【CORE Reference Newsとは】
治験総括報告書(CSR)のユーザーマニュアル『CORE Reference』を作成・公開している欧米のメディカルライターらから成るCORE Reference Teamが、無料配信しているニュースレター(英語)。メディカルライティングなどに役立つ医薬業界情報を欧米・アジアなどから集めて月1~2回配信。
※本ブログ記事は、クリノスがCORE Reference Teamの許諾を得て参考用として日本語に翻訳したものです。正確な内容や解釈は英語原文と各ニュース中のリンク先でご確認下さい。本ブログ記事の無断転載・転用は堅く禁止いたします。
【略語リスト】(アルファベット順)
- CBER:Center for Biologics Evaluation and Research(米国FDAの生物製剤評価研究センター)
- CDER:Center for Drug Evaluation and Research(米国FDAの医薬品評価研究センター)
- CIOMS:Council for International Organizations of Medical Sciences(国際医学団体協議会)
- CTIS:Clinical Trials Information System(EU臨床試験情報システム)
- CTR:Clinical Trials Regulation(EU臨床試験規則)
- EMA:European Medicines Agency(欧州医薬品庁)
- EU/EEA:European Union/European Economic Area(欧州連合/欧州経済領域)
- FDA:Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)
- HMA:Heads of Medicines Agencies(欧州医薬品規制当局首脳会議)
- ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
- MHRA:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency(英国医薬品医療製品規制庁)
- RWD:real-world data(リアルワールドデータ)
- RWE:real-world evidence(リアルワールドエビデンス)
1. EU CTRとCTIS
1.1 EMAのニュースレター「CTIS Newsflash」2024年9月10日号が発行されました。主な最新情報は以下の通りです。
- タスクと情報提供依頼(RFI)を見逃さないためのアドバイス
- 目安程度と見なすべきCTISタイムテーブルに関するアドバイス
- CTISパブリックポータルに近日追加予定の新機能
- 今後開催予定のイベントとウェビナー
- 年次安全性報告書(ASR)の提出に関する問題
- システム改善・修正リスト最新版
- 2024年7月と8月の臨床試験開始申請(CTA)提出数
- 追加情報・ガイダンスの入手先
1.2 2024年9月20日にCTISパブリックポータルに追加される新機能により、ユーザーは高度な検索や、検索結果・臨床試験情報のダウンロード、RSSフィードの購読が可能になります。
2. EUの医薬品規制
イタリア医薬品庁(AIFA)は、医薬品に関する観察研究の分類と実施のためのガイドライン(イタリア語)を発出しました。
3. 英国とMHRAのニュース
2024年8月、臨床試験登録サイトISRCTN registryは、「Transparency Tracker」(透明性の追跡)の改良版の稼働を開始しました。改良版のレジストリ記録では、試験の事前登録やプロトコル、統計解析計画書(SAP)、結果などの各項目の横にラジオボタンが配置され、このボタンのon/off表示により、各々の登録の有無がひと目でわかるようになりました。(訳注:実例としてBEEP試験の記録を参照するよう、同サイトで推奨されています)
4. 米国FDAのガイダンスとニュース
4.1 FDAはガイダンス案「Incorporating Voluntary Patient Preference Information over the Total Product Life Cycle」(製品のライフサイクル全体にわたる、患者の自発的な選好情報の取り込み)を発表しました。本ガイダンス案は、製品のライフサイクル全段階を通じて患者の選好情報(PPI)を収集してFDAに提出するために、いつ、どのような方法を用いることができるかについて、FDAの推奨を示すものです。これは、治験依頼者や患者選好調査開発者が、ベネフィット・リスクに関するFDAの意思決定に情報を提供するための患者選好調査を適切に設計する際に、最新の方法や留意事項を取り入れるのに役立ちます。本ガイダンス案に対するパブリックコメントを、こちらで2024年12月5日まで受け付けています。
また、FDAは本ガイダンス案に関するウェビナーを2024年10月15日に開催します。このウェビナーは事前の申込なしで参加できます。
4.2 FDAは、臨床試験の最新化と医薬品開発の加速に役立つトピックに関するFDAガイダンス文書の透明性あるコミュニケーションと普及を促すため、「Guidance Snapshot Pilot Program」(ガイダンス・スナップショットのパイロットプログラム)を開始しました。本プログラムは、ガイダンス文書の要点をビジュアル表現と平易な言葉でまとめたスナップショットを通じて、ガイダンス文書に対する一般の人々の認識と関与を高めることを目指しています。ガイダンス・スナップショットの一覧表や、スナップショットの見方と限界に関する説明をご確認下さい。
5. 欧州EMAのガイダンスとニュース
5.1 2024年8月29日、EMAは「Guiding principles on the use of large language models in regulatory science and for medicines regulatory activities」(レギュラトリーサイエンスおよび薬事規制活動における大規模言語モデルの使用に関する基本原則)を発表しました。この文書は、レギュラトリーサイエンスおよび薬事規制活動における汎用大規模言語モデル(LLM)の使用に関して基本原則を示し、LLMの安全かつ効果的で責任ある使用を促進するために、規制当局にハイレベルな推奨事項を提供するものです。「Conclusion」セクションでは、「この急速に発展する分野において、公衆衛生を守り、医薬品規制当局の信頼を維持するために、高度なAIツールを規制プロセスに統合するための構造化されたアプローチを提供することは、かつてないほど重要である」と述べています。
5.2 EMAは「Scientific Symposium on Advanced Therapy Medicinal Products – Contribution, evolution, revolution」(先端医療医薬品 [ATMP] に関する科学シンポジウム:貢献、進化、革命)を、2024年10月10日にハイブリッド式(アムステルダムのEMA本部とオンライン)で開催します。本シンポジウムでは、ATMPがどのように患者のケアに革命をもたらしているかに焦点を当て、規制の進歩や、アンメット・メディカル・ニーズに応える画期的な治療法について議論します。また、EMAの先端医療委員会(CAT)の進化と、新規クラスのATMPがもたらす課題へのCATの取り組みについて概説します。参加申込期限は、対面参加が2024年9月24日、オンライン参加が2024年10月1日です。
5.3 EMAは欧州委員会(EC)とHMAと共同で、「Joint EC/HMA/EMA multi-stakeholder workshop on pharmacogenomics」(ファーマコゲノミクスに関するマルチステークホルダー・ワークショップ)を、2024年9月24日にアムステルダムのEMA本部で開催し、ライブ配信します。
6. 開発戦略ニュース
医療システムへの患者参画を促す国際的な非営利組織Patient-Focused Medicines Development(PFMD)は、「Patient Engagement (PE) & Patient Experience Data (PED) project」(患者参画 [PE] &患者体験調査データ [PED] プロジェクト)について、パブリックコメントを募集しています。PFMDは、ステークホルダーが研究で有意義なPEを実施するための手引きとして、「PE & PED Integrated Navigator」(PE&PED統合ナビゲーター)を作成することを目指しています。
7. 人工知能・機械学習
7.1 2024年8月29日、EMAは「Guiding principles on the use of large language models in regulatory science and for medicines regulatory activities」(レギュラトリーサイエンスおよび薬事規制活動における大規模言語モデルの使用に関する基本原則)を発表しました。詳細については、前述の「欧州EMAのガイダンスとニュース」セクション5.1をご覧下さい。
7.2 国際的な非営利組織Pistoia Allianceが研究データの管理・責任に関して提唱しているFAIR原則(Findable、Accessible、Interoperable、Re-usable:検索可能、アクセス可能、相互運用可能、再利用可能)は、価値ある情報の検索に要する時間を短縮し、データの相互運用性と再利用性を促進し、AIイニシアチブを可能にすることで、組織に付加価値をもたらします。ウェビナー「Maturity Frameworks Supporting the Implementation of FAIR Data Principles」(FAIRデータ原則の実装をサポートする成熟度フレームワーク)が2024年9月4日に開催され、ビデオ録画がこちらで公開されています。
訳注)Pistoia Alliance:ライフサイエンスと医療における研究開発のイノベーションの障壁を下げることに取り組む国際的な会員制非営利組織。2007年にイタリアのPistoiaで開催された会議を契機に設立され、ライフサイエンス分野の企業や学術団体、出版社など100社以上が加盟。
7.3 英国の独立諮問機関UK Research Integrity Office(UKRIO)は、2024年10月9日にウェビナー「AI in Research: Supporting Research Integrity through Governance and Ethics」(研究におけるAI:ガバナンスと倫理を通じた研究インテグリティのサポート)を開催します。
7.4 欧州委員会は、EUデータ法(規則(EU)2023/2854)の施行を支援するため、「Frequently Asked Questions (FAQs) on the Data Act」(データ法に関するFAQ)を発表しました。
7.5 米国、EU、英国などは、AIの使用に関する初の国際条約「Framework Convention on artificial intelligence and human rights, democracy, and the rule of law」(AIと人権、民主主義、法の支配に関する枠組み条約)に署名しました。本条約は、AIシステムの有害で差別的な結果に対して、署名国が責任を負うことを求めています。また、AIシステムのアウトプットが平等とプライバシーの権利を尊重することも求めています。(訳注:日本は条約策定にオブザーバー参加しましたが、署名は見合わせました)
7.6 El Fassiらのコメント論文「Not all AI health tools with regulatory authorization are clinically validated」(規制当局が承認した医療用AIツールがすべて臨床的に検証されているとは限らない)で、著者らは、医療用AIの臨床的有効性の指標としての「FDA認可」を評価するために、新たな検証基準が必要であると述べています。
7.7 QuerとTopolは論文「The potential for large language models to transform cardiovascular medicine」(大規模言語モデル [LLM] が循環器医療を変革する可能性)を発表しました。これは、『The Lancet Digital Health』誌に掲載されている4部構成の論文シリーズ「Artificial intelligence and digital innovations in cardiovascular care」(循環器医療におけるAIとデジタルイノベーション)のうち、4番目の論文です。
翻訳:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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