CORE Reference News 2025年1月号 注目記事

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料公開しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1回公開。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て、参考用として注目記事を日本語でご紹介しております。正確な内容や詳細は英語原文と各ニュースのリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

 

CORE Reference News原文公開・配信方法の変更】
従来、「CORE Reference News Summary」(英語原文)は、「CORE Reference」公式サイトで無料公開されるとともに、希望者にメールで無料配信されておりましたが、2025年1月よりLinkedInでの無料公開に変更され、メール配信はなくなりました。

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20251月号の注目記事】
ICH E6(R3) GCPガイドライン最終版が2025年1月6日公開

◆米国メディカルライター協会(AMWA)が治験プロトコル作成のベストプラクティスを提供
4 Best Practices for Clinical Protocol Writing

◆人工知能(AI)関連情報
・治験結果のlay summary作成時のAI利用の留意点をCISCRPが提案
Considerations for the Use of Artificial Intelligence in the Creation of Lay Summaries of Clinical Trial Results (draft)

・生成AIによる治験総括報告書(CSR)自動作成に関する論文
How Medical Writing and Regulatory Affairs Professionals Can Embrace and Deploy Generative AI at Scale

・世界経済フォーラムが生成AIによる治験の革新と治療法開発の加速を考察
Intelligent Clinical Trials: Using Generative AI to Fast-Track Therapeutic Innovations

◆PMDAが医薬品承認審査でのRWD/RWE活用事例と見解を発表
PMDA Perspective on Use of Real-World Data and Real-World Evidence as an External Control: Recent Examples and Considerations

詳細や他のニュース記事は、「CORE Reference」のLinkedInをご覧下さい。

 

著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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国内外の業界情報や、英文ライティングのワンポイントレッスンなど
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CORE Reference News 2024年12月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 2024年12月13日、以下の3文書の各更新版がACT EUの公式サイトで発表されました。

ヒト用医薬品の製造販売承認申請(MAA)におけるCCIと個人情報の特定と開示の原則が更新されました。これにより、医薬品承認後に情報を一般公開する際、EMA文書の開示請求への対応とデータの積極的な開示の両面において、広範な透明性が確保されます。

今回のガイダンス更新は、2012年のガイダンス発出以来、規制当局が進めてきた透明性の向上と歩調を合わせるものです。更新版では、個人を特定できるような個人データがどのように保護されるかも規定されています。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で始めた取り組み。

1.2 EMAは次回のCTISショート説明会を2025年1月29日16:00~17:00(アムステルダム時間)に開催します。事前の質問は、2025年1月6~22日にSlidoからコード「#clinic249」を使用して提出可能です。

1.3 EMAは以下の4文書について各々更新版を発表しました。

1.4 2024年12月18日、EMAとHMAはガイダンス「HMA/EMA guidance document on the identification of personal data and commercially confidential information within the structure of the marketing authorisation application (MAA) dossier」(販売承認申請 [MAA] 書類の構造内での営業機密情報 [CCI] と個人情報 [PPD] の特定に関するHMA/EMAガイダンス文書)の改訂版(全53頁)を発表しました。

本ガイダンスは、国内手続きや相互承認手続き、地方分権手続き、中央集権手続きの下で規制上の手続きが完了したヒト用医薬品の情報・文書を適用対象としています。本ガイダンスには、PPDまたはCCIと見なされる場合がある情報に関するAnnex(付属書)が添付されています(後述の記事No.1.5参照)。

EMAは、本ガイダンスの改訂に伴い、「A common EU approach to data transparency in medicine regulation」(医薬品規制のデータ透明性に対するEUの共通アプローチ)を発表しました。今回の改訂については、RAPSのレビュー記事「EMA, HMA overhaul guidance on data transparency in MAAs」(EMAとHMAがMAAのデータ透明性に関するガイダンスを全面的に見直し)もご参照下さい。

訳注)RAPS(Regulatory Affairs Professionals Society:薬事専門家協会):医薬品や生物製剤、医療機器、デジタルヘルスなどの規制に携わる専門家の世界最大の組織。1976年に米国で設立され、国内外の規制当局やアカデミア、製薬・医療機器業界などの専門家により、レギュラトリーサイエンスの情報交換や教育を実施。

1.5 EMAはガイダンス「HMA/EMA guidance document on the identification of personal data and commercially confidential information within the structure of the marketing authorisation application (MAA) dossier」(販売承認申請 [MAA] 書類の構造内での営業機密情報 [CCI] と個人情報 [PPD] の特定に関するHMA/EMAガイダンス文書)のAnnex I(付属書I)を、2024年12月13日付で発表しました。Annexには、臨床試験でコンプライアンスと透明性を担保するための開示ルールや構造化データ、文書の種類、開示のタイムラインが詳述されています。

1.6 EMAは、EUにおける医薬品の電子製品情報(ePI)の導入に向けた次のステップと、導入のための推奨事項をまとめた報告書「ePI pilot report: Experience gained from creation of ePI during regulatory procedures for EU human medicines」(ePIパイロットプロジェクト報告書:EUのヒト用医薬品の規制手続き中にePIを作成した経験)を発表しました。医薬品の製品情報には製品特性概要(SmPC)、ラベリング、医薬品添付文書が含まれます。

報告書の背景などについては、EMAの「Successful pilot paves the way for implementation of ePI」(試験的導入の成功によりePI実装へ前進)をご覧下さい。

2. 英国とMHRAのニュース

英国の新たな臨床試験規則が、2024年12月12日に英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)とMHRAによって英国議会に提出されました。新たな規則は2025年に審議され、12ヶ月の実施期間を経て2026年初頭に施行される見通しです。

新たな規則では、世界保健機関(WHO)が指定する治験・臨床研究登録機関(レジストリ)に臨床試験を登録し、試験終了から12か月以内に結果の概要を公開することが初めて法的に義務付けられます。規則の主な変更点については、「New clinical trials regulations laid in parliament today」をご覧下さい。

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 米国国立衛生研究所(NIH)は、NIHが資金提供した研究の成果をできるだけ早く利用できるようにするため、新たに「NIH Public Access Policy」を発表しました。

また、NIHは、研究者や臨床医、学生、一般の人々が研究結果を簡単に見つけて利用できるようにするための計画「NIH Plan to Increase Findability and Transparency of Research Results Through the Use of Metadata and Persistent Identifiers」(メタデータと永続的識別子 [PID] の利用により研究結果の検索性と透明性を高めるNIH計画)も発表しました。この計画に対するパブリックコメントを2025年2月21日までこちらで受け付けています。

3.2 2024年12月26日、FDAは全13頁のガイダンス案「Protocol Deviations for Clinical Investigations of Drugs, Biological Products, and Devices」(医薬品、生物学的製剤、医療機器の臨床試験におけるプロトコル逸脱)を発出し、パブリックコメントを2025年2月28日までこちらで募集しています。プロトコル逸脱に関するFDA規制の既存の問題に対処するため、ガイダンス案には以下の内容などが含まれています。

  • 「プロトコル逸脱」と「重要なプロトコル逸脱」の各定義
  • 治験依頼者が医薬品や医療機器の治験総括報告書(CSR)でFDAに報告すべきプロトコル逸脱の種類に関する推奨事項
  • 治験責任医師が治験依頼者と治験審査委員会(IRB)に報告すべきプロトコル逸脱の種類に関する推奨事項
  • IRBによるプロトコル逸脱評価に関する推奨事項

本ガイダンス案でFDAは、ICH E3(R1)ガイドラインの「プロトコル逸脱」と「重要なプロトコル逸脱」の各定義を採用しています。

4. 透明性・情報開示のリソースとニュース

4.1 Khaled El Emamらは論文「Perspectives of Canadian privacy regulators on anonymization practices and anonymized information: a qualitative study」(匿名化の実施と匿名化情報に関するカナダのプライバシー規制当局の見解:定性的研究)を発表しました。

この論文は、匿名化の実施や匿名化情報の定義に関する規制の精度と一貫性がカナダ全土で欠けていることや、データ匿名化の方法に関して一般的に受け入れられる国のガイダンスが存在しないことを示しています。このような状況は、法域を超えて匿名化データを共有するための国の技術的解決策や政策の策定を阻んでいます。

著者らは匿名化の実施と匿名化データの規制方法に関してプライバシー規制当局の見解を理解するため、カナダのプライバシー規制当局者の93%を対象に定性的インタビュー調査を実施しました。この論文に関するウェビナー「How Canadian Regulators Approach De-Identification: An Interview Study」(カナダ規制当局は匿名化にどのように取り組んでいるか:インタビュー調査)が、2025年2月11日に開催されます。

4.2 Real Life Sciences社は、新たにポッドキャスト「Which Methodology Should I Choose? Qualitative & Quantitative Anonymization for Policy 0070 and PRCI Disclosure Submissions」(匿名化の方法はどちらを選ぶべきか?EMAのPolicy 0070およびカナダ保健省のPRCI [Public Release of Clinical Information] の開示提出における定性的匿名化と定量的匿名化)を公開しました。

規制の専門家やデータ透明性の専門家が利用可能な臨床データ匿名化の方法は、現在2つあります。このポッドキャストでは、定性的なプロジェクトを完了するためのベストプラクティスを深く掘り下げるなど、匿名化の定性的手法と定量的手法の違いを検証しています。

5. 開発戦略ニュース

5.1 Kooらは論文「Review of the European Union Clinical Trials Regulation: Key Early Learnings from the United Kingdom Drug Information Association Medical Writing Committee」(EU臨床試験規則 [CTR] のレビュー:英国DIAメディカルライティング委員会が得た知見)を発表しました。CORE Reference TeamのメンバーVivien Faganもこの論文の共著者の1人です。論文はこちらから全文無料でご覧頂けます。

同委員会は治験薬概要書(IB)や治験プロトコル、plain languageによるプロトコル概要、中間解析、補助医薬品(AxMP)、plain language summaryなどに関して得られた知見を論文にまとめています。

治験プロトコルの作成に関する留意事項としては、開示に向けたアプローチや、TransCelerate社提供の治験プロトコルの変更(例:治験終了の定義)、1年間に実施可能な修正(改訂)回数、情報提供依頼(RFI)に対するアプローチなどが挙げられています。

5.2 2024年12月5日にTransCelerate社とCDISCが共同開催したウェビナー「Digital Data Flow (DDF) Solution Showcase: December 2024」(デジタルデータフロー [DDF] ソリューションの紹介:2024年12月」のビデオ録画スライドが公開されました。このウェビナーでは、複数のソリューションプロバイダーが治験プロトコルのデジタル化の革新的なソリューションを紹介しました。

訳注1)TransCelerate BioPharma Inc.:世界のバイオ医薬品企業約20社が協力して、新薬の効率的・効果的かつ高品質な提供を促進する方法を探求する非営利団体。日本の製薬企業も数社参画。治験総括報告書(CSR)や治験プロトコルのテンプレートなどを作成・提供。

訳注2)CDISC:Clinical Data Interchange Standards Consortium。臨床試験データなどの電子的収集・交換・申請に関して業界標準を策定している国際的な非営利組織。1997年に米国で設立され、国内外のアカデミアや製薬企業、CRO、IT企業などが参加。CDISCが規定する標準規格は「CDISC standard」(CDISC標準)と呼ばれている。

6. アジア規制当局のニュース

以下の臨床試験レジストリはクリスマス・年末から年始にかけて休止となります。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年12月16日号

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治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからのお知らせ

2024年12月4日に開催したCORE Referenceウェビナー「Voydeya: A Real Life Example of EMA Policy 0070 in Rare Disease」(希少疾患の臨床試験データ公開 [EMA Policy 0070] の実例:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン])のビデオ録画とスライドを、こちらで公開しました。どなたでも無料でご覧頂けますので、お知り合いの方々にもお伝え下さい。

2. ICH

2.1 EUネットワークは、「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」の改訂を支援するACT EUの活動の一環として、ICH E6(R3) GCPガイドラインの原則とAnnex 1に関するワークショップを、2025年2月19~20日にハイブリッド形式で開催します。このワークショップではICH-GCPガイドラインの主な変更点を概説し、ガイドラインの実施について多様なステークホルダーと検討します。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で始めた取り組み。

2.2 EMAは、ICH E6(R3)ガイドライン「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」のAnnex 2案について、パブリックコメントを募集しています。コメントは、専用テンプレートを使用してICHE6_R3@ema.europa.eu宛てに2025年2月28日まで提出可能です。

訳注)日本では厚労省がパブリックコメントを2025年1月25日までこちらで募集しています。また、無料の説明会が動画配信形式で開催されます(2025年1月6~25日公開予定)。説明会の詳細はこちらをご覧下さい。

3. EU CTRCTIS

3.1 CTISの臨床試験開始申請(CTA)評価内のすべてのタイマーが、2024年12月22日23:59:59(中央ヨーロッパ時間)に一時停止されますのでご注意下さい。タイマーは2025年1月8日00:00:01(中央ヨーロッパ時間)に再開されます。詳細は「CTIS evaluation timelines」をご覧下さい。

3.2 EMAは、2024年11月20日に開催したCTISショート説明会のビデオ録画を公開しました。

3.3 CTIS Training Environment(別名:CTIS Sandbox)は、システムアップデートのため2024年12月18日に利用できなくなり、同日までにシステムに記録されたデータもすべて削除されますので、ユーザーはご注意下さい。CTIS Training Environmentにアクセスしたい治験依頼者は、公開調査「CTIS Sandbox need self-assessment for access planning」から希望を伝えることができます。

4. 英国とMHRAのニュース

4.1 英国の新たな臨床試験規則が、2024年12月12日に英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)とMHRAによって英国議会に提出されました。新たな規則は2025年に審議され、12ヶ月の実施期間を経て2026年初頭に施行される見通しです。規則の主な変更点については、「New clinical trials regulations laid in parliament today」をご覧下さい。

4.2 MHRAは、ICH E6(R3)ガイドライン「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」のAnnex 2案(ステップ2b)について、パブリックコメントを募集しています。コメントはこちらからご提出下さい。

5. 米国FDAのガイダンスとニュース

5.1 臨床試験レジストリClinicalTrials.govは、PRS(Protocol Registration and Results System:プロトコル登録・結果システム)に関するニュースレター「Hot Off the PRS!」の最新号を発行しました。これによると、PRSのユーザーは試験記録の2つのバージョンを比較できるようになりました。また、Research Information Systems downloadの一部として、新たにフィールドが複数追加されました。これらのアップデートについては、最新の「Release Notes」(2024年12月3日)をご覧下さい。

5.2 FDAはガイダンス案「Expedited Program for Serious Conditions — Accelerated Approval of Drugs and Biologics」(重篤疾患のための迅速プログラム:医薬品および生物学的製剤の迅速承認」を発出しました。本ガイダンスは、迅速承認に関してFDAの方針と手続きの最新情報を提供することを目的としています。

5.3 FDAは最終ガイダンス「Standardized Format for Electronic Submission of NDA and BLA Content for the Planning of Bioresearch Monitoring (BIMO) Inspections for CDER Submissions」(CDERに提出するバイオリサーチモニタリング [BIMO] 査察計画のためのNDA/BLAコンテンツの電子申請用標準フォーマット)を発出しました。本ガイダンスは、FDAのCDERに提出する新薬承認申請(NDA)や、生物学的製剤承認申請(BLA)、新たな臨床試験報告書を含む追加申請のBIMO査察の計画・実施に使用される特定のデータ・情報の標準化された電子申請について説明しています。

5.4 FDAのCDERは、規制上の意思決定におけるリアルワールドデータ(RWD)とリアルワールドエビデンス(RWE)の活用をCDER全体で調整、促進、推進することを目的として、CDER Center for Real-World Evidence Innovation(CCRI)を新設しました。詳細はCCRIの公式サイトをご覧下さい。(訳注:後述の記事No.7.4もご参照下さい)

6. 欧州EMAのガイダンスとニュース

6.1 EMAのニュースレター「Clinical Trial Highlights」2024年12月号は、欧州委員会のガイダンス「Guidance for the transition of clinical trials from the Clinical Trials Directive to the Clinical Trials Regulation」(臨床試験指令から臨床試験規則への臨床試験移行のためのガイダンス)で強調されているように、現在実施中の臨床試験は2025年1月30日までに臨床試験指令(CTD)から臨床試験規則(CTR)に移行しないと、CTRに準拠していないとみなされることを、治験依頼者に注意喚起しています。

6.2 臨床試験開始申請(CTA)や医薬品販売承認申請(MAA)に必要なエビデンスに関して、HMAの臨床試験調整グループ(CTCG)とEMAの科学的助言作業部会(SAWP)が提供する共同科学的助言を、医薬品開発者は要請できるようになりました。

7. リアルワールドデータ

7.1 EMAはドラフト文書「Data Quality Framework for EU medicines regulation: application to real-world data」(EU医薬品規制のデータ品質フレームワーク:リアルワールドデータへの適用)に関して、パブリックコメントの募集を開始しました。

このフレームワークは、医薬品規制のユースケースで使用されるデータセット全体に広く適用されることを意図して、原則や概念、定義を規定しています。その目的は、規制上の意思決定におけるリアルワールドエビデンスの活用を強化することです。パブリックコメントは、EU Survey toolから各セクションの表を使用して2025年1月31日まで提出可能です。

7.2 Welzelらは論文「A transparent and standardized performance measurement platform is needed for on-prescription digital health apps to enable ongoing performance monitoring」(医師が処方するデジタルヘルスアプリで継続的なパフォーマンスモニタリングを可能にするには、透明性が高く標準化されたパフォーマンス測定プラットフォームが必要)を発表しました。

著者らは、実臨床において「apps on prescription (AOP)」(医師が処方する治療用アプリ)(例:ドイツのDiGA)のパフォーマンスを継続的に監視・評価するためのプラットフォームベースのアプローチを提案しています。このアプローチにより、透明性、標準化、パフォーマンスベースの価格設定が向上し、デジタルヘルスのイノベーションを、医療の測定可能なアウトカムに合わせられるとしています。

7.3 欧州のIDERHAプロジェクトは、「D6.2 Report on Global Regulatory Best Practices Analysis: A Scoping Review of HTA and Regulatory RWD/RWE Policy Documents」(グローバル規制ベストプラクティス分析に関するD6.2レポート:医療技術評価 [HTA] および規制上のRWD/RWEポリシー文書のスコーピングレビュー)を発表しました。

訳注)IDERHA:Integration of Heterogeneous Data and Evidence towards Regulatory and HTA Acceptance(規制上と医療技術評価 [HTA]の承認に向けた異種データとエビデンスの統合)。2023年4月に官民共同で発足した欧州革新的医療構想(IHI:Innovative Health Initiative)プロジェクト。異種医療データの安全・確実で合理的な共有を可能にすることを目的としている。

7.4 2024年12月12日、FDAは、規制上の意思決定におけるリアルワールドデータ(RWD)とリアルワールドエビデンス(RWE)の活用を調整・促進するため、CDER Center for Real-World Evidence Innovation(CCRI)を設立すると発表し、CCRIに関するQ&A集「CCRI Frequently Asked Questions」を公開しました。(訳注:前述の記事No.5.4もご参照下さい)

8. 透明性・情報開示のリソースとニュース

8.1 Canadian Anonymization Network(CANON)とAccessPrivacyは、ラウンドテーブル・ディスカッション「Consultation Session on Draft De-Identification Guidance Issued by the Information and Privacy Commissioner of Ontario」(オンタリオ州情報プライバシー・コミッショナーが発出した匿名化ガイダンス案に関する協議)を、12月18日12:00~14:00(米国東部時間)に開催します。これは、ガイダンス案の主な特徴とその影響について議論し、参加者からコメントを得ることを目的としています。

8.2 PHUSEは、データの透明性に関する冬季オンラインイベント「PHUSE Data Transparency Winter event」を2025年2月4~6日に開催します。プレゼンテーションは3日間とも15:00~17:30(グリニッジ標準時)に行われる予定です。参加を希望される方は、こちらからお申し込み下さい。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

9. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

Castleらのブログ記事「EMA Clinical Data Publication Policy to Cover All New Marketing Authorization Applications, Line Extensions and Major Clinical Type II Variations Starting Q2 2025」(2025年第2四半期以降すべての新規販売承認申請 [MAA]、ライン延長申請、主要な臨床タイプIIバリエーション申請が対象になるEMA臨床データ公開ポリシー)は、2025年のEMA臨床試験データ公開(Policy 0070)の次のステップを概説しています。

10. 開発戦略ニュース

10.1 Clinical Trials Transformation Initiative(CTTI)は、臨床試験の多様性行動計画(DAP)の実施を促進するためにその課題と解決策を明らかにすることを目指して、新プロジェクト「Diversity Action Plan Implementation project」を開始したことを発表しました(発表全文はこちら)。CTTIは、DAPの実施に関して主な留意点を含む推奨事項またはベストプラクティスを作成し、貢献するパートナーの役割と責任を概説する文書も作成する予定です。

訳注)CTTI:2007年に米国デューク大学とFDAが共同で設立した、臨床試験の品質・効率の向上を目指す産学官連携組織。

10.2 Kooらは論文「Review of the European Union Clinical Trials Regulation: Key Early Learnings from the United Kingdom Drug Information Association Medical Writing Committee」(EU臨床試験規則 [CTR]のレビュー:英国DIAメディカルライティング委員会が得た知見)を発表しました。

同委員会はメディカルライターの視点でCTRを精査し、治験薬概要書(IB)や治験プロトコル、plain languageによるプロトコル概要、中間解析、補助医薬品(AxMP)、plain language summaryなどに関して得られた知見を論文にまとめています。

治験プロトコルの作成に関する留意事項としては、開示に向けたアプローチや、TransCelerate社提供の治験プロトコルの変更(例:治験終了の定義)、1年間に実施可能な修正(改訂)回数、情報提供依頼(RFI)に対するアプローチなどが挙げられています。

10.3 Thomassenらは論文「The role of the estimand framework in the analysis of patient-reported outcomes in single-arm trials: a case study in oncology」(単群試験の患者報告アウトカム [PRO] 分析におけるestimandフレームワークの役割:癌領域のケーススタディ)を発表しました。著者らは、肺癌患者を対象にした単群試験における包括的QOL(Quality of Life)アウトカムに注目し、考えられるestimandの範囲を特定しています。特に、関心のある変数と、中間事象に対応するためのストラテジーに焦点を当てています。

11. 人工知能・機械学習

『Lancet』誌は、研究者が論文を投稿する際にAIの使用を申告する方法について、新たなガイドライン「Generative AI: ensuring transparency and emphasising human intelligence and accountability」(生成AI:透明性の確保と、人間の知性と説明責任の重視)を発表しました。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
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大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
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  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

 

1. ICH

ICH E6(R3)ガイドライン「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」のAnnex 2案が2024年11月6日にICH総会で承認され、現在パブリックコメントを募集しています。Annex 2は、多様な試験デザインやデータソースの利用増加に伴って生じるGCPの考慮事項を取り上げています。分散型臨床試験やプラグマティック臨床試験、リアルワールドデータ(RWD)を活用する臨床試験の各例に焦点を当て、追加的なGCP考慮事項を示します。

Annex 2の作業は、ICH E6(R3)原則とAnnex 1の作業と並行して進められ、Annex 1がICHステップ2に到達すると、Annex 2の作業が開始されます。ICH加盟国・地域のステークホルダーは、各々の規制当局にパブリックコメントを提出することが推奨されます。ICH E6(R3)ガイドラインとそのAnnexの詳細についてはこちらをご覧下さい。研修資料はこちらからダウンロード可能です。

2. EU CTRCTIS

2.1 ベルギー連邦医薬品・医療製品庁(FAMHP)は、治験依頼者に対して、臨床試験をCTR(EU)536/2014に早急に移行するよう求める声明「Important call to clinical trial sponsors: transfer clinical trials to the CTR as soon as possible」を発表しました。

2.2 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年11月19日号には、CTISの重要な最新情報や、有用な参考資料のリンク、冬季クロック停止の詳細などが記載されています。臨床試験開始申請(CTA)評価内のすべてのタイマーが2024年12月22日23:59:59(中央ヨーロッパ時間)に一時停止し、2025年1月8日00:00:01(中央ヨーロッパ時間)に再開されます。

3. 英国とMHRAのニュース

3.1 英国の治験・臨床研究登録機関ISRCTNレジストリは、「Transparency Tracker」の改良や、ISRCTN研究登録フォームの「Protocol/serial no.」欄の変更など、複数のアップデートを最近実施しました。詳しい更新内容は「What’s new on the ISRCTN registry?」をご覧下さい。

「Protocol/serial no.」欄は「Secondary identifying number(s)」欄に変更され、研究者や資金提供者、治験依頼者などが組織内で研究に割り振った参照番号を記入する欄になっています。臨床試験がEudraCT/CTISとClinicalTrials.gov以外のレジストリに登録されている場合は、同欄に治験IDを記入できます。英国国立健康研究所(NIHR)や、医療研究機構(HRA)、Wellcome Trustの助成金番号も同欄に記入します。

3.2 MHRAは、2024年10月15日に開催したウェビナー「Implementing the New UK Clinical Trials Regulations」(英国の新たな臨床試験規制の施行)のビデオ録画を、2024年11月13日に公開しました。このウェビナーでは、(1)新たな臨床試験規制の施行に向けて予想されるスケジュールの概要、(2)ガイダンス案をステークホルダーと共有してフィードバックを得る計画が示されました。
(訳注:翻訳時点で、ウェビナーの録画は「再生できません。アップロードしたユーザーにより削除されました」と表示されています)

ウェビナーに関するブログ記事「MHRA expects new UK clinical trial regulation implementation by January 2026」(MHRAは英国の新たな臨床試験規制が2026年1月までに施行されることを期待)も併せてご参照下さい。

3.3 英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、臨床試験のインフォームド・コンセントに関する規制の修正案「Simplifying the process of seeking and recording consent in low risk clinical trials」(低リスクの臨床試験におけるインフォームド・コンセントの取得・記録プロセスの簡素化)を発表し、パブリックコメントを募集しています。コメントは、2025年に英国で施行される臨床試験規制の策定に役立てられます。

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

ClinicalTrials.govのPRS(Protocol Registration and Results System:プロトコル登録・結果システム)のResultsセクション初の最新化モジュール(被験者の流れ、制限と注意事項、詳細情報)が、現在PRS Test版で利用可能であり、間もなく最新化PRS(新版)でも利用可能になります。ユーザーはPRS Test版で利用可能なResultsセクション・モジュールを試して、ClinicalTrials.gov PRSに感想を伝えることをお勧めします。詳細は最新の「Release Notes」(2024年11月26日)をご覧下さい。

5. 欧州EMAのガイダンスとニュース

EMAは、「Improving efficiency of approval process for new medicines in the EU」(EUにおける新薬承認プロセスの効率化)に関するQ&Aセッションを、2024年12月5日に開催します。本セッションでは、EUにおけるMAA(販売承認申請)や、申請期限を守るために企業が直面する課題を取り上げるとともに、審査・承認プロセスの効率化に向けたEMAの取り組みや、企業が申請計画を立てる際に役立つツールや推奨事項を紹介します。

6. リアルワールドデータ

6.1 中国におけるリアルワールドエビデンス(RWE)活用方針の策定とユースケースについては、Du氏と Han氏による記事「Evolving Policies and Use of RWE in Regulatory Decisions in China」(中国規制当局の意思決定におけるRWEの活用方針と活用の進化)をお読み下さい。

6.2 英国は、国内の健康データの現状を概観した「Uniting the UK’s Health Data: A Huge Opportunity for Society」(英国の健康データの統合:社会にとって大きなチャンス)を発表しました。この報告書は、英国全土の多数の健康関連データソースについて、広範な概要を示しています。

7. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

2024年11月14日、EMAは臨床試験データ公開(Policy 0070)の再開に向けた次のステップに関するウェビナー「Clinical Data Publication (Policy 0070) webinar — Step 2」(臨床試験データ公開 [Policy 0070]ウェビナー — ステップ2)を開催しました。プレゼン資料とビデオ録画がこちらで公開されています。提案されているステップ2の概要は以下の通りです。

  • 2025年第2四半期以降(正確な日付は未定。2025年4月以降の予定)、否定的意見や取り下げられた申請、ライン延長、主要な臨床タイプIIバリエーション(適応拡大)を含むすべての新たなMAA(販売承認申請)
  • バイオシミラー、ハイブリッド、ジェネリック医薬品をすべて除外
  • 新型コロナ対策と、今後発生する可能性のある新たな公衆衛生上の緊急事態の継続
  • 外部ガイダンス:2025年初頭発出に向けて検討中
  • 質疑応答(Q&A)文書:2023年7月公開。2025年更新予定
  • カナダ保健省との協働によるプロセス提携:ワークシェア。redaction proposal packageの単一レビューの試行
  • レガシー臨床データの公開に関するEMAの提案:要請(access-to-documents request)に応じて公開

8. 開発戦略ニュース

8.1 Higginsらは論文「Considerations for open-label randomized clinical trials: Design, conduct, and analysis」(オープンラベル・ランダム化比較試験に関する検討事項:デザイン、実施、解析)を発表しました。著者らは、最高レベルの試験のインテグリティと試験結論の信頼性を担保するために、オープンラベル試験をどのようにデザイン、実施、解析するのが最善か論じています。

8.2 TransCelerate社とCDISCは、ウェビナー「Digital Data Flow (DDF) Solution Showcase」を2024年12月5日に共催します。これは、治験プロトコルのデジタル化ソリューションに関するシリーズのウェビナー第2弾です。

訳注)CDISC:Clinical Data Interchange Standards Consortium。臨床試験データなどの電子的収集・交換・申請に関して業界標準を策定している国際的な非営利組織。1997年に米国で設立され、国内外のアカデミアや製薬企業、CRO、IT企業などが参加。CDISCが規定する標準規格は「CDISC standard」(CDISC標準)と呼ばれている。

9. 人工知能・機械学習

英国科学技術イノベーション省(DSIT)は、「AI Management Essentials (AIME) Tool」に関してパブリックコメントの募集を開始しました。AIMEは、組織が開発または使用するAIシステムの管理に関してグッドプラクティスのベースラインを確立するための実践的な手順について、組織に明確な情報を提供するリソースです。

10. アジア規制当局のニュース

平川らは論文「Planning and Implementing Master Protocol Trials in Japan: Key Considerations of the Japanese Guideline」(日本におけるマスタープロトコル試験の計画と実施:日本のガイドラインの主な留意事項)を発表しました(注:有料記事です)。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

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国内外の業界情報や、英文ライティングのワンポイントレッスンなど
医薬翻訳・メディカルライティングに役立つ情報をお届けしています。
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CORE Reference News 2024年11月15日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからのお知らせ

CORE Referenceウェビナーを開催する運びとなりましたのでご案内いたします。

  • 日時:2024年12月4日(水)12:30~13:45(中央ヨーロッパ夏時間)
  • テーマ:EMA Policy 0070事例紹介 – Voydeya
    (訳注:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン]。発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬)
  • 演者:CORE Reference TeamのRaquel Billiones氏とAlison McIntosh氏
  • 申込方法:欧州メディカルライター協会(EMWA)本部(membership@emwa.org)までメールでお申し込み下さい。

<ウェビナー概要>
2024年春に申請を完了し、2024年6月26日に臨床データが公開されたVoydeyaの例を用いて、EMA Policy 0070 Anonymisation Report(AnR:匿名化報告書)の作成について概説し、適切な匿名化手法の選択などについて議論します。主なトピックは以下の通りです。

  • EMA Policy 0070 AnRおよび関連する匿名化手法の概要
  • Voydeyaの申請で浮き彫りになった希少疾患特有の問題点
  • 臨床データの有用性を維持する上での課題
  • EMAとのコミュニケーションの振り返り(申請前相談を含む)
  • Voydeyaの匿名化プロセスから得られた学び

※過去の関連ウェビナー:2024年6月7日に開催したCORE Referenceウェビナーでは、EMA Policy 0070 AnRテンプレートをご紹介しました。詳細は、こちらでスライドNo. 21~37とビデオ録画の30~58分をご覧下さい。

2. ICH

ICH総会が2024年11月5~6日にカナダのモントリオールで開催されました。総会に関するプレスリリース「ICH Assembly Meeting, Montréal, Canada, November 2024」では、ICH E6(R3)ガイドライン「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」のAnnex 2案が、ステップ2a/bに到達して総会で承認されたことなどが報告されています。Annex 2は、多様な試験デザインやデータソースの利用増加に伴って生じるGCPの考慮事項を取り上げ、分散型臨床試験やプラグマティック臨床試験、リアルワールドデータ(RWD)を活用する臨床試験の各例に焦点を当てています。

3. EU CTRCTIS

3.1 次回のCTISショート説明会は2024年11月20日16:00~17:00(中央ヨーロッパ時間)に開催予定で、対象は製薬企業、CRO、中小企業(SME)、アカデミアなど、すべての治験依頼者です。事前の参加申込は不要で、EMAの公式サイトからライブ配信をご覧になれます。

3.2 フィンランド医薬品庁(Fimea)は、CTISに移行していない臨床試験に対する措置を発表しました。2025年1月30日までに試験をCTISに移行できない場合、2025年1月31日以降は違法となり、Fimeaは試験を中断させます。CTISに移行すべき試験を2025年1月30日までに移行していない場合に従うべき手順が、「Fimea has defined further measures for non-transferred clinical trials」で詳しく説明されています。

3.3 Sharma氏らによるRAPSオープンアクセス記事「The emerging transparency paradigm for clinical trials in Europe」(欧州の臨床試験における新たな透明性パラダイム)は、EU透明性規則の対応方法についてグローバルな視点で論じています。

訳注)RAPS(Regulatory Affairs Professionals Society:薬事専門家協会):医薬品や生物製剤、医療機器、デジタルヘルスなどの規制に携わる専門家の世界最大の組織。1976年に米国で設立され、国内外の規制当局やアカデミア、製薬・医療機器業界などの専門家により、レギュラトリーサイエンスの情報交換や教育を実施。

4. 英国とMHRAのニュース

4.1 英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、NHS Research Scotland、HSC Northern Ireland、Health and Care Research Walesと共同で、「Carrying out research across borders」(国境を越えた研究の実施)ツールキットを作成しました。このキットは、NHS内や、英国内の複数の構成国にまたがる医療・社会福祉環境下で、研究を立ち上げて実施する研究者向けに作成されています。

4.2 2024年11月12日、英国の治験・臨床研究登録機関ISRCTNレジストリは、公式サイトのユーザーインターフェイスの更新を発表しました。今回の更新でアクセシビリティの標準規格の準拠が強化され、ユーザーエクスペリエンス向上のため視覚的な変更が複数行われました。詳しい更新内容は「What’s new on the ISRCTN registry?」をご覧下さい。

5. 米国FDAのガイダンスとニュース

5.1 FDAと米国デューク大学のデューク・マーゴリス医療政策センターは、無料のハイブリッド式公開ワークショップ「Optimizing Use of Real-World Evidence in Regulatory Decision-Making for Drugs and Biological Products」(医薬品・生物学的製剤に関する規制当局の意思決定におけるリアルワールドエビデンス [RWE] 活用の最適化)を、2024年12月12日12:30~17:00(米国東部時間)に開催します。FDAのRWEプログラムに関する最近の成果や、現状と課題、将来に向けた取り組みに焦点を当てます。参加申込期限は2024年12月6日です。

5.2 米国国立医学図書館(NLM)は「Report on the ClinicalTrials.gov Modernization Effort」(ClinicalTrials.gov最新化の取り組みに関する報告書)を発表しました。この報告書には、最新化されたClinicalTrials.govとPRS(Protocol Registration and Results System:プロトコル登録・結果システム)の両サイトの最新情報や、今後の最新化活動の計画が示されています。

5.3 2024年10月8日にNLMが開催したウェビナー「Introduction to the Modernized PRS」(最新化されたPRSの紹介)のビデオ録画と講演録(文字起こし)が公開されました(訳注:スライドも公開されています)。このウェビナーでは、最新化されたPRSの機能が紹介され、操作方法がユーザーに示されました。

6. リアルワールドデータ

第5回EMA/HMA Big Data Stakeholder Forumが11月28日9:00~17:30(アムステルダム時間)に開催されます。アジェンダと申込方法はリンク先をご覧下さい。

7. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

7.1 Real Life Sciences社は、無料の公開ウェビナー「Best Practices for Clinical Data Anonymization Using the Quantitative Methodology」(定量的手法を用いた臨床データ匿名化のベストプラクティス)を、2024年11月21日に開催します。このウェビナーでは匿名化の定量的手法を検討するとともに、プライバシーモデルや匿名化技術、参照母集団、再識別リスク、情報損失、敵対的攻撃者モデルなどに関するベストプラクティスを考察します。

7.2 2024年11月14日、EMAは臨床試験データ公開(Policy 0070)の再開に向けた次のステップに関するウェビナー「Clinical Data Publication (Policy 0070) webinar — Step 2」(臨床試験データ公開 [Policy 0070]ウェビナー — ステップ2)を開催しました。プレゼン資料とビデオ録画はまだ公開されていませんが、近日中にこちらで公開予定です。(訳注:スライドが11月15日に公開されています)

8. 開発戦略ニュース

8.1 WHO(世界保健機関)は、月刊ニュースレター「Global Clinical Trials Forum (GCTF) Newsletter」を創刊しました。毎月、臨床試験(インフラと環境)の強化に関して最新情報や知見を提供します。ニュースレター創刊号(2024年10月号)はこちらでご覧頂けます。購読はこちらからお申し込み下さい。

8.2 2024年11月24日、ACT EUは「Mandate of the ACT EU Steering Group」(ACT EU運営部会の役割)を発表しました。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で始めた取り組み。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

※メールマガジン「クリノス通信」(無料)
国内外の業界情報や、英文ライティングのワンポイントレッスンなど
医薬翻訳・メディカルライティングに役立つ情報をお届けしています。
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CORE Reference News 2024年10月31日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからのお知らせ

1.1 CORE Referenceウェビナーを開催する運びとなりましたのでご案内いたします。

  • 日時:2024年12月4日(水)12:30~13:45(中央ヨーロッパ夏時間)
  • テーマ:EMA Policy 0070事例紹介 – Voydeya
    (訳注:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン]。発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬)
  • 演者:CORE Reference TeamのRaquel Billiones氏とAlison McIntosh氏
  • 申込方法:欧州メディカルライター協会(EMWA)本部(membership@emwa.org)までメールでお申し込み下さい。

<ウェビナー概要>
2024年春に申請を完了し、2024年6月26日に臨床データが公開されたVoydeyaの例を用いて、EMA Policy 0070 Anonymisation Report(AnR:匿名化報告書)の作成について概説し、適切な匿名化手法の選択などについて議論します。主なトピックは以下の通りです。

  • EMA Policy 0070 AnRおよび関連する匿名化手法の概要
  • Voydeyaの申請で浮き彫りになった希少疾患特有の問題点
  • 臨床データの有用性を維持する上での課題
  • EMAとのコミュニケーションの振り返り(申請前相談を含む)
  • Voydeyaの匿名化プロセスから得られた学び

1.2 2023年にCORE Reference Teamが実施した「CORE Reference Utility Survey」の結果を、「The 2023 CORE Reference Utility Survey: Perceptions on a best practice tool for globally applicable clinical study reporting and provision of continuing professional development resources for the regulatory medical writing community」(CORE Reference利用状況調査2023:グローバルに適用可能な臨床試験報告のためのベストプラクティス・ツールの認識と、メディカルライターのための継続的専門能力開発リソースの提供)と題して、EMWAの『Medical Writing』誌2024年9月号特集「Clinical Trial Transparency and Disclosure」(臨床試験の透明性と情報開示)に掲載しました(Medical Writing. 2024;33(3):38-45)。アンケート調査にご協力下さった方々に改めて御礼申し上げます。

2. ICH

2.1 ICHは、規制当局がICHガイドラインを十分実施・遵守しているかを2024年初頭に調査した結果を、「2024 Project Report: Monitoring the adequacy of implementation and adherence to ICH Guidelines」として発表しました。この調査は2019年と2021年にも実施されています。2024年の調査結果は、研修ニーズやICH会員関連活動のサポートに利用されます。

2.2 ICH E8(R1)ガイドライン「General Considerations for Clinical Studies」(臨床試験の一般指針)の入門研修ビデオが公開されました。

3. EU CTRCTIS

3.1 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年10月8日号には、非営利スポンサー向けヘルプデスク、臨床試験の有効期限、システムの改善(最新のシステムリリース参照)などに関して最新情報が掲載されています。

3.2 次回のCTISショート説明会は2024年11月20日16:00~17:00(中央ヨーロッパ時間)に開催される予定で、対象は製薬企業、CRO、中小企業(SME)、アカデミアなど、すべての治験依頼者です。事前の参加申込は不要で、EMAの公式サイトからライブ配信をご覧になれます。

4. 英国とMHRAのニュース

英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、MHRAと共同で、臨床研究のインクルージョンと多様性に関するガイダンス案「Guidance for Developing and Submitting an Inclusion and Diversity Plan」(インクルージョン・多様性プランの作成と提出に関するガイダンス)について、非公式にパブリックコメントの募集を始めました。

本ガイダンスの目的は、(1)研究結果の影響を受ける可能性のある人々を組み入れる研究が設計されるようにすること、(2)研究の恩恵を受けていない人々が見過ごされないようにすることの2つです。ガイダンス案には、研究者が臨床試験を設計する際に考慮すべき質問と、その答えを導くための情報も提示されています。パブリックコメントは2024年12月9日まで受け付けています。

5. 米国FDAのガイダンスとニュース

5.1 2024年10月、FDAは最終ガイダンス「Core Patient-Reported Outcomes in Cancer Clinical Trials」(がん臨床試験における患者報告アウトカム [PRO])を発出しました。治験依頼者向けの本ガイダンスは、がん臨床試験におけるPROコアセットの収集に関する推奨事項と、PRO評価ツールの選択や試験デザインなどに関する検討事項を提示しています。

5.2 FDAと米国国立衛生研究所(NIH)は共同で、「FDA-NIH Terminology for clinical research」(FDA-NIH臨床研究用語集)を草案しました。この用語集は、科学界で一貫性なく使用されている専門用語を明確にするのに役立ちます。用語集(案)には、科学的、臨床上、規制上の意思決定をサポートする、リアルワールドデータを使用してリアルワールドエビデンスを生成する研究など、革新的な臨床研究デザインに関連する37の臨床研究用語が収載されています。

5.3 FDAは無料の公開ウェビナー「Informed Consent — More than Just Another Document to Sign?」(インフォームド・コンセント:署名するだけの文書ではない?)を、2024年11月8日14:00~15:00(米国東部時間)に開催します。参加申込をウェビナー開催時刻まで受け付けています。

5.4 2024年7月にFDAはバイオシミラー製品開発の新たなガイダンスを作成する案について、パブリックコメントを募集しましたが、Hayes氏のウェブ記事「Industry rejects FDA’s proposal for biosimilar product-specific guidance」(業界はFDAのバイオシミラー製品別ガイダンスの提案を拒否)は、「バイオシミラー開発者らは、製品別またはクラス別のガイダンスを作成するというFDAの提案を強く拒否し、代わりにこの分野の基本的なガイダンスの更新に注力するようFDAに求めている」と報告しています。

6. 欧州EMAのガイダンスとニュース

6.1 EMAは、がん治療薬に関心のあるすべての人を対象に、月刊ニュースレター「European Regulatory Oncology Newsletter」を創刊しました。毎月、EU内のがん治療薬について最新の科学的見解を紹介し、がん領域におけるEU規制当局のイベントや取り組み、活動に関するニュースを提供します。ニュースレター創刊号(2024年10月号)はこちらでご覧頂けます。購読はこちらからお申し込み下さい。

6.2 2024年10月22日に開催されたACT EUマルチステークホルダー・プラットフォーム(MSP)年次総会のスライドとビデオ録画がこちらで公開されています。MSPは、臨床試験関係者と規制当局が一堂に会して意見を述べ合い、欧州の患者・一般市民のために臨床試験環境の改善に協力する場になっています。(訳注:後述の記事10.3もご参照下さい)

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

7. 透明性・情報開示のリソースとニュース

7.1 欧州メディカルライター協会(EMWA)の『Medical Writing』誌2024年9月号(Volume 33, Issue 3, 2024)は、臨床試験の透明性と開示について特集しています。同誌はオープンアクセスジャーナルで、特集記事はこちらからダウンロード可能です。

7.2 DocShifter社は、無料の公開ウェビナー「Translation & Redaction — AI applied in Regulatory Content Preparation」(翻訳と編集:規制コンテンツ作成へのAI適用)を、2024年11月14日17:00~17:30(グリニッジ標準時)に開催します。このウェビナーでは、規制当局に提出するコンテンツの作成、特に文書翻訳と情報編集に対してAIが与える影響を探ります。

7.3 PHUSEは、データの透明性に関する冬季イベント「PHUSE Data Transparency Winter event」を2025年2月4~6日に開催します。プレゼンテーションは3日間とも15:00~17:30(グリニッジ標準時)に行われる予定で、現在、演題を募集中です。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

7.4 Real Life Sciences社は、無料の公開ウェビナー「Best Practices for Clinical Data Anonymization Using the Quantitative Methodology」(定量的手法を用いた臨床データ匿名化のベストプラクティス)を、2024年11月21日10:00(米国東部時間)に開催します。

7.5 欧州委員会は、EUデジタルサービス法(DSA)の下、審査に合格した研究者によるオンラインプラットフォーム・データへのアクセスに関する委任規則法案について、パブリックコメントの募集を開始しました。超大規模オンラインプラットフォームや超大規模検索エンジンのデータへのアクセスに関する新たな枠組みは、これらのプラットフォームの透明性と説明責任を高めるためのDSAの重要な措置です。パブリックコメントは2024年11月26日まで受け付けています。

8. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

EMAは、臨床試験データ公開(Policy 0070)の再開に向けた次のステップに関するウェビナー「Clinical Data Publication (Policy 0070) webinar — Step 2」(臨床試験データ公開 [Policy 0070]ウェビナー–ステップ2)を、2024年11月14日14:00~15:00(グリニッジ標準時)に開催します。

このウェビナーでは、2025年4月からのPolicy 0070関連活動の拡大案(ステップ2)に関するEMAの計画と、従来の手続きの取り扱いを紹介するとともに、申請者や業界関係者にガイダンスを提供します。質疑応答の時間も設ける予定になっています。詳しいアジェンダはこちらをご覧下さい。なお、参加には事前の申込が必要です。

9. ヘルシンキ宣言

WMA Declaration of Helsinki – Ethical Principles for Medical Research Involving Human Participants」(世界医師会 [WMA] ヘルシンキ宣言:ヒト参加者を対象とする医学研究の倫理原則)の改訂版が、2024年10月21日に発表されました。WMAによると、実質的な変更は次の2つの分野に分類されます。

  • 参加者中心のインクルージョン、尊重、保護
  • 研究の受益性と価値(「個人と公衆の健康」の追求、科学的厳密性と完全性の維持、利益・リスク・負担の慎重な分配など)

また、WMAは「ヘルシンキ宣言の2024年改訂版では、個人の権利や主体性、重要性を尊重するため、『subject』(被験者)という用語を全面的に『participant』(参加者)に言い換えた」と説明しています。

10. 開発戦略ニュース

10.1 Hughes氏とRodriguez-Chavez氏によるDIAウェブ記事「The Evolution of Decentralised Clinical Trials: Blending Innovation and Regulation in the Digital Age」(分散型臨床試験の進化:デジタル時代におけるイノベーションと規制の融合)では、分散型臨床試験(DCT)を用いた患者中心の新たな臨床研究アプローチについて見識が得られます。著者らはDCTの利点や、DCT実施に現在利用可能な新しいテクノロジー(AI・機械学習など)、DCTの今後の展望などについて論じています。

10.2 米国ハーバード大学/ブリガム&ウィメンズ病院のMRCTセンターは、「2024 Annual Symposium」を2024年11月14~15日に開催します。ボストンの会場またはオンラインで無料で参加できます。シンポジウムのハイライトは、FDAの医療政策部長Khair ElZarrad氏による、臨床研究と規制の現在の動向と今後の展望に関する基調講演や、EMAの主席医務官(CMO)Steffen Thirstrup氏による、データ共有と欧州医療データスペース(EHDS)の今後に関する基調講演などです。

訳注)MRCTセンター:Multi-Regional Clinical Trials Center of Brigham and Women’s Hospital and Harvard(ハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院の国際共同治験センター)。ブリガム&ウィメンズ病院は、米国ハーバード大学医学部の附属病院としての役割を担う医療・研究・教育機関の1つ。MRCTはハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院に属しており、国際共同治験の改善を目的とする研究・政策センター。

10.3 ACT EUイニシアチブは、EUにおける臨床試験の環境改善を目的としたマルチステークホルダー・プラットフォーム(MSP)を設立しており、EMAはMSPの年次総会を2024年10月22日にアムステルダムで開催しました。総会の主な内容は以下の通りです。

  • ACT EUイニシアチブの主な成果と臨床研究への影響の確認
  • 臨床試験の現状に関する議論
  • 将来を見据え、多様なステークホルダー・グループにとって期待される成功の可視化

総会のスライドとビデオ録画がこちらで公開されています。(訳注:前述の記事6.2もご参照下さい)

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

10.4 CIOMSのICH用語集「Glossary of ICH terms and definitions」第7版が、無料でダウンロード可能です。今回の改訂では、下記の3つのICHガイドラインから定義が追加されています。

  • E11A「小児用医薬品開発における外挿」(ステップ4 [最終版]、2024年8月21日)
  • M13A「即放性固形経口剤形の生物学的同等性試験」(ステップ4 [最終版]、2024年7月23日)
  • Q4B(R1)「薬局方テキストをICH地域において相互利用するための評価及び勧告」(最終版、2024年6月5日)

10.5 2024年11月に予定されている臨床試験関連または薬事関連のイベントや文書が、Pierre Mermet-Bouvier氏のLinkedIn記事「Planned for November 2024」にリストアップされています。

11. 人工知能・機械学習

11.1 FDAは論文「FDA Perspective on the Regulation of Artificial Intelligence in Health Care and Biomedicine」(医療とバイオにおけるAI規制に関するFDAの展望)を、『JAMA』の「Special communication」に発表しました。著者らはFDAのAI規制の歴史を振り返るとともに、医療製品開発や臨床研究、臨床ケアにおけるAIの潜在的用途を紹介し、規制システムがAI特有の問題に適応する際に検討する価値のある概念を提示しています。

11.2 Heta Mehta氏の記事「The evolving role of contact-free AI devices in clinical trials」(臨床試験における非接触型AIデバイスの役割の進化)が『RF Quarterly』誌(2024;4(3):34-41)に掲載されていますが、こちらから無料でダウンロード可能です。

11.3 EMAとHMAは、オンライン・ワークショップ「HMA/EMA multi-stakeholder workshop on artificial intelligence (AI) — enabling the safe and responsible use of AI」(AIに関するHMA/EMAマルチステークホルダー・ワークショップ:安全で責任あるAI活用の実現)を、2024年11月5日9:00~17:40(中央ヨーロッパ時間)に開催します。ワークショップの主な内容は以下の通りです。

  • AI開発の最先端に関する基調講演
  • 政策・立法環境、AIリフレクションペーパーの改訂、これらによる影響に関する議論
  • 複数年にわたるAI作業計画の下で実施されるHMA/EMAの活動

11.4 Simon氏とAliferis氏によるオープンアクセス書籍「Artificial Intelligence and Machine Learning in Health Care and Medical Sciences」(ヘルスケアと医学におけるAIと機械学習)は、PDFファイルまたはEPUB形式として無料でダウンロード可能です。本書は、ヘルスケアにおけるAIの透明で倫理的かつ公平な使用に焦点を当てています。著者らは「AIはヘルスケアに真の革命をもたらす可能性があるが、責任ある実装が不可欠である」と述べています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年10月15日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからウェビナーのお知らせ

この度CORE Referenceウェビナーを開催する運びとなりましたのでご案内いたします。

  • 日時:2024年12月4日(水)12:30~13:45(中央ヨーロッパ夏時間)
  • テーマ:EMA Policy 0070事例紹介 – Voydeya
    (訳注:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン]。発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬)
  • 演者:CORE Reference TeamのRaquel Billiones氏とAlison McIntosh氏
  • 申込方法:欧州メディカルライター協会(EMWA)本部(membership@emwa.org)までメールでお申し込み下さい。

<ウェビナー概要>
2024年春に申請を完了し、2024年6月26日に臨床データが公開されたVoydeyaの例を用いて、EMA Policy 0070 Anonymisation Report(AnR:匿名化報告書)の作成について概説し、適切な匿名化手法の選択などについて議論します。主なトピックは以下の通りです。

  • EMA Policy 0070 AnRおよび関連する匿名化手法の概要
  • Voydeyaの申請で浮き彫りになった希少疾患特有の問題点
  • 臨床データの有用性を維持する上での課題
  • EMAとのコミュニケーションの振り返り(申請前相談を含む)
  • Voydeyaの匿名化プロセスから得られた学び

※過去の関連ウェビナー:2024年6月7日に開催したCORE Referenceウェビナーでは、EMA Policy 0070 AnRテンプレートをご紹介しました。詳細は、こちらでスライドNo. 21~37とビデオ録画の30~58分をご覧下さい。

2. 英国とMHRAのニュース

2024年10月15日、MHRAは、英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)と共同で、ウェビナー「Implementing the new UK Clinical Trials regulations」(英国の新たな臨床試験規制の施行)を開催しました。このウェビナーでは、ガイダンス案をステークホルダーと共有する共同計画が紹介されるとともに、新たな規制の施行に向けて予想されるスケジュールが明らかにされました。ウェビナーのビデオ録画が後日公開される予定です。

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govのProtocol Registration and Results System(PRS:治験プロトコル登録・結果システム)新版に関して、最新の「Release Notes」が2024年10月2日に発行され、Outcome Measures Moduleにおけるナンバリングの追加や、record access listの機能強化とリモデリングなどが説明されています。また、PRSの利用方法について解説したショートビデオ・シリーズ「Fast Forward from ClinicalTrials.gov」に、新たなデモンストレーション動画が2本追加されました。

3.2 FDAは最終ガイダンス「Electronic Systems, Electronic Records, and Electronic Signatures in Clinical Investigations: Questions and Answers」(臨床試験における電子システム、電子記録、電子署名:Q&A)を発表しました。本ガイダンスは、食品や医薬品、タバコ製品、新たな動物用医薬品の臨床試験における電子システム、電子記録、電子署名の使用に関する情報を、すべてのステークホルダーに提供するものです。

4. 欧州EMAのガイダンスとニュース

2024年9月24日、EMAは欧州委員会(EC)とHMAと共同で、「Joint EC/HMA/EMA multi-stakeholder workshop on pharmacogenomics」(ファーマコゲノミクスに関するマルチステークホルダー・ワークショップ)を開催しました。このワークショップのプレゼン資料とビデオ録画がこちらで公開されています。

5. 透明性・情報開示のリソースとニュース

PHUSEはデータの透明性に関するイベント「PHUSE Data Transparency Autumn event」を2024年9月17~19日に開催しました。このイベントのプレゼン資料とビデオ録画がこちらで公開されています。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

6. 開発戦略ニュース

6.1 EUのHTA CG(Member State Coordination Group on Health Technology Assessment:医療技術評価に関するEU加盟国調整グループ)は、2024年7月4日付の「Guidance on the validity of clinical studies, Version 1.0」(for joint clinical assessments)(臨床試験の妥当性に関するガイダンス、バージョン1.0:共同臨床評価用)を、欧州委員会(EC)の公式サイトに掲載しています。本ガイダンスは、医療技術評価(HTA)の範囲内で、マスタープロトコルやリアルワールドデータ、リアルワールドエビデンス、レジストリなどを含む臨床試験デザインのハイレベルな概要を説明しています。

6.2 FDAは最終ガイダンス「Electronic Systems, Electronic Records, and Electronic Signatures in Clinical Investigations: Questions and Answers」(臨床試験における電子システム、電子記録、電子署名:Q&A)を発表しました。(訳注:前述の記事No.3.2参照)

6.3 FDAは無料の公開ウェビナー「Informed Consent — More than Just Another Document to Sign?」(インフォームド・コンセント:署名するだけの文書ではない?)を、2024年11月8日14~15時(米国東部時間)に開催します。主な内容は以下の3点です。

  • インフォームド・コンセント資料を、臨床試験の被験者候補にとってよりわかりやすく改善することを支援するFDAの取り組みの最新情報
  • インフォームド・コンセントを明確で理解しやすく提示する方法の提案
  • 被験者候補の治験参加・不参加の判断の支援において、インフォームド・コンセントの改善で得られる効果の検討

ウェビナー参加者は、参加申込ページから、またウェビナー開催中に、質問を提出することができます。

7. 人工知能・機械学習

7.1 DIA(Drug Information Association)は、無料の公開セッション「Leveraging AI to Transform Regulatory Medical Writing」(AIを活用したレギュラトリーライティングの変革)を、2024年10月23日午前8時(米国東部時間)に開催します。演者はYseop社のAxel Byrd Le Sage氏です。
(訳注:Yseopは、フランスを拠点とするAIソフトウェア企業。生成AIによる治験文書作成の自動化などが専門。)

このセッションでは、特に臨床試験において、AIがメディカルライティングにどのような変革をもたらしているかを探ります。また、AIツールによって、主な治験文書(治験総括報告書 [CSR] や有害事象の叙述 [narrative] など)の作成作業を自動化し、ワークフローを合理化し、規制要件の準拠を強化する方法を紹介します。さらに、AIを既存のメディカルライティングのプロセスに組み入れて効率と正確性を向上させる実践的な戦略と実例も紹介します。詳細はpooja.phogat@krystelis.comまでお問い合わせ下さい。
(訳注:参加申込はこちらで受け付けています)

7.2 2024年7月、Neyarapally GAらは論文「Description and Validation of a Novel AI Tool, LabelComp, for the Identification of Adverse Event Changes in FDA Labeling」(FDAのラベリングにおける有害事象変更を検出するための新たなAIツール「LabelComp」の説明と検証)を発表しました。この論文は、市販後の医薬品安全性調査をサポートするAIについて説明するとともに、医薬品ラベリングの安全性関連情報の変更を研究者が効率的に特定・分析できるようにFDAが作成・検証した新たなAIツールについて論じています。

7.3 2024年9月9日、EMAは最終ガイダンス「Reflection paper on the use of artificial intelligence in the medicinal product lifecycle」(医薬品ライフサイクルにおけるAI活用に関するリフレクションペーパー)を発出しました。本リフレクションペーパーは、創薬から承認後まで、医薬品開発の様々な段階におけるAIと機械学習(ML)の適用に関する原則を示しています。

7.4 Reisらの論文「Influence of believed AI involvement on the perception of digital medical advice」(AIの関与がデジタル医療アドバイスの認識に与える影響)では、AIツールに対する一般市民の認識について考察しています。著者らの研究結果は、医師がAIを監督しているとされる場合でも、デジタル医療アドバイスを受ける際に「反AIバイアス」が生じることを示しています。

7.5 Brightwellらの論文「Trust and Inclusion in Digital Health: The Need to Transform Consent」(デジタルヘルスにおける信頼とインクルージョン:同意の変革の必要性)は、データ保護の規制と、デジタル変革の取り組み(健康アプリや、遠隔医療、患者の同意の重要性など)との相互作用について考察しています。著者らは、「健康アプリでユーザーの同意を求めるインターフェースは、プライバシーに敏感な人々のデジタルヘルスにおける信頼とインクルージョンに影響を与える可能性がある」と述べています。

8. アジア規制当局のニュース

8.1 PMDAはYouTubeに公式チャンネル「PMDA Channel」を開設しており、日本の医薬品・医療機器の規制に関して様々なコンテンツを配信しています。英語のコンテンツもあり、最近公開された英語動画「Regulatory Approach to Software as a Medical Device (SaMD) in Japan」(日本における医療機器プログラム [SaMD] の規制アプローチ)では、日本でのSaMDの定義、分類、一般的な審査ポイントが紹介されています。

8.2 香港のMDACS(Medical Device Administrative Control System:医療機器管理規制システム)は、Department of Health(香港衛生署)のMedical Device Division(医療機器課)が運営しており、医療機器のリスティング・システムと有害事象報告制度を監督しています。MDACSに関する最新のガイダンスノート「Overview of the Medical Device Administrative Control System, Edition 7」(MDACSの概要:第7版)(2024年9月30日付)では、セクション5.14「Validity of Listing Approval」(リスティング承認の効力)と、セクション5.15「Application Renewal」(申請更新)が改訂されています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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国内外の業界情報や、英文ライティングのワンポイントレッスンなど
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CORE Reference News 2024年9月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからウェビナーのお知らせ

この度CORE Referenceウェビナーを開催する運びとなりましたのでご案内いたします。

  • 日時:2024年12月4日(水)12:30~13:45(中央ヨーロッパ夏時間)
  • テーマ:EMA Policy 0070事例紹介 – Voydeya
    (訳注:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン]。発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬)
  • 演者:CORE Reference TeamのRaquel Billiones氏とAlison McIntosh氏
  • 申込方法:欧州メディカルライター協会(EMWA)本部(membership@emwa.org)までメールでお申し込み下さい。

<ウェビナー概要>
2024年春に申請を完了し、2024年6月26日に臨床データが公開されたVoydeyaの例を用いて、EMA Policy 0070 Anonymisation Report(AnR:匿名化報告書)の作成について概説し、適切な匿名化手法の選択などについて議論します。主なトピックは以下の通りです。

  • EMA Policy 0070 AnRおよび関連する匿名化手法の概要
  • Voydeyaの申請で浮き彫りになった希少疾患特有の問題点
  • 臨床データの有用性を維持する上での課題
  • EMAとのコミュニケーションの振り返り(申請前相談を含む)
  • Voydeyaの匿名化プロセスから得られた学び

※過去の関連ウェビナー:2024年6月7日に開催したCORE Referenceウェビナーでは、EMA Policy 0070 AnRテンプレートをご紹介しました。詳細は、こちらでスライドNo. 21~37とビデオ録画の30~58分をご覧下さい。

2. ICH

E11Aガイドライン「Paediatric Extrapolation」(小児用医薬品開発における外挿)の採択に伴い、E11A expert working group(E11A専門家作業部会)が作成した同ガイドラインの入門研修プレゼン資料「ICH E11A Introductory Training Presentation on Pediatric Extrapolation」が公開されました。

3. EU CTRCTIS

3.1 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年9月24日号が発行されました。主な最新情報は以下の通りです。

  • タスクと情報提供依頼(RFI)を見逃さないためのアドバイス
  • 目安程度と見なすべきCTISタイムテーブルに関するアドバイス
  • CTISパブリックポータルの新機能(後述参照)
  • 今後開催予定のイベントとウェビナー
  • 年次安全性報告書(ASR)の提出に関する問題
  • システム改善・修正リスト最新版
  • 2024年7月と8月の臨床試験開始申請(CTA)提出数
  • 追加情報・ガイダンスの入手先

CTISパブリックポータルがすでに稼働していますが、「Advanced Criteria Search」(高度な条件検索)に、「Serious breach」(重大な違反)や、「Unexpected event」(予期せぬ事象)、「Urgent safety measure」(緊急安全対策)などの項目が新たに追加され、これにより、CTISに提出された状況イベントを検索できるようになりました。これらのイベントを検索して、プロセスの改善と品質管理の向上にお役立て下さい。

3.2 次回のCTISショート説明会は、2024年11月20日16:00~17:00(中央ヨーロッパ時間)に開催される予定です。CTISの機能に関する本説明会で、治験依頼者はCTISの専門家にリアルタイムで質問することにより、CTISについて実践的な情報を得られます。

3.3 2024年10月17日にオンラインイベント「CTIS Information Day」が開催されます。このイベントは、治験依頼者が臨床試験のCTIS移行を2025年1月31日の移行期限までに完了できるよう支援することを目的としています。

3.4 「CTIS Evaluation Timelines Version 2.1」(CTIS評価タイムラインVersion 2.1)(2024年9月)が発表されました。(訳注:本書は、臨床試験開始申請 [CTA] の審査の流れとスケジュールを提示しています)

3.5 2024年9月23~24日に開催されたDIA(Drug Information Association)の会議「Global Clinical Trial Disclosure and Data Transparency Conference」(臨床試験の開示とデータの透明性に関する国際会議)で、治験依頼者らは、CTISでの治験総括報告書(CSR)公開に関して期待感を示しました。この会議の演者の1人Julie Holtzople氏は、会議で得られた情報を要約して、次のようにLinkedInに投稿しています。

  • CTISでのCSRの公開範囲が明確になりました。EMA Policy 0070(臨床試験データ公開)と同様に、CSRの1~15章および付録16.1.1、16.1.2、16.1.9です。モジュール2はCTISでの公開の対象外です。
  • CSRは、規制当局のタイムラインに基づき、EMA Policy 0070より先にCTISにアップロードされることになっています。これは治験依頼者にとって厄介な問題です。
  • CSRがCTIS上でレビューされる予定はありません。
  • CTISで公開対象となるCSRは、EMA Policy 0070より多いです。なぜなら、EMA Policy 0070は中央審査方式の申請のみを対象としているのに対し、CTISには、EU加盟国ごとに別々に提出される申請がすべて含まれるからです。
  • 技術的結果のCTIS提出に関しても少し議論され、現時点ではEudraCTの書式を用いてアップロードすることが提案されました。
  • substantial modification(大幅な変更)の一環として臨床試験を新たな治験依頼者に移行する場合、組織のID番号の更新が、CTISの臨床データ公開のきっかけになります。
  • EMA Policy 0070に関する情報:EMAは、保留中のPart 2再開計画に関する最新情報を2025年に発表する予定です。Phase 2の実施の詳細については、現在EMA内で検討されていません。

4. EUの医薬品規制

4.1 EMAは、単群試験に関する最終ガイダンス「Reflection paper on establishing efficacy based on single-arm trials submitted as pivotal evidence in a marketing authorisation」(製造販売承認において重要なエビデンスとして提出される単群試験に基づく有効性の確立に関するリフレクションペーパー)を発出しました。

4.2 EU委員会は、「Updated rolling plan — Implementation of the Regulation on Health Technology Assessment (Sep 2024)」(医療技術評価規則の実施に関するローリングプラン、2024年9月更新)を発表しました。医療技術評価規則(HTAR)(Regulation (EU) 2021/2282)は2022年1月11日に発効しており、2025年1月12日より適用されます。

5. 英国とMHRAのニュース

5.1 2024年9月5日、英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、「Tell us about your older studies」(古い研究について教えて下さい)を発表しました。2018年以前の研究が完了しているか確認するため、今後6週間にわたってスポンサーと連絡を取るとしています。

5.2 2024年9月19日、HRAは「Clinical Trials Update」最新版を発行し、研究倫理委員会(REC)の委員の条件や、研究の透明性の要件などについて最新情報を提供しています。

6. 米国FDAのガイダンスとニュース

6.1 2024年9月、FDAはガイダンス案「Considerations for Generating Clinical Evidence from Oncology Multiregional Clinical Development Programs」(オンコロジーの国際共同臨床開発プログラムでの臨床エビデンス生成に関する考慮事項)を発出しました。本ガイダンス案は、癌治療薬の承認申請を裏付ける国際共同治験(MRCT)の実施に関して、推奨事項を治験依頼者に提示しています。本ガイダンス案ではMRCTを「単一の治験プロトコルの下、複数の地域で実施される臨床試験」と定義しており、「地域」は「地理的な地域や国、規制上の地域」と定義されています。本ガイダンス案に対するパブリックコメントを2024年11月18日まで受け付けています。

6.2 2024年9月、FDAは最終ガイダンス「Conducting Clinical Trials With Decentralized Elements」(分散型臨床試験の実施)を発出し、分散型臨床試験(DCT)の実施に関する推奨事項を提示しています。分散型臨床試験は、被験者にとって都合の良い場所からリモートでの治験参加を可能にする手法であり、治験スタッフによるオンライン診療や、遠隔地の治験スタッフによる訪問診療、近隣のサテライト医療機関への来院などにより、被験者のリモート参加が可能になります。

6.3 2024年9月、FDAはガイダンス案「Integrating Randomized Controlled Trials for Drug and Biological Products into Routine Clinical Practice」(医薬品および生物学的製剤のランダム化比較試験を日常診療に統合)を発出しました。本ガイダンス案は、必要なデータ収集に重点を置いて合理化された治験プロトコルと手順によるランダム化比較試験(RCT)の実施を支援し、試験を日常の診療に組み込めるようにすることを目指しています。本ガイダンス案に対するパブリックコメントを2024年12月17日まで受け付けています。

6.4 FDAは最終ガイダンス「Study Data Technical Conformance Guide — Technical Specifications Document」(試験データ技術適合ガイド:技術仕様書)を発出しました。本ガイダンスは、FDAがサポートするデータ標準を使用して標準化された試験データを提出する方法について、仕様や推奨事項、一般的な考慮事項を示しています。これは、業界向けガイダンス「Providing Regulatory Submissions in Electronic Format — Standardized Study Data」(電子フォーマットによる薬事申請:標準試験データ [eStudyデータ])を補足するものです。

7. リアルワールドデータ

CIOMSワーキンググループXIIIの報告書「Real-world data and real-world evidence in regulatory decision making」(規制当局の意思決定におけるリアルワールドデータとリアルワールドエビデンス)が、PDFファイルで無料ダウンロードできます。

8. 透明性・情報開示のリソースとニュース

8.1 米国ハーバード大学/ブリガム&ウィメンズ病院のMRCTセンターは、2024年10月に下記の3つのウェビナーを開催し、臨床試験の被験者への情報提供に、ヘルスリテラシーとアクセシビリティのベストプラクティスを取り入れるための実用的なツールについて議論・提示します。参加は無料で、申込者が当日リアルタイムで参加できない場合は、ウェビナーの録音・録画のリンクと資料が後日提供されます。

訳注)MRCTセンター:Multi-Regional Clinical Trials Center of Brigham and Women’s Hospital and Harvard(ハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院の国際共同治験センター)。ブリガム&ウィメンズ病院は、米国ハーバード大学医学部の附属病院としての役割を担う医療・研究・教育機関の1つ。MRCTはハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院に属しており、国際共同治験の改善を目的とする研究・政策センター。

8.2 Paula Boyles氏のウェブ記事「Individual participant data return solutions and strategies」(個別被験者データ返却 [iPDR] の課題解決法と戦略)は、臨床試験で個別被験者データ(IPD)を被験者に返却することについて検討しています。この記事ではiPDRを「各被験者の個々のデータの返却」と定義し、臨床試験で集計した結果のレイサマリー(layperson summary)の提供とは別であるとしています。

8.3 英国オックスフォード大学の医学生Daya Deb氏のブログ記事「Engaging Gen Z in future healthcare: the role of pharma, Open Science and the Third Sector」(今後の医療へのZ世代参画:製薬会社、オープンサイエンス、第三セクターの役割)は、「デジタルネイティブで、社会的意識が高く、透明性と信頼性を求めることが特徴的」で、「透明性を重視し、情報へのオープンなアクセスを期待する世代」であるZ世代を、医療に参画させることの重要性について説明しています。

8.4 欧州製薬団体連合会(EFPIA)は、ブログ記事「Data anonymisation: balancing privacy and progress」(データの匿名化:プライバシーと進歩のバランス)で、データ共有のコンテキスト化の重要性を強調しています。また、EFPIAは、臨床試験の情報開示とは無関係な人々が、データの有用性の維持と患者のプライバシー保護のバランスを理解するのに役立つ、「Anonymisation Gradient」(匿名化の度合い)という図解ガイドを作成しました。

9. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

Real Life Sciences社は無料のウェビナー「Qualitative Anonymization Best Practices for Policy 0070 and PRCI Disclosure Submissions」(EMAのPolicy 0070およびカナダ保健省のPRCI [Public Release of Clinical Information] に準拠した臨床試験データ提出のための定性的匿名化のベストプラクティス)を、2024年10月16日15時(英国時間)に開催します。このウェビナーでは、匿名化の定性的手法と定量的手法の違いや、プロジェクトが予定の期限内に完了して規制当局に承認されるためのベストプラクティスについて検討します。参加申込の詳細はこちらをご覧下さい。

10. 開発戦略ニュース

10.1 TransCelerate社は、2024年7月のウェビナーに続き、ウェビナー「Vulcan UDP (Utilizing the Digital Protocol): Spotlight on Connectathon Results and Plans」(Vulcan UDP [デジタルプロトコルの活用]:コネクタソンの結果と計画)を、2024年10月15日午前9時~10時30分(米国東部時間)に開催します。

Vulcan UDPは、ICH M11ガイドライン「電子的に構造化・調和された臨床試験実施計画書」とエンドユーザーの価値を向上させる包括的なプロジェクトです。ウェビナーでは、(1)UDPプロジェクトの背景、(2)UDPコネクタソン(ビジネスプロセス内で開発作業をテストする技術イベント)の知見(特にタイトルページや、適格性基準、目標・エンドポイント・estimandの研究レベルの要素)、(3)実装準備のための実践的な手順の3点について説明します。

10.2 2024年9月25日、WHO(世界保健機関)は、先進国・途上国を問わず、すべての国の臨床試験のデザイン、実施、監督の改善を目的とした最終ガイダンス「Guidance for best practices for clinical trials」(臨床試験のベストプラクティスに関するガイダンス)を発出しました。これに伴い、ニュースリリース「New global guidance puts forward recommendations for more effective and equitable clinical trials」(新たな国際的ガイドラインが、より効果的で公平な臨床試験のための推奨事項を提示)と、ウェビナー「Launch of guidance for best practices for clinical trials」(臨床試験のベストプラクティスに関するガイダンスの運用開始)のビデオ録画もリリースされました。2年をかけて作成されたガイダンスは、臨床研究のインテグリティ(完全性)と有効性を世界的に高めることを目指しています。

11. 人工知能・機械学習

11.1 RAPS(Regulatory Affairs Professionals Society:薬事専門家協会)のウェブ記事「Regulatory strategist toolbox: Free AI tools to augment deliverables」(規制ストラテジストのツールボックス:成果物を補強する無料のAIツール)は、無料のAIツールを幾つか紹介し、それらを活用して質の高い規制成果物の作成をサポートする方法について説明しています。著者らは、ライティングを含む規制業務をサポートするAIツールを厳選してレビューしました。記事発表の時点で著者らにとって既知の無料AIツールが中心です。

訳注)RAPS:医薬品や生物製剤、医療機器、デジタルヘルスなどの規制に携わる専門家の世界最大の組織。1976年に米国で設立され、国内外の規制当局やアカデミア、製薬・医療機器業界などの専門家により、レギュラトリーサイエンスの情報交換や教育を実施。

11.2 2024年9月29日、FDAは「Digital Health and Artificial Intelligence Glossary — Educational Resource」(デジタルヘルス・AI用語集:教育リソース)を発表しました。この用語集は、デジタルヘルスAI・機械学習の分野でよく使われる用語とその定義をまとめたものです。

11.3 ドイツのドレスデン工科大学は、ハイブリッド式シンポジウム「Large Language Models in Medicine」(医療におけるLLM)を2024年10月10日に開催します。このイベントでは、癌診療におけるLLMの有用性を中心に、医療におけるLLMの機能について概説します。また、ヘルスケアをサポートするLLMの役割や、リアルワールドデータの活用を取り巻く法律、研究および企業の視点から医療におけるLLMの実用的な応用を紹介する様々な実装プロジェクトも取り上げます。

11.4 2024年9月9日、EMAは、最終ガイダンス「Reflection paper on the use of artificial intelligence in the medicinal product lifecycle」(医薬品ライフサイクルにおけるAI活用に関するリフレクションペーパー)を発出しました。その目的は、医薬品規制の意思決定と患者の安全性に対する信頼が損なわれないようにすることです。本リフレクションペーパーは、創薬から承認後まで、医薬品開発の様々な段階において、AIと機械学習を安全かつ効果的に適用するための原則を示しています。最終版では、ドラフトに対するパブリックコメントにより、適用範囲の明確化や、専門用語の統一と説明、リスクに関する用語の言い換え、EUのAI規制法と急速に変化する状況についてのさらなる検討、AIに関する正式なEMA科学的ガイドラインの今後の起草のサポートなどが実現しました。

12. アジア規制当局のニュース

シンガポール保健科学庁(HSA)は、2024年9月25日に発効する「eCTD Specification package version 1.0」(eCTD仕様パッケージ:バージョン1.0)をリリースしました。パッケージは以下の文書で構成されています。

  • SG-HSA eCTD仕様・バリデーション基準
  • 技術ファイル(定義済みリスト、バリデーションマトリクス、スタイルシート、スキーマ)
  • eCTD提出サンプル

eCTDポータルの運用開始は2025年3月の予定です。詳細はこちらをご覧下さい。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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CORE Reference News 2024年9月16日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年9月10日号が発行されました。主な最新情報は以下の通りです。

  • タスクと情報提供依頼(RFI)を見逃さないためのアドバイス
  • 目安程度と見なすべきCTISタイムテーブルに関するアドバイス
  • CTISパブリックポータルに近日追加予定の新機能
  • 今後開催予定のイベントとウェビナー
  • 年次安全性報告書(ASR)の提出に関する問題
  • システム改善・修正リスト最新版
  • 2024年7月と8月の臨床試験開始申請(CTA)提出数
  • 追加情報・ガイダンスの入手先

1.2 2024年9月20日にCTISパブリックポータルに追加される新機能により、ユーザーは高度な検索や、検索結果・臨床試験情報のダウンロード、RSSフィードの購読が可能になります。

2. EUの医薬品規制

イタリア医薬品庁(AIFA)は、医薬品に関する観察研究の分類と実施のためのガイドライン(イタリア語)を発出しました。

3. 英国とMHRAのニュース

2024年8月、臨床試験登録サイトISRCTN registryは、「Transparency Tracker」(透明性の追跡)の改良版の稼働を開始しました。改良版のレジストリ記録では、試験の事前登録やプロトコル、統計解析計画書(SAP)、結果などの各項目の横にラジオボタンが配置され、このボタンのon/off表示により、各々の登録の有無がひと目でわかるようになりました。(訳注:実例としてBEEP試験の記録を参照するよう、同サイトで推奨されています)

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

4.1 FDAはガイダンス案「Incorporating Voluntary Patient Preference Information over the Total Product Life Cycle」(製品のライフサイクル全体にわたる、患者の自発的な選好情報の取り込み)を発表しました。本ガイダンス案は、製品のライフサイクル全段階を通じて患者の選好情報(PPI)を収集してFDAに提出するために、いつ、どのような方法を用いることができるかについて、FDAの推奨を示すものです。これは、治験依頼者や患者選好調査開発者が、ベネフィット・リスクに関するFDAの意思決定に情報を提供するための患者選好調査を適切に設計する際に、最新の方法や留意事項を取り入れるのに役立ちます。本ガイダンス案に対するパブリックコメントを、こちらで2024年12月5日まで受け付けています。

また、FDAは本ガイダンス案に関するウェビナーを2024年10月15日に開催します。このウェビナーは事前の申込なしで参加できます。

4.2 FDAは、臨床試験の最新化と医薬品開発の加速に役立つトピックに関するFDAガイダンス文書の透明性あるコミュニケーションと普及を促すため、「Guidance Snapshot Pilot Program」(ガイダンス・スナップショットのパイロットプログラム)を開始しました。本プログラムは、ガイダンス文書の要点をビジュアル表現と平易な言葉でまとめたスナップショットを通じて、ガイダンス文書に対する一般の人々の認識と関与を高めることを目指しています。ガイダンス・スナップショットの一覧表や、スナップショットの見方と限界に関する説明をご確認下さい。

5. 欧州EMAのガイダンスとニュース

5.1 2024年8月29日、EMAは「Guiding principles on the use of large language models in regulatory science and for medicines regulatory activities」(レギュラトリーサイエンスおよび薬事規制活動における大規模言語モデルの使用に関する基本原則)を発表しました。この文書は、レギュラトリーサイエンスおよび薬事規制活動における汎用大規模言語モデル(LLM)の使用に関して基本原則を示し、LLMの安全かつ効果的で責任ある使用を促進するために、規制当局にハイレベルな推奨事項を提供するものです。「Conclusion」セクションでは、「この急速に発展する分野において、公衆衛生を守り、医薬品規制当局の信頼を維持するために、高度なAIツールを規制プロセスに統合するための構造化されたアプローチを提供することは、かつてないほど重要である」と述べています。

5.2 EMAは「Scientific Symposium on Advanced Therapy Medicinal Products – Contribution, evolution, revolution」(先端医療医薬品 [ATMP] に関する科学シンポジウム:貢献、進化、革命)を、2024年10月10日にハイブリッド式(アムステルダムのEMA本部とオンライン)で開催します。本シンポジウムでは、ATMPがどのように患者のケアに革命をもたらしているかに焦点を当て、規制の進歩や、アンメット・メディカル・ニーズに応える画期的な治療法について議論します。また、EMAの先端医療委員会(CAT)の進化と、新規クラスのATMPがもたらす課題へのCATの取り組みについて概説します。参加申込期限は、対面参加が2024年9月24日、オンライン参加が2024年10月1日です。

5.3 EMAは欧州委員会(EC)とHMAと共同で、「Joint EC/HMA/EMA multi-stakeholder workshop on pharmacogenomics」(ファーマコゲノミクスに関するマルチステークホルダー・ワークショップ)を、2024年9月24日にアムステルダムのEMA本部で開催し、ライブ配信します。

6. 開発戦略ニュース

医療システムへの患者参画を促す国際的な非営利組織Patient-Focused Medicines Development(PFMD)は、「Patient Engagement (PE) & Patient Experience Data (PED) project」(患者参画 [PE] &患者体験調査データ [PED] プロジェクト)について、パブリックコメントを募集しています。PFMDは、ステークホルダーが研究で有意義なPEを実施するための手引きとして、「PE & PED Integrated Navigator」(PE&PED統合ナビゲーター)を作成することを目指しています。

7. 人工知能・機械学習

7.1 2024年8月29日、EMAは「Guiding principles on the use of large language models in regulatory science and for medicines regulatory activities」(レギュラトリーサイエンスおよび薬事規制活動における大規模言語モデルの使用に関する基本原則)を発表しました。詳細については、前述の「欧州EMAのガイダンスとニュース」セクション5.1をご覧下さい。

7.2 国際的な非営利組織Pistoia Allianceが研究データの管理・責任に関して提唱しているFAIR原則(Findable、Accessible、Interoperable、Re-usable:検索可能、アクセス可能、相互運用可能、再利用可能)は、価値ある情報の検索に要する時間を短縮し、データの相互運用性と再利用性を促進し、AIイニシアチブを可能にすることで、組織に付加価値をもたらします。ウェビナー「Maturity Frameworks Supporting the Implementation of FAIR Data Principles」(FAIRデータ原則の実装をサポートする成熟度フレームワーク)が2024年9月4日に開催され、ビデオ録画がこちらで公開されています。

訳注)Pistoia Alliance:ライフサイエンスと医療における研究開発のイノベーションの障壁を下げることに取り組む国際的な会員制非営利組織。2007年にイタリアのPistoiaで開催された会議を契機に設立され、ライフサイエンス分野の企業や学術団体、出版社など100社以上が加盟。

7.3 英国の独立諮問機関UK Research Integrity Office(UKRIO)は、2024年10月9日にウェビナー「AI in Research: Supporting Research Integrity through Governance and Ethics」(研究におけるAI:ガバナンスと倫理を通じた研究インテグリティのサポート)を開催します。

7.4 欧州委員会は、EUデータ法(規則(EU)2023/2854)の施行を支援するため、「Frequently Asked Questions (FAQs) on the Data Act」(データ法に関するFAQ)を発表しました。

7.5 米国、EU、英国などは、AIの使用に関する初の国際条約「Framework Convention on artificial intelligence and human rights, democracy, and the rule of law」(AIと人権、民主主義、法の支配に関する枠組み条約)に署名しました。本条約は、AIシステムの有害で差別的な結果に対して、署名国が責任を負うことを求めています。また、AIシステムのアウトプットが平等とプライバシーの権利を尊重することも求めています。(訳注:日本は条約策定にオブザーバー参加しましたが、署名は見合わせました)

7.6 El Fassiらのコメント論文「Not all AI health tools with regulatory authorization are clinically validated」(規制当局が承認した医療用AIツールがすべて臨床的に検証されているとは限らない)で、著者らは、医療用AIの臨床的有効性の指標としての「FDA認可」を評価するために、新たな検証基準が必要であると述べています。

7.7 QuerとTopolは論文「The potential for large language models to transform cardiovascular medicine」(大規模言語モデル [LLM] が循環器医療を変革する可能性)を発表しました。これは、『The Lancet Digital Health』誌に掲載されている4部構成の論文シリーズ「Artificial intelligence and digital innovations in cardiovascular care」(循環器医療におけるAIとデジタルイノベーション)のうち、4番目の論文です。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
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CORE Reference News 2024年8月31日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. ICH

2024年8月21日、ICHはE11Aガイドライン「Paediatric Extrapolation」(小児用医薬品開発における外挿)の採択を発表しました。本ガイドラインは、成人の臨床試験データを小児集団へ外挿するために、統一された枠組みを確立するものです。この程、ICHガイドライン作成プロセスのステップ4に到達し、規制当局が各々の国・地域で本ガイドラインを実装する準備が整いました。

ICH E11Aガイドラインは、ICH E11(R1)「小児集団における医薬品開発の臨床試験に関するガイダンスの補遺」(2017年)を補完・発展させ、小児用医薬品開発の最適化において小児集団へ外挿するための、より包括的な枠組みを提供することを目的としています。ICH E11「小児集団における医薬品開発の臨床試験に関するガイダンス」(2000年)とICH E11(R1)は、両者合わせて1組のガイドラインとみなすのが望ましいです。

2. EU CTRCTIS

2.1 EMAは、EU臨床試験指令(CTD)から臨床試験規則(CTR)への試験移行について、ユーザーの質問に答えるCTISショート説明会を2024年9月18日に開催します。参加者は質問を2024年9月11日まで提出できます。

2.2 EMAは「EU CTIS Sponsor Handbook, Version 4.0」(EU CTIS治験依頼者用ハンドブック、バージョン4.0)を発表しました。また、研修モジュールとFAQも一部更新されましたので、「Guide to CTIS Training Catalogue, Version 1.3」(CTIS研修カタログの手引き、バージョン1.3)をご確認下さい。

3. 英国とMHRAのニュース

3.1 英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、医薬品承認申請前の助言について概説した「Guidance on Pre-submission Advice & Support」(申請前助言・支援に関するガイダンス)を発出しました。申請前助言は、ステークホルダーに対して、申請書やその裏付けとなるエビデンスの作成・提出のプロセスが自社製品にどのように適用されるかを理解する方法を提供するものです。これは、MHRAが提供している科学的助言(Scientific Advice)とは別の助言制度です。

3.2 英国政府は、臨床試験を促進し、NHSの患者が新たな治療法に迅速にアクセスできるようにするため、最大4億ポンドの官民投資プログラム「Voluntary Scheme for Branded Medicine Pricing, Access and Growth (VPAG) Investment Programme」(先発医薬品の価格設定、アクセス、進歩に関する自主的制度 [VPAG] 投資プログラム)を立ち上げました。これにより、新たに18の臨床試験ハブも設立されます。

3.3 MHRAは、医薬品承認申請前の助言・支援へのアクセスに関するガイダンスを提供していますが、この程、将来の承認申請に関する情報提供について、ガイダンス「Medicines Pipeline data」(医薬品開発パイプラインのデータ)を発出しました。現在の医薬品販売承認保持者(MAH)や今後予定されるMAHは、情報提供用スプレッドシートのテンプレートを本ガイダンスのウェブサイトからダウンロードし、現在計画中または将来の承認申請に関する情報を可能な限り詳細に記入して、MHRAに提出する必要があります。MHRAへの承認申請と新規適応症の予定について、MHRAは申請の5年前までにすべて把握することを目指しています。

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

4.1 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govのProtocol Registration and Results System(PRS:治験プロトコル登録・結果システム)は、2024年8月28日から新版(ベータ版)がメインのサイトになりました。PRSベータ版の詳細については、米国国立医学図書館(NLM)のニュースレター「NLM Technical Bulletin」(NLM技術速報)2024年8月7日号と、「Release Notes」2024年8月28日号をご覧下さい。また、リニューアルしたClinicalTrials.govとPRSの利用方法について解説したショートビデオ・シリーズが、「Fast Forward from ClinicalTrials.gov」で公開されていますので、併せてご覧下さい。

4.2 FDAは初回小児試験計画(iPSP)の提出およびiPSPの改訂に関して、治験依頼者向けに推奨事項を記載したガイダンス「Pediatric Study Plans: Content of and Process for Submitting Initial Pediatric Study Plans and Amended Initial Pediatric Study Plans」(小児試験計画:iPSPおよびその改訂版の内容と提出プロセス)を発出しました。本ガイダンスにはiPSPのテンプレートも含まれています。

4.3 FDAのCDER Center for Clinical Trial Innovation (C3TI)(CDER臨床試験イノベーションセンター)は、医薬品開発の効率向上のために臨床試験への革新的アプローチを支援する中枢です。C3TIに関する最新のFAQをご覧下さい。

4.4 FDAは、最終ガイダンス「Product-Specific Guidance Meetings Between FDA and ANDA Applicants Under GDUFA」(ジェネリック医薬品ユーザーフィー改正法 [GDUFA] に基づくFDAと簡略新薬承認申請 [ANDA] 申請者との製品別ガイダンス会議)を発出しました。

5. リアルワールドデータ

FDAのポッドキャスト「Q&A with FDA」シリーズに、FDAのChief Medical Officer(CMO:最高医学責任者)Hilary Marston氏が出演し、RWD・RWEの生成について一般から寄せられた質問に答えました。Marston氏は、FDA長官Robert Califf氏に対して主席臨床アドバイザーの役割を担っています。Q&AではRWDとRWEについて論じるとともに、FDAが臨床試験をどのように継続的に進化させ、医薬品を含む医療製品の安全性と有効性を裏付ける信頼できるエビデンスをどのように推進し続けているか説明しています。詳細は「Real-World Data and Evidence Generation with Dr Hilary Marston」をお聞き下さい。

6. 透明性・情報開示のリソースとニュース

6.1 PHUSEが主催する、データ透明性に関するオンラインイベント「PHUSE Data Transparency Autumn event」は、こちらで参加申込を受付中です。開催日は2024年9月17~19日で、参加費は無料です。イベントで取り上げるトピックは、自律的なセキュリティや透明性の高いデータ共有における最先端のアプローチから、AIを活用したデータ保護や臨床文書作成における最新の進歩まで多岐に渡ります。アジェンダはこちらをご覧下さい。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

6.2 欧州データ保護監督機関(EDPS)とスペインデータ保護局(AEPD)は、2021年に共同文書「10 misunderstandings related to anonymisation」(匿名化に関する10の誤解)を発表しています。この文書は、個人データの匿名化に関して代表的な誤解を10個取り上げ、それらに対して正しい事実を説明するとともに、理解を深めるための参考文献を紹介しています。本書の目的は、(1)匿名化にまつわる誤解について一般の人々の認識を高めること、(2)匿名化技術に関する主張を鵜呑みにせず確認するよう促すことの2つです。

7. 開発戦略ニュース

7.1 (訳注:FDAは、ある抗癌剤の公式サイトに掲載されている有効性情報に、虚偽や誤解を招く主張・表現が認められるとして、同剤を製造販売している製薬企業に書簡を送り、公開しました。)この書簡について、Rose氏は次のようなコメントをLinkedInに投稿しています。「FDAの書簡は、有効性の主張の裏付けとなる質の高い適切なデータの重要性を強調しており、同社の特定のデータがその基準に達していなかった理由を説明しています。免責事項や開示事項、制限事項は言うまでもなく有用であり、状況によっては必須ですが、これらの事項は信頼できる適切なデータの要件を緩和するものではなく、さもなければ主張全体が誤解を招く恐れがあることを書簡は明確にしています。特にプールデータや単群試験、事後解析などの潜在的な限界といった問題が、書簡で取り上げられています。さらに、この書簡は、販促資料の表現や提案を裏付けられないデザインの研究に基づく表現や提案を、販促資料に含めることは誤解を招くと規制が明示していることを再確認させてくれます。この書簡は、臨床試験をデザインする人々のみならず、販促資料・プログラムの作成やレビューに携わるすべての専門分野の人々も読むべきです。」

7.2 HuangとParikhの論文「Towards Generalizing Inferences from Trials to Target Populations」(臨床試験から対象集団へ推測の一般化に向けて)は、臨床研究から得られるデータや推測について、実臨床へのgeneralizability(一般化可能性)とtransportability(移転可能性)を検討しています。

7.3 Daher氏とVilimelis-Piulats氏は、レビュー記事「The EU Paediatric Regulation: Current status, future outlook」(EU小児用医薬品規制:現状と今後の展望)を発表しました。著者らは、小児用医薬品の開発に関して、EUの法改正で計画されている変更と、開発の制限が緩和される可能性について概説しています。

8. 人工知能・機械学習

8.1 Fazaeli氏のLinkedIn記事「The Double-Edged Sword of AI in Healthcare: Why We Need More Than Just LLMs」(医療におけるAIの両刃の剣:大規模言語モデル [LLM] だけでは不十分な理由)は、特に臨床データの要約に焦点を当て、AIモデルのハルシネーションに関する知見を提供しています。

8.2 英国国立医療技術評価機構(NICE)は、ポジションペーパー「Use of AI in evidence generation: NICE position statement」(エビデンス生成におけるAIの利用:NICEの立場表明)を発表しました。この声明は、NICEが検討するエビデンスのあらゆる側面に、AIの手法をどのように適用できるかを検討して作成されており、医療技術評価関連の目的で適用または研究されているとNICEが認識しているAIの手法も取り上げています。

8.3 Katherらは論文「Large Language Models could make Natural Language again the Universal Interface of Healthcare」(LLMにより自然言語が再び医療のユニバーサルインターフェイスになる可能性)を発表し、医療分野の文書作成とコミュニケーションの簡素化におけるLLMの活用について論じています。

8.4 Lenharo氏の記事「The Testing of AI in Medicine is a Mess. Here’s How it Should be Done」(医療におけるAIテストの混乱:AIをどうテストすべきか)は、医療におけるAIアプリケーションの現状を確認し、アルゴリズムの開発と臨床的検証との間にギャップが存在することや、標準化された厳格なテスト方法が早急に必要であることを指摘しています。

8.5 Freyerらは論文「A Future Role for Health Applications of Large Language Models Depends on Regulators Enforcing Safety Standards」(LLMの医療用アプリケーションの将来の役割は、安全基準を施行する規制当局次第)を発表しました。この論文は、医療目的で使用される(したがって医療機器として規制されるべき)医療用アプリケーションについて、規制の曖昧さとリスクを浮き彫りにしています。

8.6 欧州委員会は、調査報告書「Cyber security in the health and medicine sector: a study on available evidence of patient health consequences resulting from cyber incidents in healthcare settings」(医療分野のサイバーセキュリティ:医療現場で患者の健康に影響を及ぼすサイバーインシデントの事例の調査)を発表しました。この調査では、EU域内で、治療の延期や手術の遅れなど、健康に悪影響を与えた疑いのあるサイバーインシデントの事例を検証した結果、サイバーセキュリティ上の脆弱性が複数判明しました。

8.7 欧州データ保護監督機関(EDPS)とスウェーデンのKarlstad大学は、2024年9月3日にInternet Privacy Engineering Network(IPEN)のイベント「Human supervision of automated decisions」(自動意思決定に対する人間による監督)を開催します。

9. アジア規制当局のニュース

シンガポール保健科学庁(HSA)は、「Regulatory Updates for Therapeutic Product Registration (effective 01 Aug 2024)」(治療製品の登録規制の最新情報:2024年8月1日発効)を発表しました。以下の情報などが含まれています。

  • 新薬承認申請(NDA)や他の標準申請・簡略申請に関して、主な評価に要する日数を推測するための新たなウェブツール
  • 承認申請書類提出用の新たなクラウドベースのプラットフォーム
  • 承認後の変更に関するガイドライン
  • eCTD実装の最新状況
  • バイオシミラーのリスク管理計画(RMP)の要件緩和

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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