くすりミュージアムへ行こう!

先日、元医療従事者の友人に誘われて、東京・日本橋の「くすりミュージアム」に行って来ました。このミュージアムは、大手製薬企業の第一三共株式会社が2012年2月に開館したものだそうですが、恥ずかしながら、友人から誘われるまで知りませんでした。専門家向けではなく一般向けの博物館ということで、友人と「突っ込みどころ満載かも」と幾分冷やかし気味に訪れてみたところ、良い意味で予想を裏切られ、製薬関連の翻訳を20年以上手掛けている元臨床医の私でも、楽しめて勉強になったのでご紹介したいと思います。

「くすりミュージアム」は、その名が示すとおり薬に関する博物館で、展示コーナーは約20種類もあります。その内容は薬の歴史、創薬から承認・販売までの研究開発プロセス、剤形の種類と特徴、薬理作用とそのメカニズム、薬物動態(吸収・分布・代謝・排泄)、製剤工程、品質管理、育薬など幅広く、しかも予想以上に本格的でした。しかし、ICチップ内蔵の「メダル」を使ってクイズやゲームに挑戦したり、映像を見たり、模型に触れたりする「体験型」の博物館なので、子供にもわかりやすく、楽しみながら学べるよう工夫されています。家族連れで訪れても楽しめると思います。

先日ノーベル医学・生理学賞を受賞した大村智氏は土壌中の細菌から薬の「種」を発見して、熱帯病の特効薬を開発した功績が高く評価されましたが、ミュージアムには「くすりの種」というコーナーもありました。このコーナーでは様々な医薬品の「種」やその発見法が紹介されていますので、この機会に「くすりミュージアム」を訪れて、話題の「薬の種」について学んでみるのも良いと思います。

私達は2時間掛けて館内を回りましたが、各展示をじっくり見て、クイズやCGゲームに挑戦しながら知識を確認していたら、最後は時間が足りず駆け足で見ることになってしまいました。そのくらい展示内容が充実していました。中でも、言葉や概念としてしか知らなかったドラッグデザインや製剤工程(例:造粒、打錠)などについて、3Dパズルや写真・映像などを通じて、具体的なイメージを掴めたのは大きな収穫で、今後の製薬関連の翻訳に役立ちそうです。

他に良かった点を3つ挙げますと、①予約不要入館料が無料なので、誰でも気軽に訪れることができます。②運営会社の企業色は、企業の歴史紹介以外では感じられず、普遍的な展示内容になっている点に好感が持てました。③各展示コーナーに番号が振られており、番号順に回れば良いので、展示コーナーが約20種類あってもどれから見るべきか迷わなくて済みますし、内容を理解しやすい順序に並べられていました。

このように「くすりミュージアム」は医薬品全般の基礎知識を短時間で楽しく学べる博物館なので、製薬分野のメディカルライターや翻訳者、そしてこれらの志望者で、特に薬学のバックグラウンドがない方は、ぜひ一度「くすりミュージアム」を訪れてみて下さい。きっと大いに勉強になると思います。

なお、後で気付きましたが、各展示コーナーの所要時間の目安がパンフレットに記載されているので、目安に基づいて時間配分を考えながら館内を回ると、すべての展示を効率よく見ることができると思います。それでも計1~2時間は掛かると見積もって、時間に余裕を持って訪れることをお薦めします。休館日や開館時間など、詳しいことは「くすりミュージアム」のホームページをご覧下さい(https://kusuri-museum.com/)。

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