CORE Reference News 2024年4月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 2024年4月24日にEMAはCTISショート説明会「Alternate Investigational Medicinal Product Dossier – Quality (IMPD-Q) and new guidance on Auxiliary Medicinal Products (AxMP)」(代替治験薬書類:品質(IMPD-Q)および補助医薬品(AxMP)に関する新ガイダンス)を開催しました。本説明会の録画ビデオが説明会開催後60日以内に公開される予定です。

1.2 2024年4月11日、欧州委員会の公式サイトの「Newsroom」ページは「改正CTIS透明性規則は2024年6月18日に発効し、それに伴ってCTISウェブサイトの新バージョンが開設されます」と報じました。(訳注:本情報が掲載されたウェブページが削除されていると前号でお伝えしましたが、詳細な情報とともに再掲載されました) 改正CTIS透明性規則と重要な関連情報の概要については、EMA ACT EU公式サイトの「Implementation of the Clinical Trials Regulation」(CTRの実施)で確認できます。

CTIS透明性規則の主な改正点は、臨床試験のデータ・文書の公開延期制度の廃止や、公衆にとって真に有益なデータ・文書公開にするための合理化などです。現時点、すなわち2024年6月18日までの暫定期間中、治験依頼者は「ACT EU Q&A on the protection of Commercially Confidential Information and Personal Data while using CTIS」(CTIS利用時の商業機密情報 [CCI] と個人情報の保護に関するQ&A)(バージョン1.4)のセクション4「Revised CTIS transparency rules」(改正CTIS透明性規則)の原則に従う必要があります。

改正の概要については、ユーザー向けクイックガイド「Revised CTIS transparency rules, historical trials and interim period: Quick Guide for Users (version 1.3)」(改正CTIS透明性規則、過去の臨床試験、暫定期間:ユーザー向けクイックガイド、バージョン1.3)をご覧下さい。クイックガイドには、運用開始日や申請、CTIS新公式サイト公開前に提出する臨床試験などについて詳説されています。

また、EMAは、治験依頼者がビジネスプロセスを新たなCTISに対応できるよう支援するため、2024年6月20日にCTISショート説明会の開催を計画していますが、現時点で詳細は不明です。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

1.3 EMAは2024年5月15日16:00~17:00(アムステルダム時間)に「CTIS:Walk-in clinic」(CTIS:予約不要の説明会)をオンライン開催します。治験依頼者はCTIS専門家にリアルタイムで質問することにより、CTISの実用的な情報を得ることができます。

2. EUの規制

2024年1月25~26日にACT EUイニシアチブの下で開催された「ACT EU Clinical Trials Analytics Workshop」(ACT EU臨床試験分析ワークショップ)のレポートが公開されました。本ワークショップは臨床試験に関するデータの変革の可能性に焦点を当てており、多様なステークホルダーが参加しました。本ワークショップの目標は、エビデンスに基づく意思決定をサポートし、イノベーションを促進するために、臨床試験に関するデータの価値を最大化する共通の研究優先事項を見極めることでした。

3. 欧州医療データスペース

2024年4月24日、欧州議会は欧州医療データスペース(EHDS)の創設を承認しました。現時点ではまだ暫定的な合意であり、今後、EU理事会で正式に承認される必要がありますが、EU官報に掲載されると、その20日後に発効します。適用は2年後ですが、例外が一部あり(データカテゴリーの一次・二次利用など)、カテゴリーによっては4~6年後の適用となります。

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

FDAのCDERは、同センター内にCDER Center for Clinical Trial Innovation (C3TI)(CDER臨床試験イノベーションセンター)を開設しました。C3TIは、医薬品開発の効率向上のために臨床試験への革新的アプローチを支援する中枢であり、CDER内外の関係者とのコミュニケーションと協働の強化を通じて、CDERの既存のプログラムの推進と、今後の臨床試験イノベーション活動の加速化を目指しています。C3TIにより内外の関係者が今後可能になることとして、(1)臨床試験イノベーションの取り組みに関する情報への容易なアクセス、(2)協働への参加、(3)革新的手法の利用を促進可能なリソースの特定、(4)臨床試験イノベーションへの共同アプローチが効果をもたらす開発プログラムの探索の4点が示されています。

5. 欧州EMAのガイダンスとニュース

5.1 2024年4月10日、EMAは一般ガイダンス「Anonymisation of personal data and assessment of commercially confidential information during the preparation and redaction of risk management plans (body and Annexes 4 and 6)」(医薬品リスク管理計画書 [本文および添付資料4と添付資料6] の作成と改訂における個人データの匿名化と商業機密情報の評価)を発出しました。EMAは、中央で承認された全製品の初回承認申請と承認後の更新について、すべてのリスク管理計画書(RMP)を公開しています。本ガイダンスは、RMP改訂の試験的段階で申請者や製造販売業者(MAH)との相談が必要となった問題のうち、頻度の高い事例も提示しています。

5.2 EMAと欧州委員会の保健・食品安全総局(DG SANTE)は、医療製品・医薬品の機密情報の交換に関する協定を韓国の食品医薬品安全省(MFDS)と締結しました。詳細は、後述のセクション9「アジア規制当局のニュース」をご覧下さい。

6. リアルワールドデータ

6.1 米国のRegulatory Affairs Professionals Society(RAPS:薬事専門家協会)のウェブ記事「Regulators explain process for requesting real-world evidence studies by EMA」(EMAによるリアルワールドエビデンス研究を要請するプロセスに関する規制当局の説明)は、リアルワールドデータ(RWD)の分析から得られるリアルワールドエビデンス(RWE)が、規制当局の意思決定上どのように役立つかについて、わかりやすく説明しています。

訳注)RAPS:医薬品や生物製剤、医療機器、デジタルヘルスなどの規制に携わる専門家の世界最大の組織。1976年に米国で設立され、国内外の規制当局やアカデミア、製薬・医療機器業界などの専門家により、レギュラトリーサイエンスの情報交換や教育を実施。

6.2 TransCelerate社は、2024年6月6日午前10時~11時(米国東部時間)に公開ウェビナー「Is Your RWD Regulatory Ready? Considerations When Preparing RWD for a Regulatory Submission」(規制当局へのRWD提出の準備は万端ですか?規制当局提出用にRWDを準備する際の留意事項)を開催します。主な内容は、(1)同社の「RWD Audit Readiness Initiative」の概要(RWD Audit Readiness Initiativeは、データの信頼性の文書化のプロセスに焦点を当ててRWEを組み込んだプログラムの監査・査察の準備を支援するために同社が作成した留意事項リスト)、(2)同社作成の留意事項のポイントと、現状を調査したデータサービス・プロバイダーを対象に調査した結果の概要です。参加申込と事前質問の提出はこちらから可能です。

7. 透明性・情報開示のリソースとニュース

7.1 Clinical Research Data Sharing Alliance(CRDSA:臨床研究データ共有アライアンス)は、下記の2つの文書案を公開して、いずれもパブリックコメントを2024年5月31日まで募集しています。

  • Standard for Sharing Clinical Study Data(臨床研究データ共有に関する基準)2024年3月5日付。本案は、患者のプライバシーと知的財産を責任を持って保護しつつ、研究の有用性を最大化できるよう作成されています。
  • Standard for Secondary Analysis of Clinical Study Data(臨床研究データの二次解析に関する基準)2024年4月11日付。本案は、研究者が堅牢な分析を実施し、その結果を客観的に解釈できるよう支援することを目的としています。

訳注)CRDSA:2021年に米国で設立され、臨床データ共有エコシステムを推進する国際的コンソーシアム。臨床開発のプロセスを通じて収集された患者データの研究価値を最大化することで、患者の命を救う治療法や生活を改善する治療法の発見と提供を加速させるという共通の目標の下、製薬企業やデータ共有プラットフォーム、アカデミア、患者団体など多様なステークホルダーが参加。

7.2 ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors:国際医学雑誌編集者委員会)は、医学論文の倫理に関する国際的ガイドライン「ICMJE Recommendations for the Conduct, Reporting, Editing, and Publication of Scholarly Work in Medical Journals」(医学雑誌における学術研究の実施、報告、編集、発表に関する推奨事項)の改定版を発表しました。今回の主な改定点は、論文の著者や編集者、査読者の人工知能(AI)利用に関するガイダンス、著者の公正な決め方、被験者の保護などです。最新版はこちらからダウンロード可能です。

8. 人工知能・機械学習

8.1 FDAとClinical Trials Transformation Initiative(CTTI)は、2024年8月6日午前10時~午後5時30分(米国東部夏時間)に無料のハイブリッド式公開ワークショップ「Artificial Intelligence in Drug and Biological Product Development」(医薬品・生物学的製剤の開発におけるAI)を共同開催することを発表しました。2024年5月7日から参加申込の受付が始まり、詳しい申込方法や演者、ゲストなどが発表される予定です。CTTIのウェビナー情報はこちらをご覧下さい。

訳注)CTTI:2007年に米国デューク大学とFDAが共同で設立した、臨床試験の品質・効率の向上を目指す産学官連携組織。

8.2 Malekiのプレプリント(査読前原稿)「Clinical Trials Protocol Authoring using LLMs」(LLMを活用した治験実施計画書の作成)では、治験プロトコルの作成に生成AIをどのように利用できるか検証しています。著者は2つの臨床試験データベース(Clinicaltrials.govとTrialTrove)から治験プロトコルのメタデータを収集して、「T5 LLM」モデルとGPT-4を利用し、治験プロトコル40件を参照セットとして、「緒言」のセクションと「試験デザイン」のセクションの各サンプルを作成しました。

8.3 2024年4月22日、欧州製薬団体連合会(EFPIA)は声明「EFPIA Statement on the use of AI in the medicinal product lifecycle in the context of the AI Act」(AI規制法の下での医薬品ライフサイクルにおけるAIの活用に関する声明)を発表しました。本声明でEFPIAは、医薬品開発ライフサイクル全体に渡ってAIの利用とガバナンスに不可欠と思われる5つの検討事項を概説しています。

9. アジア規制当局のニュース

2024年4月25日、韓国の食品医薬品安全省(MFDS)とEMAは、医療製品・医薬品の機密情報の交換に関する協定を締結しました。これにより両当局は、規制上のプロセスや科学的なプロセスの一環として、医薬品に関する機密情報の交換が可能になります。対象となる情報は、ヒト用医薬品(既承認薬または承認審査中)の品質・安全性・有効性に関する機密情報の他、立法・法律や規制ガイダンス、査察に関する情報なども含まれます。本協定は、韓国当局とEU当局が規制上の相互協力をさらに発展させるための枠組みを提供します。本協定に有効期限はなく、更新不要となっています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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