偽の授賞通知が届いた!ハゲタカアワードの手口と対策を解説

著作者:pohjakroon、出典:pixabay

論文掲載料の搾取を目的とした「ハゲタカジャーナル」や、学会参加費の搾取を目的とした「ハゲタカ学会」といった詐欺商法は、日本でもよく知られ、警戒が広がりつつありますが、「ハゲタカアワード」はご存知でしょうか。日本ではまだあまり知られていませんが、海外では広く知られている詐欺の一種で、実際に多くの個人や企業が被害に遭っています。

最近、筆者にも偽アワードの授賞通知が届きましたので、本記事ではその実例を紹介しつつ、「ハゲタカアワード」の手口や特徴などを詳しく解説し、被害を未然に防ぐための対策をお伝えします。

 

1. ハゲタカアワードとは

ハゲタカアワードとは、偽の授賞組織(predatory award organization)が架空の賞を作り、もっともらしい授賞通知を個人や企業などに送り付け、受賞料などの名目で金銭をだまし取ろうとする詐欺です

英語では「vanity award」(虚栄賞)、「fake award」(偽の賞)、「predatory award」(ハゲタカアワード)などと呼ばれています。「vanity」の意味「虚栄心、虚飾、見せかけだけで実質的に無価値・無意味」が示す通り、ハゲタカアワードに権威や価値、意味などは全くありません。お金さえ払えば誰でも「受賞」できます。いわゆる「お金で買える賞」です。

ハゲタカアワードの種類としては、学術界を狙った偽の科学アワード(例:Asia Research Awards)や、ビジネス業界を狙った偽のビジネスアワードなど、様々なものがあります。

ターゲットとしては、ある程度の実績があり、名前が世に出始めた個人や企業などが狙われる傾向があります。例えば偽の科学アワードのターゲットは論文発表経験のある若手医師・研究者、偽のビジネスアワードのターゲットは小規模事業者(スタートアップ企業、ベンチャー企業、個人事業主・フリーランスなど)が中心です。

偽の授賞通知の送付には、論文のcorresponding author(責任著者)の連絡先や、事業者の問い合わせ先、学会・専門家団体の名簿などが悪用されています。

 

2. ハゲタカアワードの実例:『Life Sciences Review』誌の偽アワード

(1)『Life Sciences Review』誌からの授賞通知

実際に筆者にも偽アワードの授賞通知が最近届きました。差出人は『Life Sciences Review』誌のFelicia Nelsonと名乗る人物で、「アジア太平洋地域の2025年トップ治験翻訳会社の最終選考に貴社がノミネートされました」という英文メールでした。

受賞にあたっては3000ドル(約45万円)支払う必要があり、その対価として『Life Sciences Review』誌での受賞者紹介、紹介記事の二次利用、賞状、受賞ロゴなどが含まれる、いわゆる「受賞パッケージ」が提供されるとのことです。ご参考までに授賞通知の全文をお示しします。

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送信者:Felicia Nelson(felicia.nelson@thelifesciencesreview.com)
件名:Top Clinical Trial Translation Service recognition for Clinos by Life Sciences Review

I am Felicia from Life Sciences Review APAC, a premier print and digital magazine reaching over 86,000 qualified subscribers. Renowned for spotlighting advancements and industry leaders, our magazine connects lifesciences innovators with key decision-makers across pharmaceuticals, biotech, and healthcare sectors.

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I would like to connect and discuss how your company can leverage this recognition to increase its visibility, just like our previous clients. Let me know the best time to schedule the conversation.

Regards,
Felicia
______________
Felicia Nelson
Life Sciences Review APAC
O: +1 510 570 3495

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(2)授賞通知の違和感

この授賞通知メールを読んで、すぐに「おかしい」と感じた点が3つありました。

①的外れなアワード:通知には「治験翻訳サービスでノミネート」と記載されていますが、当方は近年、治験翻訳を手掛けておらず、現在は主に英語論文の作成・投稿支援に注力しています。このような状況で、当方が「治験翻訳」のカテゴリーでノミネートされたという点に、まず不自然さを感じました。

②非現実的な審査:治験文書の多くは機密情報であり、通常は第三者が自由に閲覧できるものではありません。また、治験文書の翻訳を担当した企業や個人の名前が開示されることもまずありません。そのため、「弊誌読者からの推薦や専門家・編集者らによる総合的な評価に基づいて貴社をノミネートした」という説明に、疑念を抱きました。

③受賞費用の請求:当方はこのアワードに応募した覚えは一切ありません。それにもかかわらず、「ノミネートされた」と一方的に通知され、さらには受賞費用の支払いが必要という点に強い違和感を覚えました。正当なアワードでは、受賞者が金銭を支払わなければならないケースはまれです。

(3)『Life Sciences Review』誌の不審な点

このような違和感を覚えたため、『Life Sciences Review』誌のウェブサイトとSNSを探し、同誌とアワードの実態について調べました。いずれも一見それらしく見えるものの、以下のような不審な点が次々と見つかりました。

  • 企業情報の不足:所在地として「米国フロリダ州フォートローダーデール」と記載され、メールアドレスが示されているだけで、社名や住所、電話番号、代表者など、企業サイトにあるべき基本情報が見当たりません。
  • 編集体制の不明瞭さ:編集長、編集委員、発行頻度、購読料、バックナンバーといった、雑誌としての情報が全く公開されていません。
  • コンテンツの偏り:サイトで公開されている記事の多くは「アワード受賞者の紹介」で、ライフサイエンスに関する専門記事や業界分析などはあまり見当たりません。
  • 審査の不透明さ:アワードの審査員や選考基準、選考方法などの情報が一切公開されていません。
  • 授賞対象分野の広さ:アワードの対象はライフサイエンスの特定の分野に絞られておらず、様々なライフサイエンス分野を対象にアワードが乱発されています。
  • 授賞発表の多さ:SNSでは、毎月、多数の企業が「受賞者」として発表されており、このことからもアワードの乱発が伺えます。
  • 公開情報の不整合:SNSとは対照的に、サイトに過去の「受賞者」として掲載されているのは、2種類のアワードの過去2年分のみに留まっています。また、「トップ10企業」が選出されているライフサイエンス分野のうち、10社すべてが公開されている分野はほとんど見当たりません。実際には、受賞料を支払った企業のみを発表して「受賞パッケージ」を授与している可能性が考えられます。
  • 購読者数の疑わしさ:授賞通知メールでは「86,000人超の購読者がいる」と謳われています。しかし、同誌のLinkedInのフォロワーは2,400人程度で、購読者数との乖離が大きく、購読者数の信憑性に疑念を覚えます。

(4)ネット上の関連情報

「Life Sciences Review」をキーワードにしてネット検索を行ったところ、同誌からのアワード受賞を発表している企業の公式サイトが多数ヒットしました。このことからもアワードの乱発が裏付けられます。

また、X(旧ツイッター)上には、筆者に届いたものとほぼ同じ内容の授賞通知メールが全文掲載されている投稿があり、その投稿者は『Life Sciences Review』誌を「ハゲタカジャーナル」と呼んで警鐘を鳴らしています。このような投稿が複数確認できる点からも、同誌が同様の手口でアワード受賞への勧誘を繰り返している可能性が示唆されます。

(5)日本企業もターゲット

『Life Sciences Review』誌からのアワード受賞を自社の公式サイト・SNSで発表している企業の中には、日本のバイオベンチャー企業や、CRO(医薬品開発業務受託機関)、学術情報・論文作成支援企業なども確認されました。このことから、日本企業もすでに同誌のターゲットになっており、国内でも被害拡大の可能性が懸念されます。

(6)米国メディカルライティング業界内での認識

さらに筆者は米国メディカルライター協会(AMWA)の会員専用フォーラムで、『Life Sciences Review』誌からの授賞通知を共有し、同誌や類似の偽ビジネスアワードに関する情報提供を呼び掛けました。

すると、複数の会員から以下のようなコメントが寄せられました。

  • 「こうした偽ビジネスアワード受賞の勧誘は非常に多く、よくある手口」
  • 「私も数ヵ月前に同じようなメールを受け取った」
  • 「騙されなかったようで良かったですね」

アメリカのメディカルライティング業界でも、偽ビジネスアワードが「詐欺」として広く認識されていることが確認されました。

(7)しつこいリマインダー

筆者はこれらの調査結果を踏まえ、『Life Sciences Review』誌のアワードは「ハゲタカアワード」であると判断し、授賞通知には一切返信せず削除しました。

しかし、その後も同誌のNelson氏からリマインドメールが複数回届いており、「しつこい勧誘」が続いています。これもハゲタカアワードによく見られる特徴の1つです。実際、あるAMWA会員は、別の偽の授賞組織から受賞勧誘メールが「数ヶ月間に20回以上届いた」とコメントしていました。

(8)実体は「広告媒体」

調査を重ねるうち、『Life Sciences Review』誌は、いわゆる学術誌や業界誌ではなく、受賞者の紹介を中心とした「広告雑誌」である可能性が高いことも判明しました。

同誌は受賞者の写真と紹介記事を掲載したファイルを作成し、それを「受賞パッケージ」として受賞者に提供(販売)し、写真と紹介記事をサイトに掲載するだけで、あたかも雑誌に取り上げられたように演出している印象を受けます。

筆者に届いた授賞通知メールでは「a premier print and digital magazine」と謳われていますが、雑誌としての発行実態は確認できず、いわば「受賞者専用の販促ツール」に過ぎないと思われます。

AMWA会員からも本質を突いたコメントが寄せられました。

  • 「3000ドル払えば受賞パッケージを自分のビジネスの宣伝に使えるというだけで、基本的には広告だ」
  • 「多くの偽ビジネスアワードは、何かを受賞したように見せかける広告パッケージか詐欺(scam)。お金さえ払えば個人や企業を掲載してくれる広告媒体に過ぎない」

こうした指摘からも、『Life Sciences Review』誌が提供するアワードは「栄誉」ではなく、「広告スペースの販売」を目的とした商業的な詐欺スキームであると考えられます。

 

3. ハゲタカアワードから身を守る方法

ハゲタカアワードは、見かけ上は「権威ある賞」を装いながら、実際には受賞料などを搾取するだけの「偽アワード」です。まずは、このような詐欺的アワードの存在を認識することが防御の第一歩です

もし思いがけない授賞通知が届いたら、「疑う、調べる、相談する」の3ステップで冷静に対応することを心掛けましょう。以下の8つのポイントを確認することで、被害や誤認を防ぎやすくなります。

(1)授賞通知を冷静に読み、内容を正確に理解する

研究や仕事が評価されたという知らせは嬉しいものですが、すぐに返信するのは禁物です。文面を落ち着いて読み、アワードの趣旨や対象、記載内容の具体性や妥当性などを確認しましょう。

(2)不審なメールのリンクは絶対にクリックしない

授賞通知を装ったメールには、ウイルス感染や個人情報搾取を狙うリンクが含まれている場合があります。特に授賞通知に不自然な英文や見慣れないドメインのURLがある場合は、リンクをクリックせずにメールを削除しましょう。

(3)金銭を要求されたら詐欺を疑う

正当なアワードであれば、「受賞料」などの名目で追加の費用を請求することはまずありません。エントリーもしていないのに授賞通知が届いたり、「受賞パッケージ」などの購入を求められたりした場合は、ハゲタカアワードの典型的な手口と考えてよいでしょう。

なお、初回の通知では料金が明記されず、後日メールやウェブサイトで費用が提示されるケースもあります。最初に金銭の記載がないからといって、安心するのは早計です。

(4)授賞組織の実態をサイトとSNSで入念に調べる

  • 公式サイトやSNSは整備されているか、不自然な英語や日本語はないか
  • 名称、住所、電話番号、代表者などの基本情報が明記されているか
  • アワードの趣旨や実績などが具体的に紹介されているか
  • 授賞式は開催されているか、開催時期、場所、出席者などは妥当か
  • 受賞費用に関する記載はないか、高額ではないか

(5)過去の受賞者情報を確認する

  • 受賞者の氏名・所属先が公開されているか、実在するか
  • 受賞者数が極端に多すぎたり、少なかったりしないか
  • アワードの内容と受賞者の専門性が一致しているか

(6)審査体制を確認する

  • 審査委員会は設置されているか
  • 審査員は公開されているか、実在するか、しかるべき専門家か
  • 選考基準や選考手順が具体的に示されているか

(7)ハゲタカアワードのリストを参照する

過去に報告されたハゲタカアワードや疑わしいアワードの一覧も参考になります。

  • オランダのライデン大学医療センターのEsther van de Vosse准教授によるブログ「Predatory award organization – yet another scam」(英語)では、偽の科学アワードがリストアップされています。
  • ハゲタカジャーナル・学会を扱う専門サイトで、偽アワードの関連情報が紹介されていることもあります。

(8)1人で判断せず、周囲に相談する

授賞通知に少しでも疑問を感じたら、同僚や上司、信頼できる業界関係者に相談しましょう。授賞通知と調査結果を共有し、複数の人の視点で慎重に判断・対応することが、最終的な被害防止につながります。

 

4. ハゲタカアワードの被害防止に協力を

ハゲタカアワードは、受賞者にとっては一見「名誉」のように見えますが、実際には受賞料などの名目で金銭を奪い取る巧妙な詐欺です。知らずに関わってしまうと、研究者や企業などの信用を損なうリスクもあります

こうした被害を未然に防ぐために、本記事の内容をご同僚やご友人、業界関係者の方々と共有していただけますと幸いです。SNSでのシェアや、メール・社内チャットなどでのご紹介も大歓迎です。1人でも多くの方に「ハゲタカアワード」の存在や手口、特徴を知っていただければ、それだけで大きな防波堤になります。

また、『Life Sciences Review』誌などによる偽アワードの受賞を公表している方や企業・研究機関をご存じでしたら、ハゲタカアワードの可能性をそっと教えて差し上げてください。ご本人たちは悪意なく受賞を喜んでいる可能性が高く、第三者からの指摘で初めて詐欺に気づけるケースも少なくありません。

ハゲタカアワードによる被害を受けた方や企業・研究機関は、互いに連携して複数で詐欺組織に立ち向かうことで、被害の回復やその後の再発防止につながりやすくなります。

ハゲタカアワードの情報を広く共有し、被害の連鎖を断ち切ることは、私たち専門職の信頼を守る大切な一歩です。何卒ご協力をお願いいたします。

 

5. ハゲタカアワードのまとめ

  • 受賞料などの搾取を目的とした詐欺
  • 名誉に見えて、実は「お金で買う賞」または「広告媒体」
  • 存在を知り、手口や特徴を理解することが対策の第一歩
  • 授賞通知が届いたら「疑う、調べる、相談する」の3ステップで冷静に対応
  • 不審な授賞通知には返信せず、毅然と無視
  • 受賞を公表すると、かえって信頼失墜の恐れあり
  • 情報を広く共有し、被害の拡大を防ぎましょう

 

著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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実は誰でも医学翻訳者になれる!資格認定制度を阻む3つの要因

プロの医薬翻訳者になるのに必要な資格は?

医薬翻訳に興味を持つ方から「医者や看護師、薬剤師など医療従事者の資格がないと医学翻訳者になれないですか?」、「プロの医学翻訳者は、何か試験に合格しないとなれないですか?」などと質問を受けることがあります。

また、医薬翻訳を外注する機会のある企業や医師などからは「質の高い翻訳がなかなか手に入らず、翻訳者の語学力や専門知識に疑問を感じることが多いが、医学翻訳は資格制ではないのか?」などと尋ねられることがあります。

国内の通訳・翻訳業務で、資格なしに請け負うことが法律で禁止されているのは、いわゆる「通訳ガイド」だけです。(追記:2017年5月26日に改正通訳案内士法が国会で成立し、無資格でも有償で通訳ガイドを行えるようになりました。)

翻訳に関しては、どの分野でも認定試験や資格制度は存在せず、公的な免許や資格は一切必要ありません技量や経験を問わず誰でも「プロの翻訳者」を名乗って翻訳業務を請け負うことが出来ます

医薬翻訳者の翻訳レベルは実際どの程度

翻訳業界への参入は敷居が低いため、この20年間に医薬翻訳者のすそ野は急速に広がり、医学・製薬業界で「なくてはならない存在」になりました。

その反面、大多数の医薬翻訳者が経験年数に関わらず初心者レベルで、訳文の質が低いことが多いです。そのため、以下のような悪循環が長年続いています。訳文の質が低い⇒依頼者側の不満が根強い⇒医薬翻訳が「専門職」として十分に認識されない⇒翻訳の報酬が低い⇒有望な人材が集まりにくい⇒初心者レベルの翻訳者ばかり増える⇒訳文の質が低い。

科学技術文書の最大の役割は「情報を正確に伝えることであり、特に医薬翻訳では訳文の内容が人の命に関わる場合が多いため、誤訳は1つも許されません重大な誤訳や思い違いを防ぐには、高い語学力読解力だけでなく幅広く深い専門知識が必要です。また、正確でわかりやすい訳文を作るには高度な翻訳技術も必要です。

しかし、これらの能力を兼ね備えた医薬翻訳者は、依然としてほんの一握りしかいません。「専門職」として優秀な人材を育て、医薬翻訳全体のレベルアップを図るためには、通訳ガイドのように認定試験を実施し、「医学翻訳士」のような公的資格を設ける必要があるのではないでしょうか。

医薬翻訳で資格認定制度が難しい理由

業界内で統一した認定試験を実施して、合格者に資格を付与するとなると、下記のような3つの問題が生じて来ます。
1. どの団体が実施するのか
2. 誰が出題・評価するのか
3. 多様な医薬翻訳を1つの資格でカバーできるのか

問題1:どの団体が実施するのか
試験を実施するには専門の組織が必要ですが、残念ながら医薬翻訳の業界団体は存在しません。そもそも翻訳業界全体でも「日本翻訳連盟」(JTF)、「日本翻訳協会」(JTA)、「日本翻訳者協会」(JAT)など複数の団体が存在し、統一団体がありません。そのため、JTFやJTA、翻訳学校などが各々独自に検定試験(実技試験)を実施しており、業界統一試験はありません。

このような状況の中、翻訳サービス提供に関する国際規格「ISO 17100」(2015年発行)に基づき、日本規格協会に「翻訳者評価登録センター」(RCCT)が創設され、2017年4月1日から「翻訳者登録制度」がスタートしました。

RCCTは医薬分野を含む4分野の検定試験を実施するとのことですが、JTFの「ほんやく検定」を新規翻訳検定として登録したことが発表されたので、新たに試験を創設するのではなく既存の検定試験を利用するようです。今後、JTFの「ほんやく検定」が業界統一試験のような役割を果たすようになるのでしょうか。登録制度の有用性なども未知数であり、大阪と東京で開催される説明会の内容に注目が集まるところです。

問題2:誰が出題・評価するのか
真に「プロ」と呼べる優秀な医薬翻訳者が一握りしかいないため(特に英訳)、適切な試験問題を作成して、唯一絶対の「正解」が存在しない訳文の良し悪しを文脈に応じて見極め、受験者の翻訳レベルを正確に判定できる医薬翻訳者は極めて少ないと思われます。そのため、どのような団体が資格認定試験や検定試験を実施するにしても、医薬分野の試験の品質担保が難しいことは容易に想像できます。

問題3:多様な医薬翻訳を1つの資格でカバーできるのか
一口に「医薬翻訳」と言っても、扱う内容や文書の種類は多岐に渡っています。大きく分けても「論文翻訳」、「製薬に関する翻訳」、「医療機器に関する翻訳」、「その他」(診断書、特許など)という4つの異なるジャンルがあり、いずれも様々な領域に細分化されます。さらに、どのジャンルも「和訳」と「英訳」の2種類があり、「医薬翻訳」がカバーする範囲は意外と広いです。

したがって、1人の医薬翻訳者がすべてのジャンルに精通し、オールマイティにこなすことは現実的に不可能です。実際、理系出身で優秀な医薬翻訳者ほど、自分の専門に応じて得意なジャンルに特化している傾向が見られます。このような状況下で、「医薬翻訳」と一括りにして実技試験を実施したり、資格を与えたりすることに意味があるのか疑問が生じて来ます。かと言って、試験や資格を細分化するのは煩雑です。

これらを踏まえると、「医薬翻訳」と一括りにして統一試験を実施する場合には、いずれの翻訳方向についても、医薬翻訳の全ジャンルに共通する基本的な翻訳スキルしかテストできないかもしれません。

こんな統一試験なら実現可能?

基本的な翻訳スキルしか評価できなくても、業界統一の認定試験を実施する意義や価値はあると思います。例えば英訳では、基本的な英文法や医薬英文の書き方のルール(例:punctuation、略語の使い方)さえ身に付いていない医薬翻訳者が多いので、どの医薬分野の英訳にも最低限必要な知識をテストして担保するだけでも、翻訳スキルの客観的指標が欲しい翻訳依頼者にとって、そして医薬翻訳者のプロ意識・信頼性の向上や「専門職化」にとって有益かもしれません。

欧米でも、例えば米国メディカルライター協会(AMWA)のメディカルライティング認定試験(MWC)や、生命科学論文のエディティング認定試験(BELS exam)は、いずれも各分野共通の基礎知識中心に出題されており、マークシート方式で実施されています。ライティングやエディティングのスキルを調べる実技試験ではありません。

医薬分野の全ジャンルに共通する基本的な翻訳知識をテストするだけであれば、出題者や審査員を務められる翻訳者の範囲が広がり、統一試験の実施可能性や持続性が向上するという利点もあります。

したがって、医薬翻訳の統一試験としては、手始めに医薬分野の基本的な翻訳知識に関するマークシート方式の筆記試験を実施するのが良いかもしれません。その後、必要に応じてレベル別の実技試験を順次追加していけば良いのではないでしょうか。

新たに統一試験制度を創設するのが難しいようであれば、医薬分野の既存の英語検定試験(例:日本医学英語教育学会の医学英語検定試験、日本CRO協会の治験実務英語検定)を、医薬翻訳レベルの指標の1つとして活用する方法もあると思います。

まとめ

医薬翻訳者のすそ野が大幅に広がり、「医薬翻訳」という翻訳ジャンルが十分確立した現在、次の段階として、翻訳の質を担保する業界統一認定試験制度を導入・確立して、医薬翻訳の「専門職化」に進む必要があるのではないかと思います。

「医薬分野における英文作成外注の問題点と対策」セミナー開催決定!
~英文品質向上のために発注側と受注側は何をすべきか~
2017年5月24日(水) TKP市ヶ谷カンファレンスセンター(東京都新宿区)
セミナーの詳細はこちら
(追記:本セミナーは盛況のうちに終了いたしました。
多数のご参加ありがとうございました)

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AMWA総会参加ガイド2:自費参加者必見!航空券・ホテル代ゼロで参加する方法

前回、米国メディカルライター協会(AMWA)年次総会の参加ガイドを本ブログに掲載したところ、予想以上に好評で大変嬉しく思っています。過去の参加者の方々からは「こういう情報が欲しかった」「もっと早く知っていれば・・・」などの感想を頂きました。また、今年の総会に最近申し込んだ方によるとconference hotelがすでに満室で、「クリノスのブログどおり、まずホテルを予約すべきだった」とおっしゃっていました。総会参加申込のキャンセル期限が近づくとconference hotelの予約キャンセルが出ることもあるので、諦めずにconference hotelの予約サイトを時々チェックしてみて下さい。

前置きが長くなりましたが、ご好評にお応えしてAMWA年次総会参加ガイドの続編を掲載します。第2弾は、自費で参加する方のための「参加費用削減法」です。ここ数年、フリーランスの医薬翻訳者・メディカルライターで総会に参加される方が毎年1~数人いますし、企業に属していても自費で参加される方もいますので、出来るだけお金を掛けずに参加する方法を私自身の経験に基づいてご紹介します。

AMWA年次総会の参加に必要な費用の主な内訳は総会参加費渡航費宿泊費の3つです。これらをいかに減らすかが鍵になるので、この3つを中心に説明します。

 

1. 総会参加費

総会参加費(conference registration fee)をゼロにする方法は1つだけあります。それはワークショップの講師になることです。講師はボランティアなので、AMWAから講演料などは支払われませんが、総会参加費が免除になるそうです。しかし、この方法は私達日本人にはハードルが高いので、利用できる人は極めてまれでしょう。

その一方で、総会参加費を削減する方法が今年初めて出来ました。それは「早期割引料金」です。6月末までに申し込むと100ドル割引になりました。来年以降も早期割引料金が設定されるかわかりませんが、早期割引を利用すれば総会参加費を若干削減できます。さらに、円高のタイミングを狙えば一層の削減が可能なので、申込受付開始後は為替レートを毎日チェックすると良いでしょう。

総会参加費は全日程参加以外に1日のみの参加費も通例設定されますが、ワークショップは1回の総会当たり4つまで申し込めるので、certificateの取得を目指すなら全日程参加するほうがお得だと思います。

なお、ワークショップに参加するには、総会参加費以外にワークショップ参加費(workshop registration fee)が必要になります。ワークショップ1つ当たりの参加費(2016年は200ドル)が総会参加費に加算されるので、申し込むワークショップの数が多ければ、それだけ費用が増えます。残念ながら今のところワークショップ参加費を減らす方法はありません

 

2. 渡航費

航空会社のマイレージ・プログラムの会員になってマイルを貯め、無料往復航空券を取得すれば渡航費をゼロにできます。飛行機に乗らずに効率良くマイルを貯めるには、航空会社の提携クレジットカードを日常の支払いに多用するのがお薦めです。

 

航空会社とカードの選び方、カード申込のタイミング、カード年会費削減の裏技、効果的なカード利用法などについては、ネット上にたくさん情報があるので、いろいろ調べて、自分の好みやライフスタイルなどに合う方法でマイルを貯めると良いでしょう。

 

3. 宿泊費

3.1 ホテルのポイント利用

渡航費の削減方法同様に、外資系大手ホテルチェーンの会員になってポイントを貯めて、無料宿泊特典を利用すれば宿泊費をゼロにできます。ポイントが足りなくて全日程を無料にできなくても、1泊からポイント利用が可能なので、宿泊費を削減することができます。宿泊時に提携航空会社のマイルも、ポイントと一緒にもらえるホテルチェーンもあり、航空会社のマイルも貯めたい方にとっては「一石二鳥」です。

ちなみにAMWAのconference hotelはシェラトン、ハイアット、ヒルトンのどれか1つ、または2つが指定されることが多いので、スターウッド、ハイアット、ヒルトンのいずれかまたは複数の会員になると良いと思います。(2024年追記:コロナ禍が始まって最初の数年はバーチャル式の開催になりましたが、その後は対面式が再開され、マリオットが会場になっていることが多いです)

たとえこれら3系列からconference hotelが指定されなくても、年次総会が開催されるような比較的大きな都市では会場近くにいずれかの系列のホテルがあることが多いので、自分がポイントを貯めている系列のホテルにポイント利用で泊まって宿泊費を削減・無料化できます。例えば2015年のconference hotelはハイアットでしたが、私は主にヒルトンのポイントを貯めているので、1ブロック隣のヒルトンに泊まってポイントを利用しました。

AMWAのサイトでは、今後数年間の年次総会の開催日・開催地・conference hotelが発表されているので、予定を確認しながら戦略を立てると良いでしょう。

ホテルに泊まらずにポイントを貯めるには、航空会社のマイルの貯め方と同様に、ホテルの提携クレジットカードを利用するのがお薦めです。ホテルチェーンとカードの選び方や、効果的なカード利用法など詳しいことはネットでお調べ下さい。

3.2 ルームシェア

他の参加者と一緒に泊まるのも宿泊費削減法の1つです。アメリカのホテルの料金設定は「1人当たり」ではなく「1室当たり」なので、2人で同じ部屋に泊まれば宿泊費が半額になります。

私はフリーランス時代に、友人のフリーランス医薬通訳・翻訳者と毎回一緒に泊まっていましたが、どこのconference hotelでもチェックアウト時に宿泊費を割り勘にしてもらい、各々のクレジットカードで半額ずつ支払い、1人ずつ領収書を発行してもらえました。気が合いそうな自費参加者がいたら、思い切って誘って一緒に泊まってみるのも1つの手です。数日間寝食を共にすることで、有益な業界情報や深い友情など、嬉しい「おまけ」も得られるかもしれません。

 

4. 領収書の活用

フリーランス・個人事業主の場合は節税のために、上記3つの費用以外の出費についても「領収書」を必ずもらっておくことをお薦めします。

例えば現地の空港・ホテル間の移動費用(例:空港シャトルバスやタクシーの乗車代)は「交通費」として経費に計上できるので、料金の支払い時に領収書をもらっておきましょう。

また、現地では1人での食事は出来るだけ避け、(たとえファストフードでも)他の参加者らと一緒に食べて領収書をもらっておきましょう。仕事の関係者(同業者やクライアントなど)との会食代は「接待交際費」か「会議費」として経費に計上できます。

現金で支払ったドル建ての領収書は、支払日の為替レートで日本円に換算すれば経費処理が可能です。カード払いの場合は必ずカード伝票をもらい、後日届くカード利用明細書で日本円に換算されている金額で処理し、カード利用明細書も証拠として保存しておきます。

このような工夫をすれば、多少なりとも節税が可能です。経費計上の可否や処理方法など詳しいことは税理士にご確認下さい。

 

5. Never give up!

ここまでしてAMWA年次総会に参加したいという方はまれかもしれませんが、経済的な理由で参加を諦めている方の背中を少しでも押したくて、私のAMWA経費削減法を公開しました。

特に、有望な若手メディカルライター・医薬翻訳者の方に1人でも多くAMWAで学んで頂き、今後のメディカルライティング業界や医薬翻訳業界を牽引して頂きたいと願っています。日本からのAMWA参加者は年齢が高めですが、「先行投資」は早いほうが、投資したお金と時間と労力を回収しやすいですから、「いつかAMWAに行ってみたい!」と考えている若手の方には、本ブログを参考に1日も早くAMWA年次総会参加を実現して頂ければ幸いです。

Where there is a will, there is a way.」(為せば成る)です。本気でやりたいことは諦めず、「強い意志」と「賢い知恵」を持って実現・継続させましょう!

 

6. まとめ

  • 総会参加費は、現時点では早期割引を利用する以外に削減法なし。
  • 渡航費と宿泊費は、航空会社のマイルやホテルのポイントを利用すれば無料化や削減が可能。両方ゼロにすれば、総会参加費のみでの年次総会参加が可能
  • フリーランスの場合、現地での支払い時に領収書をもらい、経費に計上すれば節税可能。

※こちらの記事もお勧めです。
AMWA年次総会参加ガイド1:申込~出発後の注意点10個 【初参加でも安心】

 

著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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AMWA総会参加ガイド1:申込~出発後の注意点10個 【初参加でも安心】

今年も米国メディカルライター協会(AMWA)年次総会に参加するか否かが話題に上る時期になり、知り合いのメディカルライター数人がすでに「申し込んだ」とおっしゃっていました。私も申し込みましたが、毎年、初参加の方から申込・参加の注意点やコツを聞かれるので、AMWA年次総会の参加に関するアドバイスを、3段階(参加申込、出発前の準備、出発後)に分けて以下にまとめました。年次総会の基本情報はAMWAホームページの「Annual Conference」サイトをご覧下さい。

 

1. 参加申込

1.1 まず宿の確保

年次総会の参加申込の前に、まずホテルを予約することをお薦めします。毎年、年次総会の会場として利用されるホテル、もしくは会場となるコンベンションセンターに隣接するホテルが「conference hotel」として指定され、AMWA参加者は割引料金で泊まれます。このホテルに泊まるのが便利ですし、日本人参加者の多くが泊まっていて安心です。

しかし、AMWAが確保している部屋数は限られているので、予約が一杯になってしまうことがしばしばあります。その場合、会場周辺の別のホテルも「conference hotel」として追加指定されることがありますが、会場から徒歩数分~10分ほど離れていることもあります。

また、追加の「conference hotel」が用意されない年もあり、その場合は自分でホテルを探すことになります。しかし、ビジネスシティの秋は大きなイベントや学会などの開催が多いので、AMWA年次総会開催間近にホテルを予約しようとしても、会場周辺は軒並み満室だったり、宿泊料が高騰していたりすることが多いです。

ホテルの予約変更・キャンセルはチェックインの1~7日前まで無料で可能な場合が多いので、AMWA年次総会に参加する可能性が出て来たら、とりあえず「conference hotel」の部屋を予約しておくと安心でしょう。予約の時点で宿泊日数が決まっていない場合は、念のため長めに予約しておき、必要に応じて後日調整するのが得策です。

1.2 ワークショップの申込は早めに

長年定番のワークショップや有名講師のワークショップは人気が高く、早々に申し込みが定員に達して、受付が締め切られることも珍しくありません。お目当てのワークショップがある場合は早めに申し込むと良いでしょう。受付状況はAMWAサイトの年次総会申込ページで確認できます。

1.3 Golden Apple賞を受賞した講師がお薦め

どのワークショップを選べば良いか迷ったら、教え方が上手な講師のワークショップを選ぶのも1つの手です。その際に参考になるのが、「Golden Apple賞」(Golden Apple Award)の受賞の有無です。「Golden Apple賞」とは、各ワークショップの受講者全員を対象に毎年行われるアンケート調査の結果、高い評価を長年得ている講師に与えられる賞で、授与される講師は毎年1人だけです。日本でも有名なTom Lang氏らが過去に受賞しています。

年次総会の申込プログラム(registration brochure)やワークショップのリストを見て、講師名に金色のリンゴのマークが付いていたら、その講師は「Golden Apple賞」を受賞しています。プログラムやリストにマークが表示されていない年もあるので、その場合はAMWAホームページのこちらで過去の受賞者をご確認下さい。

 

2. 出発前の準備

2.1 ワークショップ事前課題提出後の確認

ワークショップには必ず事前課題(assignment/homework)があります。certificate取得に必要な単位を取得するには、事前課題の解答を締切までに提出しなければなりません。メールで講師に提出するのが通例ですが、先方のサーバーにブロックされてメールが戻って来たり、迷惑メールのフォルダに振り分けられて講師が気付かなかったりすることがあります。念のため、事前課題の解答提出時に講師に受領確認の返信を要請すると良いでしょう。

通例、数日以内に講師から返信が来ますが、返信がない場合は講師に再度メールを送ってみましょう。それでも返信がない場合は、AMWA事務局にメールで問い合わせることをお薦めします。AMWA事務局は、アメリカでは珍しく対応が速くて親切なので、わからないことやトラブルなどがあった場合は事務局に問い合わせてみて下さい。いずれにしても、ワークショップの単位を取得できないと勿体ないですから、メールなどのトラブルに備えて早めに事前課題の解答を提出するのが無難でしょう。

2.2 ワークショップ配布資料の受領

AMWAの経費削減のためか、ワークショップの配布資料(handout)が会場で提供されないことが多くなりました。通例、年次総会の数日前に、指定のサイトからダウンロードするよう指示が書かれたメールが届くので、メールを見逃して配布資料の準備を忘れないよう気を付けましょう。日本を発つ前に印刷して持って行けば、宿泊先や会場で慌てなくて済みます。なお、ワークショップにラップトップやタブレットなどを持ち込む場合は、配布資料を印刷せずに電子媒体で持参・参照することも可能です。

2.3 英語の自己紹介

ワークショップやmeal event、ホテルなどで外国人参加者らに自己紹介しなければならない機会があるので、予め英語で自己紹介を考えて、スラスラ言えるように練習しておくと安心です。名前と職種を2~3文で簡潔に説明できると良いでしょう。例えば「I’m Taro Suzuki from Japan. I do regulatory writing at a pharmaceutical company in Tokyo.」や、「I’m Hanako Sato from Japan. I’m a freelance medical translator.」のような感じです。名刺をたくさん持って行くこともお忘れなく!

2.4 服装

年次総会のドレスコードは「ビジネスカジュアル(スマートカジュアル)」なので、服装がラフになり過ぎないように気を付けましょう。

また、開催地・開催時期を問わず、会場は寒いことが多いので暖かい服装を持って行くことをお薦めします。ちなみに私はスカートでは足が冷えるので、いつもパンツスーツで出席しています。それでも会場は寒くて、ボトムの下にタイツを履いたり、ストールを膝掛けにしたり、ジャケットの下にカーディガンやセーターを着たりします。他の日本人参加者も薄手のダウンジャケットやカイロを持参するなど、会場の防寒対策をしている方が多いです(特に女性)。

せっかく年次総会に参加しても寒くて講義に集中できないと勿体ないですから、温度調節しやすい服装をご準備下さい。

 

3. 出発後

3.1 アメリカ国内の時差に注意

アメリカ本土には4つの時間帯がある上に、時期や州によっては「夏時間」が採用されているので、日本からAMWA開催地に直行しない場合は経由地の時間帯や、経由地と開催地との時差、「夏時間」の有無に注意が必要です。「夏時間」は11月上旬に終わるので、年次総会が11月上旬に開催される場合は「夏時間」の終了日にも要注意です。

時間を間違えて、飛行機の経由地で乗継便に乗り遅れたり、開催地で初日の基調講演やワークショップなどに遅れたりする日本人参加者が時々いらっしゃいます。ワークショップは遅刻すると入室できず単位を貰えないので、開催地に着いたら現地時刻を必ず確認しましょう

3.2 オリエンテーション

例年、会期初日か2日目に、初参加者を対象にオリエンテーション(無料)が開催されるので、事前にプログラムで日時を確認して参加することをお薦めします。

3.3 Meal event

会期中にレセプションやSablack luncheon/dinnerなどの「meal event」が開催され、追加料金なしで参加できるeventが年々増えています。日本人参加者で集まって同じテーブルを囲むことが多いので、英会話に自信のない方も怖がらずに参加して、各イベント会場で日本人参加者を探してみて下さい。

また、AMWA主催のmeal eventとは別に、日本人参加者のみで独自に非公式の「食事会」を開催して親睦を図っています。通例、常連の参加者が幹事となり、金曜または土曜の夜に開催されています。AMWA開催地に到着してから幹事が日時とお店を決めて、メールで他の参加者に知らせることが多いので、事前に常連参加者にAMWA参加の旨とメールアドレスを伝えておくか、AMWA会場で早めに日本人参加者を見つけて尋ねると良いでしょう。

日本人参加者については、AMWA開催数日前に事務局から送られてくるメールのリンク先にある「Attendee list」(参加者名簿)で確認できます。日本からの参加人数は毎年十数名です。

会期中はワークショップの休憩時間(beverage break)などに、無料の飲み物が用意されている部屋(hospitality roomやresource hallなど)に行くと、日本人参加者に会える確率が高いです。多くの日本人が1人参加のため、「食事会」以外でも数人で昼食や夕食に出掛けたりすることが多いので、AMWA初参加で心細い方は早めに日本人参加者を見つけて、積極的に声を掛けると良いでしょう。

 

4. その他

海外出張・旅行に慣れていない方や初めて渡米される方は、アメリカ旅行時の基本的な注意事項を旅行ガイドブックなどでご確認下さい。また、同僚やお知り合いに過去のAMWA参加者がいらっしゃる場合は、移動時の注意点やAMWAの様子などをお聞きになってみて下さい。

以上、初めてのAMWA参加でも実り多い経験ができるよう、少しでもお役に立てば幸いです。ご質問や追加事項などありましたら、コメント欄にお書き頂くか、お問い合わせフォームからご連絡下さい。

AMWA年次総会参加ガイド第2弾では、自費で参加する方のために、出来るだけお金を掛けずに参加する方法を紹介します。

次回
AMWA年次総会参加ガイド2:自費参加者必見!航空券・ホテル代ゼロで参加する方法

著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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速くて楽な語彙力強化法:医薬用語の接頭語と接尾語を知ろう!

6月10日に弊社主催で「がん臨床試験のための腫瘍学入門セミナー:知っておくべき、がんの常識と日英専門用語」を都内で開催しました。当日は多くの方にご参加頂き、お陰様で盛況のうちに終了することができました。ご来場下さった方々には改めて御礼申し上げます。

セミナー終了後にアンケート調査を実施した結果、「本セミナーで最も有益だった内容は?」という設問に対して一番多かった回答は、意外にも「分子標的薬の一般名の命名法」でした。

抗がん剤の接尾語

皆様の中にも命名法をご存知ない方がいるかもしれませんので、少しだけご紹介しましょう。例えば分子標的薬が何らかの阻害剤(例:チロシンキナーゼ阻害剤)の場合は、「△△ニブ(-nib)」と名付けます(例:ゲフィチニブ)。「-nib」は「inhibitor」の略です。一方、「抗体医薬」の場合は「△△マブ(-mab)」と名付けます(例:リツキシマブ)。「-mab」は「monoclonal antibody」(モノクローナル抗体)の略です。したがって、一般名の語尾を見れば、分子標的薬の種類がわかります。

他に、薬剤が標的とする物質や、由来する動物種にも基づいて一般名を命名しますので、分子標的薬の命名法を知っていると、一般名を見るだけで薬剤の基本情報がある程度わかります。詳しい命名法は、WHOの抗体医薬命名法の指針(英文)などをご覧下さい。

分子標的薬以外の抗がん剤の一般名も、白金製剤は「プラチナ」にちなんで「△△プラチン」(-platin)と命名することや(例:シスプラチン)、抗がん性抗生物質は「△△マイシン」(-mycin)が多いこと(例:ブレオマイシン)などを知っていれば、一般名を見るだけで薬剤クラスがわかります。抗がん剤以外でも、一般名に「法則性」が見られる薬剤が多数あります。

心電図の接頭語と接尾語

医学用語も、よく使われる「接頭語」(prefix)と「接尾語」(suffix)を知っていれば、初めて見る難しい専門用語でも、辞書を引かずに意味を推測できることが多々あります。

例えば「electrocardiography」という単語を見てみましょう。接頭語「electro-」は「電気の」という意味で、「cardio-」は「心臓の」という意味、そして接尾語「-graphy」は「検査(法)」という意味なので、これらを組み合わせて「心電図検査」という意味だとわかります。

 

この単語の接尾語が「-gram」に変わると、どのような意味になるでしょうか。「-gram」は「検査した結果、検査の記録」を表しますので、「electrocardiogram」は、波形が書いてある「心電図記録」という意味になります。また、接尾語「-graph」は「検査の装置」を指すので、「electrocardiograph」は「心電(図)計」の意味になります。臨床研究や治験で心電図が使われることが多いですが、略語「ECG」をフルスペルで書く際は、意図する意味に応じて語尾を変えて、誤訳を防ぎましょう

「心電図」の接頭語と接尾語の知識は「脳波」(EEG)にも応用できます。接頭語「encephalo-」は「脳」を表すので、「electroencephalography」は「脳波検査」、「electroencephalogram」は「脳波(記録)」、「electroencephalograph」は「脳波計」だとわかります。逆に「脳波検査」を英語で書きたい場合は、「electro-」と「encephalo-」と「-graphy」を組み合わせて書けばOKです。

接頭語と接尾語を知るメリット

このように医薬用語の接頭語と接尾語を知ると、難しい専門用語を1つずつ丸暗記しなくてもボキャブラリーを強化できますまた、医薬分野の英文を読む際も書く際も、辞書を引く手間を省けてスピードアップできます。拙著『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』シリーズI改訂版には、医薬分野の代表的な接頭語と接尾語のリストを載せていますので、ご活用頂ければ幸いです。

何事も「ルール」や「法則性」を知ると、理解や記憶・習得の省力化が図れて、楽に速く上達できます。メディカルライティングや医薬翻訳では、薬剤の命名法や医薬用語の接頭語・接尾語などの「法則性」を知って、効率良くスキルと作業スピードを向上させましょう!

追記:ピコ太郎のヒット曲「PPAP」は、医薬用語の接頭語と接尾語を覚えるのに使えます。例えば「♪I have “erythro-“ (=赤い).  I have “-cyte” (=細胞).  Ahhh, erythrocyte! (=赤血球)」のような感じで、様々な組み合わせで替え歌を作って医薬用語を楽しく覚えましょう!

推薦図書:
『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』シリーズI改訂版
146~153頁「医薬用語の接頭語と接尾語」一覧表
※本シリーズは完売・絶版になりました。あしからずご了承下さい。

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著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
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英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
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hipはお尻じゃない!裏取りの重要性

ご存知の方も多いと思いますが、世界的に有名なロック・ミュージシャンのプリンスさんが4月21日に57歳の若さで他界しました。死因については依然として警察が調査中ですが、鎮痛剤の過剰摂取が疑われています。

海外の報道によると、プリンスさんは「hip surgery」の既往があり、「hip pain」に長年悩まされていたため鎮痛剤を使用していたと、関係者が語っているそうです。日本では、この「hip surgery」と「hip pain」が、各々「腰の手術」「腰痛」と訳されている新聞記事やウェブサイトが散見されますが、いずれも誤訳だということに皆さんはお気づきでしょうか?これは医薬翻訳でよくある誤訳の1つなので(例:骨粗鬆症治療薬に関する治験文書中の「hip」)、本ブログで取り上げたいと思います。

1. 「hip」はどこを指す?

まず、お手持ちの英和辞典や英英辞典、医学辞典で「hip」を引いてみて下さい。試しに、日本で一番大きな英和辞典『ランダムハウス英和大辞典』第2版(小学館)で「hip」を引くと、最初に「1. 臀部、ヒップ(日本語の「尻」と違って大腿上部から胴のくびれにかけての側面の隆起の一方)、腰;腰回り(の寸法)」と書かれています。若干わかりにくい説明文ですが、日本語の「お尻」や「ヒップ」と同じ意味ではなさそうだということはわかると思います。続いて2番目の意味を見ると「2.(=hip joint)」と書かれています。そこで「hip joint」を引くと「股関節」と書かれています。そうです!「hip」は「お尻」ではなく「股関節」なのです。

したがって、プリンスさんが長年傷めていたのは「腰」ではなく「股関節」だったのです。「hip surgery」を「hip replacement」(=人工股関節置換術)と具体的に記載している海外の報道もありますので、「hip」は「股関節」で間違いないでしょう。「腰」と「股関節」では、部位がだいぶ違いますね。このような誤訳はプリンスさんの記事では大きな影響はないかもしれませんが、医学論文や製薬関連文書などで身体の部位を訳し間違えると、最悪の場合は患者や被験者の命に関わりますから、翻訳時には細心の注意が必要です

2. 意外に多い?!英語の「勘違い」と「思い込み」

今回取り上げた「hip」のように日本語で使われているのとは違う意味の英単語や、言葉の意味や使い方に関して間違った「思い込み」や「勘違い」をしていることが意外に多くあります。

例えば、拙著『薬事・申請における英文メディカル・ライティング入門』第4巻でご紹介しているように、形容詞「different」「similar」や動詞「compare」に、「between X and Y」というパターンを併用する日本人が非常に多いですが、これらの形容詞や動詞に「between X and Y」を使うのは間違いです。正しい構文と前置詞は「X is different from Y」、「X is similar to Y」、「X is compared with Y」です。お手持ちの英和辞典や英英辞典で文例を確認してみて下さい。「お尻」を指す英語の解剖学的名称も、この機会に調べてみて下さい。

3. ライティング・翻訳では「裏取り」の手間を惜しまない

メディカルライターも医薬翻訳者も、情報を正しく伝えること」が最大の使命ですから、言語の種類を問わず、ライティングでも翻訳でも校閲でも、自分のボキャブラリーや知識を過信せず、確認の手間を惜しまずに丹念に下調べや「裏取り」(=裏付けを取ること)をすることが欠かせません。そのことを、プリンスさんの死亡記事を読みながら改めて痛感しました。

皆さんの中には「何も見ずにスラスラ書ける・訳せるのが理想的」、「ベテランの翻訳者は何も見なくても訳せる」などと思っていたり、「いつまで経っても、英文を書く時や翻訳する時に調べ物に時間を取られてしまう」などと悩んでいたりする方がいらっしゃるかもしれません。しかし、私が知る限り、ライティングや翻訳が上手な人ほど、綿密にリサーチ(下調べや裏取り)していて、初心者ほど「怖いもの知らず」で何も調べずに書いたり訳したりする傾向が見られます。裏を返せば、綿密なリサーチを繰り返しているからこそ、正確なライティングや翻訳が可能になり、上手なライターや翻訳者になれるのかもしれません。

このことを裏付ける興味深いデータがあります。季刊誌『通訳・翻訳ジャーナル』(イカロス出版)2016年春号で、翻訳歴が平均約10年の日本人翻訳者68名(分野は問わない)を対象に実施したアンケート調査の結果、翻訳の作業時間のうちリサーチに費やす時間が「半分以上」という回答者が約6割を占めていました。調査のサンプルサイズが小さいですが、やはりベテラン翻訳者の多くは丹念なリサーチを行っている傾向が窺えます。

また、ベストセラー小説『ダ・ヴィンチ・コード』を日本語に訳した文芸翻訳家・越前俊弥氏は、翻訳者の3条件の1つに「調べ物が好き」を挙げています。これは翻訳者だけでなく、「書くこと」を生業とする人々全員に共通の必須条件だと思います。

昨今はネットで手軽にリサーチができますし、その分、調べ物の要求レベルが上がっています。メディカルライターや医薬翻訳者の方は、たとえ医学書などの参考書を持っていなくても、少なくとも辞書とネットで単語の意味や用法をこまめに確認する習慣を身に着けましょう。調べ物は面白いですし、探していた情報や表現を見つけて疑問点を解決できた時のスッキリ感や達成感は格別です!

4. 「裏取り」の時間を確保しよう!

ライティングや翻訳の「スピード」だけでなく「品質」も重要な場合に、締切までの期間が短すぎてリサーチの時間が十分取れないと予想されたら、ライターや翻訳者の方は勇気を出して上司やクライアントに締切の延長を相談してみて下さい。また、日頃から参考書を集めたり、ネットの検索方法を工夫したり、有用なサイトをブラウザに登録しておいたりして、リサーチのスキルを磨いておきましょう。

一方、上司やクライアントの方は、リサーチも考慮して、十分な作業時間を部下や外注先に提供するよう心掛けてみて下さい。一般に、作業期間が短いほどライティングや翻訳の品質は下がります。速かろう悪かろうです。文書の品質向上にはリサーチの時間も必要だということを認識しましょう。

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著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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がんの基礎知識を学ぶ3つのメリット

がん領域の研究・開発が盛んな昨今、製薬企業・CROから英文メディカルライティングの研修や講演をお引き受けすると、「抗がん剤の治験総括報告書やプロトコルを取り上げてほしい」「がんに関する英語表現を教えてほしい」など、がん領域の英語学習のご要望を頂くことが増えています。

しかし、英語表現を学ぶ前に、そもそもがんの基本的な事柄さえ十分知らない・理解していない受講者が多いことに驚きます。例えば和文英訳の演習で「進行がん」を「progressive cancer」と誤訳する受講者が意外に多いのですが、「進行がん」の意味を正しく理解していれば、「進行性の」という意味の形容詞「progressive」を使うことはおかしいと気付くはずです(ネットでも簡単に調べられる専門用語の定訳を確認していないことも問題ですが・・・)。残念ながら、「腫瘍学」(オンコロジー)の基礎を体系的に習った経験があるメディカルライター・翻訳者は少ないようです。

ライティングでも翻訳でも、言語の種類を問わず、文書の内容を正確かつ十分に理解できなければ、内容を他者に正しく伝えることは難しく、重大な記述ミスや誤訳を犯すリスクが高くなります。だからこそ、メディカルライターや医薬翻訳者には医薬分野の専門知識が求められるのです。

また、にわか仕込みの断片的な知識のままでは、がんに関する最新の知見も十分に理解できず、がん関連文書の内容に今後ますます付いていけなくなります。キャリアアップを目指すなら、がんの専門知識を増やすことも考えると良いかもしれません。

そこで、がんの基本的な事柄をよく知らない方は、腫瘍学の基礎を学んでみてはいかがでしょうか。中級レベルで知識が断片的あるいは中途半端な方は、一度基本に戻って体系的に学び直すと、知識が整理されて利用・応用しやすくなると思います。

基礎を学ぶ3つのメリット

様々な疾患の中でも、がんの場合は基礎を学ぶメリットが3つもあります。

【メリット1】
がんには胃がんや乳がん、白血病など様々な種類がありますが、がんの基本的な概念・用語・診断・治療などは多くのがんに共通するので、腫瘍学の基礎を学ぶと様々ながんが一気に理解しやすくなります。他の疾患(例:高血圧、骨粗鬆症)について勉強した場合、その知識はその疾患の理解にしか役立たないことが多いので、他の疾患に比べてがんの基礎知識は「汎用性」が高いと言えます。

【メリット2】
がん領域の研究・開発は、がん患者の増加に伴って今後も活発な状況が続くと予想されるので、腫瘍学の基礎知識は長期に渡り頻繁に業務上役立つ可能性が高いと考えられます。実際、筆者が医学部で学んだ基礎知識は、数十年経った今でも大変役立っています。これら2つの特徴は他の疾患の学習にはないメリットだと思います。

【メリット3】
今や日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなると言われるほど、がんは身近な病気ですから、がんの基礎知識はプライベートでも役に立ちます。がんの病態を正しく理解すれば、がんを闇雲に恐れることなく、適切な予防や早期発見に努めて発症・進行に備えることができます。また、どのように対処すべきか少しでも知っておけば、万が一発症してもパニックや落ち込みを軽減できるでしょうし、適切な治療を選びやすくなります。自分自身のためだけでなく、大切な家族や友人のためにも、健康の「常識」として腫瘍学の基礎を学んでおいて損はありません!

このように、腫瘍学の基礎学習には公私ともに大きなメリットがあります。

文系出身者にもお薦め!

文系出身の医薬翻訳者やメディカルライターで、「少しでも医学知識を身に着けたいけど、医学分野は広すぎて、何から勉強すればいいかわからない・・・」とお悩みの方にも、腫瘍学の基礎学習はお薦めです。その理由は主に3つあります。

1. がんは身近な病気なので、腫瘍学は取っ付きやすい
2. がん領域は一般向けのわかりやすい本やセミナーなどが多く、勉強しやすい
3. 前述の3つのメリットから考えて学習の費用対効果も時間対効果も高い

これらの理由より、医学分野の中では腫瘍学から学び始めるのが得策だと考えられるので、筆者は医薬翻訳者やメディカルライターの方々から医学分野の学習方法について相談を受けると、いつも「腫瘍学」を真っ先にお薦めしています。医学知識のない方は、医学への入り口として腫瘍学から勉強を始めてみてはいかがでしょう?

腫瘍学の基礎(総論)を理解できたら、肺がんや大腸がんなど特定のがん(各論)の勉強に進んだり、腫瘍学を構成する分野(例:遺伝学、薬理学、臨床検査、外科)の勉強を深めたりすれば、がんの理解に必要な医学知識をさらに増やせるでしょう。

まとめ
腫瘍学の基礎知識は・・・

  • 他の疾患に比べて汎用性が高い
  • 長期間、頻繁にメディカルライティング・医薬翻訳に役立つ可能性が高い
  • 健康の「常識」としてプライベートでも役立つ

腫瘍学は・・・

  • 身近で取っつきやすい
  • 一般向けの本なども多くて勉強しやすい
  • 学習効果が高い

<「がんの基礎知識を学びたい!」と思った方へ>
「がん臨床試験のための腫瘍学入門」セミナー
~知っておくべき、がんの常識と日英専門用語~
2016年6月10日(金) TKP市ヶ谷カンファレンスセンター(東京都新宿区)
詳細・お申込はこちら⇒http://www.clinos.com/seminar/580/
(追記:本セミナーは盛況のうちに終了いたしました。多数のご参加ありがとうございました)

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英文ピリオド後のスペースは何個にすべき?

英語の文章を書く際、各文章の最後にピリオドを打ちますが、その後のスペース(sentence spacing)は何個入れていますか?1個ですか?それとも2個ですか?文書内でスペースの数を統一する必要があるので、長い文書を複数の人で分担してライティング・英訳や校閲などを行う際は、文末ピリオド後のスペースの数を予め決めておかなければなりません。さあ、何個にしましょう?

 

論文ではスペース1個

論文では、誌面の広さや印刷費用などの都合上、掲載の分量が限られているので、文末ピリオド後のスペースは1個のみの場合が多いですが、必ず投稿規定で確認しましょう。

ちなみに、世界的医学誌『JAMA』の論文投稿規定である『AMA Manual of Style』に、文末ピリオド後のスペースの数に関する規定はありません。このように投稿規定に記載されていない場合は、投稿先の学術誌に実際に掲載されている論文を見て確認します。投稿先が未定または不明の論文では、とりあえずスペース1個にしておくのが無難でしょう。

その他の英語文書では、指定のスタイルガイド(例:社内スタイルガイド)に従います。スタイルガイドに規定がない場合は、担当者などに確認しましょう。

これから決めるなら2個がおススメ!

これからスタイルガイドなどで決めるという場合、筆者はスペースを2個入れることをお薦めします。なぜなら、1個より2個のほうが「文章の区切り」がわかりやすいからです。特に、何か特定の情報を探したい場合や速読する場合に、スペースが2個入っていると「文章の区切り」が一目でわかり、情報を探しやすくなったり、速く読みやすくなったりします。このようなお薦めは拙著『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I巻改訂版にも書いています。

スペース2個に対する反対意見

「英語のネイティブスピーカーから『文末ピリオドの後にスペースを2個入れるのは、タイプライターで英文を書いていた時代の習慣。単語と単語の間隔を自動的に調整してくれるコンピュータで英文を書く現代は、スペース1個でよい』と言われた。2個入れるスタイルは古いのではないか」、「一般英語のスタイルガイド『Chicago Manual of Style』ではスペース1個に規定されている」などのご指摘を時々頂きます。

おっしゃるとおり、「スペースは1個」と規定している英文スタイルガイドも数多く存在しますし、英語ネイティブのメディカルライターや医薬翻訳者に尋ねると、大抵「スペースは1個で十分」と言われます。数年前に米国メディカルライター協会(AMWA)の会員専用メーリングリストでも、スペースの数が話題に上ったことがあり、英語ネイティブの会員からは「スペース2個は時代遅れ」や「2個入れるべき理由はない」など、スペース2個に対する反対意見が続出しました。

しかし、スペースを1個にするか2個にするかは、英語ネイティブの間でも依然として意見が分かれていて、よく議論の的になっています。試しに「sentence spacing」のキーワードでネット検索すると、数十万件もヒットします。ウィキペディアもありますので、ご興味のある方はご参照下さい(https://en.wikipedia.org/wiki/Sentence_spacing)。

スペース2個のメリット

スペースを2個入れるスタイルを批判する英語ネイティブが多いにも関わらず、筆者はなぜスペース2個を推奨し続けているかと言いますと、今や英語文書の読者は英語のネイティブスピーカーだけではないからです。私達日本人のように、母国語がアルファベット表記でない人たちにとっては、スペースが2個入っているほうが「文章の区切り」が断然わかりやすく、英文が読みやすくなります。したがって、非英語ネイティブにもわかりやすい「global English」の観点から考えると、文字による英語の意思疎通を速くスムーズに進めるためには、文末のスペースは1個より2個にするほうがよいと言えます。

このような私見を、前述のAMWA会員専用メーリングリストに投稿したところ、スペース2個に対する批判がぴたりと止まりました。また、「アジア言語の人たちの視点で考えたことがなかった。有益なコメントをありがとう」と感謝の言葉を寄せてくれたネイティブ会員もいました。

スペースを2個入れるメリットは、アルファベットを使っている欧米人には気付きにくいので、批判や反対をする英語ネイティブがいたら理由を説明して、global English」の観点から英文を書くことを薦めてあげて下さい。その上で、業務上関係するネイティブらともよく相談して、文末のスペースの数を決めるとよいでしょう。

まとめ

英文の最後に打つピリオドの後のスペースの数
・論文では通例1個
・その他では2個がおススメ!非英語ネイティブには文章の区切りがわかりやすい。

 

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著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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英文を速く読む方法

英文メディカルライティングや医薬英訳・英文校閲の上達法の1つとして、「質の高い医学英文の多読」を長年薦めています。(多読の効果的な方法は、拙著『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』第1巻改訂版の114~119頁をご覧下さい。)しかし、多読を始めた方からは「英文を読むのが遅くてたくさん読めない。どうしたらいいか」、「英語表現に集中すると内容の理解が疎かになり、内容に集中すると英語表現に目が行かない。同時に両方できる読み方はないか」などの相談を受けることがあります。また、業務上、海外の文献などを読む機会が多い方からは、「英文を速く読めるようになって仕事の効率を上げたい」という声を時々耳にします。

文章内容の理解と表現の意識を同時に行うのは母国語でも難しいので、外国語では一層難しくなります。まずそのことを理解して、英語で両方を同時に行うことは潔く諦めましょう。私は医薬翻訳を始めて20数年、毎日のように英文の読み書きを行っていますが、英文を読むスピードは依然としてネイティブより遅いです。日本語を読むより遅いですし、日本語より集中力を要します。また、私も英文内容の理解と表現の意識を同時にはできないので、別々に行っています。

例えば、英語文書の概要の把握を目的として速く読む場合は、すべての単語・文章を100%理解しようとするのではなく、英文全体の5~8割程度の意味を理解することを目指しています。具体的な方法としては、まず一語ずつ細かく区切って読むのではなく、「意味のまとまり」(文節)ごとに大きく区切って読みます。例えば「The」、「drug」、「was」、「administered」ではなく、「The drug was administered」と続けて一気に読みます。「at a dose of 100 mg」のようなフレーズも同様にまとめて一気に読みます。

また、英文の重要な構成要素である各段落の「topic sentence」や、各文章の「名詞」(特に主語)と「動詞」に注目して読みます。そして、段落の中央部分(supporting sentence)や文章内の冠詞・前置詞などは読まないか、さらっと読み流す程度にします。つまり、すべての単語や文章を同じスピード・重要度で読むのではなく、英語の文章・段落の構成要素の重要度に応じて強弱をつけて読むことでスピードアップを図っています。一方、英語表現に注目して読む場合は、一語一句しっかり捉える「精読」を行っています。

ここで少し専門的な話しになりますが、前者の読み方を「skimming」と言います。学校の英語教育では習わなかった方が多いかもしれませんが、英文の速読には「skimming」と「scanning」という2つのテクニックがあります。簡単に説明しますと、「skimming」は文書全体をざっと読んで要旨をskimする(=すくい取る)方法で、「scanning」は文書の中からお目当てのキーワードや情報をscanする(=探し出す)方法です。

ネイティブは目的に応じて、これら2つのテクニックを使い分けています。私達日本人も日本語を速く読む際に無意識に読み方を変えていますので、英文を読む際も目的に合わせて「skimming」と「scanning」を使い分けると良いでしょう。この2つのテクニックについては、英語が母国語でない人(ESL: English as a second language)向けの説明や練習方法などがインターネットで多数紹介されているので、詳しく知りたい方は検索してみて下さい。

他にスピードアップの方法としては、頭の中で音読するのをやめたり、返り読み(読み直すこと)をせずに文章の頭から内容を理解したりすることが、昔からよく薦められています。皆さんも「脳内音読」や「返り読み」をしていたら、これらをやめることを心掛けてみて下さい。また、学生時代の「リーディング」の授業のクセで一語ずつ日本語に訳しながら読むと、英文を読む速度が落ちます。訳読をしている方は、英文を英語のまま捉えることも意識すると良いでしょう。

それから、私が医学部に入る前に卒業した短大の英語科では「英文速読」の授業があり、速読専用のテキストを使って、その中の指定された段落や頁を、決められた時間内に読む訓練を繰り返し受けました。皆さんも、精読以外の場合は、予め制限時間を決めてタイマーを設定し(例:論文の抄録は3分)、その時間内でたくさん読むことを繰り返すと、速く読めるようになると思います。これは、仕事などで締め切りがあると「速く仕上げよう」という意識が自然に働いて、集中力やスピードが向上する「締め切り効果」の応用です。タイムリミットを設定すると、前述の「音読」や「返り読み」、「訳読」をする余裕がなくなるので、これらのクセを直しやすいという利点もあります。

しかし、どんな方法で英文速読の訓練を行っても、短期間で劇的にスピードアップするわけではありません。母国語である日本語でも、現在のスピードで読めるようになったのは何歳頃だったか思い出してみて下さい。「斜め読み」や「拾い読み」ができるようになったのは、さらに遅かったのではないでしょうか。毎日1日中使っている日本語でも、速く読めるようになるまでにはかなりの年月を要したはずです。

したがって、日本語と同じ速さで英語を読めるようになるためには長い年月を要すると覚悟して、焦らずに努力を重ねていきましょう。諦めずに多読を続ければ、少しずつでも必ずスピードアップします。語学をマスターするには「習うより慣れよ」です。医薬分野の英文をたくさん読んで慣れながら、速度を上げて行きましょう。

【まとめ】 医薬英文を速く読む5つの方法

  1. 医薬分野の英文を多読して、医薬英語に慣れる
  2. 脳内音読や返り読み、訳読をやめる
  3. 重要度の低い文章や単語は読み流すか読まない
  4. 制限時間を設定する
  5. skimmingとscanningを使い分ける

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英文ライティング用語の日本語訳リスト

『AMA Manual of Style』などの英文スタイルガイドや、米国メディカルライター協会(American Medical Writers Association)の自学教材(self-study module)を利用するメディカルライターや医薬翻訳者が増えています。しかし、英語で書かれたスタイルガイドやメディカルライティング教材などは、当然のことながら文法用語やライティング用語もすべて英語です。そのため、取っ付きにくい上に、これらの用語の意味を英和辞典で1つ1つ調べるのは手間が掛かるので、内容を理解するのに苦労する方が多いようです。

そこで、品詞や時制などの文法用語を中心に、英文ライティングの説明でよく使われる用語を、下記のとおりアルファベット順にリストアップし、その日本語訳を併記しました。品詞を表す英単語の後に記載した「略語」は、辞書などで品詞の略語としてよく使われているものです。英文スタイルガイドなどをお読みになる際に、このリストをぜひご利用下さい。

abbreviation:略語
active voice:能動態
adjective (略語:adj):形容詞
adverb (略語:adv):副詞
article:冠詞
bracket:角括弧
capitalization:(単語の)頭文字を大文字で書くこと
citation:引用、引用文・句・語
clause:節
collective noun:集合名詞
column:(表の縦の)列
complement:補語
compound:複合語
coordinate/coordinating conjunction:等位接続詞
conjunction:接続詞
countable noun:可算名詞
definite article:定冠詞(the)
decimal:小数
decimal point:小数点
digit:(数字の)桁、アラビア数字
enumeration:列挙
figure:図
footnote:脚注
future tense:未来形
gerund:動名詞(-ing形)
heading:見出し
hyphenation:ハイフンで結ぶこと
indefinite article:不定冠詞(a/an)
independent clause:独立節
intransitive verb (略語:vi):自動詞
jargon:(一般人にはわからない)専門用語、業界用語
letter:文字
lowercase (letter):小文字
modifier:修飾語
noun (略語:n):名詞
numeral:数字
object/objective:目的語
ordinal:序数
parallel construction/structure:並列構造
parallelism:並列構造
parenthesis (複数形:parentheses):丸括弧
participle:分詞
passive voice:受動態
past participle:過去分詞
past tense:過去形
perfect tense:完了形
personal pronoun:人称代名詞
phrase:句
plural:複数形(の)
possessive case:所有格
prefix:接頭語、接頭辞
preposition:前置詞
present participle:現在分詞(-ing形)
present tense:現在形
pronoun:代名詞
proper noun:固有名詞
punctuation:句読点
relative pronoun:関係代名詞
row:(表の横並びの)行
singular:単数形(の)
solidus:スラッシュ
subheading:小見出し
subject:主語
subordinate/subordinating clause:従属節
subordinate/subordinating conjunction:従属接続詞
subscript:下付き文字
suffix:接尾語、接尾辞
superscript:上付き文字
symbol:記号
table:表
tense:時制
text:本文
transitive verb (略語:vt):他動詞
uncountable noun:不可算名詞
uppercase (letter):大文字
verb (略語:v):動詞
virgule:スラッシュ
voice:態

以上、少しでもお役に立てば幸いです。

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