトの最新化に関してよくある質問)のページが更新されました。これまでPDFファイルで提供されていた情報がウェブページに変換され、アクセスしやすくなりました。
  • 2024年の「Train-the-Trainer Workshop」(研修講師養成ワークショップ)の資料が、教育関連のウェブページで公開されました。

3.2 FDAは「Guidance Snapshot: Digital Health Technologies for Remote Data Acquisition in Clinical Investigations」(ガイダンス・スナップショット:臨床試験における遠隔データ収集のためのデジタルヘルス技術)を発表しました。ガイダンスの概要はポッドキャストで聴くこともできます。

訳注)Guidance Snapshot:FDAのガイダンス文書の透明性のあるコミュニケーションと普及をサポートするために、ガイダンス文書のポイントを視覚的かつ平易な言葉で提供するコミュニケーション・ツール。

3.3 FDAは「Rare Disease Innovation Hub」(希少疾患イノベーションハブ)の設立計画を発表しました。これは、希少疾患の治療法の開発と承認を加速させることにより、患者の転帰を改善することを目的とした取り組みです。

3.4 FDAはガイダンス案「Purpose and Content of Use-Related Risk Analyses (URRA) for Drugs, Biological Products, and Combination Products」(医薬品、生物学的製剤、コンビネーション製品の使用関連リスク分析 [URRA] の目的と内容)を公開し、パブリックコメントを募集しています。URRAは、コンビネーション製品の使用に関連する潜在的リスクを特定する上で重要な役割を果たします。本ガイダンス案は、医薬品または生物学的製剤を含むコンビネーション製品の製造業者に、販売申請のサポートに使用されるURRAの目的と内容に関する情報を提供しています。

4. リアルワールドデータ

4.1 2024年7月にFDAは、電子健康記録(EHR)から得たリアルワールドデータ(RWD)の評価に関する最終ガイダンス「Real-World Data: Assessing Electronic Health Records and Medical Claims Data to Support Regulatory Decision-Making for Drug and Biological Products」(リアルワールドデータ:医薬品および生物学的製剤の規制上の意思決定をサポートするための電子健康記録と医療請求データの評価)を発表しました。本ガイダンスでは、臨床試験の変数の選択や検証など、試験デザインの要素が明確に示されています。

4.2 PHUSEはブログ記事「RWD: The FDA’s Guidance on Assessing Registry Data to Support Regulatory Decision-Making」(RWD:規制当局の意思決定をサポートするレジストリデータの評価に関するFDAガイダンス)を発表しました。PHUSEのリアルワールドエビデンス作業部会のプロジェクト「Quality and Reusability of Real World Data」(RWDの品質と再利用性)もご参照下さい。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

5. 透明性・情報開示のリソースとニュース

5.1 PHUSEはデータの透明性に関する無料オンラインイベント「PHUSE Data Transparency Autumn event」を、2024年9月17~19日の15:00~17:30(英国夏時間)/10:00~12:30(米国東部夏時間)に開催します。参加申込の受付は2024年8月5日から開始されます。

5.2 RAPS(Regulatory Affairs Professionals Society:薬事専門家協会)は、無料のウェブキャスト「Author Clinical Study Reports with Data Privacy & Disclosure in Mind」(データプライバシーと開示を念頭に置いた治験総括報告書 [CSR] の作成)を2024年8月7日に開催します。本イベントの目的は、メディカルライティングが臨床データ開示に与える影響について議論することと、情報開示を念頭に置いた無駄のないCSR作成が開示プロセスの効率をいかに向上させられるかを示すことです。

訳注)RAPS:医薬品や生物製剤、医療機器、デジタルヘルスなどの規制に携わる専門家の世界最大の組織。1976年に米国で設立され、国内外の規制当局やアカデミア、製薬・医療機器業界などの専門家により、レギュラトリーサイエンスの情報交換や教育を実施。

5.3 欧州で健康に関する研究とイノベーションのために官民共同で発足したIHI(Innovative Health Initiative)は、無料のウェビナー「Masterclass – how to unlock the potential of data sharing in collaborative projects」(マスタークラス – 共同プロジェクトでデータ共有の可能性を最大限に引き出す方法)を2024年9月4日に開催します。これは、健康データの共有に役立つ実用的なツールとリソースを紹介するインタラクティブなウェビナーで、欧州製薬団体連合会(EFPIA)が新たに作成した「Data Sharing Playbook」(データ共有プレイブック)に基づいて開催されます。参加申込はこちらから可能です。

5.4 2024年7月、DavalとKesselheimは『JAMA』誌にviewpoint論文「The Origins of ‘Confidential Commercial Information’ at the FDA」(FDAにおける「営業機密情報」 [CCI] の起源)を発表しました。著者らは、現行法の下でのFDAの権限と義務を精査し、FDAは公衆衛生のために情報共有の柔軟性を高める措置を講じることが可能であると結論づけています。

6. 開発戦略ニュース

6.1 2024年7月にTransCelerate BioPharma社、CDISC、Vulcanが共同開催したウェビナー「Vulcan UDP (Utilizing the Digital Protocol): Collaborating to Accelerate ICH M11 and End User Value」(Vulcan UDP [デジタルプロトコルの活用]:ICH M11ガイドラインとエンドユーザーの価値促進のためのコラボレーション)のビデオ録画スライドが公開されました。このウェビナーにはFDA、EMA、CDISC、TransCelerate BioPharma社、Vulcanの各代表者が参加し、完全に利用可能なデジタルプロトコル・テンプレートの定義、適用、リリースの課題について最新情報を提供しています。なお、ICH M11ガイドラインのステップ4は2025年秋に予定されています。

訳注1)TransCelerate BioPharma Inc.:世界のバイオ医薬品企業約20社が協力して、新薬の効率的・効果的かつ高品質な提供を促進する方法を探求する非営利団体。日本の製薬企業も数社参画。治験総括報告書(CSR)や治験プロトコルのテンプレートなどを作成・提供。

訳注2)CDISC:Clinical Data Interchange Standards Consortium。臨床試験データなどの電子的収集・交換・申請に関して業界標準を策定している国際的な非営利組織。1997年に米国で設立され、国内外のアカデミアや製薬企業、CRO、IT企業などが参加。CDISCが規定する標準規格は「CDISC standard」(CDISC標準)と呼ばれている。

訳注3)Vulcan:米国の非営利標準化団体であるHL7(Health Level 7)協会が2019年に立ち上げた、マルチステークホルダーによる国際プロジェクト。HL7協会が開発した医療データ交換の標準規格FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)を活用して、医療と臨床研究のギャップを埋めることを目指している。

6.2 TransCelerate BioPharma社は2024年9月10日に、ウェビナー「Mastering Master Protocols and Advancing Platform Trial Research: a CC&R and EU-PEARL Collaboration」(マスタープロトコルの習得とプラットフォーム試験研究の推進:CC&RとEU-PEARLのコラボレーション)を開催します。この取り組みの背景については、「Enabling Platform Trials with Master Protocols: How EU-PEARL and TransCelerate BioPharma Created a Global Template」(マスタープロトコルによるプラットフォーム試験の実現:EU-PEARLとTransCelerate BioPharmaがグローバル・テンプレートを作成した経緯)をご覧下さい。ウェビナーの参加申込はこちらで受け付けています。

訳注1)EU-PEARL(EU-Patient Centric Clinical Trial Platforms):患者中心で効率的な臨床試験を目指し、Innovative Medicines Initiative(IMI)から資金提供を受けて2019年に発足した官民共同プロジェクト。患者や医師、研究者、規制当局、産業界を各々代表する36組織が協力して、欧州における患者中心のプラットフォーム試験の設計や実施を支援するツールなどを開発。

訳注2)CC&R(Clinical Content & Reuse Initiative)(旧Common Protocol Template [CPT] Initiative):TransCelerate BioPharma社の取り組みの1つ。プロジェクトのライフサイクルを通じて再利用可能な治験関連文書内で、調和された構造と提案されたモデルコンテンツを提供することにより、臨床試験のプロセスを強化し、自動化によるデジタル化と追跡を可能にすることを目指す。

6.3 Kliegmanらが発表した論文「A roadmap for affordable genetic medicines」(手頃な価格の遺伝子治療薬へのロードマップ)は、安価で利用しやすいゲノム治療への道筋を描くために結成された学際的タスクフォースの提言を紹介しています。

6.4 国際的な非営利組織Pistoia Allianceは、バイオ医薬品業界における研究データの管理とその責任に関するFAIR(Findable、Accessible、Interoperable、Re-usable)原則の実装をサポートしています。同組織は、FAIR原則の実装によるビジネス価値を示すケーススタディの収集を目的とする調査を開始しました。この調査は2024年8月末まで実施される予定です。

訳注)Pistoia Alliance:ライフサイエンスと医療における研究開発のイノベーションの障壁を下げることに取り組む国際的な会員制非営利組織。2007年にイタリアのPistoiaで開催された会議を契機に設立され、ライフサイエンス分野の企業や学術団体、出版社など100社以上が加盟。

6.5 Karl-Heinz Loebel氏は、DIAのデジタルマガジン『DIA Global Forum』2024年7月号に、「How Did We Get Here? A History of eCTD and Prospects for eCTD 4.0」(これまでの歩み:eCTDの歴史とeCTD 4.0の展望)と題する記事を発表しました。この記事ではCommon Technical Document(CTD)の進化について、CTD誕生前の時代からeCTD 4.0の実装に至るまでの歴史的経緯を概説しています。

7. 人工知能・機械学習

7.1 EUのAI規制法が2024年7月12日に公布されました。この規制法の目的は、EU域内でのAIシステムの開発、市場投入、実用化、活用について統一的な法的枠組みを定めることによりEU市場の機能を向上させ、人間中心で信頼できるAIの普及を促すことです。AI規制法は、医療機器や体外診断機器などの製品におけるAIの使用を規制しています。Hines氏らはIQVIA社のブログ記事「EU AI Act – Here’s how this will affect your organisation」(EU AI規制法:医療分野に与える影響)で、医療への潜在的な影響について解説しています。Julia Appelskog氏は自身のLinkedInの投稿で、AI規制法の重要なポイントを5つ紹介しています。

7.2 InteliNotion社はホワイトペーパー「Convergence of Generative AI and Structured Content」(生成AIと構造化コンテンツの融合)を発表し、構造化コンテンツ管理と生成AI(GenAI)を組み合わせたアプローチについて概説しています。著者らはこのアプローチを「GenAI assisted contextual authoring」(生成AI支援型コンテキスト生成)と名付け、生成AIを活用して文書作成者をサポートするアプローチを提供しています。このアプローチは、AIによるコンテンツ生成を検討する際の大きな障壁を克服し、AIの活用と治験固有の要件を調和させます。

7.3 GoogleのMichael Howell博士の総説論文「Generative artificial intelligence, patient safety and healthcare quality: a review」(生成AI、患者の安全、医療の質:レビュー)は、「基礎モデルの基礎や利点、リスク、未知数、そしてこれらの新しい機能が医療の質と患者の安全の向上にどのように役立つかに関する手引書として役立ちます」。

7.4 HaltaufderheideとRanischは、論文「The ethics of ChatGPT in medicine and healthcare: a systematic review on Large Language Models (LLMs)」(医学と医療におけるChatGPTの倫理:大規模言語モデル [LLM] に関する体系的レビュー)を発表しました。この研究では、LLMについて「公平性やバイアス、無害性、透明性、プライバシーに関して倫理的な懸念が繰り返し発生している」ことが確認され、「LLMの現在の実験的使用の必要性と正当性を確認するための批判的調査が必要である」と著者らは述べています。

8. アジア規制当局のニュース

8.1 2024年5月、中国はICHガイドラインのQ2(R2)「分析法バリデーション」とQ14「分析法開発」を採用しました(中国語のウェブページ)。関連する試験はすべて、2024年11月24日発効予定のQ2(R2)/Q14ガイドラインに概説されている原則に準拠する必要があります。中国国家薬品監督管理局(NMPA)は、両ガイドラインの中国語版を2024年2月に公開しています。

8.2 2024年5月、中国NMPAは「希少疾患治療薬の臨床研究における分散型臨床試験の適用に関する技術的ガイドライン」(中国語)を発出しました。本ガイドラインは、希少疾患治療薬の臨床開発におけるデジタルヘルス技術の適用に関する提案事項と、デジタルヘルス技術の科学的かつ標準化された実装に関する参考資料を提示しています。

8.3 2024年1月、中国NMPAは「抗腫瘍薬の医薬品添付文書における安全性情報の記載に関する技術的ガイドライン」(中国語)を発出しました。本ガイドラインは、抗腫瘍薬の医薬品添付文書における安全性情報の記載内容の標準化について、原則とガイダンスを示しています。

8.4 シンガポールの個人情報保護委員会は、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)と共同で、「Proposed Guide on Synthetic Data Generation」(合成データ生成に関するガイド案)を発表しました。このガイド案では、個人情報から個人が特定されるリスクを最小限に抑える目的で合成データを生成する際のベストプラクティスとリスク評価/検討事項が提案されています。また、合成データをAIモデルの学習データとして活用することも提案されています。

合成データ生成はプライバシー強化技術(PET)の1つで、目的に応じた数学モデルやアルゴリズムを用いて実データから人工的なデータを生成します。良質な合成データはソースデータの統計的特性とパターンを保持しているため、良質な合成データを分析することで、ソースデータの分析と同様の結果を得ることができます。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
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CORE Reference News 2024年7月15日号

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  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
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  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 改正透明性規則と、アップデートされたCTISパブリックポータルによる変更とを反映するため、CTISオンライン研修プログラムのモジュール02、07、10、11が更新されました。

1.2 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」最新号(2024年6月28日付)には、CTISに関する最新情報と、改正透明性規則に関する有用な参考資料(治験依頼者向けリソースなど)へのリンクが掲載されています。

また、2024年6月20日に開催されたCTISショート説明会「Revised transparency rules and the new CTIS public portal」(改正透明性規則と新たなCTISパブリックポータル)のビデオ録画が公開されています。

1.3 「CTCG Best Practice Guide for sponsors of multinational clinical trials with different Part I document versions approved in different Member States under the Directive 2001/20/EC that will transition to the Regulation (EU) No. 536/2014」(EU臨床試験規則No.536/2014に移行するEU臨床試験指令2001/20/ECの下、異なるEU加盟国で承認されたPart I文書のバージョンが異なる国際共同試験の治験依頼者向けCTCGベストプラクティス・ガイド)が、バージョン5(2024年6月19日付)に更新されました。

本バージョンでは、「迅速な移行手続きは、EudraLex Volume 10で発行されたガイダンスに沿い、CTD承認文書の最小限の書類の評価ではなく検証に重点を置いている。治験依頼者は、移行期間が数か月しか残されていないことを踏まえて、まだ決定していないCTD substantial amendment application(大幅変更申請)を取り下げ、代わりに、統合されたPart I文書を直接提出することを推奨する」と明記されています。

1.4 HMAのCTCG(Clinical Trials Coordination Group:臨床試験調整グループ)は、安全性に関する新たな文書「CTCG’s Questions and Answers on safety related issues in amendment of the Commission’s QnA section 7 on safety, Eudralex Volume 10」(EudraLex Volume 10のQ&A文書のセクション7の改訂における安全性関連問題に関するQ&A)を発表しました。本書では、EudraLex Volume 10のQ&A文書のセクション7に加えて、CTIS関連のトピック(年次安全性報告書 [ASR]、安全性関連の通知、安全性参照情報 [RSI]、ad hocワークフロー内で送信される情報提供依頼 [RFI])についても、具体的に説明されています。

訳注)EudraLex:European Union Drug Regulatory Authorities Legislation。EUの医薬品規制の法規集で、全10巻から成る。Volume 10(第10巻)は「Guidelines for clinical trial」(臨床試験に関するガイドライン)。

2. 欧州医療データスペース(EHDS

欧州委員会は「2024 Digital Decade eHealth Indicator Study Annex – Country Factsheets」(2024デジタル10年eHealth評価指標調査付属書:国別ファクトシート)を発表しました。これは、EUに加盟している27ヵ国各々について、eHealthデータへのアクセスに基づくeHealth成熟度スコアなど、eHealth評価指標をまとめたものです。

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 FDAは、リアルワールドエビデンス(RWE)を含むCBER/CDER提出物に関する報告書「Real-World Evidence Submissions to the Center for Biologics Evaluation and Research & the Center for Drug Evaluation and Research」を、2024年6月27日に発表しました。

これは、医薬品・生物学的製剤の有効性や安全性に関して規制当局の意思決定を支援することを目的としたRWE創出のためのリアルワールドデータ(RWD)分析を含む、CBER/CDERへの提出物に関するFDA初の年次報告書です。

本書によると、CBERへのRWE提出物には治験プロトコル4件が含まれており、CDERへのRWE提出物には治験プロトコル10件と新薬承認申請書(NDA)/生物学的製剤承認申請書(BLA)4件が含まれています。

従来の臨床試験に依存していた医薬品・生物学的製剤開発プログラムの効率を向上させるためにRWDを活用することは、FDAによって十分に確立され、奨励されています。

3.2 FDAはガイダンス案「Diversity Action Plans to Improve Enrollment of Participants from Underrepresented Populations in Clinical Studies」(臨床試験で社会的マイノリティ集団の被験者登録を促進するためのダイバーシティ・アクションプラン)を発表しました。本案は、医薬品や生物学的製剤、医療機器の特定の臨床試験を実施する治験依頼者が、多様性アクションプランの提出要件を満たすのを支援することを目的としています。2024年9月26日までパブリックコメントを募集しています。

4. 欧州EMAのガイダンスとニュース

4.1 EMAは、新たに開始した統合助言パイロットプログラムに関するウェビナー「ACT EU consolidated advice pilots: information and training for applicants」(ACT EUの統合助言パイロットプログラム:申請者のための情報と研修)を、2024年7月17日に開催し、本プログラムの範囲と利点について概説します。本プログラムは臨床試験申請(CTA)や販売承認申請(MAA)の品質向上を目的としています。

4.2 EMAは「Concept paper on the revision of the COVID-19 vaccines guidance documents」(新型コロナワクチンのガイダンス文書の改訂に関するコンセプトペーパー)を公開し、パブリックコメントをこちらで2024年9月30日まで募集しています。

提案されたガイドラインは、「EMA considerations on COVID-19 vaccine approval」(新型コロナワクチン承認に関するEMAの検討事項)(EMA/592928/2020)と、「Reflection paper on the regulatory requirements for vaccines intended to provide protection against variant strain(s) of SARS-CoV-2」(SARS-CoV-2変異株に対する予防を目的としたワクチンの規制要件に関するリフレクションペーパー)(EMA/117973/2021)に代わるものです。

5. リアルワールドデータ

5.1 Prillaらはレビュー論文「Real-World Evidence to Support EU Regulatory Decision Making — Results From a Pilot of Regulatory Use Cases」(EU規制当局を支援するためのRWE:規制当局のユースケースのパイロット活動の成果)を発表しました。この論文は、EMAが規制当局の意思決定のためのRWE創出・活用に適した経路とアプローチを模索するために、2021年9月~2023年2月に実施したパイロット活動の成果を紹介しています。

5.2 EMAは「ICH reflection paper on pursuing opportunities for harmonisation in using real-world data to generate real world evidence, with a focus on effectiveness of medicines」(医薬品の有効性に焦点を当て、RWE創出にRWDを利用する際の調和の機会を追求することに関するICHリフレクションペーパー)を発表しました。

本書は、課題に対処するための戦略的アプローチを概説し、規制当局への申請や規制当局のタイムリーな意思決定にRWEを組み込む方法について論じています。このリフレクションペーパーは、規制当局によるRWEガイダンスの調和に向けた段階的アプローチの第1歩であると、著者らは述べています。

6. 透明性・情報開示のリソースとニュース

6.1 米国の非営利オープンアクセス出版社PLOS(Public Library of Science)は、オープンサイエンスの進捗を評価する指標(OSI: open science indicator)に関して、ブログ記事「A new Open Science Indicator: measuring study registration」(新たなOSI:研究登録)を発表しました。この記事でPLOSは、従来のOSIに、「研究の事前登録」を重要なOSIとして新たに追加したと述べています。

OSIの目的上、「研究の事前登録」の定義は、「偏りのない結果報告を保証し、計画された研究と計画されていない研究の方向性の区別をサポートするために公開されている研究計画(研究の疑問・仮説、研究デザインの詳細、データ分析の計画などを含む)」としています。

OSIの最新の結果によると、全体的な事前登録率は依然として低いものの、事前登録された研究の割合は増加しており、登録に最もよく利用されているレジストリはClinicaltrials.govとなっています。PLOSは、最近の結果だけでなく、2018年までさかのぼった分析の完全なデータセットも公開しています。

6.2 グローバルヘルスに取り組む非営利団体Health Information For All(HIFA)は、プレスリリース「Global health advocates call on the World Health Organization to explicitly champion the goal of universal access to reliable healthcare information」(グローバルヘルスの唱道者らは、世界保健機関 [WHO] に対し、信頼できる医療情報への普遍的アクセスという目標を明確に支持するよう求める)を発表しました。HIFAは2024年7月30日にオンラインイベント「Towards universal access to reliable healthcare information」(信頼できる医療情報への普遍的アクセスに向けて)を開催します。

7. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

EMAは、EMA Policy 0070の臨床データポータルのユーザー満足度と使いやすさを調べるため、「Clinical Data Publication Survey」(臨床データ公開調査)を開始しました。

8. 開発戦略ニュース

8.1 2017年にFDAのCDERは、「New Drugs Regulatory Program (NDRP)」(新薬規制プログラム)の近代化に着手しました。これは、CDERオフィスの効率と効果を高めるための、複数年にわたる枠組みです。NDRPの近代化は、過去20年間における医薬品開発の複雑さと量の急激な増加に対応するとともに、遺伝子科学における最近のブレークスルーや、個別化医療の進歩、希少疾患や疾患サブタイプへの注目の高まりなどに後押しされた今後の成長への期待に応えるものです。CDERは継続的にレギュラトリーサイエンスと医薬品審査プロセスを改善していくため、NDRPの近代化を開始しました。

FDAの公式サイトに掲載されている、CDERの専門家へのインタビュー・シリーズ「CDER Conversations」の最新記事「Modernizing the New Drugs Regulatory Program」で、CDER新薬審査部(Office of New Drugs: OND)のYoni Tyberg氏がNDRPの近代化や、その成果、公衆衛生への影響について説明しています。近代化の成果の包括的なリストは、「NDRP Modernization — Impact Narrative Update 2023」(NDRPの近代化:影響の最新情報2023)でご覧頂けます。

8.2 非営利のシンクタンクEuropean Forum for Good Clinical Practice (EFGCP)(欧州GCPフォーラム)と、欧州製薬団体連合会(EFPIA)が共同で主導する「EU-X-CT Cross-Border Clinical Trials Initiative」(EU-X-CT越境臨床試験イニシアチブ)は、欧州で国境をまたぐ臨床試験アクセスの向上に取り組んでいます。2024年4月にベルギーのブリュッセルで、EU-X-CTイニシアチブの第1回ステークホルダー・フォーラムが開催されました。そのレポートはこちらでご覧頂けます。

EFPIAのニュース記事「Breaking down the barriers: Making cross-border access to clinical trials a reality」(障壁の克服:国境を越えた臨床試験アクセスの実現)によると、EU-X-CTイニシアチブは現在、ステークホルダー・フォーラムでの議論やアンケート調査からのフィードバックに基づき、ボーダレスな臨床試験アクセスに関する推奨事項の草案を作成中です。草案は、パブリックコメント募集のため2024年末までに公開される予定です。

9. 人工知能・機械学習

9.1 国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)は、ドラフト文書「Good machine learning practice for medical device development: Guiding principles」(医療機器開発における機械学習の実施基準 [GMLP]:基本原則)を発表しました。このドラフトは、2021年に米国、英国、カナダの各規制当局が共同で発出した同名のガイドラインと同じ内容で、安全・有効かつ高品質なAI搭載医療機器の開発を促進するための基本原則を10項目定めています。2024年8月30日までこちらでパブリックコメントを募集しています。

9.2 FDAとClinical Trials Transformation Initiative(CTTI)は共同で、無料のハイブリッド式公開ワークショップ「Artificial intelligence in drug & biological product development」(医薬品・生物学的製剤の開発におけるAI)を、2024年8月6日10:00~17:30(米国東部夏時間)に開催します。参加申込はこちらで受け付けています。

訳注)CTTI:2007年に米国デューク大学とFDAが共同で設立した、臨床試験の品質・効率の向上を目指す産学官連携組織。

9.3 Alkhalafらは論文「Applying generative AI with retrieval augmented generation to summarise and extract key clinical information from electronic health records」(検索拡張生成 [RAG] 機能を備えた生成AIを利用した、電子健康記録 [EHR] の主要な臨床情報の要約・抽出)を発表しました。この論文は、生成AIモデルにゼロショット学習を適用し、電子健康記録データの構造化された要約を自動生成させ、主な臨床情報を抽出させた際の成果と限界について報告しています。

9.4 Kastrupらは論文「Landscape and challenges in economic evaluations of artificial intelligence in healthcare: a systematic review of methodology」(医療AIの経済的評価の現状と課題:方法論のシステマティックレビュー)を発表しました。本論文で著者らは、「このシステマティックレビューは、AI技術の医療経済評価(HEE)の一般的な方法の品質に関するエビデンスをマッピングし、品質改善を期待できる領域を特定することを目指している」と述べています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年6月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 改正透明性規則と、アップデートされたCTISパブリックポータルが2024年6月18日に開始されました。両者に関する情報はこちらをご覧下さい。

1.2 「EMA Guidance document on how to approach the protection of personal data and commercially confidential information while using the Clinical Trials Information System (CTIS)」(CTIS利用中に個人データと営業機密情報 [CCI] を保護する方法に関するEMAガイダンス)のバージョン2(2024年6月18日付)が発出されました。旧バージョンからの主な変更は、①改正透明性規則への対応(適用されなくなった第5章の削除など)、②「historical trial」(訳注:2024年6月18日以前にCTISに提出された臨床試験)の公開原則に関するセクションの追加、③移行試験に関するセクションの追加の3点です。個人データとCCIの保護の原則に変更はありません。本ガイダンスの「Annex I」(付録I)と「Q&A on the protection of commercially confidential information and personal data while using CTIS」(CTIS利用中の個人データとCCIの保護に関するQ&A)も併せてお読み下さい。

2. EUの医薬品規制

2.1 欧州委員会医療技術評価(HTA)事務局とEMAは、「Joint clinical assessment of medicinal products: Submission of early information by health technology developers」(医薬品の共同臨床評価:医療技術開発者による早期情報提出)に関する通知を発行しました。EMAとHTA事務局は、申請提出の意思通知に同じ書式を使用することに合意しました。この連携により、2機関間の情報交換の効率が向上します。

2.2 Caponeらの論文「Accelerating clinical trials in the EU (ACT EU): transforming the EU clinical trials landscape」(ACT EU:EU臨床試験環境の変革)は、ACT EUと、「欧州での臨床試験に最適な環境を作り、患者に医薬品をより早く届ける」という取り組みについて説明しています。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

2.3 欧州議会は、「Addressing challenges to European multicountry collaboration models for rare diseases」(希少疾患に関する欧州多国間協力モデルの課題への取り組み)に関する報告書を発表しました。

2.4 EMAは、ICH M14ガイドライン案「General principles on plan, design and analysis of pharmacoepidemiological studies that utilize real-world data for safety assessment of medicines」(医薬品の安全性評価においてリアルワールドデータを活用する薬剤疫学研究の計画、デザイン、分析に関する一般原則)について、パブリックコメントの募集を開始しました。コメントは2024年8月30日まで受け付けています。詳細はこちらをご覧下さい。(訳注:日本でも2024年7月28日までこちらでパブコメを募集しています)

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 FDAの「14th Global Summit on Regulatory Science (GSRS24)」(第14回グローバル規制科学サミット)年次会議が、対面式で2024年9月18~19日にアーカンソー州リトルロックで開催されます。参加は無料ですが、事前の申込が必要です(2024年7月15日締切)。座席数には限りがあり、申込受付は先着順となります。プログラムはこちらをご覧下さい。

3.2 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govは、最新化された同サイトで基本的なタスクを行う方法を解説したデモンストレーション動画「Fast Forward from ClinicalTrials.gov」シリーズを公開しています。ClinicalTrials.govとProtocol Registration and Results System (PRS)(プロトコル登録・結果システム)について、ユーザーから多く寄せられる質問に対応した短いデモ動画がさらに追加されていく予定ですので、今後もご注目下さい。

3.3 医療情報提供サイト「Clinical Leader」のゲストコラム「FDA Issues New Draft Guidances On Cancer Clinical Trial Eligibility Criteria」(FDAががん臨床試験の適格性基準に関して新たなガイダンス案を発表)で、著者のZettler氏は、がん臨床試験の適格性基準に関してFDAが最近発表した3つのガイダンス案(①ウォッシュアウト期間と併用薬、②performance status、③臨床検査値)を取り上げています。厳しい適格性基準の緩和を支持する最近のエビデンスも紹介しており、『NEJM Evidence』誌に掲載された研究によると、臨床試験の参加に適格ながん患者の割合は、ヘモグロビン、eGFR、クレアチニンクリアランス、ECOG performance statusなどについて厳しい適格性基準を適用した場合48%でしたが、これらの基準を緩和すると78%に増えました。

3.4 FDAは2023年11月29~30日に公開ワークショップ「Enhancing Clinical Study Diversity」(臨床試験の多様性向上)を開催しましたが、このレポートがこちらで公開されています。また、FDAはガイダンス案「Diversity Action Plans to Improve Enrollment of Participants from Underrepresented Populations in Clinical Studies」(臨床試験でマイノリティ集団の被験者登録を改善するためのダイバーシティ・アクションプラン)を発表し、パブリックコメントを募集しています(訳注:2024年9月26日締切)。

4. リアルワールドデータ

4.1 英国の医療データに関する国立研究機関Health Data Research UK(HDR UK)は、英国内の複数の情報源から収集した医療データを活用するため、Real-World Evidence Network Coordination Centre for the UK(英国RWEネットワーク調整センター)の試験的創設を発表しました。

4.2 Angusらは論文「The Integration of Clinical Trials With the Practice of Medicine: Repairing a House Divided」(臨床試験と実臨床の融合:分断された世界の修復)を発表し、研究と実臨床とのギャップを指摘しています。ランダム化比較試験(RCT)は「医療で何が有効かを見極める最も厳密な方法」ですが、RCTのエビデンスとその臨床応用との間には乖離があり、「これら2つの世界のより良い融合が、医療提供の改善を加速させる鍵である」と著者らは述べています。

5. 透明性・情報開示のリソースとニュース

5.1 米国ハーバード大学/ブリガム&ウィメンズ病院のMRCTセンターが作成した「Clinical Research Glossary」(臨床研究用語集)は、毎年6月に公開レビューが実施されており、今年は2024年7月5日までコメントを募集しています。レビューとコメント提出はこちらから可能です。詳細はウェビナー「Action and Influence: Implementing the Clinical Research Glossary and Your Critical Role in Public Review」(行動と影響:臨床研究用語集の実装と、公開レビューにおける皆様の重要な役割)をご覧下さい。

訳注)MRCTセンター:Multi-Regional Clinical Trials Center of Brigham and Women’s Hospital and Harvard(ハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院の多地域臨床試験センター)。ブリガム&ウィメンズ病院は、米国ハーバード大学医学部の附属病院としての役割を担う医療・研究・教育機関の1つ。MRCTはハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院に属しており、国際共同治験の改善を目的とする研究・政策センター。

5.2 PHUSEはデータの透明性に関するオンラインイベント「PHUSE Data Transparency Autumn event」を、2024年9月17~19日の15:00~17:30(英国夏時間)/10:00~12:30(米国東部夏時間)に開催します。参加は無料ですが、事前の申込が必要です。詳細は後日発表予定です。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメントや生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

6. 開発戦略ニュース

6.1 TransCelerate BioPharma社は2024年7月11日午前9時~10時30分(米国東部時間)に、ウェビナー「Vulcan UDP (Utilizing the Digital Protocol): Collaborating to Accelerate ICH M11 and End User Value」(Vulcan UDP [デジタルプロトコルの活用]:ICH M11ガイドラインとエンドユーザー価値の促進に向けたコラボレーション)を開催します。VulcanのUDPは、複数のイニシアチブを統合して治験プロトコルのデジタル表現を開発する包括的なプロジェクトです。ウェビナーで取り上げる主な内容は、①Vulcan UDPの目標、②2024年5月に初めて実施されたUDPコネクタソンの概要(フィードバック、得られた学び、フォローアップ計画など)と今後のコネクタソンの予定、③ICH M11 EWG(expert working group:専門家作業部会)の観点から見たICH M11の意図と想定される影響です。質疑応答も実施されます。参加申込はこちらから可能です。

訳注1)TransCelerate BioPharma Inc.:世界のバイオ医薬品企業約20社が協力して、新薬の効率的・効果的かつ高品質な提供を促進する方法を探求する非営利団体。日本の製薬企業も数社参画。治験総括報告書(CSR)や治験プロトコルのテンプレートなどを作成・提供。

訳注2)Vulcan:米国の非営利標準化団体であるHL7(Health Level 7)協会が2019年に立ち上げた、マルチステークホルダーによる国際プロジェクト。HL7協会が開発した医療データ交換の標準規格FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)を活用して、医療と臨床研究のギャップを埋めることを目指している。

6.2 Niuらは論文「Application of estimand framework to the design and analysis of multi-regional clinical trials」(国際共同治験の設計とデータ分析におけるestimandフレームワークの適用)を発表し、国際共同治験(MRCT)におけるestimandの定義の概要を示しています。著者らはestimandを5つの構成要素に分け、各要素について詳しく解説しています。セクション2では、主要評価項目と主な副次評価項目に注目しており、estimandに関する考察は、治験実施国・地域間で想定される(相違点ではなく)共通点に焦点を当てています。セクション3では実施国・地域に焦点を当て、感度分析における推定量や、実施国・地域での推定の一貫性などについて述べています。セクション4では、ケーススタディとしてRAISE試験とLEADER試験を取り上げており、これにより実例を理論に結び付けることができます。

7. 人工知能・機械学習

Mathiasらは、2部構成の記事の第1部「Digital health technologies need regulation and reimbursement that enable flexible interactions and groupings」(デジタルヘルス技術には柔軟な相互作用とグループ化を可能にする規制と償還が必要)を発表しました。著者らは「デジタルヘルス技術(DHT)には、ウェアラブルデバイスやモバイルヘルス(mHealth)デバイス、医療情報通信技術(IT)、遠隔医療(telehealthとtelemedicine)、個別化医療などが含まれる」と述べ、「これらのデバイスと、デバイスとリンクする新たなケアパス(care pathway)に関して、規制や医療技術評価、償還の枠組みの限界と実装上の課題」を説明しています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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