CORE Reference News 2024年11月30日号

CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。

※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。

【略語リスト】(アルファベット順)

  • CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
  • CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
  • CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
  • CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
  • CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
  • EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
  • EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
  • FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
  • HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
  • ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
  • MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
  • RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
  • RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)

 

 

1. ICH

ICH E6(R3)ガイドライン「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」のAnnex 2案が2024年11月6日にICH総会で承認され、現在パブリックコメントを募集しています。Annex 2は、多様な試験デザインやデータソースの利用増加に伴って生じるGCPの考慮事項を取り上げています。分散型臨床試験やプラグマティック臨床試験、リアルワールドデータ(RWD)を活用する臨床試験の各例に焦点を当て、追加的なGCP考慮事項を示します。

Annex 2の作業は、ICH E6(R3)原則とAnnex 1の作業と並行して進められ、Annex 1がICHステップ2に到達すると、Annex 2の作業が開始されます。ICH加盟国・地域のステークホルダーは、各々の規制当局にパブリックコメントを提出することが推奨されます。ICH E6(R3)ガイドラインとそのAnnexの詳細についてはこちらをご覧下さい。研修資料はこちらからダウンロード可能です。

2. EU CTRCTIS

2.1 ベルギー連邦医薬品・医療製品庁(FAMHP)は、治験依頼者に対して、臨床試験をCTR(EU)536/2014に早急に移行するよう求める声明「Important call to clinical trial sponsors: transfer clinical trials to the CTR as soon as possible」を発表しました。

2.2 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年11月19日号には、CTISの重要な最新情報や、有用な参考資料のリンク、冬季クロック停止の詳細などが記載されています。臨床試験開始申請(CTA)評価内のすべてのタイマーが2024年12月22日23:59:59(中央ヨーロッパ時間)に一時停止し、2025年1月8日00:00:01(中央ヨーロッパ時間)に再開されます。

3. 英国とMHRAのニュース

3.1 英国の治験・臨床研究登録機関ISRCTNレジストリは、「Transparency Tracker」の改良や、ISRCTN研究登録フォームの「Protocol/serial no.」欄の変更など、複数のアップデートを最近実施しました。詳しい更新内容は「What’s new on the ISRCTN registry?」をご覧下さい。

「Protocol/serial no.」欄は「Secondary identifying number(s)」欄に変更され、研究者や資金提供者、治験依頼者などが組織内で研究に割り振った参照番号を記入する欄になっています。臨床試験がEudraCT/CTISとClinicalTrials.gov以外のレジストリに登録されている場合は、同欄に治験IDを記入できます。英国国立健康研究所(NIHR)や、医療研究機構(HRA)、Wellcome Trustの助成金番号も同欄に記入します。

3.2 MHRAは、2024年10月15日に開催したウェビナー「Implementing the New UK Clinical Trials Regulations」(英国の新たな臨床試験規制の施行)のビデオ録画を、2024年11月13日に公開しました。このウェビナーでは、(1)新たな臨床試験規制の施行に向けて予想されるスケジュールの概要、(2)ガイダンス案をステークホルダーと共有してフィードバックを得る計画が示されました。
(訳注:翻訳時点で、ウェビナーの録画は「再生できません。アップロードしたユーザーにより削除されました」と表示されています)

ウェビナーに関するブログ記事「MHRA expects new UK clinical trial regulation implementation by January 2026」(MHRAは英国の新たな臨床試験規制が2026年1月までに施行されることを期待)も併せてご参照下さい。

3.3 英国国民保健サービス(NHS)の医療研究機構(HRA)は、臨床試験のインフォームド・コンセントに関する規制の修正案「Simplifying the process of seeking and recording consent in low risk clinical trials」(低リスクの臨床試験におけるインフォームド・コンセントの取得・記録プロセスの簡素化)を発表し、パブリックコメントを募集しています。コメントは、2025年に英国で施行される臨床試験規制の策定に役立てられます。

4. 米国FDAのガイダンスとニュース

ClinicalTrials.govのPRS(Protocol Registration and Results System:プロトコル登録・結果システム)のResultsセクション初の最新化モジュール(被験者の流れ、制限と注意事項、詳細情報)が、現在PRS Test版で利用可能であり、間もなく最新化PRS(新版)でも利用可能になります。ユーザーはPRS Test版で利用可能なResultsセクション・モジュールを試して、ClinicalTrials.gov PRSに感想を伝えることをお勧めします。詳細は最新の「Release Notes」(2024年11月26日)をご覧下さい。

5. 欧州EMAのガイダンスとニュース

EMAは、「Improving efficiency of approval process for new medicines in the EU」(EUにおける新薬承認プロセスの効率化)に関するQ&Aセッションを、2024年12月5日に開催します。本セッションでは、EUにおけるMAA(販売承認申請)や、申請期限を守るために企業が直面する課題を取り上げるとともに、審査・承認プロセスの効率化に向けたEMAの取り組みや、企業が申請計画を立てる際に役立つツールや推奨事項を紹介します。

6. リアルワールドデータ

6.1 中国におけるリアルワールドエビデンス(RWE)活用方針の策定とユースケースについては、Du氏と Han氏による記事「Evolving Policies and Use of RWE in Regulatory Decisions in China」(中国規制当局の意思決定におけるRWEの活用方針と活用の進化)をお読み下さい。

6.2 英国は、国内の健康データの現状を概観した「Uniting the UK’s Health Data: A Huge Opportunity for Society」(英国の健康データの統合:社会にとって大きなチャンス)を発表しました。この報告書は、英国全土の多数の健康関連データソースについて、広範な概要を示しています。

7. EMAの臨床試験データ公開(EMA Policy 0070

2024年11月14日、EMAは臨床試験データ公開(Policy 0070)の再開に向けた次のステップに関するウェビナー「Clinical Data Publication (Policy 0070) webinar — Step 2」(臨床試験データ公開 [Policy 0070]ウェビナー — ステップ2)を開催しました。プレゼン資料とビデオ録画がこちらで公開されています。提案されているステップ2の概要は以下の通りです。

  • 2025年第2四半期以降(正確な日付は未定。2025年4月以降の予定)、否定的意見や取り下げられた申請、ライン延長、主要な臨床タイプIIバリエーション(適応拡大)を含むすべての新たなMAA(販売承認申請)
  • バイオシミラー、ハイブリッド、ジェネリック医薬品をすべて除外
  • 新型コロナ対策と、今後発生する可能性のある新たな公衆衛生上の緊急事態の継続
  • 外部ガイダンス:2025年初頭発出に向けて検討中
  • 質疑応答(Q&A)文書:2023年7月公開。2025年更新予定
  • カナダ保健省との協働によるプロセス提携:ワークシェア。redaction proposal packageの単一レビューの試行
  • レガシー臨床データの公開に関するEMAの提案:要請(access-to-documents request)に応じて公開

8. 開発戦略ニュース

8.1 Higginsらは論文「Considerations for open-label randomized clinical trials: Design, conduct, and analysis」(オープンラベル・ランダム化比較試験に関する検討事項:デザイン、実施、解析)を発表しました。著者らは、最高レベルの試験のインテグリティと試験結論の信頼性を担保するために、オープンラベル試験をどのようにデザイン、実施、解析するのが最善か論じています。

8.2 TransCelerate社とCDISCは、ウェビナー「Digital Data Flow (DDF) Solution Showcase」を2024年12月5日に共催します。これは、治験プロトコルのデジタル化ソリューションに関するシリーズのウェビナー第2弾です。

訳注)CDISC:Clinical Data Interchange Standards Consortium。臨床試験データなどの電子的収集・交換・申請に関して業界標準を策定している国際的な非営利組織。1997年に米国で設立され、国内外のアカデミアや製薬企業、CRO、IT企業などが参加。CDISCが規定する標準規格は「CDISC standard」(CDISC標準)と呼ばれている。

9. 人工知能・機械学習

英国科学技術イノベーション省(DSIT)は、「AI Management Essentials (AIME) Tool」に関してパブリックコメントの募集を開始しました。AIMEは、組織が開発または使用するAIシステムの管理に関してグッドプラクティスのベースラインを確立するための実践的な手順について、組織に明確な情報を提供するリソースです。

10. アジア規制当局のニュース

平川らは論文「Planning and Implementing Master Protocol Trials in Japan: Key Considerations of the Japanese Guideline」(日本におけるマスタープロトコル試験の計画と実施:日本のガイドラインの主な留意事項)を発表しました(注:有料記事です)。

 

翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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