英語の文章を書く際、各文章の最後にピリオドを打ちますが、その後のスペース(sentence spacing)は何個入れていますか?1個ですか?それとも2個ですか?文書内でスペースの数を統一する必要があるので、長い文書を複数の人で分担してライティング・英訳や校閲などを行う際は、文末ピリオド後のスペースの数を予め決めておかなければなりません。さあ、何個にしましょう?
論文ではスペース1個
論文では、誌面の広さや印刷費用などの都合上、掲載の分量が限られているので、文末ピリオド後のスペースは1個のみの場合が多いですが、必ず投稿規定で確認しましょう。
ちなみに、世界的医学誌『JAMA』の論文投稿規定である『AMA Manual of Style』に、文末ピリオド後のスペースの数に関する規定はありません。このように投稿規定に記載されていない場合は、投稿先の学術誌に実際に掲載されている論文を見て確認します。投稿先が未定または不明の論文では、とりあえずスペース1個にしておくのが無難でしょう。
その他の英語文書では、指定のスタイルガイド(例:社内スタイルガイド)に従います。スタイルガイドに規定がない場合は、担当者などに確認しましょう。
これから決めるなら2個がおススメ!
これからスタイルガイドなどで決めるという場合、筆者はスペースを2個入れることをお薦めします。なぜなら、1個より2個のほうが「文章の区切り」がわかりやすいからです。特に、何か特定の情報を探したい場合や速読する場合に、スペースが2個入っていると「文章の区切り」が一目でわかり、情報を探しやすくなったり、速く読みやすくなったりします。このようなお薦めは拙著『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I巻改訂版にも書いています。
スペース2個に対する反対意見
「英語のネイティブスピーカーから『文末ピリオドの後にスペースを2個入れるのは、タイプライターで英文を書いていた時代の習慣。単語と単語の間隔を自動的に調整してくれるコンピュータで英文を書く現代は、スペース1個でよい』と言われた。2個入れるスタイルは古いのではないか」、「一般英語のスタイルガイド『Chicago Manual of Style』ではスペース1個に規定されている」などのご指摘を時々頂きます。
おっしゃるとおり、「スペースは1個」と規定している英文スタイルガイドも数多く存在しますし、英語ネイティブのメディカルライターや医薬翻訳者に尋ねると、大抵「スペースは1個で十分」と言われます。数年前に米国メディカルライター協会(AMWA)の会員専用メーリングリストでも、スペースの数が話題に上ったことがあり、英語ネイティブの会員からは「スペース2個は時代遅れ」や「2個入れるべき理由はない」など、スペース2個に対する反対意見が続出しました。
しかし、スペースを1個にするか2個にするかは、英語ネイティブの間でも依然として意見が分かれていて、よく議論の的になっています。試しに「sentence spacing」のキーワードでネット検索すると、数十万件もヒットします。ウィキペディアもありますので、ご興味のある方はご参照下さい(https://en.wikipedia.org/wiki/Sentence_spacing)。
スペース2個のメリット
スペースを2個入れるスタイルを批判する英語ネイティブが多いにも関わらず、筆者はなぜスペース2個を推奨し続けているかと言いますと、今や英語文書の読者は英語のネイティブスピーカーだけではないからです。私達日本人のように、母国語がアルファベット表記でない人たちにとっては、スペースが2個入っているほうが「文章の区切り」が断然わかりやすく、英文が読みやすくなります。したがって、非英語ネイティブにもわかりやすい「global English」の観点から考えると、文字による英語の意思疎通を速くスムーズに進めるためには、文末のスペースは1個より2個にするほうがよいと言えます。
このような私見を、前述のAMWA会員専用メーリングリストに投稿したところ、スペース2個に対する批判がぴたりと止まりました。また、「アジア言語の人たちの視点で考えたことがなかった。有益なコメントをありがとう」と感謝の言葉を寄せてくれたネイティブ会員もいました。
スペースを2個入れるメリットは、アルファベットを使っている欧米人には気付きにくいので、批判や反対をする英語ネイティブがいたら理由を説明して、「global English」の観点から英文を書くことを薦めてあげて下さい。その上で、業務上関係するネイティブらともよく相談して、文末のスペースの数を決めるとよいでしょう。
まとめ
英文の最後に打つピリオドの後のスペースの数
・論文では通例1個
・その他では2個がおススメ!非英語ネイティブには文章の区切りがわかりやすい。
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著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
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