CORE Reference News 2024年7月15日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 改正透明性規則と、アップデートされたCTISパブリックポータルによる変更とを反映するため、CTISオンライン研修プログラムのモジュール02、07、10、11が更新されました。

1.2 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」最新号(2024年6月28日付)には、CTISに関する最新情報と、改正透明性規則に関する有用な参考資料(治験依頼者向けリソースなど)へのリンクが掲載されています。

また、2024年6月20日に開催されたCTISショート説明会「Revised transparency rules and the new CTIS public portal」(改正透明性規則と新たなCTISパブリックポータル)のビデオ録画が公開されています。

1.3 「CTCG Best Practice Guide for sponsors of multinational clinical trials with different Part I document versions approved in different Member States under the Directive 2001/20/EC that will transition to the Regulation (EU) No. 536/2014」(EU臨床試験規則No.536/2014に移行するEU臨床試験指令2001/20/ECの下、異なるEU加盟国で承認されたPart I文書のバージョンが異なる国際共同試験の治験依頼者向けCTCGベストプラクティス・ガイド)が、バージョン5(2024年6月19日付)に更新されました。

本バージョンでは、「迅速な移行手続きは、EudraLex Volume 10で発行されたガイダンスに沿い、CTD承認文書の最小限の書類の評価ではなく検証に重点を置いている。治験依頼者は、移行期間が数か月しか残されていないことを踏まえて、まだ決定していないCTD substantial amendment application(大幅変更申請)を取り下げ、代わりに、統合されたPart I文書を直接提出することを推奨する」と明記されています。

1.4 HMAのCTCG(Clinical Trials Coordination Group:臨床試験調整グループ)は、安全性に関する新たな文書「CTCG’s Questions and Answers on safety related issues in amendment of the Commission’s QnA section 7 on safety, Eudralex Volume 10」(EudraLex Volume 10のQ&A文書のセクション7の改訂における安全性関連問題に関するQ&A)を発表しました。本書では、EudraLex Volume 10のQ&A文書のセクション7に加えて、CTIS関連のトピック(年次安全性報告書 [ASR]、安全性関連の通知、安全性参照情報 [RSI]、ad hocワークフロー内で送信される情報提供依頼 [RFI])についても、具体的に説明されています。

訳注)EudraLex:European Union Drug Regulatory Authorities Legislation。EUの医薬品規制の法規集で、全10巻から成る。Volume 10(第10巻)は「Guidelines for clinical trial」(臨床試験に関するガイドライン)。

2. 欧州医療データスペース(EHDS

欧州委員会は「2024 Digital Decade eHealth Indicator Study Annex – Country Factsheets」(2024デジタル10年eHealth評価指標調査付属書:国別ファクトシート)を発表しました。これは、EUに加盟している27ヵ国各々について、eHealthデータへのアクセスに基づくeHealth成熟度スコアなど、eHealth評価指標をまとめたものです。

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 FDAは、リアルワールドエビデンス(RWE)を含むCBER/CDER提出物に関する報告書「Real-World Evidence Submissions to the Center for Biologics Evaluation and Research & the Center for Drug Evaluation and Research」を、2024年6月27日に発表しました。

これは、医薬品・生物学的製剤の有効性や安全性に関して規制当局の意思決定を支援することを目的としたRWE創出のためのリアルワールドデータ(RWD)分析を含む、CBER/CDERへの提出物に関するFDA初の年次報告書です。

本書によると、CBERへのRWE提出物には治験プロトコル4件が含まれており、CDERへのRWE提出物には治験プロトコル10件と新薬承認申請書(NDA)/生物学的製剤承認申請書(BLA)4件が含まれています。

従来の臨床試験に依存していた医薬品・生物学的製剤開発プログラムの効率を向上させるためにRWDを活用することは、FDAによって十分に確立され、奨励されています。

3.2 FDAはガイダンス案「Diversity Action Plans to Improve Enrollment of Participants from Underrepresented Populations in Clinical Studies」(臨床試験で社会的マイノリティ集団の被験者登録を促進するためのダイバーシティ・アクションプラン)を発表しました。本案は、医薬品や生物学的製剤、医療機器の特定の臨床試験を実施する治験依頼者が、多様性アクションプランの提出要件を満たすのを支援することを目的としています。2024年9月26日までパブリックコメントを募集しています。

4. 欧州EMAのガイダンスとニュース

4.1 EMAは、新たに開始した統合助言パイロットプログラムに関するウェビナー「ACT EU consolidated advice pilots: information and training for applicants」(ACT EUの統合助言パイロットプログラム:申請者のための情報と研修)を、2024年7月17日に開催し、本プログラムの範囲と利点について概説します。本プログラムは臨床試験申請(CTA)や販売承認申請(MAA)の品質向上を目的としています。

4.2 EMAは「Concept paper on the revision of the COVID-19 vaccines guidance documents」(新型コロナワクチンのガイダンス文書の改訂に関するコンセプトペーパー)を公開し、パブリックコメントをこちらで2024年9月30日まで募集しています。

提案されたガイドラインは、「EMA considerations on COVID-19 vaccine approval」(新型コロナワクチン承認に関するEMAの検討事項)(EMA/592928/2020)と、「Reflection paper on the regulatory requirements for vaccines intended to provide protection against variant strain(s) of SARS-CoV-2」(SARS-CoV-2変異株に対する予防を目的としたワクチンの規制要件に関するリフレクションペーパー)(EMA/117973/2021)に代わるものです。

5. リアルワールドデータ

5.1 Prillaらはレビュー論文「Real-World Evidence to Support EU Regulatory Decision Making — Results From a Pilot of Regulatory Use Cases」(EU規制当局を支援するためのRWE:規制当局のユースケースのパイロット活動の成果)を発表しました。この論文は、EMAが規制当局の意思決定のためのRWE創出・活用に適した経路とアプローチを模索するために、2021年9月~2023年2月に実施したパイロット活動の成果を紹介しています。

5.2 EMAは「ICH reflection paper on pursuing opportunities for harmonisation in using real-world data to generate real world evidence, with a focus on effectiveness of medicines」(医薬品の有効性に焦点を当て、RWE創出にRWDを利用する際の調和の機会を追求することに関するICHリフレクションペーパー)を発表しました。

本書は、課題に対処するための戦略的アプローチを概説し、規制当局への申請や規制当局のタイムリーな意思決定にRWEを組み込む方法について論じています。このリフレクションペーパーは、規制当局によるRWEガイダンスの調和に向けた段階的アプローチの第1歩であると、著者らは述べています。

6. 透明性・情報開示のリソースとニュース

6.1 米国の非営利オープンアクセス出版社PLOS(Public Library of Science)は、オープンサイエンスの進捗を評価する指標(OSI: open science indicator)に関して、ブログ記事「A new Open Science Indicator: measuring study registration」(新たなOSI:研究登録)を発表しました。この記事でPLOSは、従来のOSIに、「研究の事前登録」を重要なOSIとして新たに追加したと述べています。

OSIの目的上、「研究の事前登録」の定義は、「偏りのない結果報告を保証し、計画された研究と計画されていない研究の方向性の区別をサポートするために公開されている研究計画(研究の疑問・仮説、研究デザインの詳細、データ分析の計画などを含む)」としています。

OSIの最新の結果によると、全体的な事前登録率は依然として低いものの、事前登録された研究の割合は増加しており、登録に最もよく利用されているレジストリはClinicaltrials.govとなっています。PLOSは、最近の結果だけでなく、2018年までさかのぼった分析の完全なデータセットも公開しています。

6.2 グローバルヘルスに取り組む非営利団体Health Information For All(HIFA)は、プレスリリース「Global health advocates call on the World Health Organization to explicitly champion the goal of universal access to reliable healthcare information」(グローバルヘルスの唱道者らは、世界保健機関 [WHO] に対し、信頼できる医療情報への普遍的アクセスという目標を明確に支持するよう求める)を発表しました。HIFAは2024年7月30日にオンラインイベント「Towards universal access to reliable healthcare information」(信頼できる医療情報への普遍的アクセスに向けて)を開催します。

7. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

EMAは、EMA Policy 0070の臨床データポータルのユーザー満足度と使いやすさを調べるため、「Clinical Data Publication Survey」(臨床データ公開調査)を開始しました。

8. 開発戦略ニュース

8.1 2017年にFDAのCDERは、「New Drugs Regulatory Program (NDRP)」(新薬規制プログラム)の近代化に着手しました。これは、CDERオフィスの効率と効果を高めるための、複数年にわたる枠組みです。NDRPの近代化は、過去20年間における医薬品開発の複雑さと量の急激な増加に対応するとともに、遺伝子科学における最近のブレークスルーや、個別化医療の進歩、希少疾患や疾患サブタイプへの注目の高まりなどに後押しされた今後の成長への期待に応えるものです。CDERは継続的にレギュラトリーサイエンスと医薬品審査プロセスを改善していくため、NDRPの近代化を開始しました。

FDAの公式サイトに掲載されている、CDERの専門家へのインタビュー・シリーズ「CDER Conversations」の最新記事「Modernizing the New Drugs Regulatory Program」で、CDER新薬審査部(Office of New Drugs: OND)のYoni Tyberg氏がNDRPの近代化や、その成果、公衆衛生への影響について説明しています。近代化の成果の包括的なリストは、「NDRP Modernization — Impact Narrative Update 2023」(NDRPの近代化:影響の最新情報2023)でご覧頂けます。

8.2 非営利のシンクタンクEuropean Forum for Good Clinical Practice (EFGCP)(欧州GCPフォーラム)と、欧州製薬団体連合会(EFPIA)が共同で主導する「EU-X-CT Cross-Border Clinical Trials Initiative」(EU-X-CT越境臨床試験イニシアチブ)は、欧州で国境をまたぐ臨床試験アクセスの向上に取り組んでいます。2024年4月にベルギーのブリュッセルで、EU-X-CTイニシアチブの第1回ステークホルダー・フォーラムが開催されました。そのレポートはこちらでご覧頂けます。

EFPIAのニュース記事「Breaking down the barriers: Making cross-border access to clinical trials a reality」(障壁の克服:国境を越えた臨床試験アクセスの実現)によると、EU-X-CTイニシアチブは現在、ステークホルダー・フォーラムでの議論やアンケート調査からのフィードバックに基づき、ボーダレスな臨床試験アクセスに関する推奨事項の草案を作成中です。草案は、パブリックコメント募集のため2024年末までに公開される予定です。

9. 人工知能・機械学習

9.1 国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)は、ドラフト文書「Good machine learning practice for medical device development: Guiding principles」(医療機器開発における機械学習の実施基準 [GMLP]:基本原則)を発表しました。このドラフトは、2021年に米国、英国、カナダの各規制当局が共同で発出した同名のガイドラインと同じ内容で、安全・有効かつ高品質なAI搭載医療機器の開発を促進するための基本原則を10項目定めています。2024年8月30日までこちらでパブリックコメントを募集しています。

9.2 FDAとClinical Trials Transformation Initiative(CTTI)は共同で、無料のハイブリッド式公開ワークショップ「Artificial intelligence in drug & biological product development」(医薬品・生物学的製剤の開発におけるAI)を、2024年8月6日10:00~17:30(米国東部夏時間)に開催します。参加申込はこちらで受け付けています。

訳注)CTTI:2007年に米国デューク大学とFDAが共同で設立した、臨床試験の品質・効率の向上を目指す産学官連携組織。

9.3 Alkhalafらは論文「Applying generative AI with retrieval augmented generation to summarise and extract key clinical information from electronic health records」(検索拡張生成 [RAG] 機能を備えた生成AIを利用した、電子健康記録 [EHR] の主要な臨床情報の要約・抽出)を発表しました。この論文は、生成AIモデルにゼロショット学習を適用し、電子健康記録データの構造化された要約を自動生成させ、主な臨床情報を抽出させた際の成果と限界について報告しています。

9.4 Kastrupらは論文「Landscape and challenges in economic evaluations of artificial intelligence in healthcare: a systematic review of methodology」(医療AIの経済的評価の現状と課題:方法論のシステマティックレビュー)を発表しました。本論文で著者らは、「このシステマティックレビューは、AI技術の医療経済評価(HEE)の一般的な方法の品質に関するエビデンスをマッピングし、品質改善を期待できる領域を特定することを目指している」と述べています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

※メールマガジン「クリノス通信」(無料)
国内外の業界情報や、英文ライティングのワンポイントレッスンなど
医薬翻訳・メディカルライティングに役立つ情報をお届けしています。
→ 購読申込はこちら

ページの先頭へ戻る

CORE Reference News 2024年6月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 改正透明性規則と、アップデートされたCTISパブリックポータルが2024年6月18日に開始されました。両者に関する情報はこちらをご覧下さい。

1.2 「EMA Guidance document on how to approach the protection of personal data and commercially confidential information while using the Clinical Trials Information System (CTIS)」(CTIS利用中に個人データと営業機密情報 [CCI] を保護する方法に関するEMAガイダンス)のバージョン2(2024年6月18日付)が発出されました。旧バージョンからの主な変更は、①改正透明性規則への対応(適用されなくなった第5章の削除など)、②「historical trial」(訳注:2024年6月18日以前にCTISに提出された臨床試験)の公開原則に関するセクションの追加、③移行試験に関するセクションの追加の3点です。個人データとCCIの保護の原則に変更はありません。本ガイダンスの「Annex I」(付録I)と「Q&A on the protection of commercially confidential information and personal data while using CTIS」(CTIS利用中の個人データとCCIの保護に関するQ&A)も併せてお読み下さい。

2. EUの医薬品規制

2.1 欧州委員会医療技術評価(HTA)事務局とEMAは、「Joint clinical assessment of medicinal products: Submission of early information by health technology developers」(医薬品の共同臨床評価:医療技術開発者による早期情報提出)に関する通知を発行しました。EMAとHTA事務局は、申請提出の意思通知に同じ書式を使用することに合意しました。この連携により、2機関間の情報交換の効率が向上します。

2.2 Caponeらの論文「Accelerating clinical trials in the EU (ACT EU): transforming the EU clinical trials landscape」(ACT EU:EU臨床試験環境の変革)は、ACT EUと、「欧州での臨床試験に最適な環境を作り、患者に医薬品をより早く届ける」という取り組みについて説明しています。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

2.3 欧州議会は、「Addressing challenges to European multicountry collaboration models for rare diseases」(希少疾患に関する欧州多国間協力モデルの課題への取り組み)に関する報告書を発表しました。

2.4 EMAは、ICH M14ガイドライン案「General principles on plan, design and analysis of pharmacoepidemiological studies that utilize real-world data for safety assessment of medicines」(医薬品の安全性評価においてリアルワールドデータを活用する薬剤疫学研究の計画、デザイン、分析に関する一般原則)について、パブリックコメントの募集を開始しました。コメントは2024年8月30日まで受け付けています。詳細はこちらをご覧下さい。(訳注:日本でも2024年7月28日までこちらでパブコメを募集しています)

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 FDAの「14th Global Summit on Regulatory Science (GSRS24)」(第14回グローバル規制科学サミット)年次会議が、対面式で2024年9月18~19日にアーカンソー州リトルロックで開催されます。参加は無料ですが、事前の申込が必要です(2024年7月15日締切)。座席数には限りがあり、申込受付は先着順となります。プログラムはこちらをご覧下さい。

3.2 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govは、最新化された同サイトで基本的なタスクを行う方法を解説したデモンストレーション動画「Fast Forward from ClinicalTrials.gov」シリーズを公開しています。ClinicalTrials.govとProtocol Registration and Results System (PRS)(プロトコル登録・結果システム)について、ユーザーから多く寄せられる質問に対応した短いデモ動画がさらに追加されていく予定ですので、今後もご注目下さい。

3.3 医療情報提供サイト「Clinical Leader」のゲストコラム「FDA Issues New Draft Guidances On Cancer Clinical Trial Eligibility Criteria」(FDAががん臨床試験の適格性基準に関して新たなガイダンス案を発表)で、著者のZettler氏は、がん臨床試験の適格性基準に関してFDAが最近発表した3つのガイダンス案(①ウォッシュアウト期間と併用薬、②performance status、③臨床検査値)を取り上げています。厳しい適格性基準の緩和を支持する最近のエビデンスも紹介しており、『NEJM Evidence』誌に掲載された研究によると、臨床試験の参加に適格ながん患者の割合は、ヘモグロビン、eGFR、クレアチニンクリアランス、ECOG performance statusなどについて厳しい適格性基準を適用した場合48%でしたが、これらの基準を緩和すると78%に増えました。

3.4 FDAは2023年11月29~30日に公開ワークショップ「Enhancing Clinical Study Diversity」(臨床試験の多様性向上)を開催しましたが、このレポートがこちらで公開されています。また、FDAはガイダンス案「Diversity Action Plans to Improve Enrollment of Participants from Underrepresented Populations in Clinical Studies」(臨床試験でマイノリティ集団の被験者登録を改善するためのダイバーシティ・アクションプラン)を発表し、パブリックコメントを募集しています(訳注:2024年9月26日締切)。

4. リアルワールドデータ

4.1 英国の医療データに関する国立研究機関Health Data Research UK(HDR UK)は、英国内の複数の情報源から収集した医療データを活用するため、Real-World Evidence Network Coordination Centre for the UK(英国RWEネットワーク調整センター)の試験的創設を発表しました。

4.2 Angusらは論文「The Integration of Clinical Trials With the Practice of Medicine: Repairing a House Divided」(臨床試験と実臨床の融合:分断された世界の修復)を発表し、研究と実臨床とのギャップを指摘しています。ランダム化比較試験(RCT)は「医療で何が有効かを見極める最も厳密な方法」ですが、RCTのエビデンスとその臨床応用との間には乖離があり、「これら2つの世界のより良い融合が、医療提供の改善を加速させる鍵である」と著者らは述べています。

5. 透明性・情報開示のリソースとニュース

5.1 米国ハーバード大学/ブリガム&ウィメンズ病院のMRCTセンターが作成した「Clinical Research Glossary」(臨床研究用語集)は、毎年6月に公開レビューが実施されており、今年は2024年7月5日までコメントを募集しています。レビューとコメント提出はこちらから可能です。詳細はウェビナー「Action and Influence: Implementing the Clinical Research Glossary and Your Critical Role in Public Review」(行動と影響:臨床研究用語集の実装と、公開レビューにおける皆様の重要な役割)をご覧下さい。

訳注)MRCTセンター:Multi-Regional Clinical Trials Center of Brigham and Women’s Hospital and Harvard(ハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院の多地域臨床試験センター)。ブリガム&ウィメンズ病院は、米国ハーバード大学医学部の附属病院としての役割を担う医療・研究・教育機関の1つ。MRCTはハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院に属しており、国際共同治験の改善を目的とする研究・政策センター。

5.2 PHUSEはデータの透明性に関するオンラインイベント「PHUSE Data Transparency Autumn event」を、2024年9月17~19日の15:00~17:30(英国夏時間)/10:00~12:30(米国東部夏時間)に開催します。参加は無料ですが、事前の申込が必要です。詳細は後日発表予定です。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメントや生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

6. 開発戦略ニュース

6.1 TransCelerate BioPharma社は2024年7月11日午前9時~10時30分(米国東部時間)に、ウェビナー「Vulcan UDP (Utilizing the Digital Protocol): Collaborating to Accelerate ICH M11 and End User Value」(Vulcan UDP [デジタルプロトコルの活用]:ICH M11ガイドラインとエンドユーザー価値の促進に向けたコラボレーション)を開催します。VulcanのUDPは、複数のイニシアチブを統合して治験プロトコルのデジタル表現を開発する包括的なプロジェクトです。ウェビナーで取り上げる主な内容は、①Vulcan UDPの目標、②2024年5月に初めて実施されたUDPコネクタソンの概要(フィードバック、得られた学び、フォローアップ計画など)と今後のコネクタソンの予定、③ICH M11 EWG(expert working group:専門家作業部会)の観点から見たICH M11の意図と想定される影響です。質疑応答も実施されます。参加申込はこちらから可能です。

訳注1)TransCelerate BioPharma Inc.:世界のバイオ医薬品企業約20社が協力して、新薬の効率的・効果的かつ高品質な提供を促進する方法を探求する非営利団体。日本の製薬企業も数社参画。治験総括報告書(CSR)や治験プロトコルのテンプレートなどを作成・提供。

訳注2)Vulcan:米国の非営利標準化団体であるHL7(Health Level 7)協会が2019年に立ち上げた、マルチステークホルダーによる国際プロジェクト。HL7協会が開発した医療データ交換の標準規格FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)を活用して、医療と臨床研究のギャップを埋めることを目指している。

6.2 Niuらは論文「Application of estimand framework to the design and analysis of multi-regional clinical trials」(国際共同治験の設計とデータ分析におけるestimandフレームワークの適用)を発表し、国際共同治験(MRCT)におけるestimandの定義の概要を示しています。著者らはestimandを5つの構成要素に分け、各要素について詳しく解説しています。セクション2では、主要評価項目と主な副次評価項目に注目しており、estimandに関する考察は、治験実施国・地域間で想定される(相違点ではなく)共通点に焦点を当てています。セクション3では実施国・地域に焦点を当て、感度分析における推定量や、実施国・地域での推定の一貫性などについて述べています。セクション4では、ケーススタディとしてRAISE試験とLEADER試験を取り上げており、これにより実例を理論に結び付けることができます。

7. 人工知能・機械学習

Mathiasらは、2部構成の記事の第1部「Digital health technologies need regulation and reimbursement that enable flexible interactions and groupings」(デジタルヘルス技術には柔軟な相互作用とグループ化を可能にする規制と償還が必要)を発表しました。著者らは「デジタルヘルス技術(DHT)には、ウェアラブルデバイスやモバイルヘルス(mHealth)デバイス、医療情報通信技術(IT)、遠隔医療(telehealthとtelemedicine)、個別化医療などが含まれる」と述べ、「これらのデバイスと、デバイスとリンクする新たなケアパス(care pathway)に関して、規制や医療技術評価、償還の枠組みの限界と実装上の課題」を説明しています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

※メールマガジン「クリノス通信」(無料)
国内外の業界情報や、英文ライティングのワンポイントレッスンなど
医薬翻訳・メディカルライティングに役立つ情報をお届けしています。
→ 購読申込はこちら

ページの先頭へ戻る

CORE Reference News 2024年6月17日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 改正透明性規則とCTISパブリックポータルが2024年6月18日に開始されます。これに伴い、CTISウェブサイトは2024年6月17日18時(中央ヨーロッパ夏時間)より利用できなくなります。なお、6月17日はパブリックポータルの準備作業のため、システムの反応が遅くなる可能性があります。

1.2 EMAはCTIS治験依頼者エンドユーザー研修プログラムを、2024年9月、10月、11月の計3回開催することを発表しました。各月の開催予定日は以下の通りです。

1.3 EMAはオンラインイベント「EMA CTIS Information Day」を2024年10月17日13:30~17:30(中央ヨーロッパ時間)に開催します。この日は、臨床試験移行期間終了の翌日に当たります。このイベントでは、試験移行とその後の手順の両方を網羅した包括的なガイダンスと、実用的な洞察が提供されます。2024年6月18日には改正透明性規則の技術的実装が完了するため、透明性規則の変更点と、変更が業務に与える影響を明確に理解する必要があります。Q&Aセッションでは、参加者からの質問にEMA、EU加盟国規制当局(NCA)、業界代表者がライブで回答する予定です。参加申込はこちらから可能です。事前質問はemaevents@diaglobal.orgで受け付けています。

2. EUの医薬品規制

2.1 ドイツ連邦政府・州政府の医薬品情報ポータル「PharmaNet.Bund」の改訂版が、ウェブサイトのデザイン変更に伴い、2024年5月28日にリリースされました(訳注:英語ページあり)。PharmaNet.Bundは、連邦政府の上位当局の医薬品データを一元的かつ透明性のある方法で一般に公開しています。規制当局や製薬企業は、医薬品データの送信、承認、登録のアプリケーションをPharmaNet.Bundで探すことができます。改訂版は、従来よりもモダンなデザインになったことに加え、PharmNet.Bundアプリケーションに関する説明、マニュアル、FAQ、「アクセスとユーザー管理」に関する情報がすべて一元的にまとめられたサービスエリアが設けられています。

2.2 欧州理事会は、ヒト由来物質の利用に関して新たな規則「Standards of quality and safety for substances of human origin (SoHO) intended for human application」(ヒトへの適用を目的としたヒト由来物質 [SoHO] の品質と安全性の基準)を採択しました。SoHOにはヒトの血液、組織、細胞、母乳、腸内細菌叢などが含まれます。新たな規則は、SoHOに対する強固な枠組みを確立し、既存の法的構造を強化するとともに、技術革新を促進するものです。

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 臨床試験登録サイトClinicalTrials.govの最新情報:2つの臨床試験記録を比較する際に、記録の表示方法として「merge format」(融合式)か「side-by-side format」(横並び式)を選べるようになりました。詳細は2024年6月5日付のリリースノートをご覧下さい。

3.2 「Top Questions and Answers about the Transition to the Modernized ClinicalTrials.gov and Modernized PRS」(ClinicalTrials.govとPRS [Protocol Registration and Results System] の最新化に関するQ&A)がアップデートされました。最新版には、2024年6月25日に予定されているClinicalTrials.govサイト旧版(classic version)廃止に関する新たな情報と、PRSの最新化に関する追加の質問が含まれています。

3.3 米国国立医学図書館(NLM)のブログ「Musings from the Mezzanine」(中2階からの瞑想)は、最新記事「Making a Milestone: The Modernized ClinicalTrials.gov becoming the Singular Website Experience」(マイルストーン達成:最新化されたClinicalTrials.govは単一サイトに)を掲載しました。

3.4 ClinicalTrials.govの「Trends and Charts on Registered Studies」(登録されている臨床試験に関する傾向と図表)は、ClinicalTrials.govの試験登録数と結果掲載数が増加していることを示しています(2024年6月11日現在)。

3.5 米国国立医学図書館(NLM)は2024年6月6日に公開ウェビナー「Modernized ClinicalTrials.gov Update」(最新化されたClinicalTrials.govの最新情報)を開催し、リニューアルされたClinicalTrials.govサイトとPRS(Protocol Registration and Results System:治験プロトコル登録・結果報告システム)サイトを詳しく紹介しました。本ウェビナーでは、ClinicalTrials.govのスタッフが最新化の全体的な進捗状況に関して最新情報を説明し、最新化された両サイトの特徴を強調しました。特に注目が集まったトピックは、ClinicalTrials.govサイト旧版(classic version)の廃止でした。ウェビナーのスライドがこちらからダウンロード可能です。

4. リアルワールドデータ

4.1 EMA/HMA共同ビッグデータ運営グループは、「Big Data Workplan 2023-2025」(ビッグデータ作業計画2023~2025)のバージョン1.3発表しました。合意された作業計画と「EMA Network Strategy to 2025」(2025年までのEMAネットワーク戦略)に沿って進捗を図ることにより、EUでの医薬品の開発、認可、監督でビッグデータの利用を可能にし、ビッグデータの価値を確立することを目指しています。

4.2 オーストラリア保健省の薬品・医薬品行政局(TGA)は、ガイダンス「Real World Evidence: Regulatory Considerations for Medical Devices」(リアルワールドエビデンス:医療機器の規制上の留意事項)を発表しました。

4.3 欧州のIDERHAプロジェクトは、「Report on Global Regulatory Best Practices Analysis: A Scoping Review of HTA and Regulatory RWD/RWE Policy Documents」(グローバル規制ベストプラクティス分析に関するレポート:医療技術評価 [HTA] および規制上のRWD/RWEポリシー文書のスコーピングレビュー)を発表しました。

訳注)IDERHA:Integration of Heterogeneous Data and Evidence towards Regulatory and HTA Acceptance(規制上と医療技術評価 [HTA]の承認に向けた異種データとエビデンスの統合)。2023年4月に官民共同で発足した欧州革新的医療構想(IHI:Innovative Health Initiative)プロジェクト。異種医療データの安全・確実で合理的な共有を可能にすることを目的としている。

5. 開発戦略ニュース

5.1 FDAはガイダンス案「Platform Technology Designation Program for Drug Development」(医薬品開発のためのプラットフォーム技術指定プログラム)を2024年5月28日に発表しました。この新規プログラムは、指定を受けたプラットフォーム技術を利用する医薬品や生物学的製剤の開発、製造、承認審査プロセスを効率化することを目的としており、いわゆる「PREVENT pandemics Act」(パンデミック防止法)により連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C法)に追加されました。本ガイダンス案に対するパブリックコメントは、こちらで2024年7月29日まで募集しています。

5.2 ACT EUが欧州での臨床試験申請(CTA)の品質向上のため、2つの助言パイロットプログラムの運用を開始したことが、EMAのニュース記事「Two new advice pilots to improve clinical trials in Europe」で発表されました。

  • パイロットプログラム1:臨床試験および製造販売承認申請(MAA)の要件に関する科学的助言を医薬品開発者に提供します。EMAが調整する科学的助言作業部会(SAWP)と、HMAが管理する臨床試験調整部会(CTCG)の両部会が、科学的な性質を持つ要請を評価します。SAWPはMAAに関する助言を担当し、CTCGに代表されるEU加盟国各国は臨床試験申請の監督を担当します。パイロットプログラム1では、SAWPとCTCG各々の見解を統合して、両者間の回避可能な見解の相違を最小限に抑えます。パイロットプログラム1の手引書はこちらをご覧下さい。
  • パイロットプログラム2:CTCGが調整を担当し、臨床試験申請書類に関して、CTIS提出前に技術面と規制面のサポートを申請者に提供します。従来、申請者は、申請を評価する加盟国1ヵ国から国内レベルでしか技術面・規制面のサポートを受けられませんでしたが、パイロットプログラム2により、臨床試験申請前のトピックに関して、複数の加盟国から統合された見解を得られます。パイロットプログラム2の範囲には、低介入試験の規制に関する助言や、分散型臨床試験や複雑なデザインの試験の申請に関する助言などが含まれます。パイロットプログラム2の手引書はこちらをご覧下さい。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

6. 人工知能・機械学習

6.1 FDAとClinical Trials Transformation Initiative(CTTI)は、2024年8月6日10:00~17:30(米国東部夏時間)に、無料のハイブリッド式公開ワークショップ「Artificial intelligence in drug and biological product development」(医薬品・生物学的製剤の開発におけるAI)を共同開催します。本ワークショップでは、安全かつ有効な医薬品の開発におけるAIの責任ある利用を促進するためにイノベーターと規制当局が適用している基本原則を探ります。

訳注)CTTI:2007年に米国デューク大学とFDAが共同で設立した、臨床試験の品質・効率の向上を目指す産学官連携組織。

6.2 臨床試験の設計と研究でのAIの役割に関するFDAのQ&Aセッションで、一般の人々から多く寄せられた質問に対するFDAの回答の録音が、こちらでお聞きになれます。

6.3 米国FDA、カナダ保健省、英国MHRAは共同で「Transparency for Machine Learning-Enabled Medical Devices: Guiding Principles」(機械学習対応医療機器 [MLMD] の透明性:基本原則)を発表しました。MLMDの場合、効果的な透明性により、リスクや患者の転帰に影響を与え得る情報を、医療機器と相互に作用する可能性のある医療従事者など関係者全員に伝え、その情報に基づいた意思決定を支援することができます。今回新たに発表された透明性の基本原則は、FDA、カナダ保健省、MHRAが過去に共同発表した「Good Machine Learning Practice (GMLP) for Medical Device Development: Guiding Principles」(医療機器開発における機械学習の実施基準 [GMLP]:基本原則)と、「Predetermined Change Control Plans for Machine Learning-Enabled Medical Devices: Guiding Principles」(MLMDの事前変更管理計画 [PCCP]:基本原則)に基づいています。MHRAのガイダンス「Software and artificial intelligence (AI) as a medical device」(医療機器としてのソフトウェアとAI)が更新されています。

6.4 欧州データ保護監督機関(EDPS)は、「Guidelines on Generative AI: Embracing Opportunities, Protecting People」(生成AIに関するガイドライン:機会の活用、人々の保護)を発出しました。このガイドラインは、EU機関が生成AIツールを使用または開発する際に、規則(EU)2018/1725に定められたデータ保護義務を遵守できるよう支援することを目的としています。

6.5 Greg CuppanのLinkedIn記事「The Impact of Generative AI on Writing and Reviewing Documents for Health Authorities like the FDA」(FDAなどの規制当局向け文書の作成とレビューに生成AIが与える影響)では、生成AIが効率、正確性、コンプライアンスを強化することにより、FDAやEMAなどの規制当局向け文書のライティングとレビューを変革させる可能性について説明しています。

7. ヘルシンキ宣言

世界医師会(WMA)の「ヘルシンキ宣言」改訂プロセスの第2段階が開始されました。すべてのステークホルダーと一般からの意見を改訂に最大限に反映させるため、パブリックコメント募集期間が2期に分けて設けられています。第1期パブリックコメント募集は今年初めに行われましたが、現在、第2期の募集が2024年6月24日まで行われています。パブリックコメント用紙のダウンロードや提出方法などについては、こちらをご覧下さい。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

※メールマガジン「クリノス通信」(無料)
国内外の業界情報や、英文ライティングのワンポイントレッスンなど
医薬翻訳・メディカルライティングに役立つ情報をお届けしています。
→ 購読申込はこちら

ページの先頭へ戻る

CORE Reference News 2024年5月15日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからのお知らせ

欧州メディカルライター協会(EMWA)の第57回総会が2024年5月7~11日にスペインで開催され、CORE Reference Teamは同会でオープンセッションを開催しましたが、当日参加できなかった方々のために、英国時間の6月7日11:30~13:00(日本時間6月8日土曜12:30~14:00)にEMWAウェビナーを開催し、オープンセッションと同じ内容をお伝えします。

本ウェビナーでは、EMA Policy 0070(臨床試験データ公開)の試験結果提出タイムラインの実例や、Policy 0070の新たなAnonymisation Report(匿名化報告書)テンプレートの詳細なレビューなど、有用なリソースや、規制当局への試験報告と情報公開に関する重要な最新情報をご紹介します。また、EUのCOMBINEプロジェクトや医療機器と医薬品との融合、2024年6月18日に予定されているCTISのリニューアルと改正透明性規則についても取り上げます。2023年12月に実施したCORE Reference 2023利用調査の最新情報もご紹介します。

現在EMWA会員でなくても、どなたでも本ウェビナーにご参加頂けますので、membership@emwa.orgまでお申し込みの上、ぜひご参加下さい。

2. ICH

2024年2月にFDAとカナダ保健省が共催したICH公開会議のビデオ録画が公開されました。この会議では、多種多様なICHガイドラインのうち、重要なマイルストーンに到達するガイドラインを複数取り上げ、FDA、カナダ保健省、製薬業界、バイオ業界の専門家らが各々プレゼンテーションを行っています。

3. EU CTRCTIS

3.1 EMAのニュースレター「Clinical Trials Highlights」第19号(2024年4月)が発行されました。本号ではCTISの透明性、ACT-EU、CTISの進化、セミナー、イベントなどが取り上げられています。「Clinical Trials Highlights」のバックナンバーはアーカイブでご覧頂けます。

3.2 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年5月3日号が発行されました。本号では、個別被験者データ(IPD)の共有計画のために追加されたCTISの新機能が詳説されています。CTISの新たな入力項目は、治験依頼者がIPDを他の研究者に提供するか否か、どのように提供するかについて情報を収集します。この入力項目により、治験依頼者はIPDをどのように共有する予定であるかについて、構造化された方法で記録できるようになりました。治験依頼者のCTISユーザーは、ICMJE(国際医学雑誌編集者委員会)の要件「Data Sharing Statements for Clinical Trials: A Requirement of the ICMJE」(臨床試験のデータ共有に関する声明:ICMJEの要件)を満たすために、IPD共有予定の有無についてドロップダウンリストから「Yes」か「No」を選ぶことが推奨されています。他のCTIS情報については5月3日号全文をご覧下さい。

3.3 EMAは「Quick guide: Transition of trials from EudraCT to CTIS (sponsor users)」(クイックガイド:EudraCTからCTISへの臨床試験の移行 [治験依頼者ユーザー用])の改訂版(バージョン1.4、2024年5月)を発表しました。今回の改訂は軽微な変更のみで、序文と移行試験の概要が若干更新された他、CTISの利用開始方法と臨床試験の移行方法の参照リンクが追加されました。

3.4 HMAのCTCG(Clinical Trials Coordination Group:臨床試験調整グループ)は「CTCG Best Practice Guide to sponsors: first substantial modification application Part I and/or Part II after CTR transition」(治験依頼者用のCTCGベストプラクティス・ガイド:CTR移行後の最初のsubstantial modification [SM] 申請Part I文書とPart II文書)のバージョン2.0を発表しました。

本ガイドでは、以下の3つの段階別に申請要件が表にまとめられています。(1)1つまたは複数のEU加盟国を試験実施国に追加する予定がある場合、(2)少なくとも1つのEU加盟国で被験者の募集または試験の治療を実施中である場合、(3)被験者募集や治療が完了しており、残りの試験手順が特定のフォローアップ介入に限定される場合。SM申請のPart I文書の内容変更が必要な場合は、本ガイドの表中の申請要件に従って改訂する必要があります。

3.5 2024年4月30日、EMAは治験依頼者支援用の資料「CTIS Structured data form instructions: initial application, additional MSC, substantial and non-substantial modifications」(CTIS構造化データフォームの記入方法:初回申請、実施加盟国追加申請、substantial modification [SM] 申請、non-SM申請)を発表しました。この資料は、初回申請、実施加盟国追加申請、SM申請、non-SM申請をCTISに提出する際に、治験依頼者が記入を求められるデータフィールドについて、詳細なガイダンスを提供しています。本資料はこちらからExcelファイルでダウンロード可能です。

3.6 RAPS(Regulatory Affairs Professionals Society:薬事専門家協会)の規制ニュースサイト「Regulatory Focus」にChris BamfordとCarolina Ariasが2023年11月に発表した記事「The EU Clinical Trials Regulation: Experiences from the first 18 months」(EU CTR:発効から1年半の経験)がオープンアクセスになり、ダウンロード可能です。

訳注)RAPS:医薬品や生物製剤、医療機器、デジタルヘルスなどの規制に携わる専門家の世界最大の組織。1976年に米国で設立され、国内外の規制当局やアカデミア、製薬・医療機器業界などの専門家により、レギュラトリーサイエンスの情報交換や教育を実施。

4. EUの規制

4.1 ACT EUは、臨床試験に関して、以下の2つの「Consolidated advice pilots」(総合的な助言提供のパイロット運用)を2024年第2四半期に開始します。(1)EUにおける販売承認申請および臨床試験申請(CTA)の提出をサポートするための調和のとれた科学的助言の提供、(2)CTIS提出前のCTA書類に関して、統合された技術・規制上の助言の提供。パイロット運用の詳細は、ACT EU公式サイトの「Scientific advice」ページで後日発表される予定です。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

4.2 EMA、欧州疾病予防管理センター(ECDC)、欧州化学物質庁(ECHA)、欧州環境庁(EEA)、欧州食品安全局(EFSA)の5機関は、EUでのOne Healthアプローチの実践を支援するための連携強化に向けた共同の枠組みを発表しました。詳細はEMAのニュース記事「One Health: a joint framework for action published by five EU agencies」をご覧下さい。

訳注)One Healthアプローチ:ヒト、動物、環境(生態系)の3つの健康を一体(one health)とみなして包括的に考え、様々な分野の関係者が連携して、健康に対する脅威の防止・対処などを目指す取り組み。世界保健機関(WHO)などの国際組織が主導。

4.3 HMAのCTCG(Clinical Trials Coordination Group:臨床試験調整グループ)は、「Recommendations related to contraception and pregnancy testing in clinical trials」(臨床試験における避妊と妊娠検査に関する推奨事項)のバージョン1.2(2024年3月7日付)を発表しました。これは胚胎児のリスク軽減に関する既存のガイドラインを補足するもので、臨床試験における避妊薬の使用と妊娠検査に関して実践的なガイダンスを提示しています。CTCGは、国の機関で臨床試験の分類、評価、監視を行う専門家から成る作業部会です。

5. 英国とMHRAのニュース

5.1 MHRAは、人工知能(AI)活用の好機とリスクについて考察した政策文書「Impact of AI on the regulation of medical products」(医療製品の規制に対するAIの影響)を発表しました。これは、英国科学・イノベーション・技術省(DSIT)大臣と保健社会福祉省(DHSC)大臣からMHRAに宛てた書簡に対するMHRAの回答にもなっています。

5.2 英国は、MHRAに直接申請すべきヒト用医薬品の申請に関するガイダンス「Register to make submissions to the MHRA」(MHRAへの申請のための登録)を改正しました。

6. 米国FDAのガイダンスとニュース

6.1 FDAのCDERは、ニュースレター「What’s New In Regulatory Science」2024年第1号を発行しました。本号には、CDERの研究を始め、医療製品開発の進歩を支援するレギュラトリーサイエンスの取り組みについて、最新情報が掲載されています。購読を希望される方は登録用リンクをクリックして下さい(トピック分野は「regulatory science」を選択して下さい)。コメントや質問はOTSCommunications@fda.hhs.govで受け付けています。

6.2 米国国立医学図書館(NLM)は、2024年6月6日にウェビナー「Modernized ClinicalTrials.gov Update」(ClinicalTrials.gov近代化の最新情報)を開催します。本ウェビナーでは、臨床試験登録サイトClinicalTrials.govの改善の取り組みについて最新情報を提供します。また、ClinicalTrials.govの旧ウェブサイト(クラシック版)終了に備えて、参加者からの質問にサイトのスタッフが答える予定です。本ウェビナーへの参加を希望する方は、こちらで事前にお申し込み下さい。なお、当日参加できない方のためにビデオ録画が後日公開される予定です。

6.3 ClinicalTrials.govの旧ウェブサイト(クラシック版)は2024年6月25日に閉鎖されますので、ご利用者はご注意下さい。現在、旧サイトには、新サイトの利用を促すバナーが掲載されています。

6.4 2024年5月13日、FDAのCDER、米国国立衛生研究所(NIH)のNCATS(National Center for Advancing Translational Sciences:国立トランスレーショナル科学推進センター)、FDAを支援するReagan-Udall財団は共同で、公開ワークショップ「Natural History Studies and Registries in the Development of Rare Disease Treatments」(希少疾患の治療薬開発における自然歴研究およびレジストリ)を開催しました。本ワークショップでは、希少疾患の治療薬開発プログラムにおける自然歴研究とレジストリのデータ活用について議論されました。サマリーが発表された場合はお知らせします。

6.5 米国国立衛生研究所(NIH)とFDAは、「NIH-FDA Terminology for Clinical Research: Glossary of Terms and Definitions」(NIH-FDA臨床研究用語集:用語と定義)の草案を発表しました。この用語集案は、臨床研究に関する表現の統一に必要な共通の専門用語の確立を支援することにより、臨床研究コミュニティ内の意思疎通を促進することを目的として作成されました。リアルワールドエビデンス生成のためにリアルワールドデータを活用する臨床研究や、革新的な臨床試験デザインなどに関連する用語が収載されています。NIHとFDAは、用語集案に関するパブリックコメントをこちらで2024年6月24日まで募集しています。詳細は「Request for Information: FDA-NIH Resource on Terminology for Clinical Research」(情報提供のお願い:臨床研究用語に関するFDA-NIHリソース)をご覧下さい。質問はSciencePolicy@od.nih.govで受け付けています。

7. 欧州EMAのガイダンスとニュース

EMAは「Guide on access to unpublished documents」(非公開文書へのアクセスに関するガイド)の改訂版を発表しました。開示請求者1人当たりの提出可能な開示請求書の件数について、これまでEMAはコロナ禍に対応した事業継続計画(BCP)に基いて最大5件に制限していましたが、この制限を今回のガイド改正で撤廃しました。

8. リアルワールドデータ

8.1 EMAはリフレクションペーパー「Reflection Paper on use of real-world data non-interventional studies to generate real-world evidence」(リアルワールドエビデンス [RWE] を生成するための非介入研究でのリアルワールドデータ [RWD] の利用)を発表し、方法論の側面について論じています。パブリックコメントはこちらで2024年8月31日まで受け付けています。

8.2 TransCelerate社が2023年12月に発表したホワイトペーパー「Assuring Audit and Inspection Readiness: Considerations for the Use of RWD and RWE in Regulatory Decision-Making」(監査と査察の確実な準備:規制上の意思決定におけるRWDとRWEの活用に関する検討事項)がダウンロード可能になりました。このペーパーは、規制当局の意思決定を支援するために収集・分析したRWD/RWEのデータソースやプロセスに関して、規制当局が提供を要請する可能性のある情報や文書の種類を明確にすることを目的として作成されています。

訳注)TransCelerate BioPharma Inc.:世界のバイオ医薬品企業約20社が協力して、新薬の効率的・効果的かつ高品質な提供を促進する方法を探求している非営利団体。日本の製薬企業も数社参画。治験総括報告書(CSR)のテンプレートなどを作成・提供。

8.3 FDAを支援するReagan-Udall財団は、FDAと共同で無料の公開ウェビナー「Real-World Evidence Webinar Series: Considerations Regarding Non-Interventional Studies for Drug and Biological Products」(RWEウェビナー・シリーズ:医薬品・生物学的製剤の非介入研究に関する留意事項)を2024年5月30日14時(米国東部時間)に開催します。本ウェビナーでは、FDAのガイダンス案「Real-World Evidence: Considerations Regarding Non-Interventional Studies for Drug and Biological Products」について解説します。

9. 透明性・情報開示のリソースとニュース

研究者や研究チームは、患者や被験者とわかりやすく効果的なコミュニケーションを図るためのツールやリソースを必要としています。米国ハーバード大学/ブリガム&ウィメンズ病院のMRCTセンターが作成した「Clinical Research Glossary」(臨床研究用語集)には、165語を超える平易な臨床研究用語(plain language)とその定義、イラスト、関連コンテンツが収載されており、わかりやすいコミュニケーションのためのCDISC標準となっています。用語集はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下、自由にダウンロード可能です。

訳注1)MRCTセンター:Multi-Regional Clinical Trials Center of Brigham and Women’s Hospital and Harvard(ハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院の多地域臨床試験センター)。ブリガム&ウィメンズ病院は、米国ハーバード大学医学部の附属病院としての役割を担う医療・研究・教育機関の1つ。MRCTはハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院に属しており、国際共同試験の改善を目的とする研究・政策センター。

訳注2)CDISC:Clinical Data Interchange Standards Consortium。臨床試験データなどの電子的収集・交換・申請に関して業界標準を策定している国際的な非営利組織。1997年に米国で設立され、国内外のアカデミアや製薬企業、CRO、IT企業などが参加。CDISCが規定する標準規格は「CDISC standard」(CDISC標準)と呼ばれている。

10. 開発戦略ニュース

EUでは先端医療医薬品(ATMP)、米国では細胞・遺伝子治療(CGT)と呼ばれている治療法の進歩について、「Emerging technologies and regulatory agency guidance for CGTs」(CGTの新技術と規制当局のガイダンス)と題された記事が、RAPS(Regulatory Affairs Professionals Society:薬事専門家協会)のウェブサイトに掲載されました。著者Catarina Carrãoはこの記事で、ATMPとCGTに関する現在のガイダンスをEMAとFDA各々の観点から概説しています。

11. 人工知能・機械学習

11.1 米国商務省の国立標準技術研究所(NIST)は、ガイダンスNIST AI 600-1「Artificial Intelligence Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profile」(AIリスク管理フレームワーク:生成AIプロファイル)の初案を発表しました。パブリックコメントを2024年6月2日まで受け付けています。

11.2 WHOは「Ethics and Governance of Artificial Intelligence for Health: Guidance on large multi-modal models」(医療用AIの倫理とガバナンス:大規模マルチモーダルモデルに関するガイダンス)を発表しました。WHOは本ガイダンスの目的について、「大規模マルチモーダルモデル(LMM)を保健医療分野で活用することのメリットと課題をWHO加盟国が正確に把握し、LMMの適切な開発、提供、活用のための政策や実行策を策定するのを支援するため」と説明しています。

11.3 医療機器認証機関(notified body)のTÜV SÜDは2024年6月11日11時~12時(中央ヨーロッパ時間)に、ウェビナー「Understanding AI Act Interactions with MDR and IVDR」(EUのAI規制法と欧州医療機器規則 [MDR] /体外診断用医療機器規則 [IVDR] との相関関係の理解)を開催します。

11.4 英国MHRAは、ガイダンス「Software and artificial intelligence (AI) as a medical device」(医療機器としてのソフトウェアとAI)を改正しました。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

※メールマガジン「クリノス通信」(無料)
国内外の業界情報や、英文ライティングのワンポイントレッスンなど
医薬翻訳・メディカルライティングに役立つ情報をお届けしています。
→ 購読申込はこちら

ページの先頭へ戻る

CORE Reference News 2024年4月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 2024年4月24日にEMAはCTISショート説明会「Alternate Investigational Medicinal Product Dossier – Quality (IMPD-Q) and new guidance on Auxiliary Medicinal Products (AxMP)」(代替治験薬書類:品質(IMPD-Q)および補助医薬品(AxMP)に関する新ガイダンス)を開催しました。本説明会の録画ビデオが説明会開催後60日以内に公開される予定です。

1.2 2024年4月11日、欧州委員会の公式サイトの「Newsroom」ページは「改正CTIS透明性規則は2024年6月18日に発効し、それに伴ってCTISウェブサイトの新バージョンが開設されます」と報じました。(訳注:本情報が掲載されたウェブページが削除されていると前号でお伝えしましたが、詳細な情報とともに再掲載されました) 改正CTIS透明性規則と重要な関連情報の概要については、EMA ACT EU公式サイトの「Implementation of the Clinical Trials Regulation」(CTRの実施)で確認できます。

CTIS透明性規則の主な改正点は、臨床試験のデータ・文書の公開延期制度の廃止や、公衆にとって真に有益なデータ・文書公開にするための合理化などです。現時点、すなわち2024年6月18日までの暫定期間中、治験依頼者は「ACT EU Q&A on the protection of Commercially Confidential Information and Personal Data while using CTIS」(CTIS利用時の商業機密情報 [CCI] と個人情報の保護に関するQ&A)(バージョン1.4)のセクション4「Revised CTIS transparency rules」(改正CTIS透明性規則)の原則に従う必要があります。

改正の概要については、ユーザー向けクイックガイド「Revised CTIS transparency rules, historical trials and interim period: Quick Guide for Users (version 1.3)」(改正CTIS透明性規則、過去の臨床試験、暫定期間:ユーザー向けクイックガイド、バージョン1.3)をご覧下さい。クイックガイドには、運用開始日や申請、CTIS新公式サイト公開前に提出する臨床試験などについて詳説されています。

また、EMAは、治験依頼者がビジネスプロセスを新たなCTISに対応できるよう支援するため、2024年6月20日にCTISショート説明会の開催を計画していますが、現時点で詳細は不明です。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始したイニチアチブ。

1.3 EMAは2024年5月15日16:00~17:00(アムステルダム時間)に「CTIS:Walk-in clinic」(CTIS:予約不要の説明会)をオンライン開催します。治験依頼者はCTIS専門家にリアルタイムで質問することにより、CTISの実用的な情報を得ることができます。

2. EUの規制

2024年1月25~26日にACT EUイニシアチブの下で開催された「ACT EU Clinical Trials Analytics Workshop」(ACT EU臨床試験分析ワークショップ)のレポートが公開されました。本ワークショップは臨床試験に関するデータの変革の可能性に焦点を当てており、多様なステークホルダーが参加しました。本ワークショップの目標は、エビデンスに基づく意思決定をサポートし、イノベーションを促進するために、臨床試験に関するデータの価値を最大化する共通の研究優先事項を見極めることでした。

3. 欧州医療データスペース

2024年4月24日、欧州議会は欧州医療データスペース(EHDS)の創設を承認しました。現時点ではまだ暫定的な合意であり、今後、EU理事会で正式に承認される必要がありますが、EU官報に掲載されると、その20日後に発効します。適用は2年後ですが、例外が一部あり(データカテゴリーの一次・二次利用など)、カテゴリーによっては4~6年後の適用となります。

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

FDAのCDERは、同センター内にCDER Center for Clinical Trial Innovation (C3TI)(CDER臨床試験イノベーションセンター)を開設しました。C3TIは、医薬品開発の効率向上のために臨床試験への革新的アプローチを支援する中枢であり、CDER内外の関係者とのコミュニケーションと協働の強化を通じて、CDERの既存のプログラムの推進と、今後の臨床試験イノベーション活動の加速化を目指しています。C3TIにより内外の関係者が今後可能になることとして、(1)臨床試験イノベーションの取り組みに関する情報への容易なアクセス、(2)協働への参加、(3)革新的手法の利用を促進可能なリソースの特定、(4)臨床試験イノベーションへの共同アプローチが効果をもたらす開発プログラムの探索の4点が示されています。

5. 欧州EMAのガイダンスとニュース

5.1 2024年4月10日、EMAは一般ガイダンス「Anonymisation of personal data and assessment of commercially confidential information during the preparation and redaction of risk management plans (body and Annexes 4 and 6)」(医薬品リスク管理計画書 [本文および添付資料4と添付資料6] の作成と改訂における個人データの匿名化と商業機密情報の評価)を発出しました。EMAは、中央で承認された全製品の初回承認申請と承認後の更新について、すべてのリスク管理計画書(RMP)を公開しています。本ガイダンスは、RMP改訂の試験的段階で申請者や製造販売業者(MAH)との相談が必要となった問題のうち、頻度の高い事例も提示しています。

5.2 EMAと欧州委員会の保健・食品安全総局(DG SANTE)は、医療製品・医薬品の機密情報の交換に関する協定を韓国の食品医薬品安全省(MFDS)と締結しました。詳細は、後述のセクション9「アジア規制当局のニュース」をご覧下さい。

6. リアルワールドデータ

6.1 米国のRegulatory Affairs Professionals Society(RAPS:薬事専門家協会)のウェブ記事「Regulators explain process for requesting real-world evidence studies by EMA」(EMAによるリアルワールドエビデンス研究を要請するプロセスに関する規制当局の説明)は、リアルワールドデータ(RWD)の分析から得られるリアルワールドエビデンス(RWE)が、規制当局の意思決定上どのように役立つかについて、わかりやすく説明しています。

訳注)RAPS:医薬品や生物製剤、医療機器、デジタルヘルスなどの規制に携わる専門家の世界最大の組織。1976年に米国で設立され、国内外の規制当局やアカデミア、製薬・医療機器業界などの専門家により、レギュラトリーサイエンスの情報交換や教育を実施。

6.2 TransCelerate社は、2024年6月6日午前10時~11時(米国東部時間)に公開ウェビナー「Is Your RWD Regulatory Ready? Considerations When Preparing RWD for a Regulatory Submission」(規制当局へのRWD提出の準備は万端ですか?規制当局提出用にRWDを準備する際の留意事項)を開催します。主な内容は、(1)同社の「RWD Audit Readiness Initiative」の概要(RWD Audit Readiness Initiativeは、データの信頼性の文書化のプロセスに焦点を当ててRWEを組み込んだプログラムの監査・査察の準備を支援するために同社が作成した留意事項リスト)、(2)同社作成の留意事項のポイントと、現状を調査したデータサービス・プロバイダーを対象に調査した結果の概要です。参加申込と事前質問の提出はこちらから可能です。

7. 透明性・情報開示のリソースとニュース

7.1 Clinical Research Data Sharing Alliance(CRDSA:臨床研究データ共有アライアンス)は、下記の2つの文書案を公開して、いずれもパブリックコメントを2024年5月31日まで募集しています。

  • Standard for Sharing Clinical Study Data(臨床研究データ共有に関する基準)2024年3月5日付。本案は、患者のプライバシーと知的財産を責任を持って保護しつつ、研究の有用性を最大化できるよう作成されています。
  • Standard for Secondary Analysis of Clinical Study Data(臨床研究データの二次解析に関する基準)2024年4月11日付。本案は、研究者が堅牢な分析を実施し、その結果を客観的に解釈できるよう支援することを目的としています。

訳注)CRDSA:2021年に米国で設立され、臨床データ共有エコシステムを推進する国際的コンソーシアム。臨床開発のプロセスを通じて収集された患者データの研究価値を最大化することで、患者の命を救う治療法や生活を改善する治療法の発見と提供を加速させるという共通の目標の下、製薬企業やデータ共有プラットフォーム、アカデミア、患者団体など多様なステークホルダーが参加。

7.2 ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors:国際医学雑誌編集者委員会)は、医学論文の倫理に関する国際的ガイドライン「ICMJE Recommendations for the Conduct, Reporting, Editing, and Publication of Scholarly Work in Medical Journals」(医学雑誌における学術研究の実施、報告、編集、発表に関する推奨事項)の改定版を発表しました。今回の主な改定点は、論文の著者や編集者、査読者の人工知能(AI)利用に関するガイダンス、著者の公正な決め方、被験者の保護などです。最新版はこちらからダウンロード可能です。

8. 人工知能・機械学習

8.1 FDAとClinical Trials Transformation Initiative(CTTI)は、2024年8月6日午前10時~午後5時30分(米国東部夏時間)に無料のハイブリッド式公開ワークショップ「Artificial Intelligence in Drug and Biological Product Development」(医薬品・生物学的製剤の開発におけるAI)を共同開催することを発表しました。2024年5月7日から参加申込の受付が始まり、詳しい申込方法や演者、ゲストなどが発表される予定です。CTTIのウェビナー情報はこちらをご覧下さい。

訳注)CTTI:2007年に米国デューク大学とFDAが共同で設立した、臨床試験の品質・効率の向上を目指す産学官連携組織。

8.2 Malekiのプレプリント(査読前原稿)「Clinical Trials Protocol Authoring using LLMs」(LLMを活用した治験実施計画書の作成)では、治験プロトコルの作成に生成AIをどのように利用できるか検証しています。著者は2つの臨床試験データベース(Clinicaltrials.govとTrialTrove)から治験プロトコルのメタデータを収集して、「T5 LLM」モデルとGPT-4を利用し、治験プロトコル40件を参照セットとして、「緒言」のセクションと「試験デザイン」のセクションの各サンプルを作成しました。

8.3 2024年4月22日、欧州製薬団体連合会(EFPIA)は声明「EFPIA Statement on the use of AI in the medicinal product lifecycle in the context of the AI Act」(AI規制法の下での医薬品ライフサイクルにおけるAIの活用に関する声明)を発表しました。本声明でEFPIAは、医薬品開発ライフサイクル全体に渡ってAIの利用とガバナンスに不可欠と思われる5つの検討事項を概説しています。

9. アジア規制当局のニュース

2024年4月25日、韓国の食品医薬品安全省(MFDS)とEMAは、医療製品・医薬品の機密情報の交換に関する協定を締結しました。これにより両当局は、規制上のプロセスや科学的なプロセスの一環として、医薬品に関する機密情報の交換が可能になります。対象となる情報は、ヒト用医薬品(既承認薬または承認審査中)の品質・安全性・有効性に関する機密情報の他、立法・法律や規制ガイダンス、査察に関する情報なども含まれます。本協定は、韓国当局とEU当局が規制上の相互協力をさらに発展させるための枠組みを提供します。本協定に有効期限はなく、更新不要となっています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

※メールマガジン「クリノス通信」(無料)
国内外の業界情報や、英文ライティングのワンポイントレッスンなど
医薬翻訳・メディカルライティングに役立つ情報をお届けしています。
→ 購読申込はこちら

ページの先頭へ戻る

CORE Reference News 2024年3月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

1. CORE Reference Teamからのお知らせ

欧州メディカルライター協会(EMWA)の第57回総会が、2024年5月7~11日にスペインのバレンシアで開催されます。この総会でCORE Reference Teamは、5月9日(木)午前9:00~10:30に対面式の無料オープンセッションを開催します。

本セッションでは、CORE Reference Teamが提供しているContinuous Professional Development(CPD:生涯スキル開発)のリソースを紹介するとともに、『CORE Reference』が治験総括報告書(CSR)のコンテンツについて提示しているガイダンスが、適切で世界的に通用する根拠を説明します。また、医薬品の臨床データ公開に関するEMA Policy 0070の新たな「Anonymisation Report」(匿名化報告書)テンプレートのレビューなど、規制当局への臨床試験結果報告や試験情報開示の状況全般に関して重要な最新情報を紹介します。さらに、2023年12月に実施した「CORE Reference 2023 Utility Survey」(CORE Reference 2023年利用調査)の最新情報もお知らせする予定です。

EMWA総会に参加される方は、ぜひCORE Reference Teamのオープンセッションにもご参加下さい。なお、医薬品開発を取り巻く規制状況は急速に変化しているため、本セッションの内容は、試験報告の規制に関する重要な最新情報などを反映して変更される場合があります。

2. EU CTRCTIS

2.1 HMAのCTCG(Clinical Trials Coordination and Advisory Group:臨床試験調整諮問グループ)は、「CTCG Best Practice guide for sponsors of multinational clinical trials with different Part I document versions approved in different Member States under the Directive 2001/20/EC that will transition to the Regulation (EU) No. 536/2014」(EU臨床試験規則No.536/2014に移行するEU臨床試験指令2001/20/ECの下、異なるEU加盟国で承認されたPart I文書のバージョンが異なる国際共同試験の試験依頼者のためのCTCGベストプラクティス・ガイド)のバージョン4(2024年3月7日付)を発表しました。今回の主な改訂点は以下のとおりです。

  • 治験依頼者は、臨床試験指令(EU CTD)から臨床試験規則(EU CTR)への移行をCTISに申請する際に臨床試験のカテゴリーを提案する必要があるが、「low-intervention clinical trials」(低介入試験)には申請しないこと。
  • 特定の状況におけるCTIS申請の詳細:(1)治験依頼者が治験薬(IMP)の製品所有者ではない場合、(2)IMPと補助薬(AxMP)に対する推奨事項、(3)EU CTDの下、一部のEU加盟国では介入試験とみなされていたが、他のEU加盟国では非介入試験とみなされていた場合。
  • EU CTDに基づく臨床試験について、EU加盟国すべてではなく一部が移行に含まれる場合のEU CTRアーカイブ規則と試験終了届。

2.2 2024年2月29日に開催されたCTISショート説明会「How to submit transitional trial in CTIS」(CTISでの移行試験の申請方法)の録画ビデオが公開されました。

2.3 CTCGは勧告書「Recommendation paper on principles of Good Laboratory Practices (GLP) for clinical trial applications under the EU Clinical Trials Regulation」(CTRに基づく臨床試験申請のためのGLPの原則に関する勧告書)を発表しました。また、必要なGLP遵守情報を治験依頼者が記載する表のテンプレートも公開されました。

2.4 EMAは「Clinical Trials Information System Webinar: Last Year of Transition」(CTISウェビナー:移行最後の年)と題したinformation dayを2024年3月25日に開催しました。本イベントのビデオ録画がこちらで近日公開予定です。

2.5 EMAは「EMA Management Board: highlights of March 2024 meeting」(EMA経営委員会:2024年3月開催の会議のハイライト)を公開しました。EU CTRについては、以下のように述べています。「EMAは、EUにおける臨床試験の今後のマイルストーンに関する最新情報を経営委員会に提供しました。欧州委員会は、EU加盟国と治験依頼者がCTISを効率的に利用できるよう、CTISに関するEMAの重要な近代化・簡素化作業を承認しました。CTISの改正透明性規則は、CTISに技術的に実装された後に適用されます。CTRの適用開始時に始まった3年間の移行期間は、2025年1月30日に終了します。CTISに移行予定の臨床試験のうち20%が移行済みです。治験依頼者には、承認手続きに最大3ヶ月要することを考慮して可能な限り早く申請書を提出するよう強く勧めます。」

2.6 「CTCG Best Practice Guide for sponsors – first substantial modification Part I after CTR transition」(治験依頼者用のCTCGベストプラクティス・ガイド:CTR移行後の最初の大幅な変更Part I)(2024年3月19日付、バージョン1.0)が新たに発表されました。本ガイドは、CTR移行後の臨床試験の「substantial modification (SM)」(大幅な変更)に関して、どの文書を更新すべきか、従来よりも詳しいガイダンスを示しています。また、SM申請用カバーレターのテンプレートSM説明書用のテンプレートなど、SM申請に必要な情報をまとめるのに役立つテンプレートが提供されています。

3. EUの規制

3.1 EU薬事法の改正

3.1.1 2024年3月19日、欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会は、EU薬事法の改正に関する見解を採択しました。提案されている新たな規制は、以下のような主要な現行法を改正または廃止するものとなっています。

  • 規制(EC)No 1394/2007(先端医療医薬品 [ATMP])
  • 規制(EU)No 536/2014(EU CTR)
  • 規制(EC)No 726/2004(医薬品の承認)
  • 規制(EC)No 141/2000(オーファン医薬品)
  • 規制(EC)No 1901/2006(小児用医薬品)

国会議員は2024年4月10~11日の本会議でこの見解について討議し、採決を行う予定です。

欧州製薬団体連合会(EFPIA)はこの進展を歓迎し、声明「Research based pharmaceutical industry calls on European Commission to develop comprehensive health and life science strategy」(研究を基盤とする製薬業界は欧州委員会に対して、包括的な医療・ライフサイエンス戦略の策定を求める)を発表しました。「この目的は、欧州が医療の研究開発の中心地としての地位を取り戻し、革新的な治療法や医療技術を欧州の患者が真っ先に利用できるようにすることであるべき」と述べています。

3.1.2 EMAは「Guideline on quality, non-clinical and clinical requirements for investigational advanced therapy medicinal products in clinical trials」(臨床試験における治験用先端医療医薬品 [ATMP] の品質要件、非臨床要件、臨床要件に関するガイドライン)の改正案を発表しました。本案は遺伝子治療医薬品、体細胞治療医薬品、組織工学医薬品、combined ATMP(訳注:医療機器と組み合わせたATMP)を対象としています。パブリックコメントは2024年5月31日まで受け付けています。(訳注:後述のセクション4.2にも同ガイドライン改正案の情報があります。ご興味のある方は併せてご覧下さい)

3.2 欧州医療データスペース

2024年3月15日、欧州理事会と欧州議会は、欧州医療データスペース(EHDS)に関して政治合意に達しました。この新しい法律により、EU全域で医療データの交換とアクセスが可能になるとともに、匿名化された特定のデータを研究やイノベーションに利用できるようになります。特筆すべきは、EHDSが、研究やイノベーション、公衆衛生の目的で医療データを再利用するための強力な法的枠組みを構築する点です。EHDSに関する新しいファクトシートはこちらからダウンロード可能です。

3.3 ACT EU

EMAは「Accelerating stakeholder collaboration to enhance the clinical trials environment in the EU」(EUの臨床試験環境強化に向けたステークホルダーの協力促進)と題するニュースを発表しました。「Accelerating Clinical Trials in the EU (ACT EU)」(EUの臨床試験の加速化)イニシアチブは、EUの臨床試験環境の強化に向け、主要な関係者(欧州委員会とEMAとHMA)を集めたマルチステークホルダー・プラットフォーム(MSP)を確立しました。MSPが検討するテーマは臨床試験のデザインと実施、統計解析、規制の最適化の提案、データの透明性、患者の参加などです。

訳注)ACT EU:欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的としたイニチアチブ。2022年1月に欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で開始。詳細はこちらをご覧下さい。

4. 欧州EMAのガイダンスとニュース

4.1 Tavridouらは、ゲノム編集医薬品について、EUの医薬品規制上の留意点を掘り下げた論文「Genome-editing medicinal products: the EMA perspective」(ゲノム編集医薬品:EMAの視点)を発表しました。本論文はゲノム編集医薬品の種類と数、開発段階(前臨床、臨床前期、臨床後期)、申請者(大手製薬企業、中小企業 [SME])、規制当局とのコミュニケーションでよくある質問など、貴重な情報を提供しています。なお、本論文はオープンアクセスではありません。

4.2 EMAが2024年3月11日付で発表したガイドライン改正案「Guideline on quality, non-clinical and clinical requirements for investigational advanced therapy medicinal products in clinical trials」(臨床試験における治験用先端医療医薬品 [ATMP] の品質要件、非臨床要件、臨床要件に関するガイドライン)は、治験用ATMPを用いる探索的試験と検証的試験の臨床試験開始申請(CTA)の構成とデータ要件に関するガイダンスを提示しています。本案は治験用ATMPの開発から製造、品質管理、非臨床開発、臨床開発まで包括的に対応しています。(訳注:前述のセクション3.1.2にも同ガイドライン改正案の情報があります。ご興味のある方は併せてご覧下さい)

5. 英国とMHRAのニュース

HRA(Health Research Authority:医療研究機構)は、2022年に研究倫理委員会(REC)から好意的な意見(favourable opinion)を得た臨床試験をすべて掲載したリストと、これら試験の登録状況を「Clinical trial registration report 2022」(臨床試験登録報告書2022年版)で公開しています。治験依頼者は、RECから好意的な意見を得た後、WHOに準拠した臨床試験レジストリに試験を登録し、その詳細をHRAに報告することが望まれています。

6. 米国FDAのガイダンスとニュース

UAEM(Universities Allied for Essential Medicines、必須医薬品のための大学連合)の北米部会は2023年2月に、ClinicalTrials.govでの臨床試験結果開示の改善を求める市民嘆願をFDAに提出していました。この嘆願に対してFDAが回答書「Response letter from FDA OC to Morningside Heights Legal Services, Inc. (On behalf of Universities Allied for Essential Medicines North America)」を発表しました。UAEMの主な要請は、(1)試験結果の開示義務の強化、(2)強化措置の序列化に関するガイダンスの策定、(3)開示義務違反の事前通知書を公開するダッシュボードの導入の3点です。

(訳注:このうち、事前通知書の公開ダッシュボード導入の要請をFDAは受け入れ、2023年12月までに事前通知書の発行対象となった臨床試験責任者・組織131件の一覧表「Pre-Notice of Noncompliance」を公開しました。今後は四半期ごとに情報を追加するとしています)

訳注)UAEM:2001年に米国イェール大学の学生らが設立した非営利組織で、医薬品や医療技術への公平なアクセスなどを求めて活動する世界的な学生ネットワーク。20ヵ国100大学以上が参加し、北米部会以外に欧州部会とラテンアメリカ部会あり。

7. リアルワールドデータ

FDAはガイダンス案「Real-World Evidence: Considerations Regarding Non-Interventional Studies for Drug and Biological Products」(リアルワールドエビデンス:医薬品および生物学的製剤の非介入研究の留意事項)を公開しました。本案は、非介入研究(観察研究)を申請する治験依頼者に対し、薬剤の有効性の実質的なエビデンス(substantial evidence)や安全性のエビデンスの提示に役立つ推奨事項を提示することを目的としており、非介入研究で考慮すべきデザインと分析について解説しています。パブリックコメントは2024年6月20日まで受け付けています。

8. 透明性・情報開示のリソースとニュース

わかりやすい研究資料の作成に関心のある人や、臨床研究の被験者のために、一般向け医薬文書で使用する平易な言葉遣い(plain language)のグローバルスタンダードを、MRCTとCDISCが共同で作成しました。2024年4月2日12~13時(米国東部時間)に両者が共催するウェビナーでは、「MRCT Center Clinical Research Glossary: New Words New Opportunities」(MRCTセンター臨床研究用語集:新しい言葉、新しい機会)を取り上げ、患者向け資料用の用語160語、画像、リソースを紹介します。無料の参加申込の詳細はこちらをご覧下さい。

訳注)MRCT:Multi-Regional Clinical Trials Center of Brigham and Women’s Hospital and Harvard(ハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院の多地域臨床試験センター)。ブリガム&ウィメンズ病院は、米国ハーバード大学医学部の附属病院としての役割を担う医療・研究・教育機関の1つ。MRCTはハーバード大学とブリガム&ウィメンズ病院に属しており、国際共同試験の改善を目的とする研究・政策センター。

9. 人工知能・機械学習

9.1 InteliNotion社がLinkedInで公開しているホワイトペーパー「Accelerating regulatory Submissions — AI augmented structured content」(規制当局への申請の加速:AIによる構造化コンテンツ)は、人工知能(AI)テクノロジーを導入するバイオ製薬企業へのガイダンスの提供を目的とした視点を提示しています。

9.2 FDAは、AIに対する取り組みについて、「Harnessing the Potential of Artificial Intelligence」(人工知能の可能性の利用)と題する見解と、7頁の文書「Artificial Intelligence & Medical Products: How CBER, CDER, CDRH, and OCP are Working Together」(人工知能と医療製品:CBER、CDER、CDRH、OCP共同の取り組み)を発表しました。

(訳注:この文書は、AIを利用した医療製品とその開発・製造のイノベーション推進と、患者や医療従事者などの安全確保を両立させることに、FDAの4つの組織がどのように協調して取り組んでいるか説明しています)

訳注)CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(生物学的製剤評価研究センター)
CDER:Center for Drug Evaluation and Research(医薬品評価研究センター)
CDRH:Center for Devices and Radiological Health(医療機器・放射線保健センター)
OCP:Office of Combination Products(コンビネーション製品部)

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

ページの先頭へ戻る

CORE Reference News 2024年3月15日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからのお知らせ

欧州メディカルライター協会(EMWA)第57回総会が、2024年5月7~11日にスペインのバレンシアで開催されます。この総会でCORE Reference Teamは、5月9日(木)午前9:00~10:30に対面式の無料オープンセッションを開催します。

本セッションでは、CORE Reference Teamが提供しているContinuous Professional Development(CPD:生涯スキル開発)のリソースを紹介するとともに、『CORE Reference』が治験総括報告書(CSR)のコンテンツについて提示しているガイダンスが、適切で世界的に通用する根拠を説明します。また、医薬品の臨床データ公開に関するEMA Policy 0070の新たな「Anonymisation Report」(匿名化報告書)テンプレートのレビューなど、規制当局への臨床試験結果報告や試験情報開示の状況全般に関して重要な最新情報を紹介します。さらに、2023年12月に実施した「CORE Reference 2023 Utility Survey」(CORE Reference 2023年利用調査)の最新情報もお知らせする予定です。

EMWA総会に参加される方は、ぜひCORE Reference Teamのオープンセッションにもご参加下さい。なお、医薬品開発を取り巻く規制状況は急速に変化しているため、本セッションの内容は、試験報告の規制に関する重要な最新情報などを反映して変更される場合があります。

2. EU CTRCTIS

2.1 EU委員会は下記の3つのEU CTRガイダンス文書の改訂版を2024年3月1日に発表しました。

今回の改訂では、すでに製造販売承認を受けている補助薬(AxMP:auxiliary medicinal product)で承認に関連する変更がないものについては追加文書が不要であることと(製品特性概要 [SmPC] さえも不要)、補助薬はCTISの申請書に記載する必要がないことの2点が明示されました。この歓迎すべき明確化により、治験依頼者への要件がシンプルになります。

また、移行試験に関するガイダンスには、移行申請のPart II文書の国別要請一覧を含むAnnex(附属書)が追加されました。現在の一覧表では、必要な文書について記載されていない国が散見されますが、表中の国別情報が増えるにつれて、治験依頼者への要件が明確になることが期待されます。

2.2 「Quick Guide for Sponsors – Clinical Trials Regulation (EU) No 536/2014 in practice」(治験依頼者向けクイックガイド:臨床試験規則(EU)No. 536/2014の実務)の改訂版が2024年3月1日に発表されました。今回の改訂では、HMAのCTCG(Clinical Trials Coordination and Advisory Group:臨床試験調整諮問グループ)が2023年に発表した「CTCG Best practice on naming of documents」(文書名の付け方に関するCTCGベストプラクティス)最新版に合わせて更新されています。

3. EUの規制

EU薬事法の改正:欧州委員会は現行の薬事法の改正案を2023年4月に発表しました(Q&Aはこちらをご覧下さい)。改正の主な目的は以下のとおりです。

  • EU内での安全・有効で安価な医薬品へのタイムリーかつ平等なアクセスの確保
  • EUでの医薬品の研究・開発・製造のための魅力的かつイノベーションに適した規制の枠組みの提供
  • 医薬品の承認審査期間の短縮による、行政負担の大幅な軽減
  • 医薬品の安定供給と医薬品不足の緩和
  • 薬剤耐性への対処
  • 医薬品の環境的持続可能性の向上

本改正案が及ぼす影響としては、以下のような事柄が予想されます。

  • オーファンドラッグ以外の医薬品のデータ保護期間の延長
  • オーファンドラッグ指定基準の厳格化
  • 新規抗菌薬の開発促進
  • EMAの各委員会とプロセスの合理化
  • 医薬品に関する現行の環境要件の施行

本改正案に対する欧州製薬団体連合会(EFPIA)の見解はこちらをご覧下さい。本改正案は、ステークホルダーとの意見交換やパブリックコメントの募集などを経て、現在EU議会とEU理事会で審議中です。

4. 英国とMHRAのニュース

HRA(Health Research Authority:医療研究機構)は2024年3月18~22日を「Make it Public Week」(研究開示啓発週間)とし、医療研究の透明性向上のための啓発活動を行います。その一環として3月21日に開催するオンライン・ワークショップ「Make it Public workshop — all clinical trials registered」では、研究の登録に焦点を当て、すべての臨床試験の登録を実現させる方法を探ります。

5. 米国FDAのガイダンスとニュース

5.1 FDAは「FDA Works to Make Informed Consent Easier to Understand」(インフォームド・コンセントをわかりやすくするための取り組み)を発表しました。説明文書は長く、被験者候補にわかりにくいことが多々あります。このようなインフォームド・コンセントの手続き状況を改善するため、FDAはガイダンス案「Key Information and Facilitating Understanding in Informed Consent」(インフォームド・コンセントの主な情報と理解促進)を公開しました。本案は治験依頼者、治験責任医師、治験審査委員会(IRB)に対し、FDA規則案「Protection of Human Subjects and Institutional Review Boards」(被験者の保護と治験審査委員会)が提案する2つの要件と、それに対応する改正コモン・ルール(被験者保護に関する連邦規則)の現行の要件を満たす方法に関する推奨事項を提示しています。推奨事項には以下のような事柄が含まれています。

  • インフォームド・コンセントは、主要な治験情報の簡潔明瞭な提示から始める。
  • インフォームド・コンセント全体として、被験者候補が治験に参加したいか否かを決められるように、わかりやすい形で情報を提供する。

本案に対するパブリックコメントは2024年4月30日まで受け付けています。

5.2 DIA(Drug Information Association)は、CISCRP(Center for Information and Study on Clinical Research Participation:臨床研究参加に関する情報・研究センター)による論文「Clinical Trial Results on Clinical Trials.gov: Limited Value and Utility to Patients and Professionals」(ClinicalTrials.govにおける臨床試験結果:患者や専門家にとって限定的な価値と有用性)を発表しました。CISCRPは、ClinicalTrials.govの臨床試験結果の表示に一貫性がないことと、重要な情報が欠落していることを指摘しています。

5.3 FDAは、ヒト体細胞のゲノム編集(GE)を組み込んだヒト遺伝子治療製品を開発する治験依頼者向けにガイダンス「Human Gene Therapy Products Incorporating Genome Editing」を発出しました。本ガイダンスは、連邦規則集21条312.23(21 CFR 312.23)に準拠して、治験用GE製品の安全性と品質を評価するために治験薬(IND)申請で提供すべき情報に関する推奨事項を示しています。これには製品デザイン、製品の製造および試験、非臨床安全性評価、臨床試験デザインの留意事項などに関する情報が含まれます。

6. 欧州EMAのガイダンスとニュース

HMA-EMAカタログに関するウェビナー「Multi-stakeholder webinar on the HMA-EMA Catalogues of real-world data sources and studies」(2024年3月4日開催)のスライドが公開されました。RWDソースのカタログとRWD研究のカタログに関する詳細が示されています。

7. 開発戦略ニュース

バイオ医薬品業界のニュースを配信している「Endpoints News」は、参加無料のウェビナー「Cell & Gene Day 2024」(細胞・遺伝子の日2024)を4月23日11~13時(米国東部時間)に開催します。当日取り上げるテーマは、細胞・遺伝子治療の科学的進歩、最近と今後の承認と臨床マイルストーン、臨床試験のデザインと実施への統合的アプローチなどです。

8. 人工知能・機械学習

8.1 2024年3月13日、EU議会は人工知能(AI)規制法案を可決しました。本法の目的は、「リスクの高いAIから基本的人権や民主主義、法の支配、環境の持続可能性を守るとともに、イノベーションを促進し、欧州をこの分野のリーダーとして確立すること」です。本法が定める「ハイリスクAI」のカテゴリーには、医療用AIシステムが含まれています。

8.2 eClinical Solutions社が2024年1月18日に開催したウェビナー「Advancing Clinical Data Transformation: Industry Outlook 2024」(臨床データ変革の推進:2024年の業界展望)のビデオ録画が無料公開されています。本ウェビナーではAIの導入や、外部データの動向、サイクルタイムの課題、今後12か月間に業界に与える影響の見通しなどが取り上げられています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

ページの先頭へ戻る

CORE Reference News 2024年2月28日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. EU CTRCTIS

1.1 CTISのショート説明会「How to submit a transitional trial in CTIS」(移行中の臨床試験の提出方法)が2024年2月29日に開催されます。ビデオ録画が後日公開される予定です。

1.2 CTISに関する公開ウェビナー「Last Year of Transition」(移行期間最後の年)が2024年3月25日13時(アムステルダム時間)に開催されます。本ウェビナーではCTRの実装や、移行期間中の臨床試験とCTISでの更新方法、CTISの現状などについて説明される予定です。参加申込の詳細はこちらをご覧下さい。参加者は事前の質問を3月4日から18日まで、Slidoのサイト経由でイベントコード「#infomarch2024」を使用して提出できます。

1.3 オランダのCentral Committee on Research Involving Human Subjects (CCMO)(ヒトを対象とする研究に関する中央委員会)は、医薬品臨床試験の「substantial modification (SM)」(大幅な変更)専用に、カバーレターと変更説明書の各テンプレートを新たに発表しました。「substantial modification」では、提出書類と変更内容の概要を審査担当者が十分に把握することが重要です。そのため、CTISでは「substantial modification」ごとにカバーレターと変更説明書の提出が求められています。これにより、明確さの欠如による審査の遅延がなくなり、審査プロセスの迅速化が期待されます。

1.4 EMAは2024年2月に2つのCTIS研修資料の最新版を公開しました。
・「CTIS Training materials — Latest updates, Version 1.3」(CTIS研修資料―最新アップデート、バージョン1.3):本資料は、EMAのサイト上で研修資料のどのバージョンが最新版なのか、ユーザーが最後に参照してからどの研修資料が新たに作成されたのかを、ユーザーにわかりやすくすることを目的としています。
・「CTIS Evaluation Timelines, Version 2.0」(CTIS評価タイムライン、バージョン2.0):本資料は、臨床試験申請プロセス全体のタイムラインと各種期限の概要をEU加盟国と治験依頼者に示すことを目的としています。

2. 欧州医療データスペースのニュース

2.1 欧州製薬団体連合会(EFPIA)のデジタルデータ担当ディレクターAneta Tyszkiewicz氏は、インタビューの中で、EUが提案している医療データ共有法に関するEFPIAのフィードバックについて語っています。詳細はインタビュー記事「A Maze of Rules: EFPIA on EU’s Proposed Health Data Sharing Law」(規則の迷路:EU提案の医療データ共有法についてEFPIAが語る)でご覧頂けます。

2.2 EUやEU加盟国の大規模な患者団体、医療団体、医学会など30団体が、欧州医療データスペース(EHDS)規則案に関する最近の協議について、団体共通の懸念を表明しました。これらの団体はプレスリリースで「EU理事会、欧州議会、欧州委員会の三者協議(トリローグ)の基礎をなす立法的な立場で、10件の基本的な問題が満足に対処されていない」と述べています。プレスリリース「The draft text of the European Health Data Space (EHDS) in trilogues sparks deep concerns in the European healthcare ecosystem」(トリローグでの欧州医療データスペース(EHDS)規則案が欧州の医療エコシステムに深い懸念を呼び起こす)の全文はこちらをご覧下さい。欧州議会とEU理事会の欧州医療データスペース規則案に関する報告書A9-0395/2023はこちらでご覧頂けます。

3. 英国とMHRAのニュース

DeVitoらは論文「Barriers and Best Practices to Improvement Clinical Trials Transparency at UK Public Research Institutions: A Qualitative Interview Study」(英国の公的研究機関における臨床試験の透明性向上の障壁と最善の方法:定性的インタビュー研究)を発表しました。この研究は、英国の公的研究機関(大学とNHSトラスト)で臨床研究のガバナンスや運営、臨床試験の管理に携わる職員への半構造化インタビュー調査によって行われました。その結果、「治験責任医師が臨床試験の透明性確保の責任を確実に認識して支援を受けられるよう、研究機関内で新たな方針や手続きがほぼ例外なく確立されてきている。しかし、まだ課題が複数残っている」などの重要な知見が得られています。
訳注)NHSトラスト:英国の国民保険サービス(National Health Service: NHS)の一部として、地域別または種類別(例:精神医療)に医療サービスを提供する機関。公的な位置づけとしては、日本の地方独立行政法人に類似。英国内に約200のNHSトラストが存在。

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

4.1 ClinicalTrials.govの治験プロトコル登録・結果提出システム(PRS:Protocol Registration and Results System)ベータ版の最新バージョンがPRSのサイトにリリースされました。これにより、ユーザーは「Record Summary」ページから直接、治験プロトコルのPRS品質保証(QA)・品質管理(QC)コメントを閲覧できるようになりました。詳細は最新のリリースノートをご覧下さい。

4.2 FDAは「臨床試験の登録や結果報告を怠って規則に従わない治験依頼者や治験責任医師に対して、今より厳しい立場を取るつもりはない」と権利擁護団体に対して述べました。STAT Newsサイトの記事「FDA gives a mixed response to a petition seeking greater clinical trial transparency」(臨床試験の透明性向上を求める嘆願書にFDAが複雑な反応)によると、FDAは開示違反の罰則を検討する際に規制当局の裁量権を行使する権利を保有していますが、治験依頼者らが自発的に規則に従って臨床試験を登録・報告することを望んでいます。

4.3 FDAは2024年2月22日に最終ガイダンス「Assessing COVID-19-Related Symptoms in Outpatient Adult and Adolescent Subjects in Clinical Trials of Drugs and Biological Products for COVID-19 Prevention or Treatment」(新型コロナ感染症の予防用または治療用の医薬品・生物学的製剤の臨床試験の思春期・成人期外来被験者における新型コロナ関連症状の評価)を発出しました。本ガイダンスの目的は、「新型コロナ感染症の予防または治療のための医薬品や生物学的製剤について、思春期・成人期の外来被験者を対象にした臨床試験で、一般的な新型コロナ関連症状をどのように評価・分析できるかという課題へのアプローチに関する留意事項を、治験依頼者と治験責任医師に示すこと」にあります。今後は、2020年9月29日発出の同名ガイダンスに代わって本最終ガイダンスが有効になります。

5. 欧州EMAのガイダンスとニュース

EMAは、臨床試験で新薬の安全性と有効性を確認するための非劣性デザインの利用に関するコンセプトペーパー「Concept Paper for the Development of a Guideline on Non-Inferiority and Equivalence Comparisons in Clinical Trials」(臨床試験における非劣性および同等性の比較に関するガイドライン作成のコンセプトペーパー)を発表しました。この提案は、臨床試験におけるestimandと感度分析に関するICHガイドラインを取り入れ、劣性試験に関する既存の2つのEMAガイダンスを統合することを目的としています。新たに作成されるガイドラインは、CPMP/EWP/482/99「Points to consider on Switching between Superiority and Non-Inferiority」(優越性と非劣性の切り替えの留意点)と、CPMP/EWP/2158/99「Guideline on the Choice of Non-Inferiority Margin」(非劣性マージンの設定に関するガイドライン)に代わるものとなります。本コンセプトペーパーに関するパブリックコメントは、こちらで2024年5月31日まで受け付けています。

6. リアルワールドデータ

6.1 Toaderらは論文「The use of healthcare systems data for RCTs」(ランダム化比較試験[RCT]における医療システムデータの利用)を発表し、研究のデータソースとしての医療システムデータ(HSD)の利用状況について報告しています。英国のデータベースでのスクリーニングで適格と判断したランダム化比較試験84件のうち、28件では少なくとも1つのアウトカムにHSDを利用する予定であり、24件では少なくとも1つのアウトカムにHSDを唯一のデータソースとして利用していました。また、HSDから収集された主なアウトカムは、死亡関連アウトカム、入院、有害事象、コスト関連アウトカムでした。

6.2 EMAとHMAは、リアルワールドデータ(RWD)ソースに関するカタログと、RWD研究に関するカタログを新たに発表しました。これらのカタログは、規制当局や研究者、企業が医薬品の使用、安全性、有効性を検討する際にRWDを特定・利用するのに役立ちます。そして、透明性を促進し、質の高い方法論の使用を奨励し、RWDに基づく研究に対する信頼を築きます。2つのカタログは、ENCePPリソースデータベースとEU PAS Registerに各々代わるものであり、利用者のために様々な改善が施されています。
訳注1)ENCePP:European Network of Centres for Pharmacoepidemiology and Pharmacovigilance(薬剤疫学・ファーマコビジランスセンターの欧州研究ネットワーク)。EMAが2006年に欧州での市販後の医薬品安全性モニタリング強化を目的として開始。
訳注2)EU PAS Register:EU post-authorisation study register(欧州市販後安全性研究登録)。欧州での市販後の医薬品安全性研究に関する情報を登録・公開するデータベース。

6.3 EMAとHMAが新たに発表したRWDソースに関するカタログと、RWD研究に関するカタログについて、EMAがウェビナー「Multi-stakeholder webinar on the HMA-EMA Catalogues of real-world data sources and studies」を2024年3月4日10時~12時(中央ヨーロッパ時間)に開催します。リアルタイムでご覧になるか、開催後にビデオ録画をご覧下さい(スライドはこちら)。本ウェビナーでは、規制実務におけるカタログの利点や重要性など、両カタログの概要を説明します。カタログの使用方法の説明や、主な機能のデモンストレーション、補足資料の紹介、質疑応答なども予定されています。

7. 透明性・情報開示のリソースとニュース

7.1 AllTrialsキャンペーン、コクラン・デンマーク、コクラン・ノルウェー、コクラン・スウェーデン、Dam財団、Melanomföreningen、TranspariMEDが共同で報告書「Medical research in waste in Nordic countries: Unreported clinical trials in Denmark, Iceland, Finland, Norway and Sweden」(北欧諸国の無駄な医学研究:デンマーク、アイスランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンにおける未報告の臨床試験)を発表しました。本報告書によると、北欧諸国で実施された臨床試験のうち、結果が公表されていない試験が475件も確認されました(参加した被験者の総数:約84,000名)。本報告書の詳細は、2024年3月15日10時(中央ヨーロッパ時間)開催のウェビナーで発表されます。(訳注:報告書がこちらのウェブ記事からダウンロード可能です)

7.2 2024年3月14日14時(英国時間)に無料の公開ウェビナー「Clinical Trial Transparency – CTR Transition Studies: What you need to know and how to meet the 30 Jan 2025 deadline」(臨床試験の透明性 ― CTRへの臨床試験の移行:知っておくべきことと、2025年1月30日の移行期限に間に合わせる方法)が開催されます。

8. 開発戦略ニュース

8.1 Babaらは、「Guidelines for reporting pediatric and child health clinical trial protocols and reports: study protocol for SPIRIT-Children and CONSORT-Children」(小児および小児の健康に関する臨床試験のプロトコルと報告書の報告ガイドライン:SPIRIT-ChildrenとCONSORT-Childrenの作成計画書)を発表しました。本計画書は、小児臨床試験に関するSPIRIT Extension(SPIRIT声明の拡張版)の作成を目指しています。
訳注1)SPIRIT-Children:Standard Protocol Items: Recommendations for Interventional Trials – Children。小児臨床試験のプロトコルに関するガイドライン。
訳注2)CONSORT-Children:Consolidated Standards of Reporting Trials – Children。小児臨床試験の報告に関するガイドライン。

8.2 欧州の非営利組織Ecraid(European Clinical Research Alliance for Infectious Diseases:感染症の欧州臨床研究ネットワーク)は、臨床試験のアダプティブデザインについて、6部構成の研修シリーズ「Ecraid Training Modules on Adaptive Clinical Trial Designs」の提供を開始しました。本シリーズは無料のアダプティブデザイン入門講座で、受講者はCME(医学生涯教育)の履修証明書の取得が可能です。

8.3 TransCelerate Biopharma社は、臨床試験プロトコルのテンプレート「Clinical Content & Reuse (CC&R) Initiative」(旧Common Protocol Template [CPT])の最新版「Clinical Template Suite (CTS)」を発表しました。CTSは最新の研究トレンドやガイダンスを反映しながら、①プロトコルの構成と内容の共通化、②プロトコルの内容の作成自動化と再利用の価値の証明、③プロトコルと試験デザイン要素のデジタル化の基盤作りの支援を可能にしています。最新版リリースの発表全文はこちらをご覧下さい。同社のウェブサイトによると、今回のアップデートは、進化したベスト・プラクティス(マスタープロトコル、妊娠と授乳、性別特有の表現の削減、肝臓の安全性)のみならず、プロトコルの内容に関する他のトピック(患者報告アウトカム、EU-CTRとの整合性、統計解析アプローチ、CTIS)も反映しています。また、「MCTC (Modernization of Clinical Trial Conduct) Data Return Plan」(臨床試験実施の近代化:被験者への治験データ返却計画)と「Patient Experience Study Participation Feedback Questionnaire」(治験参加に関する患者フィードバックの質問票)をCPTに組み込んだことにより、同社の他のイニシアチブをサポートしています。CPT更新版のダウンロードはこちらから可能です。変更箇所をリストアップしたスライドがこちらからダウンロード可能です。特に、新たなCPTは、プロトコルの内容とEU-CTRの要件との整合性を確実にすることと、プロトコルの項目とCTISシステムの要件との整合性を反映することを目的としてアップデートされています。
訳注)同社の各種テンプレートの中には、日本語版が参考用として無料で提供されているものもあります。詳細はこちらをご覧下さい。

9. 人工知能・機械学習

Goodmanらは論文「AI-Generated Clinical Summaries Require More Than Accuracy」(AI生成臨床サマリーに必要なのは正確さだけではない)を発表し、電子健康記録(EHR: electronic health record)から臨床記録や投薬情報などの患者データを要約する生成AIと大規模言語モデル(LLM)の臨床応用について見解を述べています。「LLMは、電子健康記録からの情報収集を合理化する強力な機会を約束すると同時に、FDAの既存の規制による予防策では明確にカバーされない特異なリスクももたらす」と著者らは指摘し、生成AI/LLMによる患者データの要約が日常診療の一部になる前に、FDAが規制の未整備を明らかにすることを強く求めています。

10. アジア規制当局のニュース

タイ臨床試験レジストリ(TCTR)は、試験完了日から11ヶ月が経過している試験の登録者と、最終更新日から180日以上情報が更新されていない試験の登録者に対して、リマインダーのメールを自動送信するシステムを2024年1月24日から導入しています。TCTRの登録者は試験情報を随時更新して下さい。情報が更新されないと、試験状況が「unknown」と表示されます。本システム導入に関する公式発表は、TCTRのサイトの「Announcement」セクションをご覧下さい。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

ページの先頭へ戻る

CORE Reference News 2024年2月15日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. ICH

CIOMSはICH用語集「Glossary of ICH terms and definitions」の第5版(2024年2月7日)を発行しました。本書は、各種ICHガイドラインで使用されている用語とその定義を組み合わせて提示しています。こちらからダウンロード可能です。

2. EU CTRCTIS

2.1 CTISのデータ保護に関するQ&A集「Q&A on the protection of Commercially Confidential Information and Personal Data while using CTIS」(CTIS利用時の営業秘密情報 [CCI] と個人情報の保護に関するQ&A)の改訂版が発表されました(バージョン1.4、2024年1月31日)。今回の改訂では、Q&A 3.4「Is it possible not to disclose patient facing documents publicly?」(患者用文書を開示しないことは可能ですか?)の追加などが行われています。

2.2 EudraCTおよびEU Clinical Trials Register(EU-CTR)の「Frequently asked questions」(よくある質問)が改訂されました(バージョン2.3)。改訂箇所の多くは、CTISへの臨床試験の移行に関するQ&Aです。

2.3 今後開催が予定されているCTISイベントの日時は以下の通りです。
2024年4月8日~11日14:00~18:30(アムステルダム時間)
2024年6月10日~13日9:00~13:30(アムステルダム時間)

2.4 2024年1月23日、EMAは「CTIS: How to get started and how to transition a trial」(CTIS:利用開始方法と臨床試験の移行方法)を公開しました。

3. 欧州医療データスペースのニュース

欧州製薬団体連合会(European Federation of Pharmaceutical Industries and Associations:EFPIA)は、欧州医療データスペース(European Health Data Space:EHDS)に関する医療データ共有法案の主な留意事項に焦点を当てた声明「European Health Data Space: key aspects to be considered in the trilogue discussions」を発表しました。本声明では、二次利用の範囲内のデータや、知的財産と企業秘密の保護などが強調・考察されています。

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

4.1 FDAはガイダンス案「Collection of Race and Ethnicity Data in Clinical Trials and Clinical Studies for FDA-Regulated Medical Products」(FDA規制医療製品の臨床試験と臨床研究における人種・民族データの収集)を公開しました。本案は、FDA規制医療製品の臨床試験や臨床研究から収集・報告された情報を含む申請資料において、人種・民族データの収集・報告に一貫性を持たせるために、FDAが推奨する標準化アプローチ・用語を提示しています。なお、本案は、2016年発表のFDA最終ガイダンス「Collection of Race and Ethnicity Data in Clinical Trials」(臨床試験における人種・民族データの収集)を改訂したものです。

4.2 FDAは米国デューク大学のデューク・マーゴリス医療政策センターと共同で、公開ワークショップ「Enhancing Adoption of Innovative Clinical Trial Approaches」(革新的な臨床試験アプローチの導入強化)を2024年3月19~20日に開催します。本ワークショップでは、臨床試験のデザインと実施の革新を進める取り組みについて議論する予定で、対面式(会場:ワシントンDCのケロッグ・カンファレンス・ホテル)とオンラインとのハイブリッド形式で開催されます。参加申込は同センターのイベントサイトで受け付けています。

4.3 FDAは公開ワークショップ「Advancing the Use of Complex Innovative Designs in Clinical Trials: From Pilot to Practice」(臨床試験の複雑で革新的なデザインの利用促進:試みから実装まで)を2024年3月5日に開催し、複雑なアダプティブデザインやベイズ流アプローチなど、新しい試験デザインについて議論します。本ワークショップは二部構成になっており、前半では、複雑で革新的なデザインとその実装の多様な側面を例示するケーススタディに焦点を当てます。後半では、ケーススタディに基づいてパネルディスカッションが行われる予定です。対面式とオンラインのハイブリッド形式で開催されますが、参加申込の詳細はこちらをご覧下さい。

4.4 「Top Questions and Answers about the Transition to the Modernized ClinicalTrials.gov and Modernized PRS」(ClinicalTrials.govとプロトコル登録・結果提出システム [PRS:Protocol Registration and Results System] の最新化に関するQ&A)が改訂され、ClinicalTrials.govとPRS各々の従来バージョンの廃止に関する情報が追加されました。

4.5 FDAはガイダンス案「Use of Data Monitoring Committees in Clinical Trials」(臨床試験におけるデータモニタリング委員会の活用)を公開しました。本案は、①データモニタリング委員会(DMC)(別名:データ・安全性モニタリング委員会[DSMB]、データ・安全性モニタリング委員会[DSMC]、独立データモニタリング委員会[IDMC])が臨床試験のモニタリングに有用な場合の見極めや、②データモニタリング委員会の運営指導で考慮すべき手順や内容の決定に関して、治験依頼者を支援するための推奨事項を示しています。本案が最終決定されると、2006年3月発行の治験依頼者向け最終ガイダンス「Establishment and Operation of Clinical Trial Data Monitoring Committees」(臨床試験データモニタリング委員会の設置と運営)から置き換わります。パブリックコメントは2024年4月15日まで受け付けています。

4.6 CDERのジェネリック医薬品部(OGD)とEMAは、ジェネリック医薬品の申請者とFDAとEMAとの同時協議を促進するため、任意のパイロットプログラム「FDA-EMA Parallel Scientific Advice Pilot Program for Complex Generic/Hybrid Products」(複雑なジェネリック/ハイブリッド製品に対するFDA-EMA並行科学的助言パイロットプログラム)を開始しました。本プログラムにより、申請者は「複雑なジェネリック医薬品」(EMAの「ハイブリッド医薬品」に相当)の開発に関して具体的な科学的質問を照会するために、FDAとEMAとの三者合同会議の開催を要請することができます。

5. 欧州EMAのガイダンスとニュース

5.1 EMAはニュース記事「Clinical trials’ transition to new EU system — one year left」(臨床試験の新EUシステムへの移行 ― 残り1年)を発表しました。本記事は、2025年1月30日以降も継続が予想される臨床試験の依頼者に対し、EU加盟国が承認手続き完了までに最大3カ月要する場合があることを考慮する必要性について改めて注意喚起しています。本記事には、過去に紹介された臨床試験移行ガイダンスのリンクも貼られています。また、EMAは「Getting started with CTIS: Sponsor quick guide」(CTISの利用開始方法:治験依頼者用クイックガイド)も発表しています。

5.2 EMAは、ヒトの特定の細菌感染症または感染症の治療や予防を目的としたバクテリオファージ医薬品の開発・製造に関する科学的ガイドラインの作成を提案するコンセプトペーパー「Concept paper on the establishment of a Guideline on the development and manufacture of human medicinal products specifically designed for phage therapy」(ファージセラピー用ヒト医薬品の開発・製造ガイドラインの作成に関するコンセプトペーパー)を発表しました。現在EUでは、動物用のバクテリオファージ医薬品についてはEMAのガイドラインが存在しますが、ヒト用はありません。本コンセプトペーパーに関するパブリックコメントは2024年3月31日まで受け付けています。

5.3 2024年1月25~26日の2日間、EMA主催の臨床試験分析ワークショップが開催され、200人を超える参加者が出席しました。主なディスカッションは、詳細かつ最新の臨床試験データへのアクセス改善の要望や、患者参加の重要性、標準化、適切なデータソースの特定などでした。当日のスライドとビデオ録画がこちらで公開されています。

6. 透明性・情報開示のリソースとニュース

6.1 TransCelerate Biopharma社は2024年3月28日にウェビナー「Enabling Individual Participant Data Return (iPDR): An Overview of TransCelerate’s Individual Participant Data Return Package」(臨床試験の被験者へ各自の治験データを提供する方法:TransCelerate Biopharma社の被験者個人データ提供パッケージの概要)を開催します。参加申込の詳細はこちらをご覧下さい。

6.2 Real Life Sciences社は2024年2月22日にウェビナー「Commercially Confidential Information: Why It’s So Hard and What You Can Do To Streamline CCI In Your Organization」(医薬品の営業秘密 [CCI]:CCIの簡素化はなぜ難しいのか、組織内で何が出来るか)を開催します。参加申込の詳細はこちらをご覧下さい。

7. 開発戦略ニュース

7.1 EMAは、バイオシミラーの開発におけるテーラーメイド臨床アプローチのリフレクションペーパー作成に関するコンセプトペーパー「Concept paper for the development of a reflection paper on a tailored clinical approach in biosimilar development」を発表しました。本コンセプトペーパーについて、2024年4月30日までの3ヶ月間に渡りパブリックコメントを募集しています。コメントはこちらのアンケートフォームから提出可能です。

7.2 Kahanらは論文「The estimands framework: a primer on the ICH E9(R1) addendum」(estimandのフレームワーク:ICH E9(R1)ガイドライン補遺の手引き)を発表しました。estimandを検討する際、チームのインプットが必要であるにもかかわらず、生物統計担当者に任せきりになるという、よく見られる問題が本論文で指摘されています。本論文は主題が簡潔に要約されており、estimandに馴染みのない人にとって優れた手引書となっています。

8. 人工知能・機械学習

Shickらは論文「Transparency of artificial intelligence/machine learning-enabled medical devices」(人工知能/機械学習を利用した医療機器の透明性)を発表しました。2021年10月にFDAが開催した同名のワークショップで、ステークホルダーにとっての透明性の意味と役割や、医療機器に該当するすべての人工知能/機械学習利用ソフトウェアの透明性を促す方法について議論された成果が本論文で報告されています。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

ページの先頭へ戻る

CORE Reference News 2024年1月31日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • EudraCT:European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

1. EU CTRCTIS

1.1 EMAは、2024年2月4月6月に各々開催予定の「CTIS治験依頼者エンドユーザー研修プログラム」の日程と情報を発表しました。

1.2 EMAは、非営利目的の治験依頼者が臨床試験をCTISに移行させることを支援するため、研修イベントを2024年2月9日に開催します。参加者は事前の質問を、Slidoのサイト経由でイベントコード「#Transitioningtrials」を使用して提出できます。アジェンダはこちらからダウンロード可能です。本イベントでEU加盟国の代表者とEMAは、治験をCTISに移行する非営利目的治験依頼者をサポートするためのガイダンスとリソースを提供します。

1.3 EU CTR施行に関する報告書(2023年12月号)がダウンロード可能になりました。本報告書には、2022年1月31日以降に提出された初回臨床試験申請の累積件数の概要が含まれています。

1.4 「CTIS newsflash」2024年1月26日号によると、EMAは改正CTIS透明性規則の技術的実装に取り組んでおり、2024年第2四半期の実装を見込んでいます。それまでの間、初回臨床試験申請について、治験依頼者は改正CTIS透明性規則の原則に従うことが可能です。そのため、治験依頼者は治験文書の公開を保留せず、改正透明性規則の適用範囲内にある文書に限って「公開用」と「非公開用」の両バージョンを提供することが認められます(改正CTIS透明性規則の付録I参照)。

2. 英国とMHRAのニュース

英国保健研究機構(Health Research Authority:HRA)の「HRA Now」最新号で、医薬品臨床試験のEU CTIS登録に関するHRAの指針が明示されました。国際共同試験の一部として英国で実施される臨床試験の情報はEUのCTISに登録できないため、EU/EEAと英国の両地域で臨床試験を行う場合は、EU CTISに臨床試験を登録するだけでなく、ISRCTNレジストリClinicalTrials.govなどの臨床試験レジストリにも登録が必要です。

3. 米国FDAのガイダンスとニュース

3.1 FDAは「Conducting Remote Regulatory Assessments – Questions & Answers」(リモート規制評価の実施:Q&A)の改訂ガイダンス案を業界向けに公開しました。FDAは、FDA規制製品の監視やリスク軽減、公衆衛生上の重要なニーズへの対応、コンプライアンス向上支援のため、「リモート規制評価」(RRA)を利用してきました。本ガイダンス案では、RRAの定義や実施時期・理由・方法などがQ&A形式で説明されています。パブリックコメントはこちらで2024年3月27日まで受け付けています。

3.2 FDAは「Collection of Race and Ethnicity Data in Clinical Trials and Clinical Studies for FDA-Regulated Medical Products」(FDA規制医療製品の臨床試験と臨床研究における人種・民族データの収集)と題されたガイダンス案を公開しました。本ガイダンス案は、臨床試験での人種・民族データの収集・報告について標準化アプローチを提示しています。パブリックコメントはこちらで2024年4月29日まで受け付けています。

4. 欧州EMAのガイダンスとニュース

4.1 EMAと欧州がん研究治療機関(EORTC)は、患者報告アウトカム(PRO)と健康関連QOL(HRQoL)データが規制上の決定にどのように影響するかについて、ワークショップを2024年2月29日に共催します。オンライン参加の申込はこちらで2024年2月16日まで受け付けています。

4.2 EMAは、製薬分野の中小企業(SME)向けユーザーガイド「User guide for micro, small and medium-sized enterprises」の大幅な改訂版を発表しました。本ガイドには、EUの医薬品規制の枠組みに関する情報が包括的に掲載されており、ヒト用医薬品および動物用医薬品の開発と承認の要件が示されています。今回の主な改訂は、①動物用医薬品に関する全面改訂(動物用医薬品規則に準拠)、②CTRとCTISの概要の記載(新規セクション4.4)、③ヒト用の医療機器規則に関する知見の提示(新規セクション4.8)の3点です。

4.3 EMAの臨床試験データ公開サイトに「Resumption of clinical data publication for all medicines」(全医薬品の臨床データ公開の再開)というセクションが追加されました。EMAは新薬臨床試験のデータ公開について、新型コロナ感染症医薬品を除き一時中断していましたが、2023年9月以降にEMAのヒト用医薬品委員会(CHMP)から意見を得た医薬品の臨床試験データ公開を再開しました。新型コロナ感染症医薬品以外で再開後に公開された医薬品の臨床データパッケージは、2024年1月からEMAの臨床試験データ公開サイトで入手可能になります。

5. リアルワールドデータ

HMA/EMA共同ビッグデータ運営グループは、最新のビッグデータ作業計画2023-2025(バージョン1.2、2024年1月)を発表しました。本計画には各作業のタイムラインの概略が示されています。本計画の発表スライドがこちらからダウンロード可能です。

6. 透明性・情報開示のリソースとニュース

6.1 DeVitoらは、EU Clinical Trials Register(EU-CTR)に登録された臨床試験のデータ開示状況について、横断的監査調査を実施しました。その結果、調査した臨床試験500件のうち53.2%で試験結果がEU-CTRで開示されていました。これは、比較可能な記録がある他の臨床試験レジストリの臨床データ開示率を上回っていました。また、試験結果の報告までに要した時間(中央値)も、EU-CTRが1142日で最も短く、ClinicalTrials.gov(3321日)より結果報告が速いことが示されました。詳細は論文「Availability of results of clinical trials registered on EU Clinical Trials Register: cross sectional audit study」をご覧下さい。

6.2 米国のClinical Trials Transformation Initiative(CTTI)の調査報告書「Improving Timely, Accurate, and Complete Registration and Reporting of Summary Results Information on ClinicalTrials.gov」(ClinicalTrials.govへのタイムリーで正確かつ完全な試験登録と試験結果報告の改善)が発表されたことを受け、臨床試験ニュースサイトClinical Trial Vanguardのブログ記事「FDA Needs To Release ClinicalTrials.gov Guidance Now」では、CTTIの報告書の主な内容とメッセージが詳述されています。
訳注)CTTI:Clinical Trials Transformation Initiative。2007年に米国デューク大学とFDAが共同で設立した、臨床試験の品質・効率の向上を目指す産学官連携組織。

6.3 Gattrellらは、専門家らの合意に基づく生物医学研究に特化した初の報告ガイドライン「ACCORD (ACcurate COnsensus Reporting Document): A reporting guideline for consensus methods in biomedicine developed via a modified Delphi」(デルファイ変法により開発された生物医学における合意形成法の報告ガイドライン)を発表しました。本ガイドラインは、論文で合意形成法を報告する際に、著者が完全かつ透明性のある方法で正確かつ詳細な論文を執筆できるよう支援することを目的としています。

7. 開発戦略ニュース

7.1 Heyらはオープンアクセス論文「A Future European Scientific Dialogue Regulatory Framework: Connecting the Dots」(欧州における今後の科学的対話の枠組み:プロセスの統合と最適化)を発表しました。本論文は、EMAが製薬企業に提供している「科学的助言」(SA)(訳注:PMDAの対面助言に相当)にアクセスするための複数のオプションが直面している課題を示しています。また、医薬品開発の科学的ニーズに応えるために、現在のSAのオプションを統合・最適化できる方法を考察しています。

7.2 マスタープロトコル試験は、従来の試験デザインの課題に対処する方法として実施が増えつつあります。Laura C. Collada Aliのウェブ記事「Navigating the Future of Clinical Research: Master Studies and Crafting a Comprehensive Protocol」(今後の臨床研究の針路:マスタープロトコル試験と包括的プロトコルの作成)では、マスタープロトコル試験の概念を探り、関連する臨床試験プロトコルを作成する際に重要となるコンテンツをまとめています。

7.3 世界医師会(WMA)の「ヘルシンキ宣言」2024年改訂に向け、最後の定期的な見直しが、新たな作業部会によって2023年に実施されました。すべてのステークホルダーと一般からの意見を最大限に反映するため、世界医師会は作業部会が作成した改訂案を公開してパブリックコメントを募集します。現在、募集の第1期中であり、コメントは世界医師会の公式サイトの指示に従って2024年2月7日まで提出可能です。第2期募集は、追加のトピックが公表される春に実施される予定です。

8. 人工知能・機械学習

2024年1月24日、欧州委員会は、EUの価値観とルールを尊重する信頼可能な人工知能(AI)の開発において、欧州のスタートアップ企業と中小企業を支援するための一連の施策を開始しました。これは、EUにおいて信頼可能なAIの開発、展開、導入を支援する、世界初の包括的な欧州AI規制法案に関して、政治的合意が2023年12月に得られたことによります。詳しい情報とプレスリリースはこちらでご覧頂けます。

9. アジアの規制当局のニュース

2024年1月16日、マレーシアの国立医学研究登録レジストリ(NMRR)は、下記の文書の改訂版などを始め、最新の開発情報を発表しました。
・「Data Elements and Parameters for NMRR Submission (V2.1)」(NMRR提出用のデータ項目とパラメーター、バージョン2.1)
・「User Guideline for Investigator/CRA – New Research Registration & Other Submission Purposes, NMRR v2.0」(研究者・CRA用ユーザーガイドライン:新規研究登録および他の提出目的、NMRRバージョン2.0)

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

ページの先頭へ戻る