CORE Reference News 2024年12月16日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからのお知らせ

2024年12月4日に開催したCORE Referenceウェビナー「Voydeya: A Real Life Example of EMA Policy 0070 in Rare Disease」(希少疾患の臨床試験データ公開 [EMA Policy 0070] の実例:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン])のビデオ録画とスライドを、こちらで公開しました。どなたでも無料でご覧頂けますので、お知り合いの方々にもお伝え下さい。

2. ICH

2.1 EUネットワークは、「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」の改訂を支援するACT EUの活動の一環として、ICH E6(R3) GCPガイドラインの原則とAnnex 1に関するワークショップを、2025年2月19~20日にハイブリッド形式で開催します。このワークショップではICH-GCPガイドラインの主な変更点を概説し、ガイドラインの実施について多様なステークホルダーと検討します。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で始めた取り組み。

2.2 EMAは、ICH E6(R3)ガイドライン「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」のAnnex 2案について、パブリックコメントを募集しています。コメントは、専用テンプレートを使用してICHE6_R3@ema.europa.eu宛てに2025年2月28日まで提出可能です。

訳注)日本では厚労省がパブリックコメントを2025年1月25日までこちらで募集しています。また、無料の説明会が動画配信形式で開催されます(2025年1月6~25日公開予定)。説明会の詳細はこちらをご覧下さい。

3. EU CTRCTIS

3.1 CTISの臨床試験開始申請(CTA)評価内のすべてのタイマーが、2024年12月22日23:59:59(中央ヨーロッパ時間)に一時停止されますのでご注意下さい。タイマーは2025年1月8日00:00:01(中央ヨーロッパ時間)に再開されます。詳細は「CTIS evaluation timelines」をご覧下さい。

3.2 EMAは、2024年11月20日に開催したCTISショート説明会のビデオ録画を公開しました。

3.3 CTIS Training Environment(別名:CTIS Sandbox)は、システムアップデートのため2024年12月18日に利用できなくなり、同日までにシステムに記録されたデータもすべて削除されますので、ユーザーはご注意下さい。CTIS Training Environmentにアクセスしたい治験依頼者は、公開調査「CTIS Sandbox need self-assessment for access planning」から希望を伝えることができます。

4. 英国とMHRAのニュース

4.1 英国の新たな臨床試験規則が、2024年12月12日に英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)とMHRAによって英国議会に提出されました。新たな規則は2025年に審議され、12ヶ月の実施期間を経て2026年初頭に施行される見通しです。規則の主な変更点については、「New clinical trials regulations laid in parliament today」をご覧下さい。

4.2 MHRAは、ICH E6(R3)ガイドライン「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」のAnnex 2案(ステップ2b)について、パブリックコメントを募集しています。コメントはこちらからご提出下さい。

5. 米国FDAのガイダンスとニュース

5.1 臨床試験レジストリClinicalTrials.govは、PRS(Protocol Registration and Results System:プロトコル登録・結果システム)に関するニュースレター「Hot Off the PRS!」の最新号を発行しました。これによると、PRSのユーザーは試験記録の2つのバージョンを比較できるようになりました。また、Research Information Systems downloadの一部として、新たにフィールドが複数追加されました。これらのアップデートについては、最新の「Release Notes」(2024年12月3日)をご覧下さい。

5.2 FDAはガイダンス案「Expedited Program for Serious Conditions — Accelerated Approval of Drugs and Biologics」(重篤疾患のための迅速プログラム:医薬品および生物学的製剤の迅速承認」を発出しました。本ガイダンスは、迅速承認に関してFDAの方針と手続きの最新情報を提供することを目的としています。

5.3 FDAは最終ガイダンス「Standardized Format for Electronic Submission of NDA and BLA Content for the Planning of Bioresearch Monitoring (BIMO) Inspections for CDER Submissions」(CDERに提出するバイオリサーチモニタリング [BIMO] 査察計画のためのNDA/BLAコンテンツの電子申請用標準フォーマット)を発出しました。本ガイダンスは、FDAのCDERに提出する新薬承認申請(NDA)や、生物学的製剤承認申請(BLA)、新たな臨床試験報告書を含む追加申請のBIMO査察の計画・実施に使用される特定のデータ・情報の標準化された電子申請について説明しています。

5.4 FDAのCDERは、規制上の意思決定におけるリアルワールドデータ(RWD)とリアルワールドエビデンス(RWE)の活用をCDER全体で調整、促進、推進することを目的として、CDER Center for Real-World Evidence Innovation(CCRI)を新設しました。詳細はCCRIの公式サイトをご覧下さい。(訳注:後述の記事No.7.4もご参照下さい)

6. 欧州EMAのガイダンスとニュース

6.1 EMAのニュースレター「Clinical Trial Highlights」2024年12月号は、欧州委員会のガイダンス「Guidance for the transition of clinical trials from the Clinical Trials Directive to the Clinical Trials Regulation」(臨床試験指令から臨床試験規則への臨床試験移行のためのガイダンス)で強調されているように、現在実施中の臨床試験は2025年1月30日までに臨床試験指令(CTD)から臨床試験規則(CTR)に移行しないと、CTRに準拠していないとみなされることを、治験依頼者に注意喚起しています。

6.2 臨床試験開始申請(CTA)や医薬品販売承認申請(MAA)に必要なエビデンスに関して、HMAの臨床試験調整グループ(CTCG)とEMAの科学的助言作業部会(SAWP)が提供する共同科学的助言を、医薬品開発者は要請できるようになりました。

7. リアルワールドデータ

7.1 EMAはドラフト文書「Data Quality Framework for EU medicines regulation: application to real-world data」(EU医薬品規制のデータ品質フレームワーク:リアルワールドデータへの適用)に関して、パブリックコメントの募集を開始しました。

このフレームワークは、医薬品規制のユースケースで使用されるデータセット全体に広く適用されることを意図して、原則や概念、定義を規定しています。その目的は、規制上の意思決定におけるリアルワールドエビデンスの活用を強化することです。パブリックコメントは、EU Survey toolから各セクションの表を使用して2025年1月31日まで提出可能です。

7.2 Welzelらは論文「A transparent and standardized performance measurement platform is needed for on-prescription digital health apps to enable ongoing performance monitoring」(医師が処方するデジタルヘルスアプリで継続的なパフォーマンスモニタリングを可能にするには、透明性が高く標準化されたパフォーマンス測定プラットフォームが必要)を発表しました。

著者らは、実臨床において「apps on prescription (AOP)」(医師が処方する治療用アプリ)(例:ドイツのDiGA)のパフォーマンスを継続的に監視・評価するためのプラットフォームベースのアプローチを提案しています。このアプローチにより、透明性、標準化、パフォーマンスベースの価格設定が向上し、デジタルヘルスのイノベーションを、医療の測定可能なアウトカムに合わせられるとしています。

7.3 欧州のIDERHAプロジェクトは、「D6.2 Report on Global Regulatory Best Practices Analysis: A Scoping Review of HTA and Regulatory RWD/RWE Policy Documents」(グローバル規制ベストプラクティス分析に関するD6.2レポート:医療技術評価 [HTA] および規制上のRWD/RWEポリシー文書のスコーピングレビュー)を発表しました。

訳注)IDERHA:Integration of Heterogeneous Data and Evidence towards Regulatory and HTA Acceptance(規制上と医療技術評価 [HTA]の承認に向けた異種データとエビデンスの統合)。2023年4月に官民共同で発足した欧州革新的医療構想(IHI:Innovative Health Initiative)プロジェクト。異種医療データの安全・確実で合理的な共有を可能にすることを目的としている。

7.4 2024年12月12日、FDAは、規制上の意思決定におけるリアルワールドデータ(RWD)とリアルワールドエビデンス(RWE)の活用を調整・促進するため、CDER Center for Real-World Evidence Innovation(CCRI)を設立すると発表し、CCRIに関するQ&A集「CCRI Frequently Asked Questions」を公開しました。(訳注:前述の記事No.5.4もご参照下さい)

8. 透明性・情報開示のリソースとニュース

8.1 Canadian Anonymization Network(CANON)とAccessPrivacyは、ラウンドテーブル・ディスカッション「Consultation Session on Draft De-Identification Guidance Issued by the Information and Privacy Commissioner of Ontario」(オンタリオ州情報プライバシー・コミッショナーが発出した匿名化ガイダンス案に関する協議)を、12月18日12:00~14:00(米国東部時間)に開催します。これは、ガイダンス案の主な特徴とその影響について議論し、参加者からコメントを得ることを目的としています。

8.2 PHUSEは、データの透明性に関する冬季オンラインイベント「PHUSE Data Transparency Winter event」を2025年2月4~6日に開催します。プレゼンテーションは3日間とも15:00~17:30(グリニッジ標準時)に行われる予定です。参加を希望される方は、こちらからお申し込み下さい。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

9. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

Castleらのブログ記事「EMA Clinical Data Publication Policy to Cover All New Marketing Authorization Applications, Line Extensions and Major Clinical Type II Variations Starting Q2 2025」(2025年第2四半期以降すべての新規販売承認申請 [MAA]、ライン延長申請、主要な臨床タイプIIバリエーション申請が対象になるEMA臨床データ公開ポリシー)は、2025年のEMA臨床試験データ公開(Policy 0070)の次のステップを概説しています。

10. 開発戦略ニュース

10.1 Clinical Trials Transformation Initiative(CTTI)は、臨床試験の多様性行動計画(DAP)の実施を促進するためにその課題と解決策を明らかにすることを目指して、新プロジェクト「Diversity Action Plan Implementation project」を開始したことを発表しました(発表全文はこちら)。CTTIは、DAPの実施に関して主な留意点を含む推奨事項またはベストプラクティスを作成し、貢献するパートナーの役割と責任を概説する文書も作成する予定です。

訳注)CTTI:2007年に米国デューク大学とFDAが共同で設立した、臨床試験の品質・効率の向上を目指す産学官連携組織。

10.2 Kooらは論文「Review of the European Union Clinical Trials Regulation: Key Early Learnings from the United Kingdom Drug Information Association Medical Writing Committee」(EU臨床試験規則 [CTR]のレビュー:英国DIAメディカルライティング委員会が得た知見)を発表しました。

同委員会はメディカルライターの視点でCTRを精査し、治験薬概要書(IB)や治験プロトコル、plain languageによるプロトコル概要、中間解析、補助医薬品(AxMP)、plain language summaryなどに関して得られた知見を論文にまとめています。

治験プロトコルの作成に関する留意事項としては、開示に向けたアプローチや、TransCelerate社提供の治験プロトコルの変更(例:治験終了の定義)、1年間に実施可能な修正(改訂)回数、情報提供依頼(RFI)に対するアプローチなどが挙げられています。

10.3 Thomassenらは論文「The role of the estimand framework in the analysis of patient-reported outcomes in single-arm trials: a case study in oncology」(単群試験の患者報告アウトカム [PRO] 分析におけるestimandフレームワークの役割:癌領域のケーススタディ)を発表しました。著者らは、肺癌患者を対象にした単群試験における包括的QOL(Quality of Life)アウトカムに注目し、考えられるestimandの範囲を特定しています。特に、関心のある変数と、中間事象に対応するためのストラテジーに焦点を当てています。

11. 人工知能・機械学習

『Lancet』誌は、研究者が論文を投稿する際にAIの使用を申告する方法について、新たなガイドライン「Generative AI: ensuring transparency and emphasising human intelligence and accountability」(生成AI:透明性の確保と、人間の知性と説明責任の重視)を発表しました。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年6月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

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【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 改正透明性規則と、アップデートされたCTISパブリックポータルが2024年6月18日に開始されました。両者に関する情報はこちらをご覧下さい。

1.2 「EMA Guidance document on how to approach the protection of personal data and commercially confidential information while using the Clinical Trials Information System (CTIS)」(CTIS利用中に個人データと営業機密情報 [CCI] を保護する方法に関するEMAガイダンス)のバージョン2(2024年6月18日付)が発出されました。旧バージョンからの主な変更は、①改正透明性規則への対応(適用されなくなった第5章の削除など)、②「historical trial」(訳注:2024年6月18日以前にCTISに提出された臨床試験)の公開原則に関するセクションの追加、③移行試験に関するセクションの追加の3点です。個人データとCCIの保護の原則に変更はありません。本ガイダンスの「Annex I」(付録I)と「Q&A on the protection of commercially confidential information and personal data while using CTIS」(CTIS利用中の個人データとCCIの保護に関するQ&A)も併せてお読み下さい。

2. EUの医薬品規制

2.1 欧州委員会医療技術評価(HTA)事務局とEMAは、「Joint clinical assessment of medicinal products: Submission of early information by health technology developers」(医薬品の共同臨床評価:医療技術開発者による早期情報提出)に関する通知を発行しました。EMAとHTA事務局は、申請提出の意思通知に同じ書式を使用することに合意しました。この連携により、2機関間の情報交換の効率が向上します。

2.2 Caponeらの論文「Accelerating clinical trials in the EU (ACT EU): transforming the EU clinical trials landscape」(ACT EU:EU臨床試験環境の変革)は、ACT EUと、「欧州での臨床試験に最適な環境を作り、患者に医薬品をより早く届ける」という取り組みについて説明しています。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

2.3 欧州議会は、「Addressing challenges to European multicountry collaboration models for rare diseases」(希少疾患に関する欧州多国間協力モデルの課題への取り組み)に関する報告書を発表しました。

2.4 EMAは、ICH M14ガイドライン案「General principles on plan, design and analysis of pharmacoepidemiological studies that utilize real-world data for safety assessment of medicines」(医薬品の安全性評価においてリアルワールドデータを活用する薬剤疫学研究の計画、デザイン、分析に関する一般原則)について、パブリックコメントの募集を開始しました。コメントは2024年8月30日まで受け付けています。詳細はこちらをご覧下さい。(訳注:日本でも2024年7月28日までこちらでパブコメを募集しています)

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 FDAの「14th Global Summit on Regulatory Science (GSRS24)」(第14回グローバル規制科学サミット)年次会議が、対面式で2024年9月18~19日にアーカンソー州リトルロックで開催されます。参加は無料ですが、事前の申込が必要です(2024年7月15日締切)。座席数には限りがあり、申込受付は先着順となります。プログラムはこちらをご覧下さい。

3.2 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govは、最新化された同サイトで基本的なタスクを行う方法を解説したデモンストレーション動画「Fast Forward from ClinicalTrials.gov」シリーズを公開しています。ClinicalTrials.govとProtocol Registration and Results System (PRS)(プロトコル登録・結果システム)について、ユーザーから多く寄せられる質問に対応した短いデモ動画がさらに追加されていく予定ですので、今後もご注目下さい。

3.3 医療情報提供サイト「Clinical Leader」のゲストコラム「FDA Issues New Draft Guidances On Cancer Clinical Trial Eligibility Criteria」(FDAががん臨床試験の適格性基準に関して新たなガイダンス案を発表)で、著者のZettler氏は、がん臨床試験の適格性基準に関してFDAが最近発表した3つのガイダンス案(①ウォッシュアウト期間と併用薬、②performance status、③臨床検査値)を取り上げています。厳しい適格性基準の緩和を支持する最近のエビデンスも紹介しており、『NEJM Evidence』誌に掲載された研究によると、臨床試験の参加に適格ながん患者の割合は、ヘモグロビン、eGFR、クレアチニンクリアランス、ECOG performance statusなどについて厳しい適格性基準を適用した場合48%でしたが、これらの基準を緩和すると78%に増えました。

3.4 FDAは2023年11月29~30日に公開ワークショップ「Enhancing Clinical Study Diversity」(臨床試験の多様性向上)を開催しましたが、このレポートがこちらで公開されています。また、FDAはガイダンス案「Diversity Action Plans to Improve Enrollment of Participants from Underrepresented Populations in Clinical Studies」(臨床試験でマイノリティ集団の被験者登録を改善するためのダイバーシティ・アクションプラン)を発表し、パブリックコメントを募集しています(訳注:2024年9月26日締切)。

4. リアルワールドデータ

4.1 英国の医療データに関する国立研究機関Health Data Research UK(HDR UK)は、英国内の複数の情報源から収集した医療データを活用するため、Real-World Evidence Network Coordination Centre for the UK(英国RWEネットワーク調整センター)の試験的創設を発表しました。

4.2 Angusらは論文「The Integration of Clinical Trials With the Practice of Medicine: Repairing a House Divided」(臨床試験と実臨床の融合:分断された世界の修復)を発表し、研究と実臨床とのギャップを指摘しています。ランダム化比較試験(RCT)は「医療で何が有効かを見極める最も厳密な方法」ですが、RCTのエビデンスとその臨床応用との間には乖離があり、「これら2つの世界のより良い融合が、医療提供の改善を加速させる鍵である」と著者らは述べています。

5. 透明性・情報開示のリソースとニュース

5.1 米国ハーバード大学/ブリガム&ウィメンズ病院のMRCTセンターが作成した「Clinical Research Glossary」(臨床研究用語集)は、毎年6月に公開レビューが実施されており、今年は2024年7月5日までコメントを募集しています。レビューとコメント提出はこちらから可能です。詳細はウェビナー「Action and Influence: Implementing the Clinical Research Glossary and Your Critical Role in Public Review」(行動と影響:臨床研究用語集の実装と、公開レビューにおける皆様の重要な役割)をご覧下さい。

訳注)MRCTセンター:Multi-Regional Clinical Trials Center of Brigham and Women’s Hospital and Harvard(ハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院の多地域臨床試験センター)。ブリガム&ウィメンズ病院は、米国ハーバード大学医学部の附属病院としての役割を担う医療・研究・教育機関の1つ。MRCTはハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院に属しており、国際共同治験の改善を目的とする研究・政策センター。

5.2 PHUSEはデータの透明性に関するオンラインイベント「PHUSE Data Transparency Autumn event」を、2024年9月17~19日の15:00~17:30(英国夏時間)/10:00~12:30(米国東部夏時間)に開催します。参加は無料ですが、事前の申込が必要です。詳細は後日発表予定です。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメントや生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

6. 開発戦略ニュース

6.1 TransCelerate BioPharma社は2024年7月11日午前9時~10時30分(米国東部時間)に、ウェビナー「Vulcan UDP (Utilizing the Digital Protocol): Collaborating to Accelerate ICH M11 and End User Value」(Vulcan UDP [デジタルプロトコルの活用]:ICH M11ガイドラインとエンドユーザー価値の促進に向けたコラボレーション)を開催します。VulcanのUDPは、複数のイニシアチブを統合して治験プロトコルのデジタル表現を開発する包括的なプロジェクトです。ウェビナーで取り上げる主な内容は、①Vulcan UDPの目標、②2024年5月に初めて実施されたUDPコネクタソンの概要(フィードバック、得られた学び、フォローアップ計画など)と今後のコネクタソンの予定、③ICH M11 EWG(expert working group:専門家作業部会)の観点から見たICH M11の意図と想定される影響です。質疑応答も実施されます。参加申込はこちらから可能です。

訳注1)TransCelerate BioPharma Inc.:世界のバイオ医薬品企業約20社が協力して、新薬の効率的・効果的かつ高品質な提供を促進する方法を探求する非営利団体。日本の製薬企業も数社参画。治験総括報告書(CSR)や治験プロトコルのテンプレートなどを作成・提供。

訳注2)Vulcan:米国の非営利標準化団体であるHL7(Health Level 7)協会が2019年に立ち上げた、マルチステークホルダーによる国際プロジェクト。HL7協会が開発した医療データ交換の標準規格FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)を活用して、医療と臨床研究のギャップを埋めることを目指している。

6.2 Niuらは論文「Application of estimand framework to the design and analysis of multi-regional clinical trials」(国際共同治験の設計とデータ分析におけるestimandフレームワークの適用)を発表し、国際共同治験(MRCT)におけるestimandの定義の概要を示しています。著者らはestimandを5つの構成要素に分け、各要素について詳しく解説しています。セクション2では、主要評価項目と主な副次評価項目に注目しており、estimandに関する考察は、治験実施国・地域間で想定される(相違点ではなく)共通点に焦点を当てています。セクション3では実施国・地域に焦点を当て、感度分析における推定量や、実施国・地域での推定の一貫性などについて述べています。セクション4では、ケーススタディとしてRAISE試験とLEADER試験を取り上げており、これにより実例を理論に結び付けることができます。

7. 人工知能・機械学習

Mathiasらは、2部構成の記事の第1部「Digital health technologies need regulation and reimbursement that enable flexible interactions and groupings」(デジタルヘルス技術には柔軟な相互作用とグループ化を可能にする規制と償還が必要)を発表しました。著者らは「デジタルヘルス技術(DHT)には、ウェアラブルデバイスやモバイルヘルス(mHealth)デバイス、医療情報通信技術(IT)、遠隔医療(telehealthとtelemedicine)、個別化医療などが含まれる」と述べ、「これらのデバイスと、デバイスとリンクする新たなケアパス(care pathway)に関して、規制や医療技術評価、償還の枠組みの限界と実装上の課題」を説明しています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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