CORE Reference News 2024年12月16日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

1. CORE Reference Teamからのお知らせ

2024年12月4日に開催したCORE Referenceウェビナー「Voydeya: A Real Life Example of EMA Policy 0070 in Rare Disease」(希少疾患の臨床試験データ公開 [EMA Policy 0070] の実例:ボイデヤ® [一般名:ダニコパン])のビデオ録画とスライドを、こちらで公開しました。どなたでも無料でご覧頂けますので、お知り合いの方々にもお伝え下さい。

2. ICH

2.1 EUネットワークは、「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」の改訂を支援するACT EUの活動の一環として、ICH E6(R3) GCPガイドラインの原則とAnnex 1に関するワークショップを、2025年2月19~20日にハイブリッド形式で開催します。このワークショップではICH-GCPガイドラインの主な変更点を概説し、ガイドラインの実施について多様なステークホルダーと検討します。

訳注)ACT EU(Accelerating Clinical Trials in the EU):欧州での臨床試験の開始・設計・実施方法を革新して、高品質で有効・安全な医薬品の開発を促進することや、臨床研究を医療制度へさらに組み込むことなどを目的として、欧州委員会とEMAとHMAの三者が共同で始めた取り組み。

2.2 EMAは、ICH E6(R3)ガイドライン「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」のAnnex 2案について、パブリックコメントを募集しています。コメントは、専用テンプレートを使用してICHE6_R3@ema.europa.eu宛てに2025年2月28日まで提出可能です。

訳注)日本では厚労省がパブリックコメントを2025年1月25日までこちらで募集しています。また、無料の説明会が動画配信形式で開催されます(2025年1月6~25日公開予定)。説明会の詳細はこちらをご覧下さい。

3. EU CTRCTIS

3.1 CTISの臨床試験開始申請(CTA)評価内のすべてのタイマーが、2024年12月22日23:59:59(中央ヨーロッパ時間)に一時停止されますのでご注意下さい。タイマーは2025年1月8日00:00:01(中央ヨーロッパ時間)に再開されます。詳細は「CTIS evaluation timelines」をご覧下さい。

3.2 EMAは、2024年11月20日に開催したCTISショート説明会のビデオ録画を公開しました。

3.3 CTIS Training Environment(別名:CTIS Sandbox)は、システムアップデートのため2024年12月18日に利用できなくなり、同日までにシステムに記録されたデータもすべて削除されますので、ユーザーはご注意下さい。CTIS Training Environmentにアクセスしたい治験依頼者は、公開調査「CTIS Sandbox need self-assessment for access planning」から希望を伝えることができます。

4. 英国とMHRAのニュース

4.1 英国の新たな臨床試験規則が、2024年12月12日に英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)とMHRAによって英国議会に提出されました。新たな規則は2025年に審議され、12ヶ月の実施期間を経て2026年初頭に施行される見通しです。規則の主な変更点については、「New clinical trials regulations laid in parliament today」をご覧下さい。

4.2 MHRAは、ICH E6(R3)ガイドライン「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」のAnnex 2案(ステップ2b)について、パブリックコメントを募集しています。コメントはこちらからご提出下さい。

5. 米国FDAのガイダンスとニュース

5.1 臨床試験レジストリClinicalTrials.govは、PRS(Protocol Registration and Results System:プロトコル登録・結果システム)に関するニュースレター「Hot Off the PRS!」の最新号を発行しました。これによると、PRSのユーザーは試験記録の2つのバージョンを比較できるようになりました。また、Research Information Systems downloadの一部として、新たにフィールドが複数追加されました。これらのアップデートについては、最新の「Release Notes」(2024年12月3日)をご覧下さい。

5.2 FDAはガイダンス案「Expedited Program for Serious Conditions — Accelerated Approval of Drugs and Biologics」(重篤疾患のための迅速プログラム:医薬品および生物学的製剤の迅速承認」を発出しました。本ガイダンスは、迅速承認に関してFDAの方針と手続きの最新情報を提供することを目的としています。

5.3 FDAは最終ガイダンス「Standardized Format for Electronic Submission of NDA and BLA Content for the Planning of Bioresearch Monitoring (BIMO) Inspections for CDER Submissions」(CDERに提出するバイオリサーチモニタリング [BIMO] 査察計画のためのNDA/BLAコンテンツの電子申請用標準フォーマット)を発出しました。本ガイダンスは、FDAのCDERに提出する新薬承認申請(NDA)や、生物学的製剤承認申請(BLA)、新たな臨床試験報告書を含む追加申請のBIMO査察の計画・実施に使用される特定のデータ・情報の標準化された電子申請について説明しています。

5.4 FDAのCDERは、規制上の意思決定におけるリアルワールドデータ(RWD)とリアルワールドエビデンス(RWE)の活用をCDER全体で調整、促進、推進することを目的として、CDER Center for Real-World Evidence Innovation(CCRI)を新設しました。詳細はCCRIの公式サイトをご覧下さい。(訳注:後述の記事No.7.4もご参照下さい)

6. 欧州EMAのガイダンスとニュース

6.1 EMAのニュースレター「Clinical Trial Highlights」2024年12月号は、欧州委員会のガイダンス「Guidance for the transition of clinical trials from the Clinical Trials Directive to the Clinical Trials Regulation」(臨床試験指令から臨床試験規則への臨床試験移行のためのガイダンス)で強調されているように、現在実施中の臨床試験は2025年1月30日までに臨床試験指令(CTD)から臨床試験規則(CTR)に移行しないと、CTRに準拠していないとみなされることを、治験依頼者に注意喚起しています。

6.2 臨床試験開始申請(CTA)や医薬品販売承認申請(MAA)に必要なエビデンスに関して、HMAの臨床試験調整グループ(CTCG)とEMAの科学的助言作業部会(SAWP)が提供する共同科学的助言を、医薬品開発者は要請できるようになりました。

7. リアルワールドデータ

7.1 EMAはドラフト文書「Data Quality Framework for EU medicines regulation: application to real-world data」(EU医薬品規制のデータ品質フレームワーク:リアルワールドデータへの適用)に関して、パブリックコメントの募集を開始しました。

このフレームワークは、医薬品規制のユースケースで使用されるデータセット全体に広く適用されることを意図して、原則や概念、定義を規定しています。その目的は、規制上の意思決定におけるリアルワールドエビデンスの活用を強化することです。パブリックコメントは、EU Survey toolから各セクションの表を使用して2025年1月31日まで提出可能です。

7.2 Welzelらは論文「A transparent and standardized performance measurement platform is needed for on-prescription digital health apps to enable ongoing performance monitoring」(医師が処方するデジタルヘルスアプリで継続的なパフォーマンスモニタリングを可能にするには、透明性が高く標準化されたパフォーマンス測定プラットフォームが必要)を発表しました。

著者らは、実臨床において「apps on prescription (AOP)」(医師が処方する治療用アプリ)(例:ドイツのDiGA)のパフォーマンスを継続的に監視・評価するためのプラットフォームベースのアプローチを提案しています。このアプローチにより、透明性、標準化、パフォーマンスベースの価格設定が向上し、デジタルヘルスのイノベーションを、医療の測定可能なアウトカムに合わせられるとしています。

7.3 欧州のIDERHAプロジェクトは、「D6.2 Report on Global Regulatory Best Practices Analysis: A Scoping Review of HTA and Regulatory RWD/RWE Policy Documents」(グローバル規制ベストプラクティス分析に関するD6.2レポート:医療技術評価 [HTA] および規制上のRWD/RWEポリシー文書のスコーピングレビュー)を発表しました。

訳注)IDERHA:Integration of Heterogeneous Data and Evidence towards Regulatory and HTA Acceptance(規制上と医療技術評価 [HTA]の承認に向けた異種データとエビデンスの統合)。2023年4月に官民共同で発足した欧州革新的医療構想(IHI:Innovative Health Initiative)プロジェクト。異種医療データの安全・確実で合理的な共有を可能にすることを目的としている。

7.4 2024年12月12日、FDAは、規制上の意思決定におけるリアルワールドデータ(RWD)とリアルワールドエビデンス(RWE)の活用を調整・促進するため、CDER Center for Real-World Evidence Innovation(CCRI)を設立すると発表し、CCRIに関するQ&A集「CCRI Frequently Asked Questions」を公開しました。(訳注:前述の記事No.5.4もご参照下さい)

8. 透明性・情報開示のリソースとニュース

8.1 Canadian Anonymization Network(CANON)とAccessPrivacyは、ラウンドテーブル・ディスカッション「Consultation Session on Draft De-Identification Guidance Issued by the Information and Privacy Commissioner of Ontario」(オンタリオ州情報プライバシー・コミッショナーが発出した匿名化ガイダンス案に関する協議)を、12月18日12:00~14:00(米国東部時間)に開催します。これは、ガイダンス案の主な特徴とその影響について議論し、参加者からコメントを得ることを目的としています。

8.2 PHUSEは、データの透明性に関する冬季オンラインイベント「PHUSE Data Transparency Winter event」を2025年2月4~6日に開催します。プレゼンテーションは3日間とも15:00~17:30(グリニッジ標準時)に行われる予定です。参加を希望される方は、こちらからお申し込み下さい。

訳注)PHUSE:Pharmaceutical Users Software Exchange。製薬企業やIT企業などのデータマネージメント、生物統計、電子臨床データ、毒性、病理、薬理などの各専門家ボランティアから成る国際的非営利組織。FDAやEMA、CDISCなどの規制当局・機関に対する業界代弁者。

9. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

Castleらのブログ記事「EMA Clinical Data Publication Policy to Cover All New Marketing Authorization Applications, Line Extensions and Major Clinical Type II Variations Starting Q2 2025」(2025年第2四半期以降すべての新規販売承認申請 [MAA]、ライン延長申請、主要な臨床タイプIIバリエーション申請が対象になるEMA臨床データ公開ポリシー)は、2025年のEMA臨床試験データ公開(Policy 0070)の次のステップを概説しています。

10. 開発戦略ニュース

10.1 Clinical Trials Transformation Initiative(CTTI)は、臨床試験の多様性行動計画(DAP)の実施を促進するためにその課題と解決策を明らかにすることを目指して、新プロジェクト「Diversity Action Plan Implementation project」を開始したことを発表しました(発表全文はこちら)。CTTIは、DAPの実施に関して主な留意点を含む推奨事項またはベストプラクティスを作成し、貢献するパートナーの役割と責任を概説する文書も作成する予定です。

訳注)CTTI:2007年に米国デューク大学とFDAが共同で設立した、臨床試験の品質・効率の向上を目指す産学官連携組織。

10.2 Kooらは論文「Review of the European Union Clinical Trials Regulation: Key Early Learnings from the United Kingdom Drug Information Association Medical Writing Committee」(EU臨床試験規則 [CTR]のレビュー:英国DIAメディカルライティング委員会が得た知見)を発表しました。

同委員会はメディカルライターの視点でCTRを精査し、治験薬概要書(IB)や治験プロトコル、plain languageによるプロトコル概要、中間解析、補助医薬品(AxMP)、plain language summaryなどに関して得られた知見を論文にまとめています。

治験プロトコルの作成に関する留意事項としては、開示に向けたアプローチや、TransCelerate社提供の治験プロトコルの変更(例:治験終了の定義)、1年間に実施可能な修正(改訂)回数、情報提供依頼(RFI)に対するアプローチなどが挙げられています。

10.3 Thomassenらは論文「The role of the estimand framework in the analysis of patient-reported outcomes in single-arm trials: a case study in oncology」(単群試験の患者報告アウトカム [PRO] 分析におけるestimandフレームワークの役割:癌領域のケーススタディ)を発表しました。著者らは、肺癌患者を対象にした単群試験における包括的QOL(Quality of Life)アウトカムに注目し、考えられるestimandの範囲を特定しています。特に、関心のある変数と、中間事象に対応するためのストラテジーに焦点を当てています。

11. 人工知能・機械学習

『Lancet』誌は、研究者が論文を投稿する際にAIの使用を申告する方法について、新たなガイドライン「Generative AI: ensuring transparency and emphasising human intelligence and accountability」(生成AI:透明性の確保と、人間の知性と説明責任の重視)を発表しました。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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