AMA Manual of Styleの勉強法

※第11版に合わせて記事をアップデートし、第11版の該当するセクションを赤字で示しました(更新日:2023年7月3日)

医薬分野の英文ライター、英文校閲者、英訳者にとって必携の医薬英文スタイルガイド『AMA Manual of Style』は百科事典のように厚く、内容が盛り沢山なので、「どこから読んで勉強すればいいのかわからない」といったお悩みをよく聞きます。そこで、下記の3ヵ所を下記の順序で勉強することをお勧めします。

1. 第11版 セクション7.0「Grammar」~セクション16.0「Greek Letters」
(第10版:セクション2「Style」)

文法やpunctuation(カンマ、セミコロン、コロン等)、略語の使い方など、いわゆる「医薬英文の書き方のルール」が書かれているのがこれらのセクションです。したがって、まずセクション7.0から読み始めて基本的なルールを身に付けるとともに、『AMA Manual of Style』がどのような英文スタイルを採用しているのかを知ると良いと思います。

また、セクション11.0「Correct and Preferred Usage」には、英語ネイティブのメディカルライターでも間違いの多い類義語の使い分けや、冗長な表現(redundant words)などが載っているので、正確かつ簡潔明瞭な医薬英文を書く基礎知識・テクニックを身に付けるのに役立ちます。

2. 第11版 セクション17.0「Units of Measure」~セクション20.0「Mathematical Composition」
(第10版:セクション4「Measurement and Quantitation」)

これらのセクションには数字、単位、%などの書き方や統計用語集(セクション19.5「Glossary of Statistical Terms」)が載っているので、研究・試験の結果・データ統計記述を英語で書く際に必要な基礎知識が得られます。

3. 第11版 セクション4.0「Tables, Figures, and Multimedia」
(第10版:セクション1「Preparing an Article for Publication」中の4「Visual Presentation of Data」)

ここには図表の書き方が、多くの実例とともに載っています。アカデミアや製薬企業などでは、図表は統計担当者が作成することが多いので、「メディカルライターや医薬翻訳者、英文校閲者に図表の書き方は関係ない」と思うかもしれません。

しかし、英語の図表には様々なルールがあり(例:脚注の書き方)、日本語の図表と異なる点もあるので(例:表に縦線は引かない)、統計担当者が英語の図表のルールを知らない場合は、英語文書作成時にメディカルライターや医薬翻訳者、英文校閲者が図表をチェック・修正したり、統計担当者に助言したりする必要があります。

また、英訳の外注時には図表の英訳も含まれていることが多々あるので、翻訳者は図表のタイトルや項目名などを英語に置き換えるだけでなく、日本語の図表全体を英語の図表の形式に適宜直せなければなりません。

ところが、英語の図表は日本語の図表と異なる点があることを知らない翻訳者が多いせいか、英語の図表の形式に直していないケースが多く見られます。

したがって、メディカルライターや医薬翻訳者、英文校閲者も英語の図表の基本的な書き方日本語の図表との違いを知っておくと良いでしょう。

まとめ
分量の多い『AMA Manual of Style』で、メディカルライターや医薬翻訳者、英文校閲者が最低限読むべき箇所は上記の3つだけです。それでも、頁数にすると結構多くて大変だと思うかもしれませんが、例文が非常に多く載っているので、実際に読むべき説明文はそれほど多くありません。恐れずに、まずセクション7.0から読み始めてみて下さい。「千里の道も一歩から」です。

英語の文法用語やライティング用語などがわからなくて読みにくいという方は、「英文ライティング用語の日本語訳リスト」をご活用下さい。

また、『AMA Manual of Style』のホームページに練習問題「Style Quizzesがあるので、上記の各セクションを読みながら練習問題に挑戦して習熟度をチェックすると、達成感が得られて勉強を続けやすいと思います。

追記1:『AMA Manual of Style』第11版が2019年に発行されることが、2018年秋の米国メディカルライター協会年次総会で発表されました。

追記2:『AMA Manual of Style』第11版の発行時期が2020年1月末に延期されたことが、2019年秋の米国メディカルライター協会年次総会で発表されました。

追記3:『AMA Manual of Style』第11版が2020年2月に発刊されました。

【補足情報】
『AMA Manual of Style』は米国医師会(AMA)の学術誌『JAMA』の論文投稿規定であり、日本人が間違いやすい点などは考慮・記載されていませんので、拙著『薬事・申請における英文メディカル・ライティング入門』シリーズI巻改訂版(絶版)を併用して、日本人が気をつけるべき点を知って頂くと学習効果が上がると思います。拙著には『AMA Manual of Style』第10版の参照頁も記載されていますので、ぜひご活用下さい。書籍情報はこちら
(追記:『薬事・申請における英文メディカル・ライティング入門』I巻改訂版は好評につき完売し、2019年1月に販売終了・絶版となりました。あしからずご了承下さい)

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著者:内山 雪枝(クリノス 代表)
元医師、医学翻訳者、メディカルライター、セミナー講師。
明の星女子短期大学英語科卒業。東海大学医学部卒業。
大学病院勤務後、国内翻訳学校と米国大学院で翻訳を学び、
医学翻訳を30年以上手掛ける。
英文メディカルライティングの教育活動も20年以上継続中。
所属団体:米国メディカルライター協会(AMWA)(1996年~現在)
著書:『薬事・申請における英文メディカルライティング入門』I~IV巻(完売)
→ 詳しいプロフィールはこちら

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2 thoughts on “AMA Manual of Styleの勉強法

  1. お世話になっております。社内研修(製薬メーカー)で先生のご講義を受けました。その節はありがとうございました。

    AMA学習の優先順位については、以前先生に教えていただき、社内勉強会をしました。自分で読み、同僚に説明すると身につくものですね。しかしAMAはボリュームが大きいので、英文MW入門シリーズと併用していきたいと思います。

    しかしながら、外注した翻訳ではなかなか基本的なスタイルガイドに従ってもらえず苦労します。事前にスタイルガイドを提供しても、量が多くて従いきれないと納品後に言われたこともあります。スタイルだけでなく、医薬英語の基本的な言い回しができる翻訳者さんを見つけることすら本当に難しいです。英文MW入門シリーズが製薬業界・翻訳会社の共通言語になってくれると話が早いのですが(なりつつあるとは感じていますが)。そのためにも、先生のますますのご活躍を期待しております。

    • Tontonさん、コメントありがとうございます。講義と拙著シリーズが少しでもお役に立っているのでしたら大変嬉しく思います。

      英訳外注時のご苦労お察し申し上げます。翻訳者が『AMAマニュアル』に精通していたり、日頃から指定のスタイルガイドに準拠して英文を作成することに慣れていれば、スタイルガイドに従うのはそれほど大変ではないはずです。

      しかし、『AMAマニュアル』をご存知ないどころか、スタイルガイドに従うことすらご存知ない英訳者がまだまだ多いですから、翻訳依頼者の方々は大金を払っても高品質の英訳が滅多に得られず、落胆されていることと思います。

      一方、翻訳する立場から見ますと、翻訳依頼者側にも改善の余地があると思います。納期が短いのに社内スタイルガイドの量が多いと、翻訳者が内容を把握しきれないということは実際にあります。

      そこで、例えば社内スタイルガイドのうち、『AMAマニュアル』とはスタイルが異なる箇所が一目でわかるように翻訳依頼者側が工夫なさると、『AMAマニュアル』に精通している翻訳者は異なる箇所のみ把握して気を付ければ良いので、納期が短くても社内スタイルガイドに従いやすくなりますし、スタイルガイド全体の把握に費やす時間を下調べや訳文推敲に回せるので、英訳の品質向上につながる可能性があります。

      また、『AMAマニュアル』と異なる箇所をわかりやすくなさると、社内のメディカルライターや翻訳者にもお役に立つと思いますので、まだ工夫をなさっていないようでしたら、ぜひご一考下さい。

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