AMWA総会参加ガイド2:自費参加者必見!航空券・ホテル代ゼロで参加する方法

前回、米国メディカルライター協会(AMWA)年次総会の参加ガイドを本ブログに掲載したところ、予想以上に好評で大変嬉しく思っています。過去の参加者の方々からは「こういう情報が欲しかった」「もっと早く知っていれば・・・」などの感想を頂きました。また、今年の総会に最近申し込んだ方によるとconference hotelがすでに満室で、「クリノスのブログどおり、まずホテルを予約すべきだった」とおっしゃっていました。総会参加申込のキャンセル期限が近づくとconference hotelの予約キャンセルが出ることもあるので、諦めずにconference hotelの予約サイトを時々チェックしてみて下さい。

前置きが長くなりましたが、ご好評にお応えしてAMWA年次総会参加ガイドの続編を掲載します。第2弾は、自費で参加する方のための「参加費用削減法」です。ここ数年、フリーランスの医薬翻訳者・メディカルライターで総会に参加される方が毎年1~数人いますし、企業に属していても自費で参加される方もいますので、出来るだけお金を掛けずに参加する方法を私自身の経験に基づいてご紹介します。

AMWA年次総会の参加に必要な費用の主な内訳は総会参加費渡航費宿泊費の3つです。これらをいかに減らすかが鍵になるので、この3つを中心に説明します。

 

1. 総会参加費

総会参加費(conference registration fee)をゼロにする方法は1つだけあります。それはワークショップの講師になることです。講師はボランティアなので、AMWAから講演料などは支払われませんが、総会参加費が免除になるそうです。しかし、この方法は私達日本人にはハードルが高いので、利用できる人は極めてまれでしょう。

その一方で、総会参加費を削減する方法が今年初めて出来ました。それは「早期割引料金」です。6月末までに申し込むと100ドル割引になりました。来年以降も早期割引料金が設定されるかわかりませんが、早期割引を利用すれば総会参加費を若干削減できます。さらに、円高のタイミングを狙えば一層の削減が可能なので、申込受付開始後は為替レートを毎日チェックすると良いでしょう。

総会参加費は全日程参加以外に1日のみの参加費も通例設定されますが、ワークショップは1回の総会当たり4つまで申し込めるので、certificateの取得を目指すなら全日程参加するほうがお得だと思います。

なお、ワークショップに参加するには、総会参加費以外にワークショップ参加費(workshop registration fee)が必要になります。ワークショップ1つ当たりの参加費(2016年は200ドル)が総会参加費に加算されるので、申し込むワークショップの数が多ければ、それだけ費用が増えます。残念ながら今のところワークショップ参加費を減らす方法はありません

 

2. 渡航費

航空会社のマイレージ・プログラムの会員になってマイルを貯め、無料往復航空券を取得すれば渡航費をゼロにできます。飛行機に乗らずに効率良くマイルを貯めるには、航空会社の提携クレジットカードを日常の支払いに多用するのがお薦めです。

 

航空会社とカードの選び方、カード申込のタイミング、カード年会費削減の裏技、効果的なカード利用法などについては、ネット上にたくさん情報があるので、いろいろ調べて、自分の好みやライフスタイルなどに合う方法でマイルを貯めると良いでしょう。

 

3. 宿泊費

3.1 ホテルのポイント利用

渡航費の削減方法同様に、外資系大手ホテルチェーンの会員になってポイントを貯めて、無料宿泊特典を利用すれば宿泊費をゼロにできます。ポイントが足りなくて全日程を無料にできなくても、1泊からポイント利用が可能なので、宿泊費を削減することができます。宿泊時に提携航空会社のマイルも、ポイントと一緒にもらえるホテルチェーンもあり、航空会社のマイルも貯めたい方にとっては「一石二鳥」です。

ちなみにAMWAのconference hotelはシェラトン、ハイアット、ヒルトンのどれか1つ、または2つが指定されることが多いので、スターウッド、ハイアット、ヒルトンのいずれかまたは複数の会員になると良いと思います。(2024年追記:コロナ禍が始まって最初の数年はバーチャル式の開催になりましたが、その後は対面式が再開され、マリオットが会場になっていることが多いです)

たとえこれら3系列からconference hotelが指定されなくても、年次総会が開催されるような比較的大きな都市では会場近くにいずれかの系列のホテルがあることが多いので、自分がポイントを貯めている系列のホテルにポイント利用で泊まって宿泊費を削減・無料化できます。例えば2015年のconference hotelはハイアットでしたが、私は主にヒルトンのポイントを貯めているので、1ブロック隣のヒルトンに泊まってポイントを利用しました。

AMWAのサイトでは、今後数年間の年次総会の開催日・開催地・conference hotelが発表されているので、予定を確認しながら戦略を立てると良いでしょう。

ホテルに泊まらずにポイントを貯めるには、航空会社のマイルの貯め方と同様に、ホテルの提携クレジットカードを利用するのがお薦めです。ホテルチェーンとカードの選び方や、効果的なカード利用法など詳しいことはネットでお調べ下さい。

3.2 ルームシェア

他の参加者と一緒に泊まるのも宿泊費削減法の1つです。アメリカのホテルの料金設定は「1人当たり」ではなく「1室当たり」なので、2人で同じ部屋に泊まれば宿泊費が半額になります。

私はフリーランス時代に、友人のフリーランス医薬通訳・翻訳者と毎回一緒に泊まっていましたが、どこのconference hotelでもチェックアウト時に宿泊費を割り勘にしてもらい、各々のクレジットカードで半額ずつ支払い、1人ずつ領収書を発行してもらえました。気が合いそうな自費参加者がいたら、思い切って誘って一緒に泊まってみるのも1つの手です。数日間寝食を共にすることで、有益な業界情報や深い友情など、嬉しい「おまけ」も得られるかもしれません。

 

4. 領収書の活用

フリーランス・個人事業主の場合は節税のために、上記3つの費用以外の出費についても「領収書」を必ずもらっておくことをお薦めします。

例えば現地の空港・ホテル間の移動費用(例:空港シャトルバスやタクシーの乗車代)は「交通費」として経費に計上できるので、料金の支払い時に領収書をもらっておきましょう。

また、現地では1人での食事は出来るだけ避け、(たとえファストフードでも)他の参加者らと一緒に食べて領収書をもらっておきましょう。仕事の関係者(同業者やクライアントなど)との会食代は「接待交際費」か「会議費」として経費に計上できます。

現金で支払ったドル建ての領収書は、支払日の為替レートで日本円に換算すれば経費処理が可能です。カード払いの場合は必ずカード伝票をもらい、後日届くカード利用明細書で日本円に換算されている金額で処理し、カード利用明細書も証拠として保存しておきます。

このような工夫をすれば、多少なりとも節税が可能です。経費計上の可否や処理方法など詳しいことは税理士にご確認下さい。

 

5. Never give up!

ここまでしてAMWA年次総会に参加したいという方はまれかもしれませんが、経済的な理由で参加を諦めている方の背中を少しでも押したくて、私のAMWA経費削減法を公開しました。

特に、有望な若手メディカルライター・医薬翻訳者の方に1人でも多くAMWAで学んで頂き、今後のメディカルライティング業界や医薬翻訳業界を牽引して頂きたいと願っています。日本からのAMWA参加者は年齢が高めですが、「先行投資」は早いほうが、投資したお金と時間と労力を回収しやすいですから、「いつかAMWAに行ってみたい!」と考えている若手の方には、本ブログを参考に1日も早くAMWA年次総会参加を実現して頂ければ幸いです。

Where there is a will, there is a way.」(為せば成る)です。本気でやりたいことは諦めず、「強い意志」と「賢い知恵」を持って実現・継続させましょう!

 

6. まとめ

  • 総会参加費は、現時点では早期割引を利用する以外に削減法なし。
  • 渡航費と宿泊費は、航空会社のマイルやホテルのポイントを利用すれば無料化や削減が可能。両方ゼロにすれば、総会参加費のみでの年次総会参加が可能
  • フリーランスの場合、現地での支払い時に領収書をもらい、経費に計上すれば節税可能。

※こちらの記事もお勧めです。
AMWA年次総会参加ガイド1:申込~出発後の注意点10個 【初参加でも安心】

 

著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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AMWA総会参加ガイド1:申込~出発後の注意点10個 【初参加でも安心】

今年も米国メディカルライター協会(AMWA)年次総会に参加するか否かが話題に上る時期になり、知り合いのメディカルライター数人がすでに「申し込んだ」とおっしゃっていました。私も申し込みましたが、毎年、初参加の方から申込・参加の注意点やコツを聞かれるので、AMWA年次総会の参加に関するアドバイスを、3段階(参加申込、出発前の準備、出発後)に分けて以下にまとめました。年次総会の基本情報はAMWAホームページの「Annual Conference」サイトをご覧下さい。

 

1. 参加申込

1.1 まず宿の確保

年次総会の参加申込の前に、まずホテルを予約することをお薦めします。毎年、年次総会の会場として利用されるホテル、もしくは会場となるコンベンションセンターに隣接するホテルが「conference hotel」として指定され、AMWA参加者は割引料金で泊まれます。このホテルに泊まるのが便利ですし、日本人参加者の多くが泊まっていて安心です。

しかし、AMWAが確保している部屋数は限られているので、予約が一杯になってしまうことがしばしばあります。その場合、会場周辺の別のホテルも「conference hotel」として追加指定されることがありますが、会場から徒歩数分~10分ほど離れていることもあります。

また、追加の「conference hotel」が用意されない年もあり、その場合は自分でホテルを探すことになります。しかし、ビジネスシティの秋は大きなイベントや学会などの開催が多いので、AMWA年次総会開催間近にホテルを予約しようとしても、会場周辺は軒並み満室だったり、宿泊料が高騰していたりすることが多いです。

ホテルの予約変更・キャンセルはチェックインの1~7日前まで無料で可能な場合が多いので、AMWA年次総会に参加する可能性が出て来たら、とりあえず「conference hotel」の部屋を予約しておくと安心でしょう。予約の時点で宿泊日数が決まっていない場合は、念のため長めに予約しておき、必要に応じて後日調整するのが得策です。

1.2 ワークショップの申込は早めに

長年定番のワークショップや有名講師のワークショップは人気が高く、早々に申し込みが定員に達して、受付が締め切られることも珍しくありません。お目当てのワークショップがある場合は早めに申し込むと良いでしょう。受付状況はAMWAサイトの年次総会申込ページで確認できます。

1.3 Golden Apple賞を受賞した講師がお薦め

どのワークショップを選べば良いか迷ったら、教え方が上手な講師のワークショップを選ぶのも1つの手です。その際に参考になるのが、「Golden Apple賞」(Golden Apple Award)の受賞の有無です。「Golden Apple賞」とは、各ワークショップの受講者全員を対象に毎年行われるアンケート調査の結果、高い評価を長年得ている講師に与えられる賞で、授与される講師は毎年1人だけです。日本でも有名なTom Lang氏らが過去に受賞しています。

年次総会の申込プログラム(registration brochure)やワークショップのリストを見て、講師名に金色のリンゴのマークが付いていたら、その講師は「Golden Apple賞」を受賞しています。プログラムやリストにマークが表示されていない年もあるので、その場合はAMWAホームページのこちらで過去の受賞者をご確認下さい。

 

2. 出発前の準備

2.1 ワークショップ事前課題提出後の確認

ワークショップには必ず事前課題(assignment/homework)があります。certificate取得に必要な単位を取得するには、事前課題の解答を締切までに提出しなければなりません。メールで講師に提出するのが通例ですが、先方のサーバーにブロックされてメールが戻って来たり、迷惑メールのフォルダに振り分けられて講師が気付かなかったりすることがあります。念のため、事前課題の解答提出時に講師に受領確認の返信を要請すると良いでしょう。

通例、数日以内に講師から返信が来ますが、返信がない場合は講師に再度メールを送ってみましょう。それでも返信がない場合は、AMWA事務局にメールで問い合わせることをお薦めします。AMWA事務局は、アメリカでは珍しく対応が速くて親切なので、わからないことやトラブルなどがあった場合は事務局に問い合わせてみて下さい。いずれにしても、ワークショップの単位を取得できないと勿体ないですから、メールなどのトラブルに備えて早めに事前課題の解答を提出するのが無難でしょう。

2.2 ワークショップ配布資料の受領

AMWAの経費削減のためか、ワークショップの配布資料(handout)が会場で提供されないことが多くなりました。通例、年次総会の数日前に、指定のサイトからダウンロードするよう指示が書かれたメールが届くので、メールを見逃して配布資料の準備を忘れないよう気を付けましょう。日本を発つ前に印刷して持って行けば、宿泊先や会場で慌てなくて済みます。なお、ワークショップにラップトップやタブレットなどを持ち込む場合は、配布資料を印刷せずに電子媒体で持参・参照することも可能です。

2.3 英語の自己紹介

ワークショップやmeal event、ホテルなどで外国人参加者らに自己紹介しなければならない機会があるので、予め英語で自己紹介を考えて、スラスラ言えるように練習しておくと安心です。名前と職種を2~3文で簡潔に説明できると良いでしょう。例えば「I’m Taro Suzuki from Japan. I do regulatory writing at a pharmaceutical company in Tokyo.」や、「I’m Hanako Sato from Japan. I’m a freelance medical translator.」のような感じです。名刺をたくさん持って行くこともお忘れなく!

2.4 服装

年次総会のドレスコードは「ビジネスカジュアル(スマートカジュアル)」なので、服装がラフになり過ぎないように気を付けましょう。

また、開催地・開催時期を問わず、会場は寒いことが多いので暖かい服装を持って行くことをお薦めします。ちなみに私はスカートでは足が冷えるので、いつもパンツスーツで出席しています。それでも会場は寒くて、ボトムの下にタイツを履いたり、ストールを膝掛けにしたり、ジャケットの下にカーディガンやセーターを着たりします。他の日本人参加者も薄手のダウンジャケットやカイロを持参するなど、会場の防寒対策をしている方が多いです(特に女性)。

せっかく年次総会に参加しても寒くて講義に集中できないと勿体ないですから、温度調節しやすい服装をご準備下さい。

 

3. 出発後

3.1 アメリカ国内の時差に注意

アメリカ本土には4つの時間帯がある上に、時期や州によっては「夏時間」が採用されているので、日本からAMWA開催地に直行しない場合は経由地の時間帯や、経由地と開催地との時差、「夏時間」の有無に注意が必要です。「夏時間」は11月上旬に終わるので、年次総会が11月上旬に開催される場合は「夏時間」の終了日にも要注意です。

時間を間違えて、飛行機の経由地で乗継便に乗り遅れたり、開催地で初日の基調講演やワークショップなどに遅れたりする日本人参加者が時々いらっしゃいます。ワークショップは遅刻すると入室できず単位を貰えないので、開催地に着いたら現地時刻を必ず確認しましょう

3.2 オリエンテーション

例年、会期初日か2日目に、初参加者を対象にオリエンテーション(無料)が開催されるので、事前にプログラムで日時を確認して参加することをお薦めします。

3.3 Meal event

会期中にレセプションやSablack luncheon/dinnerなどの「meal event」が開催され、追加料金なしで参加できるeventが年々増えています。日本人参加者で集まって同じテーブルを囲むことが多いので、英会話に自信のない方も怖がらずに参加して、各イベント会場で日本人参加者を探してみて下さい。

また、AMWA主催のmeal eventとは別に、日本人参加者のみで独自に非公式の「食事会」を開催して親睦を図っています。通例、常連の参加者が幹事となり、金曜または土曜の夜に開催されています。AMWA開催地に到着してから幹事が日時とお店を決めて、メールで他の参加者に知らせることが多いので、事前に常連参加者にAMWA参加の旨とメールアドレスを伝えておくか、AMWA会場で早めに日本人参加者を見つけて尋ねると良いでしょう。

日本人参加者については、AMWA開催数日前に事務局から送られてくるメールのリンク先にある「Attendee list」(参加者名簿)で確認できます。日本からの参加人数は毎年十数名です。

会期中はワークショップの休憩時間(beverage break)などに、無料の飲み物が用意されている部屋(hospitality roomやresource hallなど)に行くと、日本人参加者に会える確率が高いです。多くの日本人が1人参加のため、「食事会」以外でも数人で昼食や夕食に出掛けたりすることが多いので、AMWA初参加で心細い方は早めに日本人参加者を見つけて、積極的に声を掛けると良いでしょう。

 

4. その他

海外出張・旅行に慣れていない方や初めて渡米される方は、アメリカ旅行時の基本的な注意事項を旅行ガイドブックなどでご確認下さい。また、同僚やお知り合いに過去のAMWA参加者がいらっしゃる場合は、移動時の注意点やAMWAの様子などをお聞きになってみて下さい。

以上、初めてのAMWA参加でも実り多い経験ができるよう、少しでもお役に立てば幸いです。ご質問や追加事項などありましたら、コメント欄にお書き頂くか、お問い合わせフォームからご連絡下さい。

AMWA年次総会参加ガイド第2弾では、自費で参加する方のために、出来るだけお金を掛けずに参加する方法を紹介します。

次回
AMWA年次総会参加ガイド2:自費参加者必見!航空券・ホテル代ゼロで参加する方法

著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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