【CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。
※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。
【略語リスト】(アルファベット順)
- CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
- CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
- CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
- CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
- EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
- EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
- EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
- FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
- HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
- ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
- MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
- RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
- RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)
1. ICH
CIOMSはICH用語集「Glossary of ICH terms and definitions」の第5版(2024年2月7日)を発行しました。本書は、各種ICHガイドラインで使用されている用語とその定義を組み合わせて提示しています。こちらからダウンロード可能です。
2. EU CTRとCTIS
2.1 CTISのデータ保護に関するQ&A集「Q&A on the protection of Commercially Confidential Information and Personal Data while using CTIS」(CTIS利用時の営業秘密情報 [CCI] と個人情報の保護に関するQ&A)の改訂版が発表されました(バージョン1.4、2024年1月31日)。今回の改訂では、Q&A 3.4「Is it possible not to disclose patient facing documents publicly?」(患者用文書を開示しないことは可能ですか?)の追加などが行われています。
2.2 EudraCTおよびEU Clinical Trials Register(EU-CTR)の「Frequently asked questions」(よくある質問)が改訂されました(バージョン2.3)。改訂箇所の多くは、CTISへの臨床試験の移行に関するQ&Aです。
2.3 今後開催が予定されているCTISイベントの日時は以下の通りです。
・2024年4月8日~11日14:00~18:30(アムステルダム時間)
・2024年6月10日~13日9:00~13:30(アムステルダム時間)
2.4 2024年1月23日、EMAは「CTIS: How to get started and how to transition a trial」(CTIS:利用開始方法と臨床試験の移行方法)を公開しました。
3. 欧州医療データスペースのニュース
欧州製薬団体連合会(European Federation of Pharmaceutical Industries and Associations:EFPIA)は、欧州医療データスペース(European Health Data Space:EHDS)に関する医療データ共有法案の主な留意事項に焦点を当てた声明「European Health Data Space: key aspects to be considered in the trilogue discussions」を発表しました。本声明では、二次利用の範囲内のデータや、知的財産と企業秘密の保護などが強調・考察されています。
4. 米国FDAのガイダンスとニュース
4.1 FDAはガイダンス案「Collection of Race and Ethnicity Data in Clinical Trials and Clinical Studies for FDA-Regulated Medical Products」(FDA規制医療製品の臨床試験と臨床研究における人種・民族データの収集)を公開しました。本案は、FDA規制医療製品の臨床試験や臨床研究から収集・報告された情報を含む申請資料において、人種・民族データの収集・報告に一貫性を持たせるために、FDAが推奨する標準化アプローチ・用語を提示しています。なお、本案は、2016年発表のFDA最終ガイダンス「Collection of Race and Ethnicity Data in Clinical Trials」(臨床試験における人種・民族データの収集)を改訂したものです。
4.2 FDAは米国デューク大学のデューク・マーゴリス医療政策センターと共同で、公開ワークショップ「Enhancing Adoption of Innovative Clinical Trial Approaches」(革新的な臨床試験アプローチの導入強化)を2024年3月19~20日に開催します。本ワークショップでは、臨床試験のデザインと実施の革新を進める取り組みについて議論する予定で、対面式(会場:ワシントンDCのケロッグ・カンファレンス・ホテル)とオンラインとのハイブリッド形式で開催されます。参加申込は同センターのイベントサイトで受け付けています。
4.3 FDAは公開ワークショップ「Advancing the Use of Complex Innovative Designs in Clinical Trials: From Pilot to Practice」(臨床試験の複雑で革新的なデザインの利用促進:試みから実装まで)を2024年3月5日に開催し、複雑なアダプティブデザインやベイズ流アプローチなど、新しい試験デザインについて議論します。本ワークショップは二部構成になっており、前半では、複雑で革新的なデザインとその実装の多様な側面を例示するケーススタディに焦点を当てます。後半では、ケーススタディに基づいてパネルディスカッションが行われる予定です。対面式とオンラインのハイブリッド形式で開催されますが、参加申込の詳細はこちらをご覧下さい。
4.4 「Top Questions and Answers about the Transition to the Modernized ClinicalTrials.gov and Modernized PRS」(ClinicalTrials.govとプロトコル登録・結果提出システム [PRS:Protocol Registration and Results System] の最新化に関するQ&A)が改訂され、ClinicalTrials.govとPRS各々の従来バージョンの廃止に関する情報が追加されました。
4.5 FDAはガイダンス案「Use of Data Monitoring Committees in Clinical Trials」(臨床試験におけるデータモニタリング委員会の活用)を公開しました。本案は、①データモニタリング委員会(DMC)(別名:データ・安全性モニタリング委員会[DSMB]、データ・安全性モニタリング委員会[DSMC]、独立データモニタリング委員会[IDMC])が臨床試験のモニタリングに有用な場合の見極めや、②データモニタリング委員会の運営指導で考慮すべき手順や内容の決定に関して、治験依頼者を支援するための推奨事項を示しています。本案が最終決定されると、2006年3月発行の治験依頼者向け最終ガイダンス「Establishment and Operation of Clinical Trial Data Monitoring Committees」(臨床試験データモニタリング委員会の設置と運営)から置き換わります。パブリックコメントは2024年4月15日まで受け付けています。
4.6 CDERのジェネリック医薬品部(OGD)とEMAは、ジェネリック医薬品の申請者とFDAとEMAとの同時協議を促進するため、任意のパイロットプログラム「FDA-EMA Parallel Scientific Advice Pilot Program for Complex Generic/Hybrid Products」(複雑なジェネリック/ハイブリッド製品に対するFDA-EMA並行科学的助言パイロットプログラム)を開始しました。本プログラムにより、申請者は「複雑なジェネリック医薬品」(EMAの「ハイブリッド医薬品」に相当)の開発に関して具体的な科学的質問を照会するために、FDAとEMAとの三者合同会議の開催を要請することができます。
5. 欧州EMAのガイダンスとニュース
5.1 EMAはニュース記事「Clinical trials’ transition to new EU system — one year left」(臨床試験の新EUシステムへの移行 ― 残り1年)を発表しました。本記事は、2025年1月30日以降も継続が予想される臨床試験の依頼者に対し、EU加盟国が承認手続き完了までに最大3カ月要する場合があることを考慮する必要性について改めて注意喚起しています。本記事には、過去に紹介された臨床試験移行ガイダンスのリンクも貼られています。また、EMAは「Getting started with CTIS: Sponsor quick guide」(CTISの利用開始方法:治験依頼者用クイックガイド)も発表しています。
5.2 EMAは、ヒトの特定の細菌感染症または感染症の治療や予防を目的としたバクテリオファージ医薬品の開発・製造に関する科学的ガイドラインの作成を提案するコンセプトペーパー「Concept paper on the establishment of a Guideline on the development and manufacture of human medicinal products specifically designed for phage therapy」(ファージセラピー用ヒト医薬品の開発・製造ガイドラインの作成に関するコンセプトペーパー)を発表しました。現在EUでは、動物用のバクテリオファージ医薬品についてはEMAのガイドラインが存在しますが、ヒト用はありません。本コンセプトペーパーに関するパブリックコメントは2024年3月31日まで受け付けています。
5.3 2024年1月25~26日の2日間、EMA主催の臨床試験分析ワークショップが開催され、200人を超える参加者が出席しました。主なディスカッションは、詳細かつ最新の臨床試験データへのアクセス改善の要望や、患者参加の重要性、標準化、適切なデータソースの特定などでした。当日のスライドとビデオ録画がこちらで公開されています。
6. 透明性・情報開示のリソースとニュース
6.1 TransCelerate Biopharma社は2024年3月28日にウェビナー「Enabling Individual Participant Data Return (iPDR): An Overview of TransCelerate’s Individual Participant Data Return Package」(臨床試験の被験者へ各自の治験データを提供する方法:TransCelerate Biopharma社の被験者個人データ提供パッケージの概要)を開催します。参加申込の詳細はこちらをご覧下さい。
6.2 Real Life Sciences社は2024年2月22日にウェビナー「Commercially Confidential Information: Why It’s So Hard and What You Can Do To Streamline CCI In Your Organization」(医薬品の営業秘密 [CCI]:CCIの簡素化はなぜ難しいのか、組織内で何が出来るか)を開催します。参加申込の詳細はこちらをご覧下さい。
7. 開発戦略ニュース
7.1 EMAは、バイオシミラーの開発におけるテーラーメイド臨床アプローチのリフレクションペーパー作成に関するコンセプトペーパー「Concept paper for the development of a reflection paper on a tailored clinical approach in biosimilar development」を発表しました。本コンセプトペーパーについて、2024年4月30日までの3ヶ月間に渡りパブリックコメントを募集しています。コメントはこちらのアンケートフォームから提出可能です。
7.2 Kahanらは論文「The estimands framework: a primer on the ICH E9(R1) addendum」(estimandのフレームワーク:ICH E9(R1)ガイドライン補遺の手引き)を発表しました。estimandを検討する際、チームのインプットが必要であるにもかかわらず、生物統計担当者に任せきりになるという、よく見られる問題が本論文で指摘されています。本論文は主題が簡潔に要約されており、estimandに馴染みのない人にとって優れた手引書となっています。
8. 人工知能・機械学習
Shickらは論文「Transparency of artificial intelligence/machine learning-enabled medical devices」(人工知能/機械学習を利用した医療機器の透明性)を発表しました。2021年10月にFDAが開催した同名のワークショップで、ステークホルダーにとっての透明性の意味と役割や、医療機器に該当するすべての人工知能/機械学習利用ソフトウェアの透明性を促す方法について議論された成果が本論文で報告されています。
翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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