CORE Reference News 2024年6月17日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 改正透明性規則とCTISパブリックポータルが2024年6月18日に開始されます。これに伴い、CTISウェブサイトは2024年6月17日18時(中央ヨーロッパ夏時間)より利用できなくなります。なお、6月17日はパブリックポータルの準備作業のため、システムの反応が遅くなる可能性があります。

1.2 EMAはCTIS治験依頼者エンドユーザー研修プログラムを、2024年9月、10月、11月の計3回開催することを発表しました。各月の開催予定日は以下の通りです。

1.3 EMAはオンラインイベント「EMA CTIS Information Day」を2024年10月17日13:30~17:30(中央ヨーロッパ時間)に開催します。この日は、臨床試験移行期間終了の翌日に当たります。このイベントでは、試験移行とその後の手順の両方を網羅した包括的なガイダンスと、実用的な洞察が提供されます。2024年6月18日には改正透明性規則の技術的実装が完了するため、透明性規則の変更点と、変更が業務に与える影響を明確に理解する必要があります。Q&Aセッションでは、参加者からの質問にEMA、EU加盟国規制当局(NCA)、業界代表者がライブで回答する予定です。参加申込はこちらから可能です。事前質問はemaevents@diaglobal.orgで受け付けています。

2. EUの医薬品規制

2.1 ドイツ連邦政府・州政府の医薬品情報ポータル「PharmaNet.Bund」の改訂版が、ウェブサイトのデザイン変更に伴い、2024年5月28日にリリースされました(訳注:英語ページあり)。PharmaNet.Bundは、連邦政府の上位当局の医薬品データを一元的かつ透明性のある方法で一般に公開しています。規制当局や製薬企業は、医薬品データの送信、承認、登録のアプリケーションをPharmaNet.Bundで探すことができます。改訂版は、従来よりもモダンなデザインになったことに加え、PharmNet.Bundアプリケーションに関する説明、マニュアル、FAQ、「アクセスとユーザー管理」に関する情報がすべて一元的にまとめられたサービスエリアが設けられています。

2.2 欧州理事会は、ヒト由来物質の利用に関して新たな規則「Standards of quality and safety for substances of human origin (SoHO) intended for human application」(ヒトへの適用を目的としたヒト由来物質 [SoHO] の品質と安全性の基準)を採択しました。SoHOにはヒトの血液、組織、細胞、母乳、腸内細菌叢などが含まれます。新たな規則は、SoHOに対する強固な枠組みを確立し、既存の法的構造を強化するとともに、技術革新を促進するものです。

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govの最新情報:2つの臨床試験記録を比較する際に、記録の表示方法として「merge format」(融合式)か「side-by-side format」(横並び式)を選べるようになりました。詳細は2024年6月5日付のリリースノートをご覧下さい。

3.2 「Top Questions and Answers about the Transition to the Modernized ClinicalTrials.gov and Modernized PRS」(ClinicalTrials.govとPRS [Protocol Registration and Results System] の最新化に関するQ&A)がアップデートされました。最新版には、2024年6月25日に予定されているClinicalTrials.govサイト旧版(classic version)廃止に関する新たな情報と、PRSの最新化に関する追加の質問が含まれています。

3.3 米国国立医学図書館(NLM)のブログ「Musings from the Mezzanine」(中2階からの瞑想)は、最新記事「Making a Milestone: The Modernized ClinicalTrials.gov becoming the Singular Website Experience」(マイルストーン達成:最新化されたClinicalTrials.govは単一サイトに)を掲載しました。

3.4 ClinicalTrials.govの「Trends and Charts on Registered Studies」(登録されている臨床試験に関する傾向と図表)は、ClinicalTrials.govの試験登録数と結果掲載数が増加していることを示しています(2024年6月11日現在)。

3.5 米国国立医学図書館(NLM)は2024年6月6日に公開ウェビナー「Modernized ClinicalTrials.gov Update」(最新化されたClinicalTrials.govの最新情報)を開催し、リニューアルされたClinicalTrials.govサイトとPRS(Protocol Registration and Results System:治験プロトコル登録・結果報告システム)サイトを詳しく紹介しました。本ウェビナーでは、ClinicalTrials.govのスタッフが最新化の全体的な進捗状況に関して最新情報を説明し、最新化された両サイトの特徴を強調しました。特に注目が集まったトピックは、ClinicalTrials.govサイト旧版(classic version)の廃止でした。ウェビナーのスライドがこちらからダウンロード可能です。

4. リアルワールドデータ

4.1 EMA/HMA共同ビッグデータ運営グループは、「Big Data Workplan 2023-2025」(ビッグデータ作業計画2023~2025)のバージョン1.3発表しました。合意された作業計画と「EMA Network Strategy to 2025」(2025年までのEMAネットワーク戦略)に沿って進捗を図ることにより、EUでの医薬品の開発、認可、監督でビッグデータの利用を可能にし、ビッグデータの価値を確立することを目指しています。

4.2 オーストラリア保健省の薬品・医薬品行政局(TGA)は、ガイダンス「Real World Evidence: Regulatory Considerations for Medical Devices」(リアルワールドエビデンス:医療機器の規制上の留意事項)を発表しました。

4.3 欧州のIDERHAプロジェクトは、「Report on Global Regulatory Best Practices Analysis: A Scoping Review of HTA and Regulatory RWD/RWE Policy Documents」(グローバル規制ベストプラクティス分析に関するレポート:医療技術評価 [HTA] および規制上のRWD/RWEポリシー文書のスコーピングレビュー)を発表しました。

訳注)IDERHA:Integration of Heterogeneous Data and Evidence towards Regulatory and HTA Acceptance(規制上と医療技術評価 [HTA]の承認に向けた異種データとエビデンスの統合)。2023年4月に官民共同で発足した欧州革新的医療構想(IHI:Innovative Health Initiative)プロジェクト。異種医療データの安全・確実で合理的な共有を可能にすることを目的としている。

5. 開発戦略ニュース

5.1 FDAはガイダンス案「Platform Technology Designation Program for Drug Development」(医薬品開発のためのプラットフォーム技術指定プログラム)を2024年5月28日に発表しました。この新規プログラムは、指定を受けたプラットフォーム技術を利用する医薬品や生物学的製剤の開発、製造、承認審査プロセスを効率化することを目的としており、いわゆる「PREVENT pandemics Act」(パンデミック防止法)により連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C法)に追加されました。本ガイダンス案に対するパブリックコメントは、こちらで2024年7月29日まで募集しています。

5.2 ACT EUが欧州での臨床試験申請(CTA)の品質向上のため、2つの助言パイロットプログラムの運用を開始したことが、EMAのニュース記事「Two new advice pilots to improve clinical trials in Europe」で発表されました。

  • パイロットプログラム1:臨床試験および製造販売承認申請(MAA)の要件に関する科学的助言を医薬品開発者に提供します。EMAが調整する科学的助言作業部会(SAWP)と、HMAが管理する臨床試験調整部会(CTCG)の両部会が、科学的な性質を持つ要請を評価します。SAWPはMAAに関する助言を担当し、CTCGに代表されるEU加盟国各国は臨床試験申請の監督を担当します。パイロットプログラム1では、SAWPとCTCG各々の見解を統合して、両者間の回避可能な見解の相違を最小限に抑えます。パイロットプログラム1の手引書はこちらをご覧下さい。
  • パイロットプログラム2:CTCGが調整を担当し、臨床試験申請書類に関して、CTIS提出前に技術面と規制面のサポートを申請者に提供します。従来、申請者は、申請を評価する加盟国1ヵ国から国内レベルでしか技術面・規制面のサポートを受けられませんでしたが、パイロットプログラム2により、臨床試験申請前のトピックに関して、複数の加盟国から統合された見解を得られます。パイロットプログラム2の範囲には、低介入試験の規制に関する助言や、分散型臨床試験や複雑なデザインの試験の申請に関する助言などが含まれます。パイロットプログラム2の手引書はこちらをご覧下さい。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

6. 人工知能・機械学習

6.1 FDAとClinical Trials Transformation Initiative(CTTI)は、2024年8月6日10:00~17:30(米国東部夏時間)に、無料のハイブリッド式公開ワークショップ「Artificial intelligence in drug and biological product development」(医薬品・生物学的製剤の開発におけるAI)を共同開催します。本ワークショップでは、安全かつ有効な医薬品の開発におけるAIの責任ある利用を促進するためにイノベーターと規制当局が適用している基本原則を探ります。

訳注)CTTI:2007年に米国デューク大学とFDAが共同で設立した、臨床試験の品質・効率の向上を目指す産学官連携組織。

6.2 臨床試験の設計と研究でのAIの役割に関するFDAのQ&Aセッションで、一般の人々から多く寄せられた質問に対するFDAの回答の録音が、こちらでお聞きになれます。

6.3 米国FDA、カナダ保健省、英国MHRAは共同で「Transparency for Machine Learning-Enabled Medical Devices: Guiding Principles」(機械学習対応医療機器 [MLMD] の透明性:基本原則)を発表しました。MLMDの場合、効果的な透明性により、リスクや患者の転帰に影響を与え得る情報を、医療機器と相互に作用する可能性のある医療従事者など関係者全員に伝え、その情報に基づいた意思決定を支援することができます。今回新たに発表された透明性の基本原則は、FDA、カナダ保健省、MHRAが過去に共同発表した「Good Machine Learning Practice (GMLP) for Medical Device Development: Guiding Principles」(医療機器開発における機械学習の実施基準 [GMLP]:基本原則)と、「Predetermined Change Control Plans for Machine Learning-Enabled Medical Devices: Guiding Principles」(MLMDの事前変更管理計画 [PCCP]:基本原則)に基づいています。MHRAのガイダンス「Software and artificial intelligence (AI) as a medical device」(医療機器としてのソフトウェアとAI)が更新されています。

6.4 欧州データ保護監督機関(EDPS)は、「Guidelines on Generative AI: Embracing Opportunities, Protecting People」(生成AIに関するガイドライン:機会の活用、人々の保護)を発出しました。このガイドラインは、EU機関が生成AIツールを使用または開発する際に、規則(EU)2018/1725に定められたデータ保護義務を遵守できるよう支援することを目的としています。

6.5 Greg CuppanのLinkedIn記事「The Impact of Generative AI on Writing and Reviewing Documents for Health Authorities like the FDA」(FDAなどの規制当局向け文書の作成とレビューに生成AIが与える影響)では、生成AIが効率、正確性、コンプライアンスを強化することにより、FDAやEMAなどの規制当局向け文書のライティングとレビューを変革させる可能性について説明しています。

7. ヘルシンキ宣言

世界医師会(WMA)の「ヘルシンキ宣言」改訂プロセスの第2段階が開始されました。すべてのステークホルダーと一般からの意見を改訂に最大限に反映させるため、パブリックコメント募集期間が2期に分けて設けられています。第1期パブリックコメント募集は今年初めに行われましたが、現在、第2期の募集が2024年6月24日まで行われています。パブリックコメント用紙のダウンロードや提出方法などについては、こちらをご覧下さい。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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